空港オペレーションー空港業務の全分野の概説と将来展望ー


978-4-425-86281-8
著者名:柴田伊冊 訳
ISBN:978-4-425-86281-8
発行年月日:2017/10/28
サイズ/頁数:B5判 392頁
在庫状況:品切れ
価格¥6,600円(税込)
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ノーマン・J.アシュフォード
H.P. マーティン・スタントン
クリフトン・A.マーレ
ピエール・クテユ
ジョン・R.ビースレイ 共著

空の玄関である空港。そこでの業務は多枝にわたり、全体を網羅して理解することは容易ではない。本書は、空港の混雑のピークや航空会社のスケジュール作成、航空機から発生する騒音の管理、航空機の運航のあり方、旅客ターミナルの運用のあり方、航空機周辺のグランドハンドリング、セキュリティ、航空貨物のハンドリング、緊急事態対応、空港の技術、空港へのアクセスなどについて、復数の研究者・実務家が、事例を交えながら空港として体系的に解説するもので、空港のオペレーションの複雑さと多様性を理解するために参考となる文献である。
また、実務においても、空港のオペレーションの全体とそれぞれの分野のあり方を知るための概説書として利用することができる、航空関係者、教育・研究者必読の一冊。

【日本語版発刊に寄せて】 安全で効率的な空港オペレーション−日本における航空の成長を達成するための鍵−
「空港オペレーション」が日本の空港関係者にとって身近なものになることは、様相を変化させつつある最近の日本の航空の発展、そしてアジア・太平洋における航空産業の急速な成長という環境の中で、まさに時期を得たものであります。そして私は、豊富な内容をもつこの本が、国際航空のシステムの複雑さの深化によって、今後の空港の戦略的なあり方を提供するとともに、日常の空港の運用における国際的な標準の適用と、最善の実行のための指針となると信じています。
この前書のテーマは、多くの空港が安全、保安そして環境の維持について高い内容の標準を射程におきながら、旅客に快適な経験を提供することを期待されているということです。
アジア・太平洋地域と日本の高度成長:国際空港評議会(ACI:Airport International Council)は、2016 年末に、アジア・太平洋地域で、2040 年までに年間6.2%の旅客数増が期待できるという予測を公表しました。このことは、110 億人または2040 年での46.6%の増加が見込まれるということです。航空貨物に関しては、2040 年までに全世界で43%の増加が見込まれていて、このことはアジア・太平洋が、最も繁忙な地域になるだろうということを意味しています。すでに成熟した航空市場である日本は、2025 年までに世界第4 位の航空旅客数を持つ市場になることが予測されています。それは米国、中国、そしてインドに次ぐものです。この割合での成長は、空港の処理容量について大きな需要が喚起されるということを意味していて、かつそれは新しい技術が採用され、運航システム上の隘路が生じることを回避するための運用上の最良の実行が維持されることを意味しています。
民営化−大阪は、最初のPPPsか?
航空産業は、2015 年遅くに、日本の航空局による最初のPPPs 実施という大きな関心事項を持っていました。大阪における関西国際空港と伊丹空港の管理と改善という44 年間のコンセッションは、日本とフランスの共同企業体によって獲得され、2015 年初期には、関西の場合と異なる日本企業によって仙台空港が民営化されました。さらに2020 年までに、高松空港、福岡空港、そして北海道の空港が民営化される予定で、他の空港もこれに続いています。日本の航空局がこうした方法を追及している理由のひとつは、明らかに、単一の主体に飛行場面とターミナルを管理させたいということであります。この政策の採用は、運用の効率化から得られる広範な利益を伴うものでなければなりません。空港がコストの削減と収入の拡大というインセンティブによって民営化するときには、空港は安全に関する規制者として、安全に関する基盤の確立についても広範囲な関心を持つものであります。

