国際物流の理論と実務 【六訂版】


978-4-425-92356-4
著者名:鈴木 暁 編著
ISBN:978-4-425-92356-4
発行年月日:2017/11/18
サイズ/頁数:A5判 226頁
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価格¥2,860円(税込)
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国際物流に関する基本的理論とキャリアやフォワーダー他関連業界にも役立つ実務的知識を満載。
国際物流を学ぶ研究者、学生、国際物流業界の初級、中級者にとって最良のテキストです。
6訂版では、国際物流に関わる統計を最新のものに更新。国際物流の環境変化や、法制度の改訂に伴った説明の見直しを重点的に行いました。

【はしがき】より  国際物流(輸送)は、国際貿易取引において代金決済、保険とともにその一要素を構成している。つまり貿易取引は売主(荷送人)と買主(荷受人)が直接の当事者であるが、この売主と買主の間には運送人(物流業者)、銀行、保険会社という第三者がそれぞれ介在しており、いわば社会的な分業関係を形成している。とくに輸送方法や受渡し場所などの輸送条件は、貿易契約における価格(建値)に大きな影響を及ぼすからである。
 この国際物流の視点は荷主の立場と物流業の立場に大別できる。すなわち前者が荷送人(または荷受人)としての荷主の立場であり、後者がこの荷主と運送契約を結ぶ一方の当事者である物流業者の立場である。したがって本書における国際物流へのアプローチは、貿易との関係では荷主(主に荷送人)からの視点となるが、国際物流の業務展開という意味では荷主と物流業者の双方からの視点となっている。
 今日の物流は、従来まで主流であった物流の機能別や輸送モード別による棲み分けでは対応できなくなっている。つまり荷主側は、国際複合輸送などのシームレスな国際物流を求めており、物流業者もそれらのサービスをいかに効率よく提供するかが課題となっている。さらに近年は、供給サイドから生産、販売に至る物の流れを他企業とも連携して在庫の圧縮やロジスティクス業務の効率化を図るサプライチェーン・マネージメント(SCM)が中もp腐れている。とくに多国籍化した荷主企業にとって、このSCMを国際間でいかに効率よく展開するかにかかっている。SCM自体は荷主企業が直接取り組むものだが、このSCMの展開には物流やロジスティクスの業務をいかにアウトソーシングするかが重要となっている。この物流アウトソーシングのパートナーとして、物流業者がサードパーティ・ロジスティクス(3PL)の取組みに力を入れている。
 近年のわが国の国際物流は、日本発着量が相対的に低迷するなど構造的な変化がみられる。その背景としては、荷主企業による生産拠点の海外シフトとそれに伴う三国間貿易の増加などがある。また従来までの垂直的な貿易構造から、近年は原材料輸入の減少・製品輸入の増加で、途上国を含めて水平的な貿易構造への転換が進展することになった。そのため国際物流は、現地工場からの三国間貿易や日本への逆輸入が増加し、いわば国際物流の多方向化、多極点化が進展している。また生産拠点の海外シフトは、国内経済活動の空洞化に伴う不況の長期化をもたらしている。このような物流構造の変化による物流需要減は、日本発着にかかわる物流業者への影響は少なくない状況をもたらしており、そのため物流業者にとって海外にシフトした物流需要をいかに取り込むかが課題となる。
