気象のことば 科学のこころ 気象ブックス017


978-4-425-55161-3
著者名:廣田 勇 著
ISBN:978-4-425-55161-3
発行年月日:2007/5/28
サイズ/頁数:四六判 202頁
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気象学を含む自然科学を人類文化の一形態としてとらえ、その歴史と考え方を古今東西の言葉を手がかりに考察したユニークな科学随筆集。

【まえがき】より  なにごとによらず、自分の目で物事を見つめそれについて様々な思いを巡らせるのは本当に楽しいことである。或いはいろいろな本を読んだり他人の話を聞いたりして、自分が今までに知らなかった世界に触れるのも知的好奇心を大いに満足させてくれる。そしてさらに、このように時間をかけて貯えてきた数多くの知識や経験を、もう一度自分の好みに合った方法で組み立て直してみると、そこにはこころ豊かな新しい世界が生まれてくる。
 この場合、哲学などといえばいかにも大袈裟に聞こえるが、そもそも日本語で哲学と訳された言葉の本来の意味は、ギリシャ語で「考えること(sophy)が好き(phil)」というきわめてわかりやすいものだったはずである。
 この事情は科学についてもそっくり当てはまる。たとえば、高校の教科書をはじめとする多くの本で、パスカルやデカルトなどの人物に「哲学者・科学者」という肩書きがつけられているのは、彼らが人間社会でも自然現象も対等に、自分の目で見、自分の頭で考えてきた優れた先人だったことを表している。
 科学とは決して高度な観測技術に頼ったり複雑な理論方程式を取り扱ったりすることがすべてではない。もちろん、対象とする物事の性質に応じて時にはそのような手段も必要ではあろうが、たとえば身近な見られる動植物や夜空の星などのような自然を相手として、まずはその面白さを感じ取り自分で納得するよろこびを体験することこそ科学の原点なのである。その意味で気象はまさに格好の題材だと言える。そしてこのような素朴な出発点からの理解が深まれば深まるほど、それまでは一見別の世界のことだと思われていた他の事柄との間に、ある種の類似性、親和性のようなものが相似性のように浮かび上がってくるにちがいない。
 本書はこのような立場から硬軟織り交ぜて書いた科学随筆集である。話題によっては社会時評の筆法を借りていささか辛口の味付けをしてみた部分もある。なかには筆者の独断に過ぎるところもあろうかと思うが、そこには教科書と違う気楽な随筆ということで笑って読み飛ばして下さって構わない。
 第一部の「気象のことば」は、通常の気象学教科書や学術用語集に見られるような専門用語の説明とは違って、馴染みの多い言葉を手がかりにして気象の世界を見つめる楽しみを述べる。英語や漢語など、現在の日本語の中に生きて使われている言葉を様々な角度から掘り下げて考えてみた。何やら国語教室めいた部分もあるが、昔から「読み書きそろばん」といわれるように、言葉の力があってこそ論理的思考も発展しようというものである。
 第二部の「我田引水」は、世の中の様々な物事や考え方を、ここでもまた言葉を手がかりにして自分の世界である研究の場に引き寄せてみると意外に新しい事柄が見えてくることを示してみた。題材はときに通俗的なものを選び、筆者の本音とともに長年の教師経験からの提言も含めた。
 そして第三部の「科学のこころ」では、むかし学生のころに愛読した寺田寅彦や中谷宇吉郎の科学随筆を思い出しながら、気象学の研究における自分の経験を中心にして様々な問題意識を自己流に書いてみたものである。実を言えば、筆者は学問の系譜上、寅彦の孫弟子に当たっている。
 読者としては、気象学を勉強研究している若い人々、さまざまな形で気象の仕事に関与している人々、中学高校で理科を教えている先生方、そして自然現象を含む文化全般に知的関心を持っていてくださる一般社会人、等々を幅ひろく想定した。
 夫々の題目は系統的に順を追って並べてあるわけではない。したがって読み進め方は、各項目を目に付いたところからバラバラに拾い読みして下さっても結構である。その場合、多少前後関係のある項目はその旨を文章中に書いてあるので遡って確かめていただければよろしかろう。本書全体を通して、言葉の大切さとともに科学のこころを感じ取っていただけたらこれに過ぎる喜びはない。

【目次】
第一部 気象のことば

 気象の生い立ち
 気象用語あれこれ
 気圧と天気図
 漢字のはなし
 重箱読み
 ひらがなとカタカナ
 ドーヴァー海峡の鯛
 観天望気と天気俚諺
 法則の名前
 英語の略語
 ア・ラ・モード

第二部 我田引水
 四字熟語づくし
 コンピューター用語
 三位一体
 男と女
 絵画と個性
 空気遠近法
 何でもセミナー
 リハーサル
 話し方教室
 嫌いな言葉
 貢献の度合
 抜群率
 美しいもの

第三部 科学のこころ
 二分法の功罪
 因果律をめぐって
 鉄腕アトム
 研究室と相撲部屋
 稽古と練習
 クレオパトラの鼻
 存在と実在
 文系と理系
 詩歌への憧憬
 東大寺の学僧

(気象図書)



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