世界の風・日本の風 気象ブックス020


978-4-425-55191-0
著者名:吉野正敏 著
ISBN:978-4-425-55191-0
発行年月日:2008/5/18
サイズ/頁数:四六判 158頁
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価格¥1,980円(税込)
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 世界にはさまざまな風が吹いています。ハリケーンもあり、台風もあります。心地よく肌を撫でてゆく春風もあれば、一瞬にして地上の全てを巻き上げる突風もあります。毎日の気象情報では気温、降水量の他に「風力・風向き」が予報されています。
 風は気温や降水量に比べれば日々の生活にそれほど深い関わりはないように見えます。ところが、本書によると、風は私たちの生活に無縁なものではありません。日本には「○○風」とか「○○おろし」のように風に地域独特の名前が付いていたり、「風情がある」とか「風雅を好む」などのような風に関する言葉や、風に関する地名が多くあります。世界でも農作物から建築物にまで風の影響が及んでいるといいます。
 目には見えない風にも名前があり、特有の性格があり、人間の衣食住や文化にまで深い関わりがあることを改めて教えてくれます。
 著者は学生時代から風に興味を持ち、長年にわたって世界各地で観測と研究を続けてきました。その視点は、気象・気候学といった自然科学的な面にとどまらず、地理、歴史、民俗など多岐に及んでいます。こうしたさまざまな切り口で風をとらえ、読者を風の世界へと案内してくれます。
 現地の写真も豊富に掲載しており、天気について興味を持つ全ての人に「風」を感じてもらえる一冊です。

【まえがき】より  地球上、風が吹かないところはない。樹々を倒し、屋根を飛ばす強い風、一瞬の内にすべてを巻き上げ破壊し尽くす竜巻に、毎年毎年、地球上のどこかで人びとは風の威力を思い知らされている。
 では、「もし、風が吹かなかったらどうなるか」。おそらく人間をはじめ、生物は生きてゆけない。いや、地球が空気で包まれ、太陽からエネルギーをもらい、そして自転している限り、風は吹く。現在の人間も動植物も、さらには山の形も沙漠も熱帯雨林も、地球上の風に対応していまある姿になっているのだ。風は直接かかわるばかりでなく、水蒸気を運び、雨や雪を運ぶ大きな役割を果たしてきているのだ。“生命の起源”くらいの古いころの話は別として、“人間の歴史”くらいの時間については、前記の設問がそもそもナンセンスなのである。
 しかし、太平洋や大西洋の赤道付近には、風がほとんど吹かないところがあることをわれわれは知っている。そこは南北両半球から貿易風と呼ばれる風がゆっくりと集まり、“赤道無風帯”と名付けられたほとんど無風の海域が東西に延びている。風力を利用して遠洋航海をした帆船時代には、船がここに入り込むことは死を意味した。海の上であっても飲み水がなくなり、沙漠に迷い込んだのと同じであった。今日でも、ヨットで世界一周する人たちが最も注意する海域である。
 私は20年ほど前に『風の世界』という本を書いた。これは、学生時代から風の研究にかかわってきた一研究者を取り巻くさまざまの事象を述べたものであった。そこには自然現象もあれば、風情や風流を楽しむ人の姿もあれば、風水害に苦しむ社会の諸相もあるが、自分を中心に据えた視野で書いたものであった。今回の『世界の風・日本の風』は、なるべく広い世界の風と日本の風を記述し紹介するという方針でまとめたものである。
 そうはいっても、この広い地球上のさまざまの風を、一人の研究者が小さい本の中で全てを紹介できるはずがない。「客観的に、バランスよく、全て」という言葉にはほど遠い。この点はお許し願いたい。
 また本書は当然のことながら日本人の読者を対象としている。したがって、日本人が経験している風を土台として、世界の風の特性をより深く理解することを心がけて書いた。本書の内容は「風を歩く」という題のインターネット・バイオウェザー・連続エッセイとして、月2回、合計50回書いた原稿を再編集し、加筆・訂正し、この目的に添うようまとめた。気象ブックス編集委員会の各位・成山堂書店の各位に深謝する次第である。
 なお、本書の写真は、特に記してあるもの以外は、すべて著者が撮影した。

2008年4月
吉野 正敏

【目次】
1.序章

 1.1 風のスケール−マクロからローカル・ミクロまで−
 1.2 風と日本

2.世界の風・日本の風、百態
 2.1 季節風(モンスーン)
  モンスーンの定義
  日本の季節風
  南アジアの南西モンスーン(雨季)と東アジアの夏の季節風・梅雨
  稲作と夏の季節風
  日本の海の季節風−隠岐の例から
 2.2 局地的な風
  局地風とは
  日本の局地風
  宝風(たからかぜ)
  セイロンティーと局地風
  ヨーロッパ・北アフリカ・中近東の局地風
  北アメリカの局地風
  海風
 2.3 風と人々
  風をめぐって
  日中風談義
  こくふう(谷風)
  鯉のぼり
  田んぼの風神・雷神
  バンコクの風ぐるま・雷よけ
  ヨークシャ成人学級−大人の夏休みの風観測

3.四季の風
 3.1 台風
  語源
  誕生
  経路
  海南島の台風対策−チャとゴムの樹の多層栽培
 3.2 ハリケーン
  近年の変化
  ハリケーン「カトリーナ」
  「カトリーナ」による災害の復旧
 3.3 秋の風
  飛行機雲
  風とすすき
  風と紅葉・黄葉
  万葉の秋風
  風たちぬ
 3.4 冬の風
  着雪と風
  関東の空っ風
  関東平野の防風林・防風垣
  アルデンヌ高原の防風林・防風垣
  アドリア海岸の冷たいおろし風、ボラ
 3.5 春の風
  黄砂
  風塵あらし−北京の黄砂
  早春の世界の風

4.風と民族の接点
 4.1 風と地名
  風地名
  かそせ(風合瀬)−難読地名−
 4.2 風と住家
  熱帯の高床住宅−風通しを求めて−
  済州島の民家と風
 4.3 屋根の造りと風
  沙漠の暴風と建築−中国の鳴沙山の例から−
  屋根と風雨

(気象図書)

カテゴリー:気象ブックス タグ:地球環境 気象 気象ブックス 
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