著者名: | 山口修司 一般財団法人新日本検定協会 ケミカル・エネルギーグループ 安全環境室 三井住友海上火災保険株式会社 グローバル損害サポート部 共著 |
ISBN: | 978-4-425-34092-7 |
発行年月日: | 2025/7/8 |
サイズ/頁数: | A5判 258頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥4,400円(税込) |
危険物とは何かから、商法改正が危険物運送にどのように影響するのかまで、法律・実務・保険の専門家がそれぞれの立場からわかりやすく解説。改訂版では、最新の法令改正や判例に対応し、電気自動車やリチウムイオン電池などの運送についても解説しています。
【改訂版はしがき】
2018年8月「危険物運送のABC 判例・法令・保険の実務的解説」が出版されてから、既に7 年が経過しようとしています。2019年4月には、改正された商法及び国際海上物品運送法が施行されました。また、危険物の海上運送に関する国際規則であるIMDG Code(国際海上危険物規程)も、2025年1月1日には第42回改正が最新版となりました。
また、アメリカでは2012年に発生したMSC Flaminia号船舶火災事件について、荷送人とフォワーダーに責任があるとした第2 巡回裁判所の判決が2023年になされました。電気自動車やリチウムイオン電池・ナトリウムイオン電池などの新しい問題も危険物運送との関係で議論されています。改訂版は旧版が発行されてからの法令や判例の変更を取り入れたものといたしました。
具体的に、第2章では「実務のポイント」というコラムの形で、事例解説や実際に業務を行う上でのポイントなどを文章内に織り込むことにより、できるだけ読みやすく平易な解説とし、さらに、IMDG コードの第42 回改正に伴い、2025年1月1日に施行された国内規則の改正について、いち早くその概要を紹介しています。
是非危険物の運送について携わる方々は参考にしていただきたいと思っています。
【はしがき】
平成30(2018)年5月18日、「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」が国会を通過し、成立しました。商法のうち、運送及び海商に関する部分は、六法で唯一文語体の法律として残っていましたが、今回の改正で、口語体の法律となりました。
商法の運送及び海商の部分は、明治32(1899)年の制定以来改正もなされず100年以上が経過しています。
平成26(2014)年2月7日谷垣法務大臣(当時)が、法制審議会に商法改正の諮問を行い、同年4 月23 日に法制審議会商法(運送・海商関係)部会が構成され、改正の議論が始まりました。そして、2年に渡る議論を経て、平成28(2016)年2月12日に、法制審議会が法務大臣に商法改正の答申を行いま
した。
今回の商法改正の中で最も議論されたテーマが、「荷送人の運送人に対する危険物通知義務」の問題です。従来、商法には、運送に際し、荷送人が運送人に対し運送品に危険物が含まれることを通知する義務に関する規定はありませんでした。しかし、運送品に危険物が含まれていますと、運送に携わる人々の生命身体及び積み合わせ貨物に損害を発生させる可能性があるとともに、いったん事故が発生すれば、第三者にも甚大な損害を与えることも考えられます。そのような損害の発生や事故自体を未然に防ぐ必要性から、荷送人の危険物通知義務の規定が商法第572 条に新設されました。
しかし、ここでいう「危険物」とは法律上何を指すのか、また、既に存在する消防法や毒劇物取締法などの規制法ではどのような物が規制対象となっているのか、そしてその関係は、そして、事故に対する備えとしては何をするべきか、などの問題は、解決しなければなりません。
本書は、それらの問題点に少しでも解決の方向性を示すために企画されました。
本書は、執筆者が、各分野における専門家であり、必ずや危険物運送実務の画期的参考書となり、読者の皆様の期待に応えることができるものになると確信しています。
【目次】
序章 本書で扱う危険物について
第1章 危険物と運送法制
1.荷送人の危険物通知義務の法制化
(1)法制審議会と商法(運送・海商)改正
(2)商法の解説
2.危険物の運送について重要な法律の概説
(1)総論
(2)商法(運送・海商)
(3)国際海上物品運送法
(4)モントリオール条約
(5)約款の規定
① 標準貨物自動車運送約款
② 標準宅配便約款
③ 標準内航利用運送約款
④ 航空運送国内貨物運送約款
3.危険物運送責任に関する判例
(1)概観
(2)最高裁平成5年3月25日判決(さらし粉事件)
① 事件の概要
② 東京高裁平成元年2月6日判決
③ 最高裁平成5年3月25日判決
④ 判例の解説
(3)東京高裁平成25年2月28日判決(上告棄却確定)(NYK ARGUS対荷主事件)
① 事件の概要
② 東京地裁平成22年7月27日判決(第1 審判決)
③ 東京高裁平成25年2月28日判決(控訴審判決)
④ 判例の解説
4.国際海上物品運送法と危険物
