さしみの科学−おいしさのひみつ− ベルソーブックス023


978-4-425-85221-5
著者名:畑江敬子 著
ISBN:978-4-425-85221-5
発行年月日:2006/9/28
サイズ/頁数:四六判 168頁
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価格¥1,760円(税込)
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「さしみ」や「すし」はなぜおいしい?
旬のテクスチャーなど、ナマの魚介類には欠かせない、
おいしさのひみつを科学的に解明する。

【はじめに】より
初めて訪れた土地の食品市場やスーパーマーケットへ行くと、ワクワクする。日本国内でも外国でも同じである。旅行の楽しみは人によってそれぞれと思うが、どうやらこれは私だけではないらしい。
私は調理学を専門にしているので、同じ仲間と外国へ旅行すると、必ずそこのスーパーマーケットへ行く。その地域の人々が、どんなものを食べているか興味津々なのである。外国へ旅行するチャンスがそんなにあるわけではないが、野菜、果物、魚介、肉、ハム、チーズ、パン・ペストリー、菓子、テイクアウト総菜などを見ていると、日本と同じ物を見つけたり、日本では見られない食材の種類の多さに驚いたりする。 とくに魚介類の扱いは日本の常識とはかなり違う。
カルフォルニアのスーパーマーケットでは、魚はどれもが表皮をとられた三枚におろされた状態で売られていた。これではナマズもタラも同じ白身魚にしか見えない。お客は区別がつくのか、それともその必要はないのだろうか? フランスではギルビネックという海辺の町の魚市場をのぞいてみた。日本の小都市の市場とあまり変わらないが、やはり水揚げされる魚は少々違う。ドイツとの国境近く、ライン川のほとりにある内陸部の町ストラスブウールの朝市に行った。肉屋は何軒もあって賑やかなのに、魚屋はわずかでお客も少ししかない。魚は金曜日に食べるというキリスト教の習慣のせいだろう。オランダのハーグでは海辺のレストランで若い女性がかかえるようにして鍋一杯のムールガイを平然と食べていた。これが一人分というから驚く。モスクワではチョウザメのながーいのが何本も並んでいた。キャビアの親が売られるとはさすがロシアである。シンガポールではマダイを一回り大きくしたような魚の頭だけを売っていた。フィッシュカレーにするということである。中国料理の草魚もここではありふれた魚であった。
しかし、どの国も日本の魚市場や小売りの魚売り場には及ばない。売り場面積の広さ、魚介の種類の多さ、さらには食べ方の多様さは日本が一番である。東京中央卸売市場、通称築地の魚市場は外国人が見学・観光に訪れる名所となっている。多分欧米人が日本にきたら、肉類の種類と食べ方のバリエーションがないことに、同じような感想を持つことだろう。  日本人は昔から海の幸の恩恵を受けてきたが、それでも今ほど豊富に魚介類を食べられたわけではない。養殖・冷凍・輸送などの技術が発達した比較的最近になってからである。今日、海から離れた地方でも、全国どこでもおいしい魚介を食べられることに感謝したい。
新鮮な魚介類を生で食べるという食文化は、日本人の食生活で際立った特徴といえる。魚食の良さがあらためて見直されている今、さしみの科学を考えてみたいと思う。

【目次】
第1章 魚の生食−今昔−
 1-1 万葉集に詠まれていた生魚の調理
 1-2 各国の生食料理−国際的な料理になったすし
 1-3 生の魚介類でサラサラ血液に
  (1)さしみはEPA・DHAの宝庫
  (2)エキスの機能性成分
  (3)貝類にも老化
   Study1 水産物の分類と呼び名

第2章 魚介類の鮮度
  2-1 魚の「活き」の保持と適した調理法
  (1)活きが良いほど価値が高い
  (2)鮮度保持に適した温度
 2-2 鮮度の測り方
  (1)経験的な見分け方
  (2)鮮度判定シートで測る
  (3)機器で魚の硬さをを測定する
  (4)魚の鮮度は「K値」でわかる
  (5)「腐っても鯛」をK値で確かめる
   Study2 K値以外の鮮度の測り方
 2-3 魚の鮮度と肉の硬さ
  (1)魚の筋肉の構造
   Study3 筋肉の種類
  (2)筋肉軟化のメカニズム1ータンパク質の分解
   Study4 筋原線維の主なタンパク質
  (3)筋肉軟化のメカニズム2ーコラーゲンの変化

第3章 おさしみを科学する
 3-1 生の魚は「味」より「テクスチャー」
  (1)なぜ魚介類は生で食べられるのか
  (2)生食はテクスチャーが重要
 3-2 活けしめ後8時間が一番おいしい
 3-3 魚種別のテクスチャーとコラーゲン
 3-4 魚介類の旬
  (1)俳句と魚介類の旬
  (2)魚介類のゆんと脂ののり
   Study5 出世する魚たち
  (3)マガキ、ホタテガイの旬
   Study6 ホタテガイとイタヤガイ
  (4)アワビの旬
   Study7 古くから食用とされた貝
 3-5 貝のテクスチャーと筋肉の構造
  (1)旬のアワビの組織構造
  (2)ミルクイ(ミルガイ)と代替品ナミガイのテクスチャー
 3-6 イカの筋肉構造とテクスチャー
  (1)アオリイカ、スルメイカ、ヤリイカのおいしさ対決
  (2)イカの貯蔵とテクスチャー
  (3)なぜ焼きイカは反り返るのか
  (4)イカの体色の死後変化
  (5)さきイカになる筋肉構造
 3-7 生ウニを長持ちさせる
  (1)生で食べるのは日本だけ
   Study8 アリストテレスの『動物誌』
  (2)ミョウバン水処理で長持ちする生ウニ
 3-8 珍味! ナマコとホヤ
  (1)ナマコは冬が旬
  (2)夏が旬のホヤ

第4章 さしみ
 4-1 さしみの語源
 4-2 さしみに切る
  (1)魚の種類と切り方
  (2)コラーゲンとテクスチャー
 4-3 さしみ包丁
   Study9 包丁は伝説の名人の名?
 4-4 さしみの盛り付けー合理的かつ美しくー
 4-5 加熱して作るさしみー霜降り、湯振りー
 4-6 さしみの「つま」と「けん」
   Study10 ワサビや大根おろしを辛くする方法
 4-7 さしみのパートナー「醤油」
 4-8 さしみのおいしい食べ方
   Study11 冷凍マグロのおいしい解凍

第5章 あらい、たたき、すし
 5-1 あらい
  (1)あらいになる魚介
  (2)洗う水の温度
  (3)急速凍結ー解凍の硬直で作るあらい
  (4)なぜあらいになるのかー収縮のメカニズム
 5-2 たたき
  (1)カツオのたたき
   Study12 江戸時代のカツオの食べ方
  (2)アジのたたき
 5-3 すし(鮓、鮨)
  (1)すしの原点は発酵食品ーなれずし、いずしー
  (2)酢飯を使う早ずし
 5-4 酢でしめる魚介類
  (1)なぜ酢でしめるのか
  (2)しめさば
  (3)ひず(氷頭)なます
   Study13 サケ軟骨の組成の変化

第6章 魚介類の高付加価値化とトレーサビリティ
 6-1 魚介類の高付加価値化とブランド魚
   Study14 ブランド魚の定義
 6-2 トレーサビリティとICタグ
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