明太子開発史−そのルーツを探る−


978-4-425-88371-4
著者名:今西 一・中谷三男 共著
ISBN:978-4-425-88371-4
発行年月日:2008/8/28
サイズ/頁数:A5判 474頁
在庫状況:品切れ
価格¥6,160円(税込)
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発行までに7年もの歳月を費やした、明太子にかける熱い思いがつまった1冊。
福岡・山口等の土産物として名高く、ご飯のおかずやおにぎりの具はもとより、スパゲッティやもんじゃ焼き、各種和え物など様々な料理に利用されている辛子明太子。現在でこそスーパー等で普通に売られ家庭にも浸透していますが、元々は郷土の名産品のひとつにすぎませんでした。普段何気なく口にしていますが、考えてみると明太子について一般に知られていないことがいろいろと多いことがわかります。例えば、どのようにして全国に広まっていったのか。なぜ全国への供給が可能になったのか。ルーツはどこにあるのか。そもそも明太子とは何か。たらこと明太子の関係はどうなっているのか等々。
本書は、これらの疑問に応えるべく、明太子の歴史から製造法や利用法までを総合的に著わした初めての書です。国内外の様々な文献や実地調査をもとに、豊富な図表と事例を交えて、多角的にかつ分かりやすく「明太子の謎」を解き明かしています。
一口に解き明かすと言っても、比較的簡単に入手できる関連資料はごく最近の一部に限られ、戦争による資料の遺失や空白、整合性のとれない古い資料、虚実織りまぜた伝聞等によって、その照合・検証に相当な労力が費やされたのは明らかです。本書によってようやく明太子研究の扉が開かれたと言い換えることもできるでしょう。
明太子とその背景をより深く探求したい人、明太子の利用、消費拡大、漁業資源問題等に興味のある人は、ぜひ手元に備えておきたい一冊です。

【発刊にあたって】
明太子は、日本と韓国両国の関係者が共同で開発してきた食品といわれる。著者らは、朝鮮半島から日本に渡来したという明太子に着目して、その起源を探り、一衣帯水の地理的条件と日韓関係史等を踏まえ、明治期から現在に至るまでの明太子の開発過程を史実に基づき究明、考察することにした。これが本書を執筆した主な動機である。
明太子開発の歴史は3期に大別される。
第1期は、明治27年頃から朝鮮半島東岸における明太子の調査、研究が始まり、明治38年関釜連絡船の就航を契機に、明治40年釜山に明太子製造卸売商、樋口伊都羽商店が創業するなど、日本向け商品として、明太子の生産量が増加し、咸鏡南道元山、慶尚南道釜山等から、主に下関を中心として移入後、全国に出荷された販路拡大、開発の時期である。
第1期は、昭和20年以後、北海道産たらこを原料として、下関の業者らにより、明太子製造が始まり、次いで福岡県の業者により下関とは異なる明太子製造技術が確立、昭和30年代後半からスケトウダラすり身技術が開発され、原料たらこの大量安定供給が可能となり、明太子が産業として成長する躍進の時期である。
第3期は昭和52年以後、世界的な200海里による日本漁船の漁場縮小等があり、原料卵を輸入に依存しなければならない守りと発展の時期である。
これら3時期における幾多の困難を明太子製造業者はもとより、関係各位の英知、努力により克服し、明太子産業はわが国の水産業の中でも重要な位置を占めている。現在、原料卵の安定確保、消費拡大等、明太子をとりまく課題は多いが、今後、多様な食生活に対応できる栄養、健康、嗜好等に資する食品として益々の発展が期待されている。
本書が明太子、たらこはもとより、日韓双方の水産業開発史、調査、研究、水産業振興の一助となれば望外の幸せである。

【目次】
第一章 スケトウダラ
 1 タラの種類
 2 スケトウダラ
 (1)スケトウダラの概要
 (2)形状・生態・分布
 (3)雌雄の判定
 3 スケトウダラと卵の名称および由来考
 (1)スケトウダラの名称
 (2)スケトウダラ卵の名称
 (3)スケトウダラ卵の外国名
 (4)明太の名称と由来
 (5)明太子の名称と由来

第二章 明太の開発
 1 朝鮮半島の明太の開発 
 (1)朝鮮半島の地形・海流
 (2)朝鮮半島と明太
 (3)朝鮮半島の明太の開発
 2 日本におけるスケトウダラの開発
 (1)1868(明治元)年以前
 (2)1868〜1945(明治元〜昭和20)年
 (3)1945〜2008(昭和20〜平成20)年

第三章 明太子の開発
 1 朝鮮半島の明太子の開発
 (1)1868年以前
 (2)1868〜1945年
 2 日本のたらこ・明太子の開発
 (1)1868(明治元)年以前
 (2)1868〜1945(明治元〜昭和20)年
 (3)1945〜2008(昭和20〜平成20)年
 3 地域別明太子・たらこの開発
 (1)山口県
   概要
   企業
 (2)福岡県
   概要
   企業
 (3)北海道
   概要
   企業
 (4)宮城県
 (5)各都府県
   青森県
   新潟県
   東京都、茨城県
   埼玉県、神奈川県
   福井県、大阪府、兵庫県
   佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県
   広島県等

