詳説 舶用蒸気タービン 【上巻】−SIと重力単位系併記−【4訂版】


978-4-425-68045-0
著者名:古川 守・杉田英昭 共著
ISBN:978-4-425-68045-0
発行年月日:2019/12/18
サイズ/頁数:A5判 396頁
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価格¥9,900円(税込)
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熱及び蒸気の性質について基礎から解説し、蒸気タービンの性能までを平易な記述で説明。

【4訂版発行に当たって】 本書が1984 年(昭和59 年)に発行されて今年で35年,3訂版が2007年(平成19年)に発行されてからも12年になります。最初に本書改訂版が発行された1996年(平成8年)は,舶用蒸気タービンがLNGタンクから漏れ出すボイル・オフ・ガスBOGを有効活用でき,またそれを有効に処理できる最も適した主機関として,LNG船に独占的に採用されていた時代でした。
しかし,2010年頃から燃料価格が高騰し,主機関の燃料消費率がより重要視されるようになり,経済性の観点からLNG船用に開発されたディーゼル機関が出現しました。それは,中速4ストローク二元燃料ディーゼル機関・電気推進プラントDFDEです。また同時期に,一般大型商船に採用されている2ストローク低速重油専焼ディーゼル機関DRLが,海外の多くのLNG船に搭載されるようになりました。しかし,DRLは高効率であるが重油専焼のためBOG対策として,LNG再液化装置やガス燃焼装置を設置しなければならず,また冗長性を高めるために2基搭載する必要があります。
LNG船用再熱再生蒸気タービンURAやUST,およびDFDEやDRLに対抗するように,新しく高圧燃料噴射の低速2ストローク二元燃料ディーゼル推進プラントME-GIが開発され,続いて低圧燃料噴射の同型式の推進プラントX-DFも追いかけるように開発されました。
このようなLNG船の主機関争いの中,世界で2 社のみの舶用蒸気タービンメーカ,川崎重工業(株)と三菱重工業(株)はともにURAやUSTのさらなる性能改善に取り組んできました。とくに近年,三菱重工業(株)は,蒸気タービン・二元燃料ディーゼル機関ハイブリッド推進プラントというユニークなプラントSTaGEを開発して,その搭載台数を急速に伸ばしています。
このような背景のもとで4訂版を発行することになり,舶用蒸気タービンについて初めて学ぶ学生はもちろん,現場で取扱いや設計・製造に従事している社会人に対しても,十分に応え得るよう内容をさらに充実させました。
まず,「第1章 慣用単位系とSI(国際単位系)」を大幅に書き直しました。SI については,7個の基本単位のうち「時間」「長さ」「光度」を除く4個の基本単位「質量」「電流」「物質量」「熱力学温度」を再定義するなどの大規模な改定が2019年(令和元年)5月に実施されたためです。特記すべきは,人工物で定義されていた質量の単位「キログラム」がプランク定数に基づいて再定義されるという130年ぶりの大改定です。また,「第2章 熱」の内容も一部書き直しました。さらに,「第3章 蒸気の性質」では,これまでの「1980 SI 日本機械学会蒸気表」の数値から「1999日本機械学会蒸気表」の数値に変更しました。
なお,今回本書と同時に下巻3訂版も発行しました。同書では,「序章 LNG船用蒸気タービンプラント」を,多くの最新情報などでより充実した内容にしました。また,第17章の「新開発の排熱回収プラント」に,「商船三井・三菱重工舶用機械エンジン・名村造船所による排熱回収システム(MERS)」および「川崎重工業社による排熱回収システム(K-GET)」を新たに掲載しました。
本書の執筆に際しては,内外の書籍,論文,カタログ,取扱い説明書などを参考にさせていただきました。これらの著者ならびに各社に対して深甚の謝意を表明します。なお,著者の一人と舶用蒸気タービンを通しての50年来の友人である,元 川崎重工業(株)機械ビジネスセンター技術総監 堀家 弘(ヒロム)氏には一方ならぬお世話になりました。心よりお礼申し上げます。
また,本書4訂版の発行を勧めていただいた(株)成山堂書店 小川典子社長に深甚の謝意と敬意を表明します。そして,今回の改訂作業において大変お世話になった編集グループの皆様に、心よりお礼申し上げます。
最後に,本書がここまで長年発行を続けることができたのも読者の皆様のご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。本書の内容について不備の点もあるかと思いますが,皆様のご批判とご叱正をいただければ幸いです。

