気象と音楽と詩 気象ブックス005


978-4-425-55051-7
著者名:股野宏志 著
ISBN:978-4-425-55051-7
発行年月日:2000/9/8
サイズ/頁数:四六判 172頁
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ベートーヴェンの「月光」は、低気圧の通過を表現していた!?先人達が音楽・詩歌に託した「気象」を鑑賞し、現代の生活で忘れがちな「自然への素朴な感動」の世界へご招待します。

【まえがき】より
われわれは大気の底に住んでいるので、気象の恩恵と脅威を受けながら毎日の暮らしを営んでいる。しかし、気象の恩恵は、空気の存在を忘れるように、当たり前に事として心に留められることもなく、気象の脅威も、災害は忘れたころにやってくるのたとえの通り、記憶が薄れていく。脅威を代表する暴風雨は天気予報の原点で、特に台風と梅雨期の雨は災害を伴う気象の筆頭として昔から人々に恐れられてきた。ところが、台風が一度も来なかったり、空梅雨に終わると、日本はたちまち深刻な雨不足に悩まされる。もし、過度に風が吹き、雨が降れば、空気は浄化され、水にも恵まれていうことはない。昔の人はこのような気象の平穏な振る舞いを「五風十雨」とも「十風五雨」とも称した。五日(十日)に一度風が吹き、十日(五日)に一度雨が降れば順当でいうことなしという意味である。そして、強さもほどほどで、「風は枝を鳴らさず、雨は壌(つちくれ)を流さず」を願った。
しかし、こういう平穏な気象の振舞いに慣れて気象の恩恵や脅威を忘れると、気象に甘えて知らず知らずの間に、空気や水を汚し、温暖化を招くなど、緑豊かな星が保っている自然のバランス自然の巧みなバランスを崩すことになる。このような状態が進むと、やがて呼吸をするのも遠慮がちという時代になるかもしれない。人口が増え、工業化と都市化が避けられないとしても自然に対する感動と畏敬の念を忘れてならないことを20世紀は教訓として残した。新しい世紀は人間の叡智が問われる世紀といわれるゆえんである。
ところで、気象は大気が演ずる壮大な空のドラマであるが、このドラマを素朴に鑑賞する心のゆとりを取り戻すことも大切である。昔の人は、東洋でも西洋でも、あるがままに気象の恩恵と脅威を素直に受け入れ、空のドラマを感動と畏敬の念をもって鑑賞した。昔の芸術家も同じ気持ちを託して芸術作品を創作したので、昔の人はこれらの芸術作品に共感を覚えながら、これを鑑賞することができた。すべての芸術作品が気象を取り入れている訳ではないが、そうした作品に接すると、昔の人と同じように素朴な感動を畏敬の念を思える。
気象は眼に見えない気(水蒸気)が象(かたち)となって現れたものであるから、その典型は雲である。雲の景色(クラウドスコープ)は人々の心に安らぎを与える。それで、「見る芸術」である絵画には直接の題材であるかどうかが別として、雲が描かれているものが多く、展覧会でそのような絵を見ると飽かず眺めて時が経つのを忘れることがある。このような情感は「読む芸術」である詩にも共通する。四季の巡りが明らかで、地勢による天気の変化が微妙な日本では、季語を取り入れた俳句が日本独特の詩を象徴している。気象を取り入れている点では和歌も同じである。俳句や和歌も読む芸術として文字から構成されているが、文字といえば表意文字の代表である漢字が人間の叡智の結晶として輝いている。気象を表現する漢字自体はもちろん、気象に関する語句の表現にも叡智があふれている。従って、そうした漢字や語句から構成されている漢詩には格別の風格があり、風流と風情に富む俳句や和歌とは違った妙味がある。この点、西洋の詩や日本の近代詩は文字よりも内容を形而上的に理解する必要があるので難しい。しかし、そういう難しいことを離れると、それなりの雅趣を味わえる詩(ポエム)に巡り合うこともある。
ところで、「聞く芸術」である音楽では、当然、音を介して気象と関わる作品が多い。気象を伴う音は多かれ少なかれリズミカルであるから、気象の音自体が「聞く芸術」として音楽そのものに創作される場合もあれば、気象の音が芸術性を高める効果として取り入れられている場合もある。また、気象の音は直接表現されなくても、気象が醸し出す情景や情緒を音楽として創作される場合もある。しかし、気象の音や気象が醸し出す情景や情緒とはまったく無関係に、天気図上に見られる大気の流れが音楽として創作されるという斬新な試みもある。股野宏志という人(つまり筆者)が創作した音楽がそれである。この「大気の流れが奏でる音楽」は「気象は即ち音楽」であることを端的に示すものといえよう。
さて、「気象と音楽と詩」と題する本書は「気象と音楽」と「気象と詩」からなっている。「気象と音楽」ではまず「聞く芸術」としての音楽について、いくつかの興味ある古典的な名曲を例に、気象と音楽が織りなす雰囲気を味わい、気象が音楽で果たす役割、そして音楽と気象の共通性に触れながら、「大気の流れが奏でる音楽」の世界へ読者を誘いたい。「気象と詩」では私達が現代の生活で忘れがちな自然に対する素朴な感動と畏敬を、「先人達が読む芸術」として詩に託した気象を通して体験し、幽玄の散歩道を逍遥したい。
平素に聞き馴れた音楽や読み馴れた詩も、少し立脚点を変えると、そこに新しい世界が開かれる楽しみがある。多かれ少なかれ、人々はこうして自分なりの新しい世界に入って人間性を取戻し、明日への活力を生み出していると思われる。本書がそうした方々に共感していただければ幸である。  また、本書は気象を題材とした芸術作品を鑑賞するのみではなく、よく知られた芸術作品を介して気象を鑑賞していただくのが目的でもあるので、本書を通じて、読者が気象についての理解を一層深めていただければありがたい。

(気象図書)


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