日本におけるLCCの勃興
沢山の理由によって、日本におけるローコストキャリア(LCC)の展開は遅々たるものになっています。しかしながら、この傾向は変化して、最近では複数の新しい空港がLCC の路線に加わりました。2015 年に、日本のLCC は有償座席数の14%増加を達成しました(アジア・太平洋地域のそれは26%であり、インドネシアが最も高く56%でした)。それはエア・アジアによる日本への長距離便の復活が大きな影響を持つものでした。LCC は、空港のオペレーションについて特異な必要を生起させています。多くのLCC が、ゲートでは最小限の時間による速やかな折り返しを必要としています。そして多くのLCC は、リモ−トの駐機場からゲートまでのジェットウェイが設置されていることを好み、さらにLCC の乗客は、既存の航空会社から離れているため、食べ物や飲み物のコンセッションの計画を変更することにもなります。他の地域においては、LCC は航空料金を下げることに成功し、かつシステムを効率化することにも成功し、二次的な空港を利用することによって混雑を回避することに成功しました。
結果的に、日本の空港と航空会社は新たな成長の段階に入り、新たな所有の形態と、統治のモデルを模索するようになりました。揺れ動く航空の世界で、空港はコミュニティや地域へのゲートウェイであり、経済的な繁栄をもたらすものであり、そして雇用の機会を提供するものでありますから、グローバル化した経済に急速に繋がる方法となっているともいえます。空港は、空港の運用に関する広範囲の内容を横断して機能するものであり、グローバル化した市場に利益をもたらすものであり、関係者や地域社会、そして旅客に付加価値を加えるという傾向を持っています。
この本は、航空業界のために、空港の運用に関するテキストを作成するということについてのノーマン・アシュフォード教授による初期の貢献と指導力がなければ存在しませんでした。共著者であります、スタントン、モアー、ビ−ズレイとともに、我々はアシュフォード教授の業績に加筆しました。そして私は尊敬する共著者の承認の下に、今回の「日本語版発行に寄せて」を提供する栄誉を与えられています。

2017年8月
ピエール・クテユ(Pierre Coutu)

【訳者まえがき】 「AIRPORT OPERATIONS」は、ノーマン・アシュフォードほか2 名の航空の専門家によって著述され、1979 年に初版が出版されて以来、1997 年には第2 版が、そして2013 年には第3 版が出版されて今日に至っています。この間、改訂を重ねながら38 年間にわたって読み継がれてきた空港の運用に関する著作であります。本書は、ニューヨークに拠点を置くマグロウ・ヒル社(Mc Graw Hill)によって出版され、欧米を中心に普及してきました。
主たる著者は、英国の工学者のノーマン・アシュフォード博士です。博士は、本書において空港の運用全般を満遍なく、かつ、正確に紹介しています。そして第3 版では、近未来の空港の姿にも言及しています。ここに本書の特徴があります。近年、日本においても数多く出版されている経営を軸に空港のあり方を論じるものとは異なり、さらに日本にも従来から存在している、空港の諸施設を一般的な描写によって紹介するものとも異なり、本書は、運用の様相を軸に、概略のレベルながら空港全体を論じています。そしてここでは、運用を正確に把握して、空港の運用というものを理解したうえで、その適正なあり方が論じられています。それは、世界の空港を対象としながら、「現実」を起点にした考察が展開されているということであります。
そのため、本書は、読者が、現在、日本において進行中の空港の民営化、そして空港の機能的な能力向上の、現状を満遍なく理解することを可能にし、よって近未来を見据える上で十分材料を提供するものです。

