| 著者名: | 山縣宣彦・加藤一誠 編著 |
| ISBN: | 978-4-425-39502-6 |
| 発行年月日: | 2026/3/28 |
| サイズ/頁数: | A5判 280頁 |
| 在庫状況: | 予約 |
| 価格 | ¥3,520円(税込) |
港湾の中長期政策として公表された「PORT2030」によって示された新しい港湾の長期構想。その実現に向けた取組みが重要になってくる。本書は、PORT2030の理念・概念を踏まえながら、その概要と港湾の可能性、地方港湾での取組みを研究者、実務者が解説する。港湾の将来にヒントを与える一冊。増補版では、港湾をとりまく最新のトピックとして、「洋上風力発電プロジェクトと基地港の整備」「カーボンニュートラルポート」の2章を追加。
【増補版の発刊にあたって】
本書の初版が出版されたのは、6年前の2020年8月です。その2年前、2018年7月に国土交通省港湾局が今後の港湾政策の方向性をとりまとめ、策定したものが、港湾の中長期政策「PORT2030」でした。この長期構想に対し、新進気鋭の学識経験者や関係者の方々から、この構想の実現のための処方箋を論考集としてとりまとめ、上梓したものが、本書「『みなと』のインフラ学」です。港湾関係者をはじめとした読者には好評をいただき、翌年の2021年には重版することができましした。
「PORT2030」策定以降、2019 年末に発生した新型コロナウイルス感染症によるパンデミック現象、ロシアのウクライナへの侵攻という地政学リスクの顕在化、そして、アメリカの第2次トランプ政権による関税戦争の勃発等々、世界的な大変動により港湾物流の世界にも極めて深刻な変化がもたらされました。
さらに、近年の地球温暖化の深刻化を踏まえ、わが国政府は2020年10月に2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。最近ではトランプ政権において、こうした潮流に掉さす動きはありますが、夏場の異常高温や頻発する大災害の発生を踏まえ、後戻りできない課題であると認識されています。
港湾行政の世界でも、こうした世界的な変化を捉え、既存政策のブラシュアップや新たな政策が打ち出されています。特に、大きな変革があったものとして、洋上風力発電を支えるための基地港の整備とカーボンニュートラル・ポートに関する施策が挙げられます。この度、このふたつの政策について、新たに章を設け、この分野に造詣の深い二人の専門家の方に最新の情報提供と問題提起を試みてもらいました。
本来であれば、初版時に執筆された序章から第19 章についても、全面的に見直し、内容を更新したいところでした。しかし、「PORT2030」の実現に向けた当時の論考は、その骨子をいまも引き継いでいると考え、各章の本格的な見直しは、次回までの課題として残すとして、まずは、最新の施策をまとめた2章を追加した「増補版」として発刊することとにしました。本書が引き続き、港湾の関係者の皆様の業務遂行や研究調査活動の参考にしていただければ、幸いに存じます。
なお、増補版の作成に当たり、編集にご尽力いただいた、成山堂書店編集部の板垣様には感謝を申し上げるとともに、表紙の写真の撮影に協力をいただいた神戸市港湾局の皆様にもお礼を申し上げる次第です。
2026年3月
(一財)港湾空港総合技術センター 前理事長
山縣宣彦
【目次】
序章 みなとの空間計画の歴史・文化・生活からの発想
PORT 2030 Premium Port の実践
1 待望の中長期ビジョン
2 これまでのビジョンの変遷と空間計画
3 PORT 2030・プレミアムポートの実践にむけての3 つの提言
4 これからの時代の技術者像「アーティステイックエンジニア」のすすめ
第1章 わが国の港湾政策とPORT 2030
港湾の中長期ビジョンの変遷とPORT 2030
1.1 これまでの港湾の中長期ビジョンの変遷
1.2 わが国の港湾をとりまく情勢変化と課題
1.3 中長期政策のポイント
1.4 将来に向けて
第2章 海運インテグレーターの出現と港湾に求められるサービスの変化
2.1 コンテナ船大型化に伴う船社アライアンスの集約に伴う影響
2.2 船社系ターミナルオペレーターの存在感の増大
2.3 海上輸送から内陸へ向かうコンテナ船社の戦略
2.4 貿易貨物情報プラットフォームに参加するコンテナ船社
2.5 海運インテグレーターの出現とコンテナ船大型化の行方
2.6 今後の港湾政策の具体化に向けて
第3章 荷主による港湾選択の論理と実際
輸入コンテナ貨物を中心に
3.1 現実の港湾選択
3.2 港湾選択論再考
3.3 港湾選択における陸上輸送の費用と時間の問題
3.4 PORT 2030 への示唆
