プラネタリウムの疑問50 みんなが知りたいシリーズ⑳


978-4-425-98431-2
著者名:五藤光学研究所 編
ISBN:978-4-425-98431-2
発行年月日:2023/7/18
サイズ/頁数:四六判 184頁
在庫状況:在庫有り
価格¥1,980円(税込)
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星空の魅力を感じさせてくれるプラネタタリウム。いつ頃何のためにつくられたのか、どのような仕組みで星を映し出すのか、どのようにつくられるのか、解説員になるにはどうすればいいのかなどについて、プラネタリウムのプロフェッショナルがわかりやすく解説します。




【はしがき】

1923年,ドイツで生まれたプラネタリウム(現在まで続く近代的プラネタリウム)は,2023年で100周年の節目を迎えました。初期の頃のプラネタリウムは,「地球上から星空を眺める」という視点が中心でした。リクライニングする椅子にもたれ,ゆったりとした雰囲気の中で,流れるクラシック音楽に包まれながら,ドーム内はだんだんと日が暮れて夕焼けとなり,空に星が輝きはじめます。映し出された星空を見上げながら,解説員は,その日の星空や星座にまつわるギリシャ神話について語ったり,その時期に見ることのできる天文現象を紹介したりしていました。星空の解説が終わりに近づくと,徐々に明るくなるドームの中で,解説員の「おはようございます」の声とともに翌日の朝を迎えるというのが定番でした。
1980年代になると,スライド投映機やビデオプロジェクター,全天周映像といった映像機器が数多くみられるようになります。プラネタリウムにも,投影機を中心に置いた円形の会場ではなく,傾斜型という新しい形態が生まれます。さらに,地上からの星空だけではなく,宇宙空間から眺めることのできる星空や惑星の動きが表現できるようになりました。また,全天に拡がるドームスクリーンに大型映像を投映することで,迫力ある映像を体験することが出来るようになったのもこの頃からです。
2000年代になると,コンピュータの発達により,自身がロケットにのって宇宙空間を移動するかのごとく,太陽系を離れ,銀河系を俯瞰したり,宇宙遥か遠く138億光年の宇宙までを表現したりすることができるようになりました。さらに複数台のビデオプロジェクターを組み合わせて,星空や宇宙だけでなく,アニメーション番組や観光映像なども投映することもできるようになるなど,劇的に進化してきました。かつて,プラネタリウムの解説員として活躍し,残念ながら2022年に亡くなられた河原郁夫氏は,プラネタリウムについてこのように語っています。
私は人間が生きてゆくために大事なものが,このプラネタリウムという空間の中にあるのではないかと思っています。プラネタリウムは,天文学の普及のためにあるのではなく,本物の星空,自然に眼を向けさせることにある。それは,地球という星に住む一人の人間として,自分自身を知ることに繋がると思うのです。広い視野と豊かな心を持って社会に貢献できる人間の形成に役立つ場所。それがプラネタリウムだと信じています。
本書では,100年の歴史を有するプラネタリウムについて,その誕生から現在までの移り変わり、しくみや楽しみ方,魅力などを,プラネタリウムの製造を行うメーカーの社員や,プラネタリウム施設の運営に携わり,投映( 解説) を行う解説員がわかりやすく紹介しています。この本を通じて,より多くの方々がプラネタリウムに興味を持っていただき,実際に訪れていただければ幸いです。

2023年6月
株式会社五藤光学研究所   
明井 英太郎

【目次】

Section1 プラネタリウムのきほん  Question1 「プラネタリウム」の名前の由来を教えてください。
 Question2 プラネタリウムを作った目的はなんですか?
 Question3 プラネタリウムはどのようにして誕生しましたか?
 Question4 星の正しい位置をどうやって映し出しているの?
 Question5 どうやって星を写し出しているのですか?
 Question6 どのくらいの数の星を映し出せるのですか?
 Question7 星の明るさや色の違いはどうやって映すの?
 Question8 プラネタリウムの投映機の中身はどうなっているの?
 Question9 プラネタリウムはどんな部品からできているの?
 Question10 プラネタリウムがぐるぐる回っても電線が絡まないの?
 Question11 プラネタリウムの大きさや重さを教えてください。
 Question12 星座の絵は,だれが描いているの?

