海を守る 海上保安庁 巡視船(改訂版) 交通ブックス215


978-4-425-77142-4
著者名:邊見 正和 著
ISBN:978-4-425-77142-4
発行年月日:2011/3/8
サイズ/頁数:四六判 232頁
在庫状況:品切れ
価格¥1,980円(税込)
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海上保安庁OBが語る、「海上保安官の仕事」。最近の情勢に合わせて改訂!
これを読めば、海上保安官・巡視船の活躍振りを知ることができます。
四面環海の日本で日夜、災害・犯罪・海難事故への対応等、海上セキュリティーの第一線で活躍する保安官と巡視船の活動を描く。

【まえがき】より
このところ、海上保安庁の巡視船艇の活動を伝える新聞やテレビの報道が目につくようになり、海上保安業務の一端が少しずつ国民の皆さんに理解されるようになってきました。
しかし、海上保安庁の仕事は海を舞台にして行われているため、人びとの目に触れる機会が少なく、多くの人は、いまだに海上保安庁の活動について十分に理解されていないのではないかと思います。
あれだけたくさんの航空機や巡視船を持って一体何をしているところなんだろう??あるいは、その航空機や巡視船艇があることさえもご存知でない方がいるかもしれません。
私は、海上保安庁に在職していた当時も、また、海上保安庁を退職してOBとなった今でも、このことがいつも気がかりであり、自分のほうから積極的に海上保安庁の業務や活動についてPRし、国民の皆さんにご理解をいただかなくてはと思っておりました。
外国の要人の方々が来日されますと、警察官が街の要所要所に配備され、昼夜の別なく、また、寒かろうと暑かろうと、事件事故の未然防止のため警備をしている姿を目にします。
街を歩いていると、時々、ピーポーピーポーという音とともに救急車が急患を乗せて病院に急行しているのに出会います。
実は、海上保安庁も同じように要人警護をしたり、急患輸送をしたりしているのです。しかし、これらはすべて海の上でのことであり、残念ながら皆さんの目に触れることがありません。
このたび、幸いなことに巡視船の活動についての執筆依頼がありましたので、巡視船艇を通して現場海上保安庁の活動振りを皆さんに紹介し、海上保安庁という役所についてのご理解を深めていただきたいものと思っております。
この本のもととなった「海上保安庁 巡視船の活動」は、平成五年に初版を発行しましたが、その後十年以上が経過し、海上保安庁の業務がかなり変化しています。今回これらを補足改訂することになり、書名も新たに「海を守る 海上保安庁 巡視船」とし、皆さんに、より新しい海上保安庁の姿をご紹介することができ喜んでおります。
執筆にあたっては、海上保安庁各界の皆さんから絶大なご支援をいただき、また、資料や写真等の提供をしていただきました。心から感謝の意を表します。
なお、見出しに*をつけた部分は、現場での活動状況をよくわかっていただけるように、実際にあった事件を参考にしてドキュメンタリー風にまとめたものです。また、本文中にある個人の氏名等は、外国人を除き、すべて仮名とさせていただきましたのでご了承ください。