第4章 東南アジアのコンテナシャトル便成立の可能性
4.1 東南アジアシャトル便のねらい
4.2 日本~東南アジア間コンテナ輸送の現状
4.3 なぜシャトル便が必要か
4.4 コンテナシャトル便設置シミュレーション
4.5 シンガポール港直航シャトル便の成立可能性
4.6 レムチャバン港直航シャトル便の成立可能性
4.7 まとめ
第5章 コンテナ貨物輸送のモーダルシフトと港湾利用促進に向けた課題
5.1 港湾と物流の関連性
5.2 東北地方における港湾のコンテナ貨物取扱動向
5.3 港湾の港勢圏と自県港湾利用率
5.4 東北地方のコンテナ貨物に関するフィーダー輸送
5.5 国際フィーダー輸送におけるモーダルシフトの強化に向けた課題
5.6 日本海側港湾の活用とモーダルシフトの推進
第6章 PORT 2030の連携と補完
6.1 連携と補完の経済的な意味
6.2 港湾サービスの提供に関係する主体
6.3 グローバルバリューチェーン
6.4 トラックとフェリーの連携と補完
6.5 研究領域の連携と補完に向けて
第7章 PORT 2030と輸出貨物の重要性
7.1 輸出貨物の重要性
7.2 酒田港のケースと紙おむつ
7.3 輸出企業マーケティングとマッチングの重要性
第8章 内航RORO/フェリーへのモーダルシフトの可能性
8.1 内航RORO 輸送とフェリー輸送
8.2 モーダルシフトが唱えられる背景
8.3 港湾整備と関連した輸送の課題
8.4 持続可能で新たな価値を創造する国内物流体系の構築
第9章 クルーズアイランド化を目指す方策
9.1 世界のクルーズマーケットの変遷と展望
9.2 わが国におけるクルーズの現状と今後の展開
第10章 クルーズ振興をめぐる期待と課題
10.1 クルーズ振興に対する期待
10.2 クルーズ振興と地域
10.3 境港におけるクルーズの動向
10.4 クルーズ振興の体制
10.5 クルーズを地域振興に生かすために
第11章 港湾地域における民間資金の活用方策
11.1 港湾空間と民間資金
11.2 スペイン・タラゴナ港の港湾地域開発
11.3 港湾経営と民間資金
11.4 機能の多様化
第12章 資源・エネルギー輸送の政策的な位置づけ
12.1 資源・エネルギーと海上輸送
12.2 PORT 2030と資源・エネルギーとの関連性
12.3 港湾における資源エネルギーの諸施策
12.4 資源・エネルギー輸送と港湾政策に関わる論点
12.5 むすびにかえて
第13章 港湾の環境政策と新エネルギー
13.1 環境問題への対応とわが国の姿勢
13.2 環境問題の課題と克服への道
13.3 海運・港湾の環境政策
13.4 PORT 2030 と環境問題の再考
第14章 情報通信技術を活用した港湾のスマート化・強靭化
14.1 スマート化・強靭化の背景
14.2 港湾のスマート化への道
14.3 日本の港湾におけるICT 活用の考え方
14.4 課題と展望
第15章 自働化・AI化による効率性向上の課題と可能性
15.1 なぜ港湾の自働化なのか
15.2 港湾をとりまく現状と課題
15.3 コンテナターミナル間の効率性比較
15.4 わが国の港湾コンテナターミナルの効率性の推定
15.5 自働化に向けた示唆とさらなる課題
第16章 農産品輸出と地方港湾の役割
16.1 農産品輸出における地方港湾の役割とは
16.2 農産品輸出に関する港湾政策の現状
16.3 農産品生産拠点九州と輸出拠点博多港
第17章 PORT 2030と九州の地方港湾
17.1 九州の地政学的特徴と港湾配置
17.2 KYUSHU コネクトポート構想
17.3 東アジアとわが国のシームレス化に向けて
第18章 秋田港の新たな動きとPORT 2030の適用可能性
18.1 秋田港の概観
18.2 クルーズ船の寄港
18.3 洋上風力発電
18.4 これからの秋田港
第19章 港湾政策における地方港の位置づけと戦略
19.1 苫小牧港開発の経緯
19.2 苫小牧港開発の事後評価
19.3 わが国の港湾政策と地方港湾のあり方
19.4 持続可能な北海道の物流ネットワークの検討
19.5 港湾政策における個の議論と全体の議論
第20章 洋上風力発電プロジェクトと基地港の整備
20.1 洋上風力をとりまく動き
20.2 わが国の洋上風力プロジェクトと基地港開発の現状
20.3 着床式洋上風力発電推進のための課題と対応
20.4 浮体式洋上風力発電導入に向けて
第21章 カーボンニュートラルポート
21.1 脱炭素社会における港湾に対する期待
21.2 カーボンニュートラルポートの形成に向けた取組み
21.3 実現に向けた課題と対応
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