エビ・カニはなぜ赤い−機能性色素カロテノイド− ベルソーブックス


978-4-425-85191-1
著者名:松野隆男 著
ISBN:978-4-425-85191-1
発行年月日:2004/8/28
サイズ/頁数:四六判 172頁
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β-カロテン、リコペン、アスタキサンチンなど、最近脚光を浴びてきた赤い色素カロテノイド。
その有用性と魚介類との不思議な関係。

【はじめに】より
ペットブーム 言われる昨今、犬や猫を飼われている方も多いと思う。しかし、彼らは飼い主と同じ世界を見ているわけではない。意外と思われるかもしれないが、ヒトとサル以外の哺乳類はほとんど色の感覚をもっていない。明暗の識別しかできない、モノトーンの中に生きているのである。
これにひきかえ、多くの魚類や鳥類、昆虫類などは色彩の世界を感覚できる。そのため、魚類やその他の水生生物の中には特に色彩の鮮やかなものが多い。例えば、マダイ、金魚、錦鯉などの魚類やサンゴ、ウニ、ヒトデ、エビ、カニなどの無脊椎動物にも上記魚類と同様体色の鮮やかなものが多い。
これら水生生物の色の本体は化学的にはカロテノイド、胆汁色素、プテリジン、メラニン、ヘム色素、キノン、クロロフィルなどの色素である。これらの中では、メラニンとカロテノイドが魚介類の色の発現に最も大きく関係しているが、本書ではこのところ注目を集めるようになった「カロテノイド」について述べる。カロテノイドの代表的なものには、多くの人びとに名前が知られるようになったβーカロテン、リコペン、アスタキサンチンなどがある。
この20〜30年の間、カロテノイドに関する研究が各方面で積極的に行われている。その結果、カロテノイドがガンや老化を引き起こす生体に有害な活性酸素を取り除く働きのあることがわかり、その重要性が認められ、急に脚光を浴びるようになった。
現在までに約650種のカロテノイドが見つかっている。しかし、これまではカロテノイドの約10%がビタミンAの前駆体(体の中でビタミンAになる)いわゆるプロビタミンAとして認められていただけで、その他大部分のカロテノイドは何の役にもたたない単なる色素と見なされていた。その働きや作用についてほとんどわかっていなかったからである。しかし、現在ではβーカロテンは緑藻の一種ドナリエラから、リコペンはトマトから、アスタキサンチンはオキアミや緑藻ヘマトコッカス、酵母ファフィアなどの天然生物より大量生産されるようになってきた。
このカロテノイドとは一体どういうものなのだろうか。自然界で、特に海や河川などの水圏でどういう分布をし、どのような化学構造のものが存在しているのか、それらの役割、生体内の代謝、そしてプロビタミンAとしての働き、ビタミンAの前駆体になるカロテノイドの拡大的解釈、さらに水産上有用なマダイ、ブリ、クルマエビ、サケ、マス、金魚、錦鯉、アユなどの色揚げへの応用について述べる。またカロテノイドがどのような生理活性をもっているのか、それらの抗酸化作用およびガンの化学的予防効果についても触れていく。

2004年7月
著者

【目次】
第1章 水生生物の色を探る
 1-1 光の吸収と魚の色
  (1)物の色
  (2)光と魚の体色の関係?棲んでいる水深と色?
  コラム 魚の色覚?紫外線は何色??
 1-2 水生生物の色?生態色素?
  (1)メラニン?養殖マダイの日焼け?
  (2)プリン類?タチウオの銀白色?
  (3)オモクロム?ゆでダコが赤くなるわけ?
  (4)ヘム色素?マグロの赤身?
  (5)クロロフィル?猫に食わすなアワビの緑の肝?
  (6)胆汁色素?サバの青い肌?
  (7)キノン類?ウニ・ナマコの赤褐色?
  (8)カロテノイド?微生物からエビ・カニ・ニンジンまで?
 1-3 真珠貝の虹色?構造色(幻色)?
 1-4 深海に灯る明かり?生物発光?
   コラム 変幻自在!魚の体色

第2章 カロテノイドという色素?その生理機能と有用性?
 2-1 カロテノイドとは何か
  (1)どちらが正しい?カロチンとカロテン
  (2)カロテンはキャロット(ニンジン)から
  (3)カロテノイドの構造
  (4)カロテノイドを色分けする
   コラム 酸素は体に悪い!?
 2-2 カロテノイドと健康増進
  (1)体の中でビタミンAになる
  (2)ビタミンBの1000倍!抗酸化作用
  (3)ガン予防効果の真偽
  (4)強力な抗ガン活性
  (5)光過敏症の予防と治療
  (6)前立腺ガンと老人性網膜黄斑変性症の予防
 2-3 養殖魚に色をつける
 2-4 卵はなぜ赤っぽい色なのか

第3章 微生物・藻類のカロテノイド
 3-1 アスタキサンチンを作る海洋細菌
 3-2 藻類を含まれるカロテノイド
  (1)微細緑藻の石油王
  (2)陸上植物の先祖は緑藻
  (3)ワカメは茹でると緑になる?褐藻?
  (4)色とりどりの紅藻
   コラム 赤いカキ

第4章 無脊椎動物のカロテノイド
 4-1 海綿動物?特異な構造のカロテノイド?
 4-2 海に咲く花,イソギンチャク・クラゲ?腔腸動物?
 4-3 貝類(軟体動物)
  (1)二枚貝
  (2)巻き貝
 4-4 エビ・カニはなぜ赤い?節足動物(甲殻類)?
  (1)エビ・カニの色素はカロテノプロテイン
  (2)青いエビ
  (3)フナムシのカロテノイド
 4-5 ウニ・ナマコ・ヒトデ?棘皮動物?
  (1)ウニの生殖巣と殻の色
  (2)変化に富むナマコの色
  (3)ウミシダとウミユリの仲間
  (4)さまざまな色の海の星?ヒトデ・クモヒトデ?
 4-6 ホヤの仲間?原索動物?

第5章 魚類のカルテノイド
 5-1 魚の進化と系統分類
 5-2 淡水魚のカロテノイド
  (1)アユの黄斑
  (2)アマゴとヤマメ?朱赤点の研究?
  (3)ナマズの卵は緑黄色
  (4)ブラックバス?湖のギャングの特異な色素?
  (5)ティラピアの赤はイチイの実の赤
   コラム 色に迷う?魚の婚姻色
 5-3 汽水・海水魚のカロテノイド
  (1)サケのサーモンピンクとは?
  (2)餌とともに変わるボラのカロテノイド
  (3)赤くならなかったブリ(ハマチ)
  (4)養殖マダイの日焼け防止
 5-4 カロテノイドで淡水魚・海水魚を分類できるか
  (1)淡水の魚を調べる
  (2)汽水域・海の魚を調べる
   コラム クジラとオキアミとアスタキサンチン

第6章 魚をより赤く,美しく?綿鯉,金魚,アユ,マダイ,ブリ,サケ?
 6-1 綿 鯉
  (1)綿鯉のカロテノイド
  (2)綿鯉の色揚げに最適なカロテノイドとは
  (3)藻を使った色揚げ?スピルリナ,クロレラ,アオコなど?
  (4)水作りと色揚げ
  (5)退色防止
  (6)色揚げ飼料の保存
   コラム 綿鯉の黄金時代
 6-2 金 魚
  (1)金魚を赤くする
  (2)赤いトウガラシで色揚げ
 6-3 養殖アユに化粧する
 6-4 マダイ,ブリ,サケを鮮やかに
  (1)マダイ
  (2)ブリ・シマアジ
  (3)ギンザケ・ニジマス


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