第四章 スケトウダラ(明太)の商品
 1 商品の概要
 (1)魚体・魚肉商品
 (2)すり身
 2 たらこ・明太子商品
 (1)たらこ・明太子商品の基本的特性
 (2)明太子商品の品質条件
 (3)地域的好みと卵の大きさ、色、辛み、硬さ
 (4)贈答向け商品と惣菜向け商品
 3 その他の商品
 (1)白子
 (2)肝油
 (3)腸塩辛・眼球
 4 容器・包装
 (1)容器
 (2)包装

第五章 原料卵
 1 魚卵の種類と栄養・成分 
 (1)魚卵の種類
 (2)魚卵の栄養成分
 2 スケトウダラ卵
 (1)雌雄比・卵重量・卵率・卵採取量・鮮度
 (2)原料卵
 (3)卵の大きさ、色、つや、張り、卵膜の厚さ等
 (4)原料卵価格
 3 原料卵品質向上への取り組み
 (1)漁法と卵の品質
 (2)漁獲物処理とシバレ子防止
 (3)卵の冷凍・貯蔵・解凍
 (4)水子卵の改良
 (5)外国への技術指導
 4 マダラ・スケトウダラ・タイ卵
 (1)マダラ卵とスケトウダラ卵
 (2)タイ卵

第六章 たらこ・辛子明太子の製造
 1 たらこの製造法
 (1)一次加工
 (2)二時加工
 (3)紅葉子の製造?1929(昭和4)
 (4)たらこ・紅葉子製造上の留意事項
 (5)スケトウダラの親子漬?1968(昭和43)年
 (6)たらの子(鱈の子、鱈?)粕漬
 (7)乾たらこ(乾鱈?)
 2 辛子明太子の製造法
 (1)製造法
 (2)辛子明太子製造上の留意事項
 3 辛子明太子の色
 (1)辛子明太子・たらこの色
 4 辛子明太子の味
 (1)辛子明太子の味
 (2)まろやかな味とこく、深みのある味
 5 調味液・添加物
 (1)調味液 
 (2)香辛料・トウガラシ
 (3)塩
 (4)水
 (5)醤油
 (6)日本酒・ワイン・焼酎・泡盛・酒精・味醂・発酵調味料
 (7)コンブ
 (8)かつお節
 (9)椎茸
 (10)柚子
 (11)海洋深層水
 (12)食品添加物
 6 漬込みと熟成
 (1)漬込み
 (2)熟成
 7 保管と品質管理
 (1)保管
 (2)冷凍庫
 (3)家庭用冷蔵庫での管理
 (4)賞味期限・消費期限
 8 製造工場の施設、設備
 (1)施設
 (2)設備

第七章 明太と明太子の生産と消費
 1 明太と明太子の生産量
 (1)明太(スケトウダラ)の生産量
 (2)原料卵たらこの生産量
 (3)原料卵たらこの生産量予測
 (4)塩蔵(塩)たらこの生産量
 (5)辛子明太子の生産量
 2 たらこ・明太子の輸入
 (1)たらこ・明太子の輸入
 (2)国別たらこ・明太子の輸入
 (3)米国・ロシアのTAC,ABC,DAP
 3 たらこ・明太子の消費
 (1)国民一人当たりのたらこ・明太子購入量
 (2)月別購入量
 (3)年齢階層別消費量
 (4)都市別たらこ消費動向
 4 たらこ・明太子料理の変遷
 (1)1868(明治元)年以前
 (2)1868〜1945(明治元〜昭和20)年
 (3)1945〜2008(昭和20〜平成20)年
 5 明太漁業と資源管理
 (1)朝鮮半島の明太漁業
 (2)日本のスケトウダラ漁業
 (3)明太漁場と資源
 (4)スケトウダラの資源管理とTAC制度

第八章 流通と販売・業界
 1 流通
 (1)原料卵・たらこ・明太子製品の流通
 (2)市場流通、市場外流通
 2 販売
 (1)製造直販
 (2)卸売販売
 (3)業務用卸売販売
 (4)通信販売
 3 価格
 (1)原料卵価格
 (2)卸売価格
 (3)小売価格
 4 関連業者
 (1)たらこ業者
 (2)辛子明太子(明太子)業者
 (3)市場
 (4)関連団体

第九章 今後の課題
 1 原料卵の確保と安定供給
 2 消費拡大
 3 商品開発
 4 国内生産と輸入のバランス

★巻末資料
 ○資料1 明太子・たらこ・スケトウダラ小史
 ○資料2 すけこ(たらこ)・明太子取扱量
 ○資料3 明太卵仕向地別移出港表
 ○資料4 水産宣伝歌(1929年)
 ○資料5 食品衛生法(抜粋)
 ○資料6 全国明太子・たらこの主な製造業者等一覧
 ○資料7 参考文献
 ○資料8 協力者一覧
 ○資料9 単位換算
 ○資料10 元号対照表


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カテゴリー:水産 
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