2017年8月
柴田 伊冊

【序文】 世界は21 世紀の2010 年代に入り、米国における航空産業の規制緩和は既に35 年前の出来事になった。この規制緩和という転換点以降、民間航空の世界は引き返すことができないところまで変化した。航空産業の民営化と自由化が世界規模で発生したのである。現在では、多くの大規模な空港と中規模な空港に民営化が普及している。これは、空港の運営と所有からの国家の撤退である。このことは世界中の空港において、旅客、貨物、そして航空機ハンドリングの分野での競争導入として現れている。さらに多くの地域で、規制緩和がローコストキャリア(LCC)の発展を招来させて、空港での施設や手続について特別な対処の必要を生じさせた。加えて、過去20 年間では、アジアの大きな経済の持続的な成長によって、旅客便と貨物便に急速な成長がみられた。
1980 年代における重要な変化は、航空会社によるアライアンスの導入であった。これらは現在、空港を使用している航空会社に、利益の最大化のためのアライアンスへの加盟を必然にしている。空港の施設も、長距離飛行が可能で、収容量が大きい航空機の導入によって変化した。さらに国際航空運送協会(IATA:International Air Transprot Association)による支援と幹旋は、予約、発券、チェックイン、飛行の追跡、そして遅延とキャンセルに関する旅客のハンドリングに効力を発揮しているインターネットという電子機器を航空に導入させた。そしてe – ドキュンメントの貨物便への導入が紙の書類を減少させたのである。
規制緩和以降の他の実際的な変化は、ロッカービーと、2001 年9 月の航空機と空港に対する残虐なテロリストによる攻撃以降のセキュリティの必要の拡大である。かつて、いくつかの空港では、上辺だけのセキュリティ・チェックが行われていたが、現在は、国家と国際的な規制者が、テロリストの活動の阻止という国際的な要請に応えるためのセキュリティを確実なものにし、継続的に空港を監視している。
環境の分野での影響は、米国連邦航空局によるステージ4(ICAO チャプター4)の航空機の導入と、アメリカ連邦航空局によるステージ2および3(ICAO チャプター2 および3)の航空機運航の禁止が空港周辺での騒音による障害を緩和したことである。そして21 世紀の初頭における関心事項は、二酸化炭素の排気、温暖化と海抜の上昇、水と空気の汚染、そして空港および周辺社会の持続的な発展である。
今回の改版では、空港での革新的で、かつ規制的なガイダンスと、それによる最善の実行としての試みを反映させるために、安全管理のシステムと空港運用の管理センターを扱う2つの章を追加した(第15章と第16章)。
そして、この新版は初版を全般的に改訂しているが、出版のときに見出された観点に基礎をおいて、空港での民間航空のあり方について記述することを試みたものである。

ノーマン・J. アシュフォード
ピレー・キュート
ジョン・R. ビースレイ

【目次】
第1章 運用システムとしての空港
 1.1 システムとしての空港
 1.2 国家の空港システム
 1.3 空港の機能
 1.4 集中型と分散型の旅客ターミナル
 1.5 空港運用の複雑さ
 1.6 管理と運用の組織

第2章 空港の混雑のピークと航空会社のスケジュール作成  2.1 課題
 2.2 ピークを表現する方法
 2.3 取扱量の変化の意味
 2.4 航空会社における要素と制約
 2.5 航空会社でのスケジュール作成
 2.6 機体の使用
 2.7 スケジュール作成に関するIATA の政策
 2.8 スケジュール作成に関する空港の見解
  2.9 ハブ

第3章 空港の騒音対策  3.1 概論
 3.2 航空機の騒音
 3.3 航空機騒音に対する社会の反応
 3.4 騒音管理の戦略
 3.5 騒音基準適合証明
 3.6 騒音測定手続き
 3.7 夜間の離着陸禁止措置(カーフュー)
 3.8 騒音適合と用地利用

第4章 空港が航空機のパフォーマンスに与える影響  4.1 概論
 4.2 航空機
 4.3 出発のパフォーマンス
 4.4 着陸進入と着陸のパフォーマンス
 4.5 安全に関する考察
 4.6 自動着陸
 4.7 厳しい天候状況での運用
 4.8 エアバスA380による影響

第5章 運用の準備段階  5.1 概論
 5.2 飛行場免許
 5.3 運用の制約
 5.4 運用区域
 5.5 飛行場面点検
 5.6 供用の維持

第6章 グランド・ハンドリング  6.1 概論
 6.2 旅客のハンドリング
 6.3 ランプでのハンドリング
 6.4 ランプにおける航空機へのサービス
 6.5 ランプのレイアウト
 6.6 出発機の管理
 6.7 グランド・ハンドリングの責任区分
 6.8 グランド・ハンドリングの能率
 6.9 総括

第7章 手荷物のハンドリング  7.1 概論
 7.2 状況、歴史、今後の傾向
 7.3 手荷物ハンドリング手続
 7.4 設備、システム、そして技術
 7.5 プロセスとシステム・デザインの監督
 7.6 組織
 7.7 管理とパフォーマンスの方法

