新訂 航空と気象ABC


978-4-425-51094-8
著者名:加藤喜美夫 著
ISBN:978-4-425-51094-8
発行年月日:2008/6/8
サイズ/頁数:A5判 290頁
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価格¥4,180円(税込)
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広い大空を安全に飛ぶためには、気象条件に関する知識は必要不可欠です。本書は、空を飛ぶ全ての人にこれだけは知っておいて欲しい気象の基礎知識をわかりやすく解説しています。新訂版では、日進月歩の気象測器の導入など、最新の航空気象技術に関する記述を追加しました。

弊社発行の「世界で一番わかりやすい航空気象−今までに無かった天気のはなし−」も併せて読むと、航空気象が容易に理解できます。

【はしがき】より  人が空を飛ぶことを夢見るのは大昔からであった。西洋ではギリシャ神話の昔から、翼を?付けして飛んだが、太陽の熱で?が融けて墜落死してしまう、と言うイカロスの話(これは神様の話ではあった)がある。東洋では雲に乗って空を飛ぶ仙人や孫悟空の話もある。
 このような神話やおとぎ話ではなく、現実の世界においても空を飛ぶための幾多の試みが先人によってなされて来た。レオナルド・ダ・ビンチによる空を飛ぶ機会の設計は15世紀頃には行われていた。また空中に浮かび上がることであれば、現在の「熱気球」の先駆けになる壮挙が1783年にヨーロッパで行われた。
 さらに1903年12月17日には、滞空時間としてはたった12秒間で、距離にしても37メートルでしかなかったが、ライト兄弟により初めて飛行機で空を飛ぶことができた。それからまだ一世紀にもなっていないが、全長がその時の飛行距離よりも長い飛行機が半日以上も連続して飛び、地球円周の1/4以上の距離を一気に移動できるようになった。
 空を飛ぶ欲求はリリエンタールの昔に返って、スポーツとしての「ハング・グライダー」や「パラ・グライダー」あるいはモンゴルフィエ兄弟創始による「熱気球」などの運用を盛んにした。一方、移動の速さに着目し、企業や個人が小型飛行機やヘリコプターを所有して、ビジネス目的のために運営するようにもなった。
 ところで、空には雲があり、雨や雪が降り、風が吹き、地表では霧や霞が立ちこめ、などと言ういわゆる「天気」が地球上には一杯ある。すなわち、大気中の自然現象はほとんどが気象現象と呼ばれても不思議ではない、と言うほどである。
 従って、空を飛ぶとは気象現象の中を飛ぶことでもある。何事においても戦う相手を知り、己の力を知らなければ勝つことはできない。ところが無鉄砲に空に飛び込んで行って、大切な命を落とす、という事態にたち至ることが時折あるとも言われる。気象現象あるいは「自然」の恐さを知らず、己の腕や知識を過信したためでもある。あるいは気象現象に対する情報収集の努力が欠如していたとも言われる。
 いままで航空機事故の調査報告書には、気象現象に直接起因していた、あるいは気象の情報が不足していた、と記載されることは少なかった。実際に事故原因としては「パイロットの判断ミス」とされることが多かった。確かにパイロットには状況の把握を充分に行う義務がある。しかし、パイロットに対する気象知識の伝達方法が充分でない環境もある。時には、知識を伝達する側の気象専門家でさえ想像もしなかった気象現象が、事故原因調査の段階において新たに発見されることもある。当然なことではあるが、そのような現象に対処する航空機の運用方法は、その時点では研究も開発も始められてはいない。
 レジャーとしての航空スポーツの中には、法律上の航空機とみなされないため、免許の必要がなく、手軽に取りつけるものもある。そのため、免許を取得するためには勉強しなければならない気象学も、学習する必要がない、と思ってしまう。空中に身を曝して、本当は天気と一番対決することが多いはずであるのに、気象現象に対する知識不足したままである。また気象観測所が周辺にあるとは限らず、天気状況について助言してくれる気象専門家も近くにいるとは限らない。
 空を飛ぶためには最低必要な知識として、飛ぶ機材の性能と運用方法、その機材に対応した気象知識、そして空を飛ぶルールやマナー、この三つについては習得しておいて欲しい。本書ではこの中の、基本的な気象知識について述べたと思っている。飛ぶ機材によっては高度すぎる知識もあるだろうが、次の段階に進むときには役立つかもしれない。また、免許を必要とする種類の航空機材を扱う者にとっては、本書はほんの入門書と思って、さらに専門的に航空機との関わりに合った参考書あるいはマニュアルなどに進んで欲しい。
 航空と気象の関わり方について、それが「飛行の安全」との兼ね合いにいかに作用するかと言う、筆者の想い入れがどの程度に表現できるか、今までの仕事の中で学んだ基本的なことを盛り込むつもりで取り組んでみた。そして、その想いが読者諸氏にどのように伝わるか少々心配ではある。大方の感想、批判、助言などを期待するものである。
 永年の間の航空会社における飛行機運航のための気象業務、運航関係者などの訓練の場における気象知識の付与、最新情報や知識習得のために出席した学会・会議、などで多くの方々から影響を受けた。本書を書くに当たっても、多くの肩から教示や助言を通じ、また資料などの収集において援助していただいた。文末でもあり、一人一人のお名前は省略させていただくが、特に気象庁、航空会社などの関係者のみなさんに感謝申し上げる。

