ガスタービンの基礎と実際


978-4-425-68063-4
著者名:三輪光砂 著
ISBN:978-4-425-68063-4
発行年月日:1996/9/18
サイズ/頁数:A5判 232頁
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コージェネレーションや複合発電で注目されているガスタービンの基礎理論から作動原理、最新の技術、将来動向までをやさしく解説。

【まえがき】より ガスタービンは広義には航空用のジェットエンジンを含み、蒸気タービンや往復動内燃機関に比べ新しい原動機である。
本書で述べる陸・舶用ガスタービンは、発電用、圧縮機・ポンプ駆動用、舶用、車両用など、広い用途に用いられる。うち、いくつかの分野、例えば商船用、自動車などでは実用化が遅れているが、複合(コンバインドサイクル)発電用、熱、電併給(コージェネレーション)用や艦艇用などには急速に実用化が進みつつあり、過去約半世紀にわたるガスタービン発達の歴史の中で、最近の技術進歩の速さには目をみはるものがある。原因は航空用ガスタービンからの技術転移の迅速化、ガスタービンに好適な燃料である天然ガスのパイプラインやLNG輸送による供給の広域化、ディジタル式電子制御装置の普及、計算および計測技術の進歩などに求められようが、振動、NOxなど環境問題におけるガスタービンの優位も無視できない。また、わが国に限ってみれば、いくつかのガスタービン関連国家プロジェクトを核とする官、学とメーカー共同の努力がわが国のガスタービン技術を先進国とそん色のないレベルに引き上げ、中・小出力域では純国産ガスタービンが、国内のみならず海外へも進出しつつある。
 以上の状況をふまえ、本書はガスタービンの作動、構造から保守に至るまでを平易に解説したもので、編集に当たっては次の点に留意した。
1.第1章ではガスタービンの陸・舶用原動機としての認識を深められる
 よう、歴史と現況を述べた。しかし急速に進歩しつつあるガスタービ
 ン技術は、本書の内容を10年を待たず時代遅れのものとするかも知
 れない。
2.第2章には最も多くの頁をさいた。これはガスタービンの特性を知る
 上で重要なためである。ただし、熱流体力学について基礎的な勉学を
 済ませた読者は2.1を省略できよう。サイクル論はわかり易い図式解
 法(以前MITで教材とされていたもの)を多用した。タービン冷却やコ
 ンバインドサイクルについても比較的詳しく解説した。
3.第3〜5章の圧縮機、燃焼器、タービンはガスタービンの基本的構成
 要素であり、記述に当っては重要事項を落とさないよう留意した。た
 だし、構造、強度に関しては、一部を除いて他の専門書に委ねた。
4.第6章付属系統と機器はガスタービンの据付、運転に不可欠のもの
 である。特に燃料についてはガスタービン特有の問題があるため、
 やや詳しく解説した。再生器はガスタービンの主構成要素の一つで
 あるが、近年使用例が少ないためここに含めた。
5.第7章制御では、舶用ガスタービンについて動力伝達方式を含めて
 述べた。
6.第8章材料、加工法は技術開発のめざましい分野であり、なるべく新
 しい情報を取り入れるよう努めた。
7.第9章保守はガスタービンを使用する上での重要性にかんがみ、な
 るべく一般化した形で述べた。
8.単位については世界的に国際単位系(略称SI)に移行しつつあり、
 わが国でもSIが普及しつつある。本書でも一部にSI単位を使用した
 が、主体は従来の工学単位とした。これは計器がいまだほとんどSI
 化されていないなど、現時点では工学単位が実用上便利と考えられ
 るためである。
 上述のように、本書はガスタービンの基礎と併せて実際についての知識を与えることを意図したもので、各章の終わりには正しい知識の習得をチェックする簡単な問題を設けた。
 本書が上述の目的を満すとともに、より高次な勉学への興味を唆るものであれば、これに過ぎる喜びはない。ただし、浅学非才の身で広範囲の内容を盛ろうとしたため、誤りも少なくないことを恐れる。大方のご叱正をお願いする次第である。

昭和63年12月
著者

三訂版発行にあたり
 前回の改訂から2年余を経て、大形発電用ガスタービンについて再び顕著な進歩が見られた。それらを用いるコンバインドサイクル・プラントの熱効率は、最新のプラントで54%前後、新たに着工されるプラントでは58?60%に達した(表1.2-1および2.2.4項)。また、大形発電用以外の分野においても新しい機種の出現や性能の向上があり、それらは表1.2-2、3に記した。

