飛行機の翼理論 揚力はどのように発生するのか 2次元ポテンシャル流厳密解による翼理論


978-4-425-87041-7
著者名:片柳亮二 著
ISBN:978-4-425-87041-7
発行年月日:2016/11/28
サイズ/頁数:A5判 224頁
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価格¥3,080円(税込)
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翼が飛行機を持ち上げる力(揚力)が発生する原理について、いろいろな説明がされてきたが、多くが間違っているともいわれている。
その1つは、「翼の上下面の流れの等時間通過説」である。また、間違いではないが、「翼が動き出した際に翼のまわりに渦が取り残される結果として揚力が発生する」、というのが専門家による一般的な説明である。しかし、この説明では専門外の人が理解するのは難しいようである。
本書では、翼の流れを、ポテンシャル流という手法で非常に簡単に解析できることを述べ、翼まわりの渦を用いなくても、揚力の発生を説明できることを示す。これから翼理論について学ぼうと思っている方は、参考にして頂けると幸いである。

【はじめに】より 専門外の多くの人が,重い飛行機がどうして飛び上がることができるのか,という疑問を持っている。これに対する答えとして,従来から,翼が飛行機を持ち上げる力(揚力という)が発生する原理について,いろいろな説明がされてきた。揚力発生についての解説書の多くが間違っているともいわれている。
その間違いのつは,「翼の上下面に分かれた流れが翼の後で同時に到達するので,長い距離の上面の方が速くなる」,というものである。また,間違いではないが,「翼が動き出した際に翼の後から渦(出発渦)が放出されると,翼のまわりに反対まわりの渦が取り残される結果として,渦によって翼の上面が速くなり,下面が遅くなり揚力が発生する」,というのが専門家による一般的な説明である。しかし,この説明では専門外の人が理解するのは難しいようである。
いま,円柱を横から見て時計まわりに回転させた場合を考えてみよう。このとき,円柱のまわりの空気は,円柱の回転と一緒に回転する。この回転する円柱を左側に移動させると,円柱の上面は回転の速度が加わって速い流れとなり,反対側は遅くなる。その結果,円柱には上に持ち上げる力が発生する。これは,野球のボールなどが曲がる現象と同じで,マグナス効果といわれる。このように,回転する円柱に揚力が発生することは一般的にもわかりやすい。これに対して,一般の翼については,翼が実際に回転しているわけではないので,揚力の発生を翼のまわりに渦が残っているからである,との説明が難しいのは当然である。
本書では,翼まわりの流れを,高校で習う複素数を用いたポテンシャル流という手法で非常に簡単に解析ができることを述べる。ポテンシャル流は,翼の形と流れの条件を与えると解が一意的に決まる。従って,翼の後から流れが滑らかに流れ去る,という条件を与えれば,翼まわりに渦が残っているという考えを用いなくても,揚力の発生は説明できる。しかし,ポテンシャル流は簡単に解析ができるが,その結果を物理的に理解することが大切である。例えば,回転していない単なる円柱に左からある速度の空気を流すと,円柱の左の水平な点では空気の速度はとなり,円柱の上面または下面の中央では左から流した速度の倍の速度となる。なぜ倍に速くなるのか物理的に説明できるのは,専門家でも少ないようである。本書では解析結果とともに,物理的な説明もなるべく平易におこなっている。
本書は,次元ポテンシャル流厳密解による翼理論を,基礎から応用まで詳細にまとめたものである。第章の前半は,翼のまわりの渦を考えないで,単に翼の後から流れが滑らかに流れ去る,という条件で翼の揚力が計算できることを示す。もちろん,これによる揚力の値は,翼のまわりの渦による揚力の値と等しい結果が得られる。このことは,翼のまわりに渦を仮定する方法は,揚力を計算するのに非常に簡便な方法であり,実際にポテンシャル流にて揚力を計算するのによい方法であることには変わりはない。ただ,揚力はどのように発生するのかについて,翼のまわりの渦を持ち出すのは理解が難しいということである。
本書の第1章の後半では,翼のまわりの渦を用いて,有名なジュコフスキー翼について具体例とともに詳細に説明する。第2章では,応用問題として,フラップ付き翼の流れ,隙間フラップ付き翼の流れ,複葉翼の流れ,風洞内に置かれた翼の流れ,地面効果のある翼の流れについて詳細に説明する。これらの第2章の問題は,つの翼のまわりの流れとなり,解析の中に楕円関数が現れるためかなり複雑になる。しかし,付録Aに楕円関数に関する必要な知識をまとめたので,理解の助けになると考えている。近年はCFD(Computational Fluid Dynamics)の発達が著しいが,その結果の検証などにも本書の次元ポテンシャル流の厳密解が役に立つのではないかと思っている。これから翼理論について学ぼうと思っている方は,参考にして頂けると幸いである。
最後に,本書の執筆に際しまして,特段のご尽力をいただいた成山堂書店の小川典子社長ならびに編集グループの方々にお礼申し上げます。