 荷主企業はこのようなボーダーレス化を進める一方で、販売競争の激化に伴って在庫の圧縮化とリードタイムの短縮化を進めようとしている。とくに製品・半製品に関する国際物流は、一段と低コスト・迅速かつジャスト・イン・タイムが求められるようになっている。こうして国際物流にかかわる物流業者の役割は、従来以上に多様化するとともに、国際物流関連の運送責任も重要となっている。
 さて、本書は、国際物流を従来のような、縦割的な枠組みから業際的なアプローチとして試みている。つまり、リンクとしてのキャリアは海運のみならず航空も対象に取り込み、さらにノードとしてのフォワーダーやターミナルの業務にも言及している。もっとも、それだけ内容が広くなる半面、個別の問題に対しては浅いアプローチとなるので、それは本書の長所であるとともに短所になりかねない側面である。
 国際物流に関する研究は、その歴史が浅いこともあって理論的にはまだ未確立の分野が少なくない。例えば、国際物流の概念あるいはその枠組みなどについても、なお議論を読んでいる部分が少なくない。これは国際物流にかかわる現実の企業活動の変化が激しく、その理論づけが後追いになるからであるが、経済学などの社会科学が経験科学であるためにやむを得ない現象でもある。
 大学などにおける国際物流の関連講座は、従来、輸送モードを強く意識した場合には交通論、海運論、航空論などとして、またノードの場合には倉庫論や港湾論などとしてアプローチされることが多く、さらに国際貿易活動との関連では、貿易論、外国為替論、海上保険論などのなかでも言及されてきた。ところが、近年は、多国籍企業によるボーダーレス化の進展、ロジスティクス概念の定着、さらにはサプライチェーン・マネージメントの登場などで、国際間の物流問題を多面的にとらえる傾向が強まってきている。そのため従来の口座を統廃合して、国際交通論、国際運輸論、国際物流論、国際ロジスティクス論などの講座名が親切されるようになっている。大学での講座名の変更や見直しは、このような環境の変化に対応しようということの証左であり、他方で、学生に当該講座の存在価値を現代的なセンスでアピールしたいという現実的側面があることも否定しがたい。本書もそのような潮流のなかでアプローチを試みているものである。
 本書は「理論と実務」と称しているように、国際物流に関する基本的な理論に実務を加味した内容としている。実務家でない筆者があえて実務の分野に関与するのは、現在の本務先(港湾職業能力開発短期大学校:港湾短大)における能力開発セミナーとのかかわりからである。このセミナーは、実務に携わっている社会人の方々を対象としたもので、その過程ではまさに「教うるのは学ぶの半ばなり」の貴重な体験を経てきた。それ故、本書は、社会人向けとしては初級程度の読者を意識し、中級程度の読者には国際物流に関する業務の経験や知識を整理することに寄与できれば幸甚と考えている。また国際物流に関する講義用テキストという意味では学生向けであるが、国際物流の実務概説という意味では社会人向けを意識した内容となっている。国際物流とその関連分野に必要な知識を幅広く取り上げているが、これで国際物流のすべてを網羅しているわけではない。20世紀から新たな21世紀を迎えるに当たって、現実の国際物流の実務も著しく変化するからである。またその内容は、本文中に引用した各専門書をはじめ関係業界の方々からのヒアリングによるところが大であり、本書はこういった経緯を経て誕生したものである。
 最後に、本書の出版企画を快く引き受けてくださった成山堂書店の小川實社長をはじめ、出版にいたるまで多々ご協力をいただいた第三編集部に感謝の意を表したい。