Section 2 もっと知りたいプラネタリウム  Question13 プラネタリウムの投映機はどのように進化してきたの?
 Question14 プラネタリウムの補助投映機はどのように進化したの?
 Question15 昔といまのプラネタリウムの違いを教えてください。
 Question16 投映された星は、どのくらいリアルなの?
 Question17 ハイブリッド式って何?
 Question18 デジタル式プラネタリウムは、どう進化してきましたか?
 Question19 世界初・日本初のプラネタリウムを教えてください。
 Question20 プラネタリウムの博物館や歴史館はありますか?

Section 3 プラネタリウムをつくる  Question21 プラネタリウムを作っている会社っていくつあるの?
 Question22 プラネタリウムを作るのにどのくらいの期間がかかるの?
 Question23 プラネタリウムは自分で作ることができますか?
 Question24 プラネタリウムはどんな施設のなかにありますか?
 Question25 プラネタリウム施設の「形」について教えてください。
 Question26 ドームスクリーンの裏側ってどうなっているの?
 Question27 ドームスクリーンに小さな穴が開いているのはなぜですか?
 Question28 ドームスクリーンと映画館のスクリーンは違うの?
 Question29 ドームのスピーカーは何個使っているの?
 Question30 プラネタリウムの座席は特別注文なの?

Section 4 世界のプラネタリウムと投映内容  Question31 プラネタリウムは,世界にどのくらいありますか?
 Question32 有名なプラネタリウムを教えてください。
 Question33 プラネタリウムそれぞれに名前はあるの?
 Question34 世界のプラネタリウムではどんな投映をしているの?
 Question35 世界の変わったプラネタリウムを教えてください。
 Question36 プラネタリウムにはどのくらいの人が訪れるのですか?
 Question37 どんな投映内容がありますか?

Section 5 解説員のしごととプラネタリウムの楽しみ方  Question38 プラネタリウムの解説者になるには,どんなスキルや能力が必要ですか?
 Question39 解説員は投映時以外どんなしごとをしているの?
 Question40 どうしたらプラネタリウムの解説員・職員なれるの?
 Question41 投映時によく流れる音楽やBGM はなんですか?
 Question42 投映時に使う音楽やBGM はどのように選びますか?
 Question43 プラネタリウムを楽しむコツはありますか?
 Question44 プラネタリウムで眠ってしまってもいいですか?
 Question45 プラネタリウムでどんなことができますか?
 Question46 プラネタリウムのマニアックな楽しみ方を教えてください。
 Question47 プラネタリウムが人に与える効果を教えてください。
 Question48 プラネタリウムの良し悪しはどこを見るとわかるの?
 Question49 プラネタリウムの役割や意義はどんなところですか?
 Question50 これからのプラネタリウムはどうなるでしょう?



この書籍の解説

プラネタリウムに行ったことはありますか?私(担当M)は子どもの頃以来長いことご無沙汰していました。2000年代以降、東急文化会館の五島プラネタリウムの閉館や、宇宙探査機「はやぶさ」の全天周映画公開などでまた足を向けるようになりました。最新式のプラネタリウムは夜空に吸い込まれるような臨場感で、昔の記憶に残っている姿から随分進化しているのだなと感心したものです。
実は今年(2023年)は、ドイツで1923年にプラネタリウムが誕生してから100周年にあたります。様々な記念イベントが行われるので、各地のプラネタリウムの公式SNSが盛んに呟き、天文ファンも盛り上がっていますね。
そのような節目の年に、当社も書籍を発行することができました。今回ご紹介する『プラネタリウムの疑問50』は、天文ファンなら知らない人のいない「五藤光学研究所」の方々をはじめとするプロフェッショナルの皆さんが、プラネタリウムの基礎知識や成り立ち、ドームや投影機の仕組み、プラネタリウムのつくり方、世界のプラネタリウムの紹介と、プラネタリウムに関する様々な疑問に答えてくださいました。また、プラネタリウムに映し出される美しい星々に更なる彩りを添えてくれる解説員さんの仕事にも一節を割いています。「プラネタリウムで働きたい!」と思っている方の参考になるかもしれません。解説員の方々は、プラネタリウムで人気のあるBGMや、「寝ちゃってもいいの?」という疑問にも答えてくれました。
プラネタリウムのプロ集団がご案内する夜空の旅を、この本を読んでより身近に感じていただければ幸いです。星を眺める、解説を楽しむ、リラックスする以外の楽しみ方が、もしかしたら見つかるかもしれません。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『プラネタリウムの疑問50 みんなが知りたいシリーズ20』はこんな方におすすめ!