2016年10月
片柳亮二

【目次】
第1章 揚力の発生原理
【疑問1.1】円柱の流れ
【疑問1.2】次元楕円翼の流れ
【疑問1.3】回転円柱の流れ
【疑問1.4】循環理論による次元平板翼の流れ
【疑問1.5】循環理論による平板翼上の流れの様子
【疑問1.6】循環理論による平板翼のモーメント
【疑問1.7】循環理論を用いない翼の揚力計算−自由流線理論
【疑問1.8】自由流線理論による平板翼の揚力計算法
【疑問1.9】自由流線理論による平板翼の揚力の計算結果
【疑問1.10】自由流線理論による平板翼のモーメント
【疑問1.11】ジュコフスキー翼の流れ
【疑問1.12】ジュコフスキー翼の形状
【疑問1.13】ジュコフスキー翼の循環によるモーメント
【疑問1.14】平板翼の前縁の特異点の扱い
【疑問1.15】翼の後縁の流れの様子

第2章 次元翼の諸問題 【疑問2.1】単純フラップ付き平板翼の流れ
【疑問2.2】隙間フラップ付き平板翼の流れ
【疑問2.3】複葉翼の流れ
【疑問2.4】風洞内に置かれた平板翼の揚力(1)−写像関数導出
【疑問2.5】風洞内に置かれた平板翼の揚力(2)−揚力の算出
【疑問2.6】地面効果のある平板翼の流れ

付録A. 楕円関数  A.1 楕円関数の分類
 A.2 ワイエルシュトラウスの(ペー)関数
 A.3 ワイエルシュトラウスのζ(ツェータ)関数
 A.4 ワイエルシュトラウスのσ(シグマ)関数
 A.5(テータ)関数
 A.6 その他の関係式

付録B. 式の導出過程  B.1(2.2-45)式の導出
 B.2(2.2-47)式の導出
 B.3(2.2-52)式の導出
 B.4(2.2-55)式の導出
 B.5(2.2-58)式の導出
 B.6(2.2-62)式〜(2.2-64e)式の導出
 B.7(2.2-69)式の第項の導出
 B.8(2.3-27)式の導出
 B.9(2.3-28)式の導出
 B.10(2.4-6)式の導出
 B.11(2.4-25)式の導出
 B.12(2.4-30)式の導出
 B.13(2.4-31)式の導出
 B.14(2.4-37)式および(2.4-38)式の導出
 B.15(2.5-1)式の導出
 B.16(2.5-5)式の導出
 B.17(2.5-8)式の導出
 B.18(2.5-11)式の導出
 B.19(2.5-34a)式〜(2.5-34e)式の導出
 B.20(2.5-36)式〜(2.5-38)式の導出
 B.21(2.6-24)式の導出
 B.22(2.6-51)式の導出
 B.23(2.6-52)式の導出
 B.24(2.6-59)式の導出

【著者紹介】  
1946年 群馬県生まれ
 1970年 早稲田大学理工学部機械工学科卒業
 1972年 東京大学大学院工学系研究科修士課程(航空工学)修了.
     同年,三菱重工業(株)名古屋航空機製作所に入社.
     T-2CCV機、QF-104無人機、F-2機等の飛行制御系開発に従事.
     同社プロジェクト主幹を経て
 2003年〜2016年:金沢工業大学航空システム工学科教授
 2016年 金沢工業大学客員教授,博士(工学)
カテゴリー:航空 
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