環境ホルモンと水生生物 ベルソーブックス019


978-4-425-85181-2
著者名:川合真一郎 著
ISBN:978-4-425-85181-2
発行年月日:2004/12/18
サイズ/頁数:四六判 172頁
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価格¥1,760円(税込)
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オスの魚がメス化し、メスの貝がオス化する!オスになれないワニ、子どもを産めないアザラシ、殻が薄く壊れやすい卵を産むワシやタカ!
内分泌錯乱物質、いわゆる「環境ホルモン」の問題は始まったばかりなのだ。

【はじめに】より
 わが国では1996年ごろから内分泌撹乱物質についての報道が始まったが、その辞典ではまだ“内分泌撹乱物質”という言葉も定着していなかったし、まして“環境ホルモン”という単語も誕生していなかった。ところが1997年に入ってからは連日のように、“環境ホルモン”に関する新聞、テレビの報道はパニック的ともいえるほどの状況を呈した。さらに書店での“環境ホルモン”コーナーの活況ぶりはすさまじいものがあった。
 1998年に入ると、既存の学会によるシンポジウムが開催され、内分泌撹乱物質学会も創立された。1998年12月に京都で、そして2000年1月には神戸で、2001年12月は横浜で、2002年11月は広島で通称、国際環境ホルモン学会が開催された。また、2002年11月に横浜で、SCOPE(国際学術連合評議会環境問題科学委員会)とIUPAC(国際純正応用化学連合)の主催で内分泌活性物質国際シンポジウムが開催された。これらの学会や国際シンポジウムで内分泌撹乱現象の因果関係などについて白熱した議論が交わされた。
 諸外国ではどのような反応があったのだろうか。1980年代の半ばから、環境中の化学物質がヒトや野生生物の内分泌系、とくに生殖に関わる内分泌系に悪影響を及ぼしている可能性が指摘されるようになった。1991年7月には米国ウイスコンシン州ウイングスプレッドで開かれた会議において、野生生物およびヒトにおける内分泌撹乱現象とその原因物質が取り上げられ、この分野の調査研究の必要性についての声明、いわゆる「ウイグスプレッド宣言」が発せられた。1995年に米国で『Our Stolen Future』(邦名『奪われし未来』)がゴア副大統領による序文を付されて出版され、内分泌撹乱物質に対する関心が内外で一挙に高まった。
 しかし、頭を冷やして考えるならば、この内分泌撹乱物質の問題は約10年前から急に降って湧いてきたことなのだろうか。またマスコミのみならず学識経験者も含めて、内分泌撹乱現象の因果関係について早とちりをしていないだろうか。
 1999年の後半からはマスコミによる報道は大幅に減少し、世間一般の関心もやや薄れ、内分泌撹乱物質問題は落着したかのように見受けられる面もある。確かに、過熱気味の取り上げ方が先行すると問題の本質を見失う恐れがある。しかし、この内分泌撹乱物質問題はこれまでの環境毒性学分野において、視点が希薄もしくは欠如していた部分であり、環境科学の中で今後の重要課題の一つとして位置付けられるべきものである。したがって、この問題が「尻すぼみ→うやむや」のうちに終焉してしまうことがないように、これまでの知見を整理し、今後の課題を明らかにしておくことは非常に重要なことなのである。
 本書をまとめるにあたり、熊本県立大学の大和田紘一先生、九州大学農学部の大嶋雄二先生には原稿を読んでいただき、種々のアドバイスをいただいた。また、(株)成山堂書店の編集部には平易な文章とするよう助けを借りた。これらの方々に対して心からの謝意を申し上げたい。

2004年11月
著者

【目次】
第1章 なぜ内分泌錯乱物質が大問題になるのか
 1-1 問題の発端?成人男子の精子が半減??
 1-2 内分泌錯乱物質現象はいつからあったのか
  Study1 エストロゲン
  Study2 Allen-Dousyテスト
 1-3 安全な環境とは何か
  Study3 エストロゲン様の作用がある物質