(1)国際海上物品運送法
(2)ヘーグ・ルールズと危険物
(3)英国における解釈
(4)米国における解釈
(5)世界の動向
(6)アメリカの新判例
① 事案の概要
② 荷送人及びフォワーダーの厳格責任
③ 荷送人及びフォワーダーの警告義務の懈怠
④ MSC Flaminia 号事件判決の解説
(7)ロッテルダム・ルールズ
5.国内運送に関する危険物判例
(1)国内運送と危険物に関する荷送人の責任
(2)東京地裁平成27年11月26日判決(運送中コンテナ内貨物が爆発した事件)
① 事案
② 判決内容
③ 解説
(3)東京地裁平成28年7月14日判決(タンクローリー横転炎上事件)
① 事案の概要
② 判決内容
③ 解説
6.危険物製造者の責任
(1)概観
(2 )東京高裁平成26年10月29日判決(上告棄却確定)(NYK ARGUS製造物責任事件)
① 事件の概要
② 東京地裁平成25年5月27日判決
(NYK ARGUS 製造物責任事件第1 審判決)
③ 東京高裁平成26年10月29日判決
(NYK ARGUS製造物責任事件控訴審判決)
④ 製造業者の製造物責任の解説
7.危険物にかかわる当事者の責任のまとめ
(1)荷送人
① 国内運送の荷送人
② 国際海上物品運送の場合の荷送人
③ 失火責任法
(2)製造業者
(3)運送業者
第2章 危険物の海上運送における荷送人に係る規制
1.危険物運送における国際規則と国内法令
(1)危険物運送の安全確保
(2)国連勧告の概要
(3)危険物の海上個品運送に係る国際規則
(4)海上における危険物運送に係る国内法令
(5)危険物の海上ばら積み運送に係る国際規則
(6)海上以外の輸送モードにおける危険物運送
2.危険物の海上運送
(1)海上運送上の危険物
(2)海上運送禁止の危険物
(3)危険物の品名・国連番号の決定
(4)容器、包装及びオーバーパック
(5)危険物の容器への収納方法
(6)危険物を収納する容器への標札、品名等の表示
(7)コンテナによる危険物の運送
①コンテナの要件
②コンテナの種類
③コンテナの構造等
④コンテナの検査及び保守点検
(8)危険物のコンテナへの収納方法
①危規則及び危告示等で定める収納方法
② IMDG コードにおける規定
(9)危険物の隔離
①危告示別表第1隔離の欄に掲げる記号の意義
②危告示別表第14で定める隔離基準
③危告示別表第14の2で定める要件
④危告示別表第15及び危告示別表第16で定める隔離要件
(10)コンテナへの表示
(11)積付検査
(12)収納検査
(13)少量危険物及び微量危険物
①少量危険物
②微量危険物
(14)海洋汚染物質
(15)特別措置
(16)書類の供与等
(17)コンテナの船積み前の確認等
(18)危険物運送船適合証
(19)危険物のばら積み運送
3.GHS と危険物の危険性評価の試験方法及び判定基準
(1)GHS(SDS・GHSラベル)
① SDS
② GHSラベル
(2)GHSと国連勧告
(3)固体- 液体判定試験
①装置及び器具
②試験方法
③判定基準
(4)国連の「試験方法及び判定基準のマニュアル」
(5)「試験方法及び判定基準のマニュアル」の概要
4.2025年1月1日に施行された危告示の改正概要
(1)危告示別表第1 に新規に追加された危険物
(2)木炭等に係る運送要件の変更(危告示別表第1 関係)
① UN1361の運送要件変更の詳細
② UN1362活性炭の運送要件変更
(3)環境有害物質(UN3077及びUN3082)への特別規定SP375 の追加
(4)有機過酸化物に該当する化学物質の加除
第3章 危険物運送と保険
1.危険物の運送と保険
■保険会社から見た「危険物」とは
2.危険物の運送中・保管中におけるリスク、事故
(1)危険物そのものに対するリスク
① 危険物の性質に起因するリスク
② 一般的な運送中のリスク
(2)第三者に対する賠償リスク
① 荷送人の通知義務
② 荷送人の通知義務違反とその責任
【コラム】HNS条約について
③ 損害賠償の当事者
【コラム】天津爆発事故
3.危険物の運送に関連する保険と補償の対象となるリスク
(1)国内物流(内航、運送)に関する貨物保険
① 商品の種類
②( 基本的な)補償の対象となる損害、ならない損害
(2)国際物流に関する貨物保険
① 商品の種類
② 外航貨物保険の概要
【コラム】製造物責任と生産物賠償責任保険について
【コラム】EVを積載したPCCの火災事故
(3)危険品輸送賠償責任保険について
① 危険品輸送賠償責任保険の特長
② 危険品輸送賠償責任保険の概要
③ 対象となる事故(損害賠償請求ベース)
④ 支払限度額
⑤ 免責金額(自己負担額)
(4)危険物の運送と船舶保険
① 船舶保険者から見た「危険物」とは
② 船舶保険の主な種類
4.事故防止のための対策について
(1)適切な貨物の申告
(2)適切な運送ルートの選定
(3)適切な荷姿・梱包・積付け
【コラム】 大規模災害における復旧対策のポイント
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