  • 天文・宇宙ファン
  • プラネタリウムで働きたい方
  • 地元にプラネタリウムのある方

『プラネタリウムの疑問50 みんなが知りたいシリーズ20』から抜粋して3つご紹介

『プラネタリウムの疑問50』からいくつか抜粋してご紹介します。プラネタタリウムはいつ頃何のために生まれたのか、どのような仕組みで星を映し出すのか、どのようにつくられるのか、解説員になるにはどうすればいいのかなどについて、プラネタリウムのプロフェッショナルがわかりやすく解説します。

世界初・日本初のプラネタリウムを教えてください

《世界で最初の光学式プラネタリウム》
丸いドームに星を映し出すような近代的なプラネタリウムは、20 世紀初めのドイツで誕生しました。
オスカー・フォン・ミラーは、構想中のドイツ博物館における天文学の展示をカール・ツァイス社に依頼し、天体の運行や地上から見る星空を展示しようと試みました。カール・ツァイス社の技術者バウアースフェルトたちは、ドームの中央に機械を置いて太陽、月、惑星を映し出し、天体の動きを忠実に再現する方法を思いつきました。近代の光学式プラネタリウムの発想です。
1923年10月21日、プラネタリウム初号機はドイツ博物館で試験公開されました。その後改良が施され、1925年5月7日に一般公開されました。このとき作られたプラネタリウムは「カール・ツァイスⅠ型」と呼ばれています。
その後、世界各地の星空を表現することを可能とした「カール・ツァイスⅡ型」が作られました。カール・ツァイスⅡ型は26台製作され、世界の都市に設置されました。

《日本最初のプラネタリウム》
1937年3月13 日、大阪市立電気科学館に「カール・ツァイスⅡ型」プラネタリウムが設置されました。プラネタリウムは「天象館」と名付けられたホールに設置されました。ドームの直径は18m、日本初、かつ東洋初のプラネタリウムでした。同機は大阪市立科学館に現在も展示中です。
戦後の日本では復興とともにプラネタリウムが設置されていき、1951年には生駒山宇宙科学館に米国スピッツ製ピンホール式プラネタタリウムが設置されました。
第二次世界大戦後カール・ツァイス社も東西に分かれましたが、それぞれがⅡ型に改良を施したプラネタリウムを開発しました。西ドイツのカール・ツァイス社はカール・ツァイスⅣ型を開発しました。その第1号機が、渋谷の五島プラネタリウムに収められました。その後、名古屋市科学館にも設置されました。
東ドイツのカール・ツァイス・イエナ社はⅡ型の発展型となるUPP23シリーズを開発しました。明石市立天文科学館には、カールツァイスイエナUPP23/3が設置されました。明石のカールツァイスイエナUPP23/3は2023年現在稼働中です。同社の小型タイプのZKP-1は岐阜と旭川に設置されました。

1950年代には,カール・ツァイス社のプラネタリウムに刺激を受けて,独自の国産プラネタリウムが誕生しました。
1953年、名古屋市東山天文台に、金子式ピンホール式プラネタリウムの1号機が貸し出されました。1958年、千代田光学精光(現コニカミノルタ)はノブオカ式プラネタリウムを科学大博覧会に出品しました。1959年、五藤光学研究所は東京国際見本市でレンズ投映式中型プラネタリウムM-1を一般公開しました。
現在の国産プラネタリウムメーカーは、コニカミノルタプラネタリウム、五藤光学研究所、大平技研の3社です。技術の高さで、日本国内だけでなく世界的な実績を誇っています。

渋谷の五島プラネタリウムが閉館したとき、惜しむ天文ファンが大勢訪れていました。五島プラネタリウムの主役「ツァイス君」ことツァイスⅣ型は、現在渋谷区文化総合センターで展示されています。生まれた国の違う後輩(同館のプラネタリウムでは、コニカミノルタプラネタリウム製の投影機が使用されています)が映し出す星空を、「ツァイス君」も眺めているでしょうか。

ドームスクリーンの裏側ってどうなっているの?

