観測・実験・モデルで伝える気象教育 気象ブックス048


978-4-425-55471-3
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ISBN:978-4-425-55471-3
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日常もっとも身近な自然現象でもある「気象」の教育について、観察や実験の方法、有用性を紹介するとともに、実施例、実際の児童・生徒・学生の反応などをまとめています。気象教育に携わる教師、志す教職課程の学生等にとって、児童・生徒の興味を喚起し学びを深めさせるための手引きとなる実用書です。



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【はじめに】 近年、自然災害が毎年のように起こっている。火山の噴火、地震・津波、台風などの地学的自然現象によるものである。自然現象の仕組みを理解することは、自然災害から身を守る基礎になる。特に、気象は火山噴火や地震発生と比べ、予測精度が高いので、天気予報・気象警報を上手に利用し、自分の身を守るという防災・減災が可能といえる。その基礎となるのが気象の知識である。人間を含む生物の地球環境とのかかわりを考える時にも、気象の知識は不可欠である。
本書は、教育学部や教職課程に在籍する学生や教育現場の教師を対象として、気象の授業をいかに魅力的にするかについて書いた。学校教育では、理科の科学的見方、考え方を働かせ、身近な気象の観察などを行い、その観測記録や資料を基に気象要素と天気の変化に着目しながら天気変化や日本の天気の特徴を、大気中の水の状態変化や大気の動きと関連付けて理解させる。さらに、観察、実験などに関する技能を身に付けさせ、思考力、判断力、表現力を育成することがねらいである。
児童・生徒に理科が好きな理由を尋ねると、観察、実験があるから、と答えることが多い。観察、実験などの活動は児童・生徒が自ら目的、問題意識をもって意図的に自然の事象に働きかけていく活動である。そこで得られた結果を比較することで、問題を見いだしたり、既習内容と関連付けて根拠を示すことで課題の解決につなげたり、原因と結果の関係といった観点から探究の過程を振り返ったりすることが考えられる。そこで、気温、湿度、風向・風速(風力)、気圧などの気象観測の授業について取り扱った。気象は、児童・生徒の観測記録だけでは調べられないスケールが大きい現象が多い。モデル実験で調べる授業についても取り上げた。また、気象災害を取り扱った授業も取り上げた。防災教育は社会科、保健体育、家庭科などでも取り組まれているが、本書では、気象災害に限定し自然災害の仕組みを理解させるという視点で取り扱った授業を紹介する。
一方、観察、実験の器具が十分に揃っていない学校が多い。教育現場は予算が十分にあるわけではないので、本書で紹介した教材は身近に手に入るものを利用した自作教材である。教材の作り方、教材を利用した授業展開の例などを紹介した。小中学校の気象学習を念頭に書いたが、高等学校地学の探求学習に役立つ内容も含まれている。
本書が読者の興味を引き、授業づくりの参考になれば幸いである。

2023年10月
榊原 保志

【目次】
第1章 学校における気象教育
 1.1 気象教育の目的と目標
 1.2 小中学校で学ぶ気象の内容
 1.3 小中学校における気象単元の実験
 1.4 気象観測の目的と課題
 1.5 地学教育の指導の実情と課題

第2章 気象観測(気温・湿度)  2.1 気温観測の準備と方法
 [実験装置・モデルの作り方1]放射除け
  コラム1:水銀温度計、標準温度計の使用について
  コラム2:温度計の検定:Excel グラフの作成の仕方と回帰線
 2.2 校舎内の鉛直気温分布の実態
 2.3 校舎内の鉛直気温分布を調べる授業(中・高・大)
 2.4 地域の気温分布を調べる実習(中・高・大)
 2.5 乾湿計で湿度を観測する授業(中・高・大)

第3章 気象観測(風向・風速(風力)・気圧)  3.1 吹き流しや線香の煙を利用した風向・風力の観測準備と方法
 [実験装置・モデルの作り方2]吹き流し風向風力計
  コラム3:吹き流しと線香の煙のたなびき方と風速
 3.2 校庭で風向・風力を調べる授業(中・高・大)
 3.3 校舎内の気圧の鉛直分布の特徴の研究
 3.4 簡易気圧計を用いて気圧の変化を調べる授業の準備
  コラム4:気圧・気温の変化に伴う簡易気圧計の水面差
 [実験装置・モデルの作り方3]簡易気圧計
 3.5 気圧の変化を調べる授業(中・高・大)

第4章 気象観測(雲)  4.1 雲の観察
 4.2 雲の観察の実習方法(小・中・高・大)
 4.3 心得ておきたい雲に関する内容
 [実験装置・モデルの作り方4]雲のでき方の実験装置
 4.4 雲の野外学習を補足する授業(小・中・高・大)
 [実験装置・モデルの作り方5]雲模型
  コラム5:山で雲の観察をする実習

第5章 雲の発生モデル実験  5.1 日本の気象に関わりのある海洋
 5.2 冬季季節風と日本周辺海上に発生する筋状雲
 5.3 筋状雲を発生させるモデル実験
 [実験装置・モデルの作り方6]筋状雲の実験装置
 5.4 日本海と大陸を再現したモデルで雲を観察する授業(中・高・大)
  コラム7:凝結核

第6章 教えにくい単元「大気中の水蒸気の変化」  6.1 気温と飽和水蒸気量の関係
 6.2 気温と飽和水蒸気量の関係を調べる授業(中・高・大)
  コラム89:コルクボーラーの使い方
 6.3 ピンポン球を用いて気温と飽和水蒸気量の関係を理解するモデル
 [実験装置・モデルの作り方7]水蒸気柱モデル
 6.4 気温変化に伴う水蒸気から水滴への状態変化を考える授業(中・高・大)
 6.5 カードゲームを用いて水循環を理解する授業(小・中・高・大)

第7章 気象災害と防災教育  7.1 防災情報
  コラム9:スマホで気象情報・防災情報を調べよう
 7.2 気象災害と台風
 7.3 台風の学習
 7.4 台風と高潮
 7.5 台風の進行に伴う風向変化を表す教材
 [実験装置・モデルの作り方8]風向磁針モデル
 [実験装置・モデルの作り方9]台風モデル
 7.6 台風通過に伴う高潮発生の仕組みを理解する授業(高・大)
  コラム10:線状降水帯とは
 7.7 ネパールで見られる自然災害~氷河湖決壊洪水
 [実験装置・モデルの作り方10]氷河湖決壊洪水モデル
 7.8ネパールの中等学校での氷河湖決壊洪水の仕組みを理解する授業(中・高・大)
  コラム11:授業以外での学びの博物館の利用


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