タチウオのはなし-タチウオを深く知り、上手に釣り、綺麗に扱い、美味しく頂くために-


978-4-425-95691-3
著者名:上田幸男・海野徹也 共著
ISBN:978-4-425-95691-3
発行年月日:2025/7/28
サイズ/頁数:A5判 168頁
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価格¥2,420円(税込)
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深海から進化を遂げた古代魚でもある「タチウオ」の生態、生活史を紐解きながら、水産資源としての現状、温暖化に伴う海水温の上昇で危惧される未来を丁寧に解説。終章では家庭でも作れる美味しいタチウオ料理も多数紹介しています。

【はじめに】 タチウオは日本周辺だけでなく、太平洋、インド洋、大西洋の沿岸から沖合に生息し、漁獲対象になっている世界的に重要な魚である。とりわけ東アジアで人気があるのはなぜだろうか。結論からいうと、たくさん獲れ、調理しやすく、食べやすく、体によく、美味しいからである。日本でもタチウオが美味しいことは西日本の人なら周知のことで、関西や四国・九州のスーパーマーケットや魚屋さんでは普通に切り身をみかける。意外かもしれないが、タチウオは東アジアでは日本以上に人気があり、特に中国では薬膳料理として、韓国ではキムチと相性がよく、なくてはならない大切な魚である。ところが、日本周辺や東アジアのタチウオ資源がどのような状態にあるのか、一般の人にはほとんど知られていない。近年、温暖化に伴う海水温の上昇によりタチウオが関東や福島や宮城で多獲されることがニュースになり、グルメ番組や釣り番組で取り上げられることが多くなってきた。本来の主漁場であった九州や四国で漁獲量が減少し、より北東部で獲れるようになったということである。近い将来、九州や四国産のタチウオが食べられない日が来るかもしれないと考えるのは心配し過ぎだろうか。
著者の一人の上田はアオリイカ、ハモ、エビなどとともにタチウオについても40年ほど漁業や市場を見続け、漁業関係者、流通業者、釣り具メーカーおよび研究者から学んできた。また、韓国や中国の市場でタチウオを見て、海外の研究者と交流を図ってきた。しかし、私の研究や知識だけでは全身全霊で打ち込まれた先輩研究者の足元にも及ばない。紀伊水道のタチウオ研究なら和歌山県水産試験場の阪本俊雄博士を中心とする歴代の研究者たち、日本海のタチウオ研究なら京都府立海洋センターの宗清正廣博士を中心とする研究グループ、東シナ海なら西海区水産研究所の歴代の研究者が代表である。この他、都道府県水産試験場、国立水産研究所、大学に加え、中国や韓国の研究者による分類や生態から流通に関する多数の研究がある。
この本では先輩研究者の漁業生物学的研究、若手研究者による最新の研究および漁業者と遊漁者が長年積み重ねてきた漁労と遊魚の知識の融合を主眼においた。タチウオの名前や学名の由来や変遷、立ち泳ぎに適した体の構造と感覚器、水温や餌生物に対応した回遊と生活史、年々進歩する漁具漁法、効率よく魚群を探索できる機器類と水温情報、ワームやテンヤにみられる遊漁と漁業の技術交流、人気魚種ゆえに減少傾向にある日本と世界のタチウオの漁獲量、水族館の飼育担当者から聞いた飼育・展示の苦労話、漁師が最も美味しい魚というタチウオの多様な調理法などタチウオの過去と現状について説明した上でタチウオの未来について願いを込めて記した。

【目次】
第1章 なぜタチウオという名前がついたのか
 1-1.名前の由来は太刀か立ち泳ぎか

第2章 日本にも世界にも多様なタチウオがいる  2-1.なぜタチウオの学名が変わるのか
 2-2.日本に生息するタチウオの仲間たち
 2-3.マグロやサバと共通の祖先を持つ
 2-4.タチウオにも尾鰭がある?