平成18年4月
邊見正和

【改訂にあたって】より
平成22年は海上保安庁にとって、多難な年になってしまいました。
その発端は、巡視船が尖閣諸島周辺海域の領海警備業務に従事していた時のことです。
この海域に中国漁船が出漁しており、一部が領海内操業をしていたのです。巡視船が該船に対し、領海内操業は違法であるから、直ちに域外に退去するよう警告しました。しかし、中国漁船はこれを無視したばかりか、巡視船を目掛けて体当たりをしかけてきたのです。これは明らかに公務執行妨害に該当しますから、中国漁船の一連の行動をビデオに収録し、該船の船長を逮捕しました。
ここまでは、通常海上犯罪に対処するごく当たり前の捜査活動なのですが、この後、事態があらぬ方向に展開していったのです。
第一に、中国漁船船長の逮捕は、国際関係を考慮したのか間もなく釈放されました。これは海上保安庁の判断によるものではなく、天の声とでもいうべきものがあったものと考えられます。
第二に、ビデオ収録は犯罪の採証として通常行われるものですが、収録されたビデオは一般的に捜査資料として秘匿性が存在します。しかし、今回はこのビデオを一般公開すべきであるという声が各方面から起こり、その取り扱いがむずかしいものとなりました。
第三に、こうした状況の中で、某海上保安官が独断でこのビデオをインターネットにアップロードして、一般公開をしてしまいました。
第四に、海上保安庁における秘匿性の高い捜査資料の管理保管が不十分だったのではないかという疑問が指摘されました。
これらのことについては、いろいろな視点があり、それぞれ見解が異なります。私もここで意見を申し上げるつもりはありません。
ただ私が申し上げたいことは、外国漁船による領海内操業が行われるということは、我が国の国家主権が侵害されるということを意味しているということなのです。
にもかかわらず、現在これに対処する方策は、巡視船による現場での退去警告しかありません。主権が侵害されている以上、より具体的、効果的な対処ができるようにすべきではないかと思います。
国連海洋法条約では領海侵犯に対し、沿岸国として国内法を制定し、然るべく対応することを認めています。
領海警備業務の裏には、必ず外国の存在があります。それだけにむずかしい対応を要求されますが、反面、毅然たる対応も必要だと思います。
この本のもととなった「交通ブックス201 海上保安庁 巡視船の活動」を全面的に改訂して発行したのが、平成一八年でしたが、その後も、海上保安業務の範囲が少しずつ拡張され、同時にその運用も厳しくなっています。この尖閣領海警備事件を契機に、若干手を加え改訂版として発行することにしました。
今後、国内外にわたって、海上保安庁の役割がますます重要性を増してくると思われます。
本書が、海上保安業務について理解を深めて頂けるものになれば、これに勝る喜びはありません。海上保安庁OBの一人として、海上保安業務に対する、さらなるご支援とご理解とをお願いいたします。

平成23年2月
邊見正和

【目次】
第一章 海上保安庁って何?
 海上保安庁の生い立ちと任務
 イスラエルと日本漁船
 海上保安庁の規模
 海上保安庁と海上自衛隊はどう違う?
 アメリカ沿岸警備隊との関係

第二章 巡視船艇
 巡視船の種類
 海の区分
 新規配属と配属替え
 ヘリコプター搭載船はなぜ生まれたか?
 それでも巡視船艇は足りない

第三章 巡視船艇の運用
 当直と非番
 定員の話はしないで
 巡視船の指揮は誰がする?
 巡視船による哨戒
 携帯電話の恐怖

第四章 海の警察
 こんなにある海上犯罪
 留置場もある巡視船
 海上犯罪捜査のむずかしさ
 船内暴動発生、救援頼む
 東京湾の大船団
 密漁船を追え

第五章 海の安全保障
 国境警備は巡視船の役目
 我が国の島興問題
 排他的経済水域(EEZ)
 沖ノ鳥島
 不審船を逃すな

第六章 海難救助
 海難救助の意義
 海難の種類
 SAR体制
 船位通報制度
 情報伝達と海の118番
 特殊救難隊と潜水指定船
 海猿への道
 遥か洋上でも医師はいく
 海難救助はお家芸

第七章 海上防災
 海上防災に備え
 消防船の活動
 3Kなんてへっちゃら
 三原山が噴火した
 経ケ岬で油が流れている

第八章 海の環境保全
 海はゴミ捨て場ではない
 洋汚染監視取締り
 排出油汚染に対する国際協力
 かくしパイプを発見
 大腸菌がいっぱい

第九章 海の交通
 海も勝手気ままには走れない
 海上交通三法
 海上交通センター
 海の白バイ
 反航船を検挙せよ

第十章 国際活動
 国際協力業務
 親善訪問
 巡視船をロンドンの国際海事機関(IMO)に派遣
 練習船の遠洋航海
 プルトニウム輸送船の護衛
 日韓連携巡視
 海賊や大量破壊兵器拡散防止対策も

第十一章 今日も巡視船は行く


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