第8章 旅客ターミナルの運営  8.1 旅客ターミナルの機能
 8.2 ターミナルの機能
 8.3 ターミナル管理の哲学
 8.4 旅客への直接のサービス
 8.5 航空会社関係の旅客サービス
 8.6 航空会社に関係する運用の機能
 8.7 政府の要求
 8.8 旅客に関係しない空港管理当局の機能
 8.9 VIPの扱い
 8.10 旅客へ情報提供システム
 8.11 場所の配置と接近
 8.12 交通循環の支援
 8.13 ハブに関する考察

第9章 空港の保安  9.1 概論
 9.2 国際民間航空機関(ICAO)による国際規範の枠組み
 9.3 第17 付属書
 9.4 保安計画策定の構造
 9.5 空港保安計画
 9.6 米国連邦航空局の航空保安への関わり方
 9.7 空港保安計画:米国の構造
 9.8 米国外の空港保安計画
 9.9 旅客と機内持ち込み貨物の検査とスクリーニング
 9.10 手荷物の検査とスクリーニング
 9.11 貨物と荷物の検査とスクリーニング
 9.12 空港の建物内部でのアクセスポイント通過
 9.13 車両のアクセスと識別
 9.14 運航エリアの外周管理
 9.15 隔離された航空機と駐機場所
 9.16 空港のための典型的な保安計画の例
 9.17 結論

第10章 航空貨物の運用  10.1 航空貨物市場
 10.2 動きの促進
 10.3 カーゴ・ターミナル内の流れ
 10.4 ユニット・ロード・デバイス
 10.5 ターミナル内の貨物ハンドリング
 10.6 貨物エプロンの運用
 10.7 簡易化(ICAO 2005)
 10.8 近代的貨物ターミナルの設計の例
 10.9 集約された航空会社による貨物運送

第11章 空港の技術業務  11.1 技術業務の範囲
 11.2 安全管理システム
 11.3 航空交通管制
 11.4 航空通信
 11.5 気象
 11.6 航空情報
 11.7 要約

第12章 空港と航空機の緊急事態  12.1 概論
 12.2 航空機事故の発生する可能性
 12.3 緊急事態の類型
 12.4 要求される防護の水準
 12.5 水の供給と非常用進入道路
 12.6 通信と警報の必要
 12.7 救難と消防用の車両
 12.8 救難人員に対する必要条件
 12.9 空港緊急計画
 12.10 航空機の消火と救難
 12.11 滑走路への発泡剤散布
 12.12 自走不能航空機の撤去
 12.13 要約

第13章 空港アクセス  13.1 空港システムとしてのアクセス
 13.2 利用者と方法選択へのアクセス
 13.3 アクセスと旅客ターミナル運用の相互作用
 13.4 空港アクセスの態様
 13.5 都市内とその他の空港外のターミナル
 13.6 空港へのアクセスの選択に影響する要素
  13.7 結論

第14章 運用管理とパフォーマンス  14.1 戦略的な状況
 14.2 空港の運用管理への戦略的なアプローチ
 14.3 組織に関する考察
 14.4 運用のパフォーマンス管理
 14.5 空港の運用の高いパフォーマンス達成のための要素

第15章 空港の安全管理システム  15.1 安全管理システムの枠組み
 15.2 安全管理システムと空港
 15.3 SMSマニュアル
 15.4 実行
 15.5 空港での成功の鍵となるSMS の実行に関する要素

第16章 空港運用コントロール・センター  16.1 空港運用コントロール・センターのコンセプト
 16.2 空港の運用管理システム
 16.3 空港の運用の協同機能
 16.4 空港のパフォーマンスの監視機能
 16.5 デザインと設備の考察
 16.6 組織的、人的資源に関する考察
 16.7 先行するAOCC
 16.8 AOCCの最良の実行について(鍵となる要件)

第17章 空港オペレーション・マニュアル  17.1 概論
 17.2 空港オペレーション・マニュアル
 17.3 マニュアルの配布
 17.4  米国の例:FAA の推奨する運用マニュアル
 (Appendix 4 ofAC150/5210-22:多くの有効なアドバイザリー・サーキュラーのリストを含む
  ガイダンス、参考資料)

第18章 空港の持続的な発展と環境管理能力  18.1 概論
 18.2 論点
 18.3 環境管理システム
 18.4 結論


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