第2章 ホルモンの役割
 2-1 内分泌錯乱化学物質と環境ホルモン
 2-2 ホルモンの種類
 (1)ホルモンの役割
 (2)ホルモンの種類と機能
 (3)骨粗しょう症とホルモン
 2-3 ホルモン作用のメカニズム
 (1)水溶性ホルモン
 (2)脂溶性ホルモン
 (3)エストロゲンを生産するガン腫瘍
 2-4 内分泌錯乱のメカニズム
 (1)ホルモンレセプターと結合して異常を起こす
 (2)ホルモンレセプターと結合せずに異常を起こす
  Study4 多環芳香族炭化水素(PAH)
 2-5 薬物代謝酵素と内分泌錯乱現象
 (1)薬物代謝
 (2)薬物代謝酵素?チトクロムP450
  Study5 チトクロムP450(CYP)
 (3)P450を増加させる物質
 (4)Ahレセプターが関わる内分泌錯乱現象
  Study6 Hsp(heat shock protein)とシャペロン(chaperone)
 (5)魚類の薬物代謝酵素

第3章 水中の生き物と内分泌錯乱現象
 3-1 雄の魚が雌のタンパク質を作る
 (1)卵のタンパク質のもとはビテロゲニン
 (2)雄魚のVTGが1万倍に増加する川
 (3)野生のヌマガレイから10万倍のVTG濃度
 (4)日本の魚類から検出されたVTG濃度
 (5)雄にVTGを誘導・合成させる物質
  Study7 トゲウオ(イトヨ,トミヨ,ハリヨなど)
 (6)魚類のVTGに関する今後の課題
 (7)殺虫剤,重金属による影響
 (8)トリブチルスズ(TBT)の影響
 (9)早熟と性転換の仕組み
  Study8 魚の性転換
 3-2 雌の巻貝にペニスが?インポセックス現象?
 (1)インポセックス現象とは
 (2)インポセックスと有機スズ化合物
 (3)アワビでも雄化現象が
 (4)TBTを分解するバクテリア
 (5)インポセックス現象の問題点
 3-3 甲骨類の内分泌錯乱現象
 (1)甲骨類の脱皮をつかさどるホルモン
 (2)動物プランクトンに雄と雌の中間が現れた
 (3)TBTで雌化するワレカラ
 (4)低濃度の殺虫剤で産卵現象が
  コラム 植物エストロゲンと昆虫
 3-4 雄になれないワニ?フロリダのアリゲーター?
  Study9 ステロイドをもってステロイドを制す
 3-5 アザラシに子どもが生まれない?海産哺乳類への影響?
 (1)アザラシの子宮が閉塞する
 (2)頭蓋骨に穴があく
 (3)免疫機能の低下とウイルス性疾患
 (4)イルカにも性ホルモン代謝異常が
 3-6 内分泌錯乱物質の影響と個体差
 (1)遺伝的要因と生化学的要因
 (2)生理学的要因
  コラム 歌を覚えたカナリアは?

第4章 水環境における内分泌錯乱物質
 4-1 環境ホルモン作用が疑われる化学物質
 (1)化学物質リストの問題点
 (2)日本とドイツのリストの比較
  Study10 バイオアッセイ
 4-2 水中の内分泌錯乱物質の濃度
 (1)疑惑の物質は身近にある?
 (2)魚類と水・泥の濃度
 (3)界面活性剤(合成洗剤)の原料アルキルフェノールの濃度
 4-3 水環境中の女性ホルモン
 (1)なぜ水中に女性ホルモンが?
 (2)下水処理場と河川におけるエストロゲンの濃度
 (3)天然女性ホルモンによる影響はあるのか?
 4-4 植物エストロゲン(Phytoestrogen)の作用
 (1)植物エストロゲンは食物にたくさん含まれている
 (2)ガンや心疾患を予防する

第5章 今後の課題
 (1)情報公開の必要性
 (2)生物濃縮と化学物質
 (3)化学物質と代謝機能の関係
 (4)in vio バイオアッセイの重要性
 (5)エストロゲンレセプターの研究
 (6)求められる「腰を据えた」研究

補 章 内分泌錯乱物質の検索方
 1.構造活性相関
 2.in vioのアッセイ法(生体内で行う評価分析)
 (1)子宮増殖アッセイ
 (2)ハーシュバーガーアッセイ
 3.in vitroのアッセイ法(試験管内で行う評価分析)
 (1)ホルモンレセプター結合試験
 (2)レポーター遺伝子アッセイ
  (a)遺伝子組換え酵母を用いる方法(YESアッセイ)
  (b)酵母Two Hybrid System法
 (3)乳ガン由来細胞を用いる方法?E-スクリーン(E-screen)?
 (4)子宮内膜ガン由来細胞を用いる方法?Ishikawa cell-ALPアッセイ?
 (5)トキシコゲノミクス法
 4.河川水や下水中のエストロゲン様物質のスクリーニング


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