【目次】
序章 航空と天気
 0.1 航空機と大気の振る舞い
 0.2 航空機と悪天候
 0.3 気象知識の必要性
 0.4 気象基礎知識と航空機の運航

第1章 大気  1.1 概要
 1.2 空気の存在範囲
 1.3 空気の組成
 1.4 大気の構造
 1.5 下層大気の区分け

第2章 温度  2.1 熱と温度
 2.2 温度計
 2.3 気温
 2.4 乾燥断熱変化
 2.5 湿潤断熱変化
 2.6 熱的な安定性
 2.7 熱の伝わり方
 2.8 地上気温の水平分布
 2.9 地上気温の日変化
 2.10 地上気温と航空機の運航
 2.11 上空の気温と航空機

第3章 気圧  3.1 気圧の大きさ
 3.2 高さと気圧
 3.3 測定気圧の補正
 3.4 航空と気圧
 3.5 層厚
 3.6 測高公式
 3.7 定圧面天気図
 3.8 等高度線の姿
 3.9 等温線の形
 3.10 等圧面の高低
 3.11 気圧の変化

第4章 標準大気  4.1 気圧と気温の統合
 4.2 高層観測値の比較
 4.3 標準大気の芽生え
 4.4 国際標準大気の制定
 4.5 気圧高度の補正
 4.6 高度計規制値
 4.7 高度計規制値の使われ方
 4.8 気温分布の影響
 4.9 標準大気と航空機の性能
 4.10 気圧高度と離陸重量

第5章 風  5.1 空気の動き
 5.2 風の定義
 5.3 航空機と風の関係
 5.4 地上風の測定
 5.5 水平風と鉛直風
 5.6 地上の実測風
 5.7 上空の風の測定
 5.8 気圧場と風との関係
 5.9 理論上の風
 5.10 風シア
 5.11 航空における風シアの定義
 5.12 飛行機と風シアの関係
 5.13 乱気流
 5.14 離陸滑走距離と風

第6章 水分  6.1 水について
 6.2 水分の循環
 6.3 蒸発・凝結により起こる気象現象
 6.4 大気中の水分
 6.5 露点温度減率
 6.6 凝結によるもう一つの気象現象
 6.7 安定度の判定
 6.8 安定示数
 6.9 雲
 6.10 着氷
 6.11 雲中の乱気流

第7章 天気−大気現象  7.1 天気について
 7.2 水分を含む大気現象
 7.3 水分を含まない大気現象
 7.4 雷
 7.5 その他の大気現象

第8章 視程  8.1 視程とは
 8.2 昼間と夜間の視程の違い
 8.3 離着陸援助装置
 8.4 卓越視程
 8.5 滑走路視距離
 8.6 将来の視程についての考え方

第9章 気団  9.1 太陽からのエネルギー供給
 9.2 地表面と大気の接触
 9.3 陸地と海洋
 9.4 熱帯と寒帯
 9.5 大気大循環
 9.6 気団の発生
 9.7 気団の分類
 9.8 気団の一般的性質
 9.9 気団の変質
 9.10 気団の別の分類方法
 9.11 気団の概念の効用

第10章 前線  10.1 不連続線
 10.2 前線の定義
 10.3 前面における不連続性
 10.4 前線に伴う天気
 10.5 前線の種類
 10.6 停滞前線
 10.7 温暖前線
 10.8 寒冷前線
 10.9 波動低気圧
 10.10 閉塞前線
 10.11 寒帯前線
 10.12 上空におけるもう一つの前線帯
 10.13 ジェット気流に伴う乱気流
 10.14 熱帯収束帯

第11章 観測施設、測器  11.1 飛行場における地上観測の概要
 11.2 飛行場における測器
 11.3 気象レーダー
 11.4 レーウィンゾンデ
 11.5 航空機による気象観測
 11.6 将来の気象測器

第12章 気象図  12.1 概要
 12.2 気象図の種類
 12.3 気象図の入手方法

第13章 予報  13.1 予報とは
 13.2 場の予想
 13.3 数値予報
 13.4 天気への翻訳
 13.5 予報・警報の種類
 13.6 飛行場予報
 13.7 飛行場警報
 13.8 飛行場気象情報
 13.9 空域予報
 13.10 航空路予報
 13.11 空域気象情報
 13.12 空域警報・航空路警報

第14章 通報  14.1 情報の伝達
 14.2 気象現象情報の種類
 14.3 気象現象情報の伝達経路
 14.4 気象現象情報の通知形式−気象通報式
 14.5 気象通報式による伝達
 14.6 気象通報式の形式変遷
 14.7 気象通報式によらない通報
 14.8 飛行場の気象観測と通報
 14.9 飛行場予報
 14.10 高層の観測値の通報
 14.11 気象図などの送達
 14.12 通報の将来

特論 気象要素による離陸重量制限  1 飛行場を空中の留める気象要素
 2 離陸速度
 3 滑走路長
 4 風の役割
 5 滑走路の傾斜
 6 空気密度の関わり
 7 離陸重量を求めるノモグラム

付録  1 航空機の分類
 2 温度換算表
 3 国際標準大気
 4 ビューフォート風力階級表
 5 速度換算表
 6 雲の種類と変種
 7 国際気象通報式


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カテゴリー:航空 タグ:気象 航空気象 
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