《飛ぶ貝》
貝の中には飛ぶものはいませんが、水鳥に付着したりして結果的に生息地を空中移動するものはいます。同じ軟体動物でいえば、トビイカという名のイカは、漏斗から勢いよく水を吹き出して海面すれすれをグライダーのように数十メートル飛ぶことができます。

《泳ぐ貝》
ドームスクリーンの表面は孔の開いたアルミニウム板でできています。1枚のように見えるスクリーンは、実は複数の板を貼り合わせてできています。方式によっても異なりますが、概ね1枚のアルミニウム板の大きさは50cm×2m弱です。直径12mのプラネタリウムの場合,全部で300枚から400枚の板が貼り合わされています。スクリーンの裏には板を貼るための下地となる金物が檻のように張り巡らされています。

下地金物の元になるのが、ジャングルジムを球体にしたような形状の下地鉄骨です。下地金物はこの下地鉄骨を基準として設置します。下地鉄骨はドーム径の大きさに合わせて組まれています。下地鉄骨の間には,複数台(2台~数十台)の音響用スピーカーが配置されます。ここから解説音声やBGM、効果音を流します。
スクリーンの裏側には、他にも煙感知器や空調ダクト、電気配線なども施されています。これらの設備は、投影を妨げないために、黒く塗装される場合が多いようです。
プラネタリウムが誕生した当時は、スクリーンのすぐ裏に建物の外屋根あたため、外の音がプラネタリウムに聞こえてしまうことがありましたが、現在ではそのようなことはありません。

当社は空港や鉄道施設、港や水族館の本を作っていますが、宣伝用に自社の書籍を眺めていていつもワクワクするのが「裏側」「現場の人だけが知っている」という要素です。プラネタリウムの「裏側」もぜひ見学してみたいものです。水族館のバックヤードツアーもあるように、プラネタリウムでもそういったツアーが探せばあるかもしれませんね。

どうしたらプラネタリウムの解説者・職員になれるの?

《まずは募集と条件のチェックを》
まず各プラネタリウムでどのような募集が行われているか、どんな条件か、ということをチェックし、必要な資格やスキルを確認します。天文学専攻、教員免許や学芸員資格,星が好き、子どもと接することが好き等,施設の特徴によって条件が違います。
正職員の募集は、公務員試験や企業の採用試験の時期にアナウンスすることが多いですが、欠員が出た場合には,年度途中でも募集を行うこともあります。web等でまめにチェックしましょう。

《「仕事としての解説員」に求められる知識と技術、経験》
ボランティアやアルバイトの形でプラネタリウムの解説を行えるところもありますが、それは仕事として解説者になるというのとは違います。
プラネタリウム解説者には,星空や星座の知識だけでなく、研究者や技術者と一般の方との橋渡し役としての知識や技能も必要です。写真編集・動画作成やプログラミングをすることもあるので、ITの知識と経験があるに越したことはありません。
これらを身につけた上で、業界内ネットワーク内で募集される求人情報を見つけられるようにしましょう。情報を見つけたら、即手を上げましょう。
解説者となるためには,実体験として星空を見上げる経験も大切です。いろいろな知識・経験を得られるように活動すると良いと思います。

憧れる人が多い割になり方のわからない職業って、結構ありますよね。プラネタリウム解説員もそのひとつではないでしょうか。教員免許や学芸員資格をとったとしても、天文に関する総合的な知識と交渉力、スピーチ力に加え、ITスキルまで求められるプラネタリウム解説員、かなり狭き門のようです。目指している方によいご縁がありますように。

『プラネタリウムの疑問50 みんなが知りたいシリーズ20』内容紹介まとめ

2023年、誕生から100周年を迎えるプラネタリウム。人口の星空の誕生の謎、星を映し出す仕組みとその進化、プラネタリウムができるまでといったプラネタリウムの基本に加え、解説員にはどうしたらなれるのか、解説員の仕事の中身まで、プロがわかりやすくQ&Aで解説しました。

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