都市と漁村−新しい交流ビジネス−


978-4-425-88351-6
著者名:日高 健 著
ISBN:978-4-425-88351-6
発行年月日:2007/3/28
サイズ/頁数:A5判 160頁
在庫状況:品切れ
価格¥2,200円(税込)
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「漁村へのIターンを考えている人」、「観光客誘致の参考書」
に是非読んでもらいたい内容です。
朝市や体験漁業、ダイビング事業など成功例を基に、価値あるビジネススタイルを探る。多様化する漁村の役割を分析し、活性化を目指す!

著者からこの本を読まれる方へ(「はじめに」より)
国民にとって、水産物は重要な食料である。また、豊かな自然に恵まれた海辺は、重要な生活空間である。これらに深く関わりを持つのが漁民であり、漁村である。この漁村が、近年、漁業資源の減少、漁業経営の悪化、漁業者の減少と高齢化などによって、非常に厳しい状態に追い込まれているとされている。それに対して、積極的な漁業資源管理の導入や水産物流通の再編整備など、水産業の再構築が政策的に進められている。しかし、果たしてそれだけでいいのだろうか。これらの対策は、漁業が持つ事業の仕組みをそのままにして再編強化を目指すものである。今の窮状は、これまで漁業が持っていた事業の仕組みが、漁業と漁村を取り巻く経営環境に合わなくなってきたことに原因があると、私は思う。
また、漁村活性化を目的として、都市と漁村の共生・対流も政策的に支援されている。しかし、やみくもに交流活動をやって漁村が活性化されるとも思えない。そこには、交流ビジネスとして体系付け、価値を生み出すような仕組みを、新たに漁村に構築するという視点が必要である。今、漁村が求めているのは、価値を生み出す仕組みを具体的に示すことである。
そこで、本書では、都市と漁村の交流と連携をキーワードとして、漁村産業のサービス化と複合化を進めるための仕組みを検討する。そして、交流ビジネスに変え、漁村産業の新たなビジネスの仕組みを構築する方法について考えたいと思う。つまり、交流をきっかけとした新たな地域ビジネスの仕組みを、経営学の手法を使いながら明らかにすることを試みる。ビジネスの実践がない者の著述であるから、話は理論的、総論的にならざるをえない。しかし、それは新たな漁村産業の発展のバックグラウンドを築くために必要なものであると認識している。
2002年に、私は「都市と漁業−沿岸域利用と交流−」を出版した。この中で、都市における漁業の存続条件を整理し、「都市漁業」の概念を提起した。都市に貢献し、都市的条件を利用するという双方向的な関係によって存続条件を確保するのが都市漁業である。この考え方は、全土的に都市化が進み、多くの漁村が都市に隣接している日本においては、広くできるものである。つまり、地域社会への貢献と、地域に固有の資源の活用という地域社会と漁村との双方向的な関係は、これからの日本において漁村が存続していくための基本的な条件であると思う。しかし、前著において、漁村産業多様化の方向性は示したものの、その具体的なプロセスや新たなビジネスの仕組みについて言及することができなかった。本書ではそれに迫ろうとしている。
漁村産業の多様化の取組みは、年とともに実践事例が増えている。このような動きを先んじて捉え、概念的に明確に示したのが婁小波氏の「海業」である。「海業」は漁村産業の新たなパラダイムといってもよいであろう。「都市漁業」は産業だけではなく、漁業者、漁業協同組合、漁業集落まで含めた漁業に関わる要素の総体を目指すものであり、都市との関係性に着目した地域漁業の姿であり。この「都市漁業」の中の産業的側面が「海業」によって語られる。「都市漁業」における漁村産業の多様化という方向性は、この海業パラダイムに沿うものである。つまり、「都市漁業」理念に基づき、「海業」パラダイムに沿って漁村産業を展開するのが、21世紀における漁村の姿である。ただし、海業や交流ビジネスによって漁村産業のすべてが置きかえられるとは考えておらず、これらを核あるいはきっかけととした漁村産業の再編成が生じることを期待している。本書で示したいのは、そのようなきっかけとなる事業の仕組みである。

2007年2月
日高 健

【目次】
第1章 漁村および漁村産業が、今どのような状態にあるか
 1.漁村とは何か(漁村の定義)
 2.漁村、農村、都市
 3.漁村の類型
 4.統計で見る漁村の状況 第2章 都市と漁村の関わりをどのようにとらえるか
 1.都市と漁村の関わり方をみる枠組み
 2.都市と漁業・漁村の関わり方をみる新たな視点
 3.新たな視点に基づく都市と漁業・漁村との関係
 4.まとめ

第3章 漁村の活性化と交流活動
 1.漁村の活性化をどのようにとらえるか
 2.交流ビジネスに関する先行研究
 3.水産政策における都市漁村交流の位置づけ

第4章 新たなビジネスシステムを持つ漁村ビジネスの展開
 1.漁村産業になぜ新たなビジネスシステムが必要か
 2.漁村における新たなビジネスの展開方向
 3.業界の競争構造の分析
 4.資源ベース論SWOT:強みと弱み、機会と脅威
 5.交流をきっかけとした漁村産業の多面的展開

第5章 水産物の直販事業
 1.全国の状況
 2.福岡市漁協姪浜支所の「姪浜朝市」
 3.福岡県脇田漁協「汐入りの里」

第6章 観光漁業・体験漁業
 1.全国の状況
 2.体験漁業を核とした各種交流事業の展開:大阪府田尻漁協
 3.複合的な事業展開の事例:兵庫県赤穂市漁協坂越支所における
   体験漁業

第7章 ダイビング事業
 1.全国の状況
 2.漁協直営型ダイビング事業:静岡県伊東市漁協富戸支所
 3.民間と漁協との連携型ダイビング事業:ノアすさみ

第8章 ダイビング事業の手順と課題
 1.地域社会にとってのダイビング事業の必要性と要件
 2.地域資源利用のシステム化
 3.ダイビング事業経営の要点
 4.ダイビング事業経営の課題


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カテゴリー:水産 
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