2019 年(令和元年)11 月
著者識

【目次」
第1章 慣用単位系とSI(国際単位系)
 1・1 まえがき
 1・2 基本単位と組立単位
 1・3 絶対単位系
 1・4 重力単位系
 1・5 SI(国際単位系)
 1・6 物理量の次元
 1・7 主要な組立単位
 1・8 単位換算
    演習問題

第2章 熱
 2・1 温度と熱量
  2・1・1 温度の単位
  2・1・2 熱量の単位
  2・1・3 熱力学の第ゼロ法則
 2・2 熱力学の第一法則
  2・2・1 熱力学の第一法則
  2・2・2 内部エネルギ
  2・2・3 エンタルピ
2・2・4 熱力学の基礎式
2・3 ガスの性質
  2・3・1 ボイルの法則
  2・3・2 シャールの法則
  2・3・3 完全ガス(理想気体)の状態式
  2・3・4 アボガドロの法則
  2・3・5 キロモルと一般ガス定数
  2・3・6 定容比熱と定圧比熱
 2・4 ガスの状態変化
  2・4・1 絶対仕事と工業仕事
  2・4・2 等温変化
  2・4・3 等圧変化
  2・4・4 等容変化
  2・4・5 断熱変化
  2・4・6 ポリトロープ変化
 2・5 混合ガスの性質
  2・5・1 ダルトンの法則
  2・5・2 混合ガスの密度と分子量
  2・5・3 混合ガスのガス定数
  2・5・4 混合ガスの比熱
 2・6 熱力学の第二法則
  2・6・1 熱力学の第二法則
  2・6・2 カルノーサイクル
  2・6・3 エントロピ
  2・6・4 温度・エントロピ線図
  2・6・5 熱力学の第三法則
 2・7 伝熱
  2・7・1 伝熱(熱移動)
  2・7・2 熱通過(熱貫流)
  2・7・3 伝熱に関する無次元数
      演習問題

第3章 蒸気の性質  3・1 蒸気とガス
 3・2 一定の圧力のもとにおける蒸発および臨界状態
 3・3 飽和水,飽和蒸気および過熱蒸気の状態量
  3・3・1 状態量の基準
  3・3・2 飽和水
  3・3・3 飽和蒸気
  3・3・4 過熱蒸気
 3・4 蒸気表および蒸気線図
  3・4・1 蒸気の状態式
  3・4・2 蒸気表
  3・4・3 蒸気線図
 3・5 蒸気の状態変化
  3・5・1 等圧変化
  3・5・2 等温変化
  3・5・3 等容変化
  3・5・4 断熱変化
  3・5・5 等かわき度変化
  3・5・6 絞り
      演習問題

第4章 蒸気サイクル  4・1 カルノーサイクル
 4・2 ランキンサイクル
  4・2・1 ランキンサイクルの理論熱効率
  4・2・2 蒸気の初圧,初温度および背圧が理論熱効率におよぼす影響
 4・3 再熱サイクル
  4・3・1 再熱サイクルの理論熱効率
  4・3・2 最適再熱圧力
  4・3・3 初圧,初温度,背圧および再熱段数が理論熱効率におよぼす影響
 4・4 再生サイクル
  4・4・1 再生サイクルの理論熱効率
  4・4・2 再生サイクルの最適抽気点の選定
  4・4・3 初圧,初温度,背圧および抽気段数が理論熱効率におよぼす影響
 4・5 再熱再生サイクル
    演習問題

