風と風車のはなし−古くて新しいクリーンエネルギー− 気象ブックス019


978-4-425-55181-1
著者名:牛山 泉 著
ISBN:978-4-425-55181-1
発行年月日:2008/1/18
サイズ/頁数:四六判 204頁
在庫状況:在庫有り
価格¥1,760円(税込)
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世界にはさまざまな風が吹いています。ハリケーンもあり、台風もあります。心地よく肌を撫でてゆく春風もあれば、一瞬にして地上の全てを巻き上げる突風もあります。毎日の気象情報では気温、降水量の他に「風力・風向き」が予報されています。
 風は気温や降水量に比べれば日々の生活にそれほど深い関わりはないように見えます。ところが、本書によると、風は私たちの生活に無縁なものではなくなります。日本には「○○風」とか「○○おろし」のように風に地域独特の名前が付いていたり、「風情がある」とか「風雅を好む」などのような風に関する言葉や、風に関する地名が多くあります。世界でも農作物から建築物にまで風の影響が及んでいるといいます。
 目には見えない風にも名前があり、特有の性格があり、人間の衣食住や文化にまで深い関わりがあること改めて教えてくれます。
 著者は学生時代から風に興味を持ち、長年にわたって世界各地で観測と研究を続けてきました。その視点は、気象・気候学といった自然科学的な面にとどまらず、地理、歴史、民俗など多岐に及んでいます。こうしたさまざまな切り口で風をとらえ、読者を風の世界へと案内してくれます。
 現地の写真も豊富に掲載しており、天気について興味を持つ全ての人に「風」を感じてもらえる一冊です。

【はじめに】より
 私は20世紀の後半に青年時代を経て壮年時代を過ごしてきた。この100年を振り返ってみると、2回の大きな戦争があったものの、20世紀は「経済発展・成長の世紀」であったといえる。
 1980年代の日本は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていたほど、技術革新による経済発展の達成という観点からは世界の最優等生であった。目に見える物財の多いことが幸せであるという発想から、ひたすら所得や消費の増大を追い求めた結果である。ところが、やがて物財の多いことは決して幸せではないこと、一人ひとりが実感できる「豊かさ」は所得や消費の増大とは同義ではない、人間の本当の幸せは「満足度の大きさ」ではないか、という価値観の変化が明らかになってきたのである。
 20世紀の総括として1997年12月に京都で開かれたのが「第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)」であった。そして、20世紀の負のシンボルである二酸化炭素など温室効果ガスの削減を先進諸国に義務づける「京都議定書」が採択されたのである。
 では、21世紀のホモ・ヴィアトール(旅するもの)なる我らは、何を目指すべきなのか。キーワードは「持続可能性」である。20世紀の科学技術は経済成長への寄与をその役割としていたが、これからは持続可能性に寄与するものでなければならない。そして、動力源は二酸化炭素を発生する化石燃料に代わるもの、すなわち太陽光や風力など再生可能エネルギーが主役になる。
 20世紀最大の価値倫理学者マックス・シェーラーによれば、ものごとの価値判断の際のキーワードとして、「満足感」と「持続性」を挙げているが、風力発電はどうであろうか。
 答えは風力発電が急成長している理由を考えれば自ずから明らかになろう。?豊富である、?安価である、?無尽蔵である、?広範囲に分布している、?クリーンである、?再生可能である、これら6つの特性を備えたエネルギー源は風力以外には存在しないのである。
 本書は、私のこれまで30年におよぶ風力エネルギー利用の研究の中で出会った、風と風車に関する情報や知識を整理したものである。読者の皆さまには、本書から21世紀を歩むべき知識、それを活かすべき知恵を得ていただければ幸いである。

2007年晩秋のさわやかな風の日に
牛山 泉

【目次】
第1章 世界の風、日本の風
 地球上の風
 世界の風分布
 アジアの風
 日本の局地風
  コラム1 風の神様
 風による町おこし
 災いの風を恵みの風に:山形県立川町(現・庄内町)の取り組み
 前津江村の誇り
 心に風を、肱川町のこと
 風極の地えりも町から
  コラム2 気に入らぬ風も

第2章 風の特徴
 自然風とその特性
 地形と風
 風速と風力
  コラム3 風の歌:芭蕉
 風とその観測目標
 ジェット気流
 風とカルマン渦
  コラム4 エオリアンハープについて

第3章 風と災害
 春一番
 冬一番?
  コラム5 風の歌:西行
 台風とハリケーン
  コラム6 風は病気も運ぶ
 強風による列車事故
 強風による風車事故
 台風による海難事故
  コラム7 「神風」が日本を救った

第4章 風と生活
 ミラーさんの先祖は?
 生活密着のオランダ風車
  コラム8 風への祈り
 風の色は鯉のぼり
 風の道具
 ネパールの風の道
 風の町、風車の町
  コラム9 風への祈り(2)
 良い品は風車印、速い車も風車印
  コラム10 日本海軍は「風」が好き
 風車の地図記号

第5章 風と帆船
 「ここに陸終わり海始まる」
 歴史に残る帆船たち
 帆船に載った風車
 北前船のこと
 咸臨丸のこと
  コラム11 風の歌:忠臣蔵
  コラム12 唱歌の中の風

第6章 風車とお国柄
 風車王国オランダの背景
 オランダ風車のメカニズム
  コラム13 風の季節
 風力発電王国デンマークの背景
 デンマークの環境・エネルギー政策
 デンマークの風力発電は100年以上の歴史
 風力発電の普及に向けて
 バルト三国の風車
  コラム14 風車物語

第7章 風車の工学概論
 風車の種類
 風車の発生するパワー
 風車の回転理論
  コラム15 翅果(しか)の飛行?
 大型風車の仕組み
 風車の性能評価
 風車による発電量
 風車は環境に優しいか?

第8章 風車の歴史と現状
 風力発電以前
 風力発電のパイオニアたち
 日本の風力発電の開発者
 20世紀における風車の技術進歩
 ポルシェの風力発電
 洋上風力発電の歴史的検証
 洋上風力発電の歴史的背景
 ヒロニマスによる浮遊式洋上風力発電
 洋上風力発電の将来展望

第9章 風車と教育研究そして趣味
 足利工業大学の取り組み
  コラム16 風と生命
 趣味の人:松本文雄さん
 趣味と実益の人:増田弘さん
  コラム17 出前講義・出前実験
  コラム18 演歌の中の風

第10章 風力エネルギー利用の将来
 風力はユビキタス・エナジー
 コミュニティでの利用に向けて
  コラム19 「ウィンドキャラバン」のこと
  コラム20 アジア・ウィンド・リングの活動
 水素エネルギー社会に向かって
 パタゴニアを21世紀のクウェートに
 風力発電の環境影響

(気象図書)


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カテゴリー:気象ブックス タグ:気象 気象ブックス 環境問題 
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