水産経済学−政策的接近−


978-4-425-88341-7
著者名:小野征一郎 著
ISBN:978-4-425-88341-7
発行年月日:2007/3/28
サイズ/頁数:A5判 308頁
在庫状況:品切れ
価格¥4,180円(税込)
品切れ
欧米での健康志向の高まりや中国における魚消費量の増加などから今後は世界的に水産物の価値が高まると予測されています。
そうした中、豊かな漁場環境に恵まれ、世界有数の水産大国である日本の水産業も単なる食糧生産産業の枠を超え、海そのものの利用、保全をも包括した新たな産業としての発展が政策課題となっています。
本書は、水産政策審議会会長として、そうした水産政策の審議に長年携わってきた著者のこれまでの研究の集大成となっています。  最近注目のマグロ漁業の話題にはじまり、養殖業、水産物流通、水産基本法の検討、さらには近年注目されている漁村活性化や水産業の多面的機能まで、主要なトピックスを網羅し、政策的・経済的な視点から近代日本水産業の動向を分析しています。
水産基本法の見直しや海洋基本法の制定が叫ばれるいま、今後の水産政策を考える際の基本図書として必携の一冊です。

【はしがき】より
21世紀の日本の農林水産業は新たな局面を迎えている。水産基本法の成立過程ではその必要性が議論され、業界側のプッシュが強かった記憶があるが、その後5年あまりが経過するうちに、漁業生産額・生産量が減少し、漁業就業者の減少・高齢化も著しい。
本書の主な目的は21世紀前後の、より正確には1990年代中から2000年代初頭の水産業を、経済学的に分析することであるが、折から水産基本法が制定され、それを基本的枠組みとして、主要な水産政策に接近する結果となった。
農林水産業は市場原理になじみにくい、自然産業としての特性・限界をもつ。しかし、日本近海が世界3大漁業の一つであり、200海里内面積が世界6位である水産業は、農業・林業にくらべれば、恵まれた産業基盤に立っている。また、近年では環境保全、物質循環といった水産業の多面的機能が注目されており、今後は食料生産=基本的機能と並んで、あるいはそれ以上に多面的機能の発揮が強調されるよう。
日本漁業は縮小・再編・後退を迫られ、サバイバルが焦眉の課題であるが、川上の漁業生産から川中・川下の流通・加工・外食、消費までを視野に収め、さらには「海」そのものの利用-海洋性レクリエーション-をも包括した、水産業としてのリニューアルに突破口を求めたいと考えている。
本書が日本水産業のサバイバルを目指す研究者の一助となれば幸いである。

【目次】
第1部 マグロ漁業
第1章 マグロのフードシステム
 第1節 はじめに
 第2節 マグロの供給
 第3節 マグロ漁業の動向
 第4節 結語

第2章 マグロ漁業の展開-「98年減船」以降-
 第1節 問題の所在
 第2節 漁場利用関係
 第3節 FOC・IUU問題
 第4節 マグロの供給−日本市場の分析−
 第5節 「先進国型マグロ漁業」

第3章 マグロ漁業の日台経営比較
 第1節 はじめに
 第2節 近海マグロ−東港−
 第3節 遠洋マグロ延縄漁業
 第4節 結語

第2部 水産物のフードシステム
第4章 水産物のフードシステム
 第1節 はじめに
 第2節 水産物流通
 第3節 水産加工業

第5章 水産業の国際化とフードシステム
 第1節 水産業の国際化
 第2節 水産物需給の変容
 第3節 水産物消費の分析
 第4節 結語

第6章 大都市近郊における漁協の販売活動
 第1節 はじめに
 第2節 全量共販体制
 第3節 コープこうべとの取引関係
 第4節 結語

第3部 養殖業
第7章 ブリ類養殖経営における経営格差問題
 第1節 はじめに
 第2節 T島におけるブリ養殖の産地形成
 第3節 タイプ別経営状況
 第4節 結語

第8章 企業型養殖経営の展開方向
 第1節 はじめに
 第2節 ブリ養殖の全国的動向
 第3節 A経営の検討
 第4節 企業型養殖の展開方向

第9章 海面養殖業経営の展開方向
 第1節 はじめに
 第2節 1990年代の海面養殖業
 第3節 漁場管理
 第4節 海面養殖業の展望
補論1 マダイ養殖
 第1節 商品特性
 第2節 産地類型

第4部 水産政策(1)-時期別検討-
第10章 戦後改革期
 第1節 はじめに
 第2節 生産復興
 第3節 漁業制度改革
 第4節 結語

第11章 高度成長期以降
 第1節 はじめに
 第2節 沿岸漁業等振興法の制定
 第3節 石油ショック以後
 第4節 水産基本法の成立

第5部 水産政策(2)-水産基本法-
第12章 水産基本法の成立
 第1節 はじめに
 第2節 水産物の安定供給
 第3節 漁業経営
 第4節 フィッシュビジネス
 第5節 結語

第13章 都市と漁村の交流
 第1節 問題の所在−トータル産業としての水産業−
 第2節 水産物のブランド化
 第3節 水産物直販
 第4節 海洋性レクリエーションの展開
 第5節 漁家・漁業・漁村の活性化
 第6節 結語

第14章 遊漁船業の展開-兵庫県の事例
 第1節 はじめに−地域の概要−
 第2節 遊漁船業の検討
 第3節 結語
補論2 外来魚の流入規制-琵琶湖条例をめぐって
 第1節 問題の所在
 第2節 外来魚の再放流の禁止
 第3節 外来魚の駆除
 第4節 結語

第15章 ODA水産技術協力の評価-タイ人研究者に対する意識調査
 第1節 問題の所在
 第2節 アンケートの回答者の属性
 第3節 水産技術協力に対する意見・評価

第16章 水産業・漁村の多面的機能の意義
 第1節 はじめに
 第2節 自然環境の保全
 第3節 水産業・漁村の外部不経済
 第4節 結語


書籍「水産経済学−政策的接近−」を購入する

品切れ
カテゴリー:水産 
本を出版したい方へ