魚の心をさぐる−魚の心理と行動− ベルソーブックス026


978-4-425-85251-2
著者名:益田玲爾 著
ISBN:978-4-425-85251-2
発行年月日:2007/12/28
サイズ/頁数:四六判 156頁
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価格¥1,760円(税込)
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魚は何を思い、何を感じて行動しているのか?
群れをつくるしくみは?学習能力は?
さまざまな疑問の解明に新たなアプローチで挑む!

【はじめに】より
 ハワイの研究所に勤めていた頃、はわい大学動物学部の大学院生と話をする機会があった。サンゴ礁魚類の行動生態学でもうすぐ学位を取るというカート君は、筆者の話を聴き終えてひと言、「あんたのやっている研究は、行動学というよりはむしろ心理学だね」。彼の言葉が、それまで自分のなかでモヤモヤと立ちこめていた霧を晴らしてくれたように思う。
 「そうだ、Fish Psychologyと称してみよう」
 魚類心理学という名称は、バーベキューの合間の雑談から、そんな風にして生まれた。
 川遊びに明け暮れていた少年期の延長で、大学に入ってからはダイビングにのめり込み「食う・寝る・潜る」とあだ名を付けられ、下宿で海水魚を飼って大家さんのひんしゅくを買っていた筆者であるが、まがりなりにも魚の行動の研究者を名乗れる身分となった。しかし研究を進めるほどに、自分の興味や目指すものが、従来の研究者と微妙に異なることに気付き始めた。魚の行動の背後にある、からくりが知りたい。それを実験で確かめてゆきたい。そんな研究分野に対する呼び名として、「魚類心理学」はしっくりくるものがあった。
この本は、生まれて間もない魚類心理学という研究分野の入門書だ。この道の専門書は、まだない。それでも、京都大学フィールド科学教育研究センター(以下、京大フィールド研)の舞鶴水産実験所には、自称「魚類心理学」研究室(略して魚心研)がある。そして大学院生たちも、魚心研の一員として、日夜研究というゲームに励んでいる。
 本書では、そんな魚類心理学の研究の一端を紹介しようと思う。ヒトの心理学がヒトを観察することから始まるように、魚類心理学も、まずは生きた魚を観察することに始まる。そこで第1章では、潜水観察中にひろい集めた諸々の話題から筆を起こす。第2章以降では、筆者が大学院生の頃、手探りで取り組んだ魚の群れについての研究や、逆に筆者のアドバイスの下で京大の学生が進めている魚の学習能力、紫外線の影響といった最新の研究について述べる。
 魚たちの行動や生態についての研究は、それ自体、わくわくするほどおもしろい。読者の皆様には、そんなわくわくを追体験していただき、海と魚について、思いを巡らすきっかけとしていただければ幸いである。
 ようこそ、魚類心理学の世界へ。

平成18年5月
著者

【目 次】
第1章 潜ってから考える
 1-1 海の中にも四季がある
 1-2 舞鶴湾の四季の面々
 1-3 魚たちの夜のいとなみ
 1-4 魚たちにとっての地球温暖化

第2章 魚の群れの発達心理学
 2-1 魚はなぜ群れる?
 2-2 きれいに並んで泳げる秘密
 2-3 脅威の反射神経
 2-4 シマアジの行動特性の発達
 2-5 群れ行動の発現とドコサヘキサエン酸
 2-6 DHAの脳への取り込み
 2-7 視蓋の発達
 2-8 天然でDHA欠乏は生じうるか?

第3章 魚の心と栽培漁業
 3-1 栽培漁業って何だ?
 3-2 シマアジを飼い慣らす
 3-3 アカアマダイ,穴を掘
 3-4 ハワイで栽培漁業

第4章 魚の学習能
 4-1 魚はどれほど賢いか?
 4-2 若い魚は賢いか?
 4-3 DHAを食べた魚は頭が良くなるか?

第5章 魚の心から海の資源の未来をうらなう
 5-1 海の中は下克上
 5-2 クラゲが増えて笑う魚と泣く魚
 5-3 アジとクラゲの熱い関係
 5-4 クラゲはほんとに増えているか?
 5-5 魚もUVケア

第6章 魚を学び魚に学ぶ
 6-1 魚の攻撃性
 6-2 魚が人類を作った
 6-3 ヒラメはなぜ寄り目になったのか?
 6-4 魚の住みかを木でつくる


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