第5章 蒸気タービンの基本形式および分類  5・1 概 要
 5・2 蒸気タービンの作動原理
  5・2・1 蒸気噴流の平板および半円形翼への作用
  5・2・2 衝動力と反動力
 5・3 蒸気タービンの基本形式
  5・3・1 単式衝動タービン
  5・3・2 速度複式衝動タービン
  5・3・3 圧力・速度複式衝動タービン
  5・3・4 圧力複式衝動タービン
  5・3・5 軸流反動タービン
  5・3・6 半径流反動タービン
 5・4 蒸気タービンの分類
  5・4・1 蒸気の作用による分類
  5・4・2 蒸気の流動方向による分類
  5・4・3 動翼を通る蒸気流の繰返しによる分類
  5・4・4 車室の数とすえ付配置による分類
  5・4・5 蒸気の使用法や排気条件などによる分類
  5・4・6 用途による分類
 5・5 衝動タービンと反動タービンの比較
    演習問題

第6章 ノズル(または静翼)および動翼を通る蒸気の流れ  6・1 ノズル内蒸気流動の基礎式
 6・2 蒸気の膨脹による理論速度,流量および所要断面積
  6・2・1 理論蒸気速度
  6・2・2 蒸気流量および所要断面積
  6・2・3 臨界圧力
 6・3 ノズルの形状
  6・3・1 蒸気が可逆断熱膨脹をする場合のノズルの形状
  6・3・2 先細ノズルと末広ノズル
 6・4 実際のノズル内での蒸気の膨脹
  6・4・1 ノズルの速度係数,ノズル効率および流量係数
  6・4・2 超過膨脹と不足膨脹
  6・4・3 蒸気の過飽和
  6・4・4 湿り蒸気の膨脹による流量変化と速度係数
  6・4・5 気流の偏向
 6・5 動翼内の蒸気流動
    演習問題

第7章 段落線図効率  7・1 速度線図
 7・2 蒸気が動翼にする仕事
 7・3 単式衝動タービン
  7・3・1 線図効率
  7・3・2 翼効率および線図損失
 7・4 速度複式衝動タービン
  7・4・1 線図効率
  7・4・2 動翼の仕事配分
 7・5 圧力複式衝動タービン
  7・5・1 単式衝動タービンとの比較
  7・5・2 線図効率
 7・6 軸流反動タービン
  7・6・1 線図効率
  7・6・2 パーソンスタービン
 7・7 半径流反動タービン
  7・7・1 静翼を有する半径流反動タービン
  7・7・2 ユングストロームタービン
 7・8 各形式のタービンの比較
    演習問題

第8章 諸損失  8・1 内部損失
  8・1・1 線図損失
  8・1・2 蒸気の動翼入口端への衝突による損失
  8・1・3 蒸気中の水滴の制動作用による損失
  8・1・4 ノズルと動翼との軸方向隙間および両者の寸法差による損失
  8・1・5 内部漏えい損失
  8・1・6 回転損失
 8・2 外部損失
  8・2・1 外部漏えい損失
  8・2・2 機械損失
  8・2・3 最終段からの排気損失
  8・2・4 ふく射および伝導による損失
 8・3 負荷による損失の変化および各損失比と損失分布
    演習問題

第9章 蒸気タービンの性能  9・1 諸効率
  9・1・1 段落線図効率
  9・1・2 内部効率および再熱係数
  9・1・3 機械効率
  9・1・4 有効効率
  9・1・5 熱効率
  9・1・6 舶用蒸気プラントの全熱効率
 9・2 蒸気消費率および熱消費率
 9・3 パーソンス数
 9・4 負荷が変化したときの性能
   9・4・1 初圧,背圧および蒸気流量の関係(Stodola の楕円則)
  9・4・2 ウイランス線と蒸気消費率曲線
  9・4・3 タービンの出力調整
 9・5 限界出力
    演習問題

付表1 飽和表(温度基準)
付表2 飽和表(圧力基準)
付表3 圧縮水表および過熱蒸気表
付図1 蒸気T-s線図
付図2 蒸気h-s線図
付図3 蒸気h-P線図

(海事図書)


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