鈴木 暁

【目次】 第1章 貿易と国際物流  1.貿易と国際輸送
 2.海上輸送と航空輸送
 3.国際物流におけるリンクとノード
 4.国際物流の当事

第2章 国際物流の現代的特徴  1.グローバリゼーションの段階
 2.多国籍企業の海外進出
 3.企業の海外進出がもたらす功罪
 4.国際物流の構造変化
 5.多国籍企業のロジスティクス戦略
 6.国際物流とアウトソーシング

第3章 国際物流と海運業  1.貿易取引と海上輸送
 2.国際物流における荷主と海運業
 3.国際物流における海運サービス
 4.海運市場の構成
 5.海上荷動きと船腹需給

第4章 定期船海運  1.定期船の概要
 2.定期船市場の特徴
 3.海運同盟の概要
 4.定期船海運とコンテナ輸送
 5.コンテナ化と海運同盟
 6.コンテナ船社再編とコンソーシアムの展開

第5章 定期船海運の実務  1.定期船のブッキング
 2.定期船の運賃
 3.個品運送契約と船荷証券
 4.海上物品運送に関する条約
 5.海上運送状(Sea Waybill)
 6.B/Lの電子証券化

第6章 不定期船海運  1.不定期船海運とその需給状況
 2.用船契約と不定期船運賃
 3.不定期船市場の特徴
 4.インダストリアル・キャリッジ

第7章 航空貨物輸送  1.航空輸送の発展と航空貨物の特徴
 2.航空貨物の輸送事業者と航空フォワーダー
 3.直送貨物と混載貨物
 4.航空運送状と運送責任
 5.航空貨物輸送の運賃
 6.航空会社とIATA貨物代理店間の貨物運賃、料金計算
 7.空港管理

第8章 国際複合輸送  1.国際複合輸送の概念
 2.国際複合輸送の背景と効果
 3.国際複合輸送の担い手
 4.海陸国際複合輸送の主要ルートとその特徴
 5.シー・アンド・エア輸送と主要ルート
 6.複合運送人の責任と複合運送証券

第9章 港湾  1.港湾の概要と機能
 2.港湾運送事業法と港湾労働法
 3.わが国の港湾政策
 4.港湾における情報システム化

第10章 コンテナ輸送とコンテナ・ターミナル  1.コンテナの定義・沿革
 2.コンテナ輸送の展開とその経緯
 3.コンテナの種類とサイズ
 4.コンテナ・ターミナル
 5.コンテナ貨物の積付け

第11章 コンテナ貨物と通関業務  1.輸出コンテナ貨物のルート
 2.輸出コンテナ貨物の通関手続きの緩和
 3.輸入コンテナ貨物の通関
 4.保税制度と保税運送
 5.NACCSによる通関システム
 6.コンテナ自体の通関
 7.日本版AEO
 8.日本版AEO制度

第12章 国際物流とフォワーダー業務  1.フォワーダーの概念と機能
 2.貨物利用運送事業法とフォワーダー
 3.わが国のフォワーダーの現状
 4.欧米のフォワーダー
 5.フォワーダーの経営戦略と3P

【著者略歴】
鈴木 暁(すずき ぎょう)
1940 年東京都生まれ。1963 年法政大学社会学部応用経済学科卒業。
1996 年神奈川大学経済学研究科博士前期課程修了。(財)日本関税協会,
(財)港湾労働経済研究所,東芝情報システム(株)を経て,広島商船高
等専門学校で助教授,教授。その後,港湾職業能力開発短期大学校で教鞭を
とり,現在,日本大学で非常勤講師を勤める。日本港湾経済学会常任理事(2013年1月現在)。
主な著書(いずれも共著)に,『機帆船海運の研究』(多賀出版,1984 年)
『現代海運論』(税務経理協会,1991 年),『国際交通論』(同,1998 年),
『国際物流の経済学』(成山堂書店,1991 年)『現代物流概論』(同,2001 年),
『交通ブックス216 現代の内航海運』(成山堂書店,2007 年)などがある。

恩田 登志夫(おんだ としお) 1958 年東京都生まれ。1981 年東洋大学経営学部商学科卒業。
2001 年法政大学経営学研究科修士課程修了。大韓航空,日本貨物航空?
などを経て,現在,港湾職業能力開発短期大学校横浜校(高齢・障害・
求職者雇用支援機構)能開准教授を勤める。

智田 幹弥(ちだ みきや) 1970 年北海道生まれ。1994 年明治大学商学部商学科卒業。
?ムラチク,?北村回漕店,?日成を経て,現在,港湾職業能力開発
短期大学校横浜校(高齢・障害・求職者雇用支援機構)能開指導員を勤める。
著書(単著)に『輸入食品から学ぶ「貿易と港」の旅』(学事出版2009 年)がある。


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カテゴリー:物流 
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