波浪学のABC


978-4-425-51231-7
著者名:磯?一郎 著
ISBN:978-4-425-51231-7
発行年月日:2006/8/28
サイズ/頁数:A5判 178頁
在庫状況:品切れ
価格¥3,080円(税込)
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波浪による海難や特徴的な具体例を多く取り上げ、波の性質や発達過程等をやさしく解説。波浪の概要がわかり、沿岸事故防止にも役立つ一冊。

【内容】
海運・漁業・レジャーなど,われわれは様々なかたちで海を利用しているが,いずれの場合も波浪の影響を無視して活動することはできない。波浪は,場所・季節・天候などによって大きく変化し,その特徴をよく把握しておかなければ思わぬ被害をこうむることがあります。
本書は,波浪による海難や特徴的な具体例を多く取り上げ,波の性質や発達過程などについて数式をほとんど用いずにわかりやすく解説したものである。約30の具体例は最近の事例が多く見受けられ,2005年の米国ハリケーン「カトリーナ」や2004年の海王丸座礁事故なども収録しています。
波浪を初めて学ぶ者でも波浪の基本的な性質と具体的な現象がよく理解でき,船の運航に従事する人や海でレクリエーションを楽しむ人にとっても海難防止の参考になる一冊です。
なお,著者の磯?一郎氏は気象庁・日本気象協会において長年波浪予報モデルの開発に携わり,その経験から海難審判にも関与しています。
波浪予報精度が向上している昨今においても毎年のように波浪による海難事故が発生しています。事故を確実に減らすためにも,関係者は一読して波浪に関する知識を身につけには最適の1冊です。

【はじめに】より
貝塚の分布からわかるように、人類は有史以前から海に出て、魚を捕り毎日の生活の糧としてきました。当時は小さな船を操っての漁でしたから、高波のために仕事が妨げられたり、遭難したりという事故も多くあったことでしょう。
陸地が原始林で覆われていたその頃には、人や物資の移動はまず海岸伝いに船で行われてきました。陸上の開発は船でたどり着いた海岸地方から始まり、次第に奥地に向かっております。古代の丸木船では波浪は大げさな妨げとなりました。
科学的な知識や技術が格段と進んだ現代でも様子はあまり変わっておりません。世界の人口の約50%が海岸線に沿った土地に住んでおり、世界の20番までの大都市のうち13が海岸地帯にあります。
水産業の現状を見ると、世界のあらゆる海で漁業が行われていますが、最近では国際問題や環境保護などの制約を受けて後退を余儀なくされております。これを補うように、沿岸海域で定置網漁法や養殖漁業が次第に盛んになりつつあります。この場合には高波による災害を無視することができません。
交通の手段としての海の利用も人間生活にとって極めて重要です。陸上のトラックや鉄道より船舶による輸送のほうがはるかに効率よく物資を輸送きます。例えば、工場建設を考えても、建設資材の運搬が容易に行われ、また、向上で生産される商品の輸出や移出が効率よく行われるので、まずは沿岸域から開発が進みます。
その反面、低気圧や台風の接近によって極めて大きな波浪や高潮が海岸に押し寄せて、防波堤を破壊し、海岸構造物や人家を倒壊させるなどの大きな災害を被ることを考えねばなりません。
レジャーのための海の利用も非常に活溌になってきました。これは主として沿岸海域で行われております。四季を問わずに遊漁、サーフィン、ボードセーリング、スキューバダイビングなどが行われ、特に夏期には海水浴で大いに賑わいます。一般的には波浪は遭難の主な原因となるので好ましい現象ではないのですが、サーフィン愛好者にとっては波がないと困ります。
いずれにせよ、海の環境の中で行動しようとすると、波浪の性質をよく理解しておくことが大切です。それにしても、海岸近くの波は海岸線の形状や海底地形の影響を受けて、場所によって性質が大きく変化します。河川水が海に流出しているところや速い潮流がある場所では波はさらに複雑になります。
それで、ここでは主として沿岸海域で活動する人々を対象にして、是非知っておいていただきたい波浪の性質について述べてみようと思います。

平成18年7月
著者

【目次】
序章 海面に生ずるいろいろな波

第1章 水面の波ー規則波ー
 1.1 波の要素
 1.2 深海波と浅海波
 1.3 砕波
 1.4 三角波

第2章 沿岸における波の変形
 2.1 浅水変形
 2.2 屈折変形
 2.3 磯波
 2.4 富山湾の「寄り回り波」
    寄り回り波とは
    富山湾の地形
    寄り回り波の特徴
    寄り回り波と被害の実例
 2.5 遠州灘の土用波
    土用波とは
    追波とブローチング現象
    土用波の発生
    浜名湖での海難事故
 2.6 サロマ湖口での海難例
    サロマ湖口の地形
    遊漁船「はやぶさ」の海難事故と原因

第3章 波と流れ
 3.1 波によって生ずる流れ
    岸方向への流れ
    離岸流の発生
 3.2 流れによる波の変形
    流れと波浪の関係
    インド洋アグリアス海流上の異常波浪
    河口付近の波と流れ
 3.3 利根川河口での海難例
    利根川河口の地形
    第六五惣宝丸の遭難
    当時の気象状況と三角波の発生
    波浪の挙動

第4章 風波の性質
 4.1 風波とうねり
 4.2 有義波と波浪スペクトル
    有義波高と有義波周期
    スペクトル表示
 4.3 風波の発達

第5章 波浪予報
 5.1 有義波法
 5.2 スペクトル法
 5.3 気象庁における波浪予報
    数値波浪予報
    波浪モデルによる予報

第6章 日本沿岸の波浪特性
 6.1 有義波の累年平均と既往最大
    有義波の統計ーやはり日本海は荒波だった
    各地の最大有義波高
 6.2 波高の季節変化
    日本海とオホーツク海の沿岸
    北日本太平洋沿岸
    関東以西の太平洋沿岸
    南西諸島
 6.3 日本沿岸の異常高波
    異常高波の発生
    台風による異常高波
    低気圧や季節風による異常高波

第7章 日本沿岸各海域の波浪
 7.1 日本海沿岸域の高波
    冬季の季節風によって起こる高波
    台風や低気圧による高波
    富山湾の高波ー海王丸の海難
 7.2 オホーツク海沿岸の高波
 7.3 北日本太平洋沿岸の高波
    低気圧による高波
    台風による高波
 7.4 関東から西日本にかけての太平洋沿岸の高波
    北東進する台風による高波
    北進する台風による高波
 7.5 東シナ海、南西諸島海域の高波
    台風による高波
    冬季の季節風による高波

第8章 世界の波浪
 8.1 世界の風と波の分布
 8.2 うねりの伝播特性
 8.3 野島崎沖の異常波浪
 8.4 アリューシャン、アラスカ沖の波浪
 8.5 ハワイ周辺の波浪
 8.6 アメリカ東海岸・メキシコ湾の波浪
 8.7 北大西洋東部の波浪

付録A 海上風について
 A-1 はじめに
 A-2 海上風の観測
 A-3 気圧傾度と風
 A-4 沿岸海上風
    陸と海の粗度の違いの効果
    陸と海の表面温度特性の違いの効果
    地形の効果

付録B 参考文献

(気象図書)


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カテゴリー:気象・海洋 
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