第3章 なぜ立ち泳ぎになったのか、体の構造と感覚器から考える  3-1.体が薄く、中骨が小さい理由
 3-2.なぜ背鰭と胸鰭を残し、腹鰭、臀鰭、尾鰭をなくしたのか
 3-3.ひと際輝く銀色のボディーと暗色のオデコ
 3-4.瞬発力の白身とホバリングに適した赤身
 3-5.立ち泳ぎに適した鰾の位置に注目
 3-6.確実に餌をとらえる顎と歯
 【コラムⅠ タチウオの歯がタコ焼きに混入】
 3-7.大きな眼の謎
 【コラムⅡ 3 月のタチウオは高密度で光に集まりやすい】
 3-8.鼻の形と機能
 3-9.好物のサンマから味覚を考える
 3-10.流れや振動を感じる側線

第4章 タチウオの一生、先輩研究者の知見から考える  4-1.大きさの測り方
 4-2.産卵回遊は雌雄で異なる
 4-3.産卵期は長い
 4-4.赤ちゃんから鉛直移動
 4-5.成長の変化
 【コラムⅢ 体重3.8kg、指7 本の巨大タチウオ】
 4-6.カタクチイワシにあわせて日周鉛直移動
 4-7.水温からタチウオの動きを知る
 4-8.超音波発信器で追跡
 4-9.生活史と食事メニュー

第5章 なぜ世界各地で漁獲されるのか  5-1.世界各地の漁獲量変化
 5-2.日本各地の漁獲量変化

第6章 人気のある魚種ゆえに様々な漁法が発展  6-1.日本の灯火を利用した釣り漁業
 6-2.韓国の灯火を利用した釣り漁業

第7章 世界に誇る日本のタチウオ曳き縄漁業  7-1.曳き縄の概要
 7-2.曳き縄ならではの船の仕立て
 7-3.生理生態に合わせた道具の仕立て
 7-4.小型LED 集魚灯の活用
 7-5.好みに合わせた餌、ワームとの併用
 7-6.悪食クロサバフグとの知恵比べ
 7-7.日本の曳き縄漁業技術を韓国済州島へ

第8章 遊漁の釣りと漁師の釣りの技術交流  8-1.漁師仕掛けから遊漁用へ改良されたテンヤ釣り
 8-2.漁師も使うようになったワーム
 8-3.年々多様化する遊漁の釣法
 8-4.岸壁からの餌釣り(ウキ釣り)
 8-5.岸壁からのテンヤ釣り
 8-6.岸壁からのハードルアー釣り
 8-7.岸壁からのジギング
 8-8.岸壁からのワインド釣法
 8-9.遊漁船からの餌釣り
 8-10.遊漁船からのテンヤ釣り
 【コラムⅣ タチウオの船釣りには魚探情報が不可欠】
 8-11.遊漁船からのジギング

第9章 延縄の技と工夫  9-1.船と道具の仕立て
 9-2.タチウオの好みに合わせた餌

第10章 小型底曳き網の漁獲技術の進歩  10-1.小型底曳き網漁船の進歩
 10-2.昼間の立ち泳ぎに対応したタチ網
 10-3.柔肌を傷付けない、箔を落とさない網の工夫
 【コラムⅤ トロ箱の語源】

第11章 タチウオが美味しく好まれる理由  11-1.現在の取り扱いと銘柄
 【コラムⅥ 西日本各地のタチウオのブランド】
 11-2.流通と韓国輸出
 11-3.タチウオは漁師が選んだ美味しい魚No.1
 11-4.実は保存がきく魚
 【コラムⅦ 首折れタチウオ】
 11-5.栄養素と働き
 11-6.タチウオ料理
  ①塩焼き ②刺身、炙り ③カルパッチョ ④なめろう ⑤酢の物 ⑥天ぷら、かき揚げ
  ⑦唐揚げ ⑧骨煎餅 ⑨南蛮漬け、マリネ ⑩酒蒸しと西瓜の皮の炒め物(薬膳) ⑪スープ
  ⑫タチ巻き ⑬八幡まき ⑭パスタ ⑮郷土寿司 ⑯しゃぶしゃぶ ⑰土産物

第12章 タチウオと人のかかわり  12-1.水族館の人気展示魚
 12-2.化粧品や模造真珠として

第13章 タチウオの未来と人間の営み  13-1.地球温暖化と栄養塩不足でどうなるタチウオの暮らし
 13-2.人気魚ゆえに逃げ場所をなくした瀬戸内海のタチウオ


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