平成8年8月
著者

【目次】
第1章 総論
 1.1 ガスタービンの機能
 1.2 ガスタービンの種類
  1.2.1 開放サイクルと密閉サイクル
  1.2.2 サイクル構成による分類
  1.2.3 軸配列による分類
  1.2.4 産業用と航空転用形
  1.2.5 使用燃料による分類
 1.3 ガスタービンの特徴
 1.4 ガスタービンの発達
  1.4.1 第二次大戦まで
  1.4.2 第二次大戦後

第2章 ガスタービンの熱力学
 2.1 熱力学の基礎
  2.1.1 作動ガスの性質
  2.1.2 ガスの状態式
  2.1.3 比熱
  2.1.4 ガスの一次元流動
  2.1.5 ガスの圧縮・膨張仕事
  2.1.6 断熱効率とポリトロープ効率
  2.1.7 境界層と熱伝達
  2.1.8 マッハ数と衝撃波
 2.2 ガスタービンサイクル
  2.2.1 サイクルの構成要素とその表示
  2.2.2 可逆ガスタービンサイクル
  2.2.3 不可逆ガスタービンサイクル
  2.2.4 コンバインドサイクルとコージェネレーション
  2.2.5 軸配列と部分負荷特性

第3章 圧縮機
 3.1 軸流圧縮機
  3.1.1 軸流圧縮機の特徴
  3.1.2 軸流圧縮機の構造
  3.1.3 軸流圧縮機の作動
 3.2 遠心圧縮機
  3.2.1 遠心圧縮機の特徴
  3.2.2 遠心圧縮機の構造
  3.2.3 遠心圧縮機の性能

第4章 燃焼器  4.1 燃焼器の形式と構造
 4.2 燃焼器の性能
 4.3 燃焼ノズル
 4.4 内筒の冷却
 4.5 低公害燃焼器

第5章 タービン  5.1 軸流タービン
  5.1.1 軸流タービンの構造
  5.1.2 軸流タービンの空力性能
 5.2 ラジアルタービン
 5.3 タービンの高温化と冷却
 5.4 タービンの強度

第6章 付属系統と機器
 6.1 吸・排気系統
  6.1.1 吸気フィルタ
  6.1.2 消音器
 6.2 エンクロージャ
  6.2.1 エンクロージャーの構造
  6.2.2 喚起装置
  6.2.3 防火装置
 6.3 始動装置
  6.3.1 始動入力
  6.3.2 始動機の種類
 6.4 燃料、潤滑油とその系統
  6.4.1 液体燃料の種類と規格
  6.4.2 燃料の前処置
  6.4.3 気体燃料
  6.4.4 燃料系統
  6.4.5 潤滑油
  6.4.6 潤滑油系統
 6.5 熱交換器
  6.5.1 再生器の適用
  6.5.2 再生器の形式と性能
  6.5.3 再生器の実例
 6.6 洗浄装置

第7章 制御
 7.1 1軸ガスタービンの制御
 7.2 2軸ガスタービンの制御
 7.3 舶用ガスタービンの制御

第8章 材料と加工法  8.1 各部の使用材料
  8.1.1 圧縮機
  8.1.2 燃焼器
 8.2 精密鋳造と粉末冶金
 8.3 コーティング
 8.4 特殊加工法
  8.4.1 電子ビーム溶接
  8.4.2 レーザ加工
  8.4.3 放電加工と電解加工
  8.4.4 ろう付と固相拡散結合
  8.4.5 イナーシャ溶接
 8.5 セラミックス

第9章 保守  9.1 保守作業の目的
 9.2 保守の要点
  9.2.1 入口空気フィルタの保守
  9.2.2 圧縮機の洗浄
  9.2.3 異物の吸い込み
  9.2.4 タービン翼の高温腐食
  9.2.5 タービンの焼損
  9.2.6 燃料ノズルの保守
  9.2.7 振動
 9.3 ボースコープほか無開放検査法
  9.3.1 ボースコープ検査
  9.3.2 その他の検査法

(海事図書)


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カテゴリー:船舶(航海・機関・運用) 
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