ビジュアルでわかる国際物流【2訂版】


978-4-425-92603-9
著者名:汪 正仁 著
ISBN:978-4-425-92603-9
発行年月日:2011/1/28
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価格¥3,080円(税込)
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海運・航空・鉄道貨物輸送と国際複合一貫輸送を中心とした国際物流の基礎的な知識を、現地調査による豊富な資料とともにわかり易く解説。航空貨物輸送や物流企業の合併、提携等の動きも取り入れた改訂版。

【はしがき】より
近年、物流(Logistics)という言葉は世界的に盛り上がり、話題となっている。物流は、工場や倉庫の立地選択から受注処理、在庫管理・荷役、部品やサービスの提供・調達、梱包、倉庫保管、「輸送」(国内、国際)、返品処理、廃棄物の処理および情報処理まで幅広く包含している。この中で国際貿易の下支え役として海運・空輸・鉄道輸送から構成する「国際物流」(国際輸送)の役割は無視できない。
今日、生産・流通・消費の国際化が進むことにより、「国際物流」(Global Logistics)が果たしている機能は一層重要になっている。特に、産業構造の水平分業が進んだ現在では、国際複合一貫輸送が大きな役割を果たしている。国際複合一貫輸送の発達とともに、企業の海外への投資も一層拡大した。これは、大型コンテナ船やジャンボジェットB-747-F貨物専用機などの出現に伴う輸送能力の拡大と速度の上昇、港湾・空港インフラ整備の充実などと密接に関連している。また、情報伝達が発達した今日では、輸出入貨物の迅速な通関を図るため、「電子情報交換」(EDI)システムの導入による荷主と税関や港湾、空港、船社、航空会社、輸送業者、フォワーダーなどとの情報一体化も重要になっている。
このことは近年、日本をはじめとする東アジア諸国が積極的に港湾や空港、鉄道の拡張、開発、港湾・空港ITに取り組んでいることから窺える。その具体例としては、北東アジアの中継機能を目指す日本・北九州の「響灘のスーパー中枢港湾」の開発、名古屋の「中部国際空港」(セントレア)の建設、中国中部と南部のハブ港を目指す「上海港」(外高橋コンテナターミナルと洋山計画)と「塩田港」(港湾鉄道引き込み線付き)の建設、華南経済圏のハブ機能の一層の強化を図る香港の「港湾空港開発戦略」(PADS)と「西鉄道」の建設、香港の中継機能の一部を代替する台湾・高雄港の「オフショア海運センター」の建設、北東アジアのハブ港湾と空港を目指す韓国の「釜山新港」(家?島)、「光陽港」(港湾鉄道引き込み線付き)と「仁川国際空港」の開発。シンガポールの新コンテナ・ターミナルpasir panjangの建設、シンガポール港に匹敵するマレーシア南部のPort of Tanjung Pelepasの開発、などが挙げられる。
こうした国際物流の重要さを、同分野の基礎の勉強に意欲を持っている人々、特に、国際色豊かな「立命館アジア太平洋大学」(APU)の学生達にどのようにして易しく伝えるのかを常に頭の中に置き、2001年から本書を執筆するようになった。
本書は、3年間にわたって筆者がAPUでバイリンガル(英語、日本語)による「国際物流論」と「東アジアの国際物流」講義の内容を整理して書いたものである。
講義では、学生諸君に国際物流を実感し、しかも興味を持ってくれるように、国際物流に関する世界各国のカラー写真をPower Pointを通じて紹介した。幸いにも最後まで国籍を問わず、多数な熱心な学生に興味を持って聞いてもらうことができた。
本書の最大の特色としては、現代の国際物流を構成するのに欠かせない海運・航空・鉄道貨物輸送や、陸・海・空「三位一体」の国際複合一貫輸送、海運同盟、国際宅配便、および電子情報交換システム(EDI)などについてそれぞれ詳しく言及している。また、読者に国際物流をもっと分かり易く読んで頂くために、可能な限り、各章で筆者が日本国内や海外現地調査を通じて入手した国際物流に関わる各国の写真を随所に盛り込んでいる。さらに読者に本書を通じて国際的感覚に触れてもらえればと思い、各章で地名や港名、固有名称、専門用語などについては全て原文で表記する。
本書の執筆の過程で、日本国内や海外で現地調査を行った際、貴重な資料を提供して頂いたり、様々な面々においてご支援頂いた関係者各位をはじめ、出版するまで文章の構成に注意深く目を通して頂いた立命館アジア太平洋大学アジア太平洋マネジメント学部の佐々木美江先生に、この場を借りて心から厚くお礼申し上げたい。また、本書の出版に快諾を頂いた株式会社成山堂書店の社長小川實氏、および編集に協力して下さった編集部の方々に深く感謝の意を表する次第である。
本書の内容に関して、読者の方々、特に実務に携わっておられる諸氏からの忌憚ないご批判やご意見をぜひ仰ぎたい。また本書を通じて、国際物流の事情をより知りたいと考えている産官学界の諸氏や学生諸君に多少とも資するところがあれば幸甚である。

2004年11月 立命館アジア太平洋大学(APU)にて
汪 正仁

【2訂版発行にあたって】
国際物流は国際貿易の下支えとして極めて重要な役割を果たしている。しかし、一般的には国際物流は割合に難しいというイメージが与えられるのが実情である。
立命館大学、そして国際色に溢れた「立命館アジア太平洋大学」(APU)で、バイリンガルによる「国際物流論」、「東アジア国際物流論」、「国際貿易論」および「アジア太平洋地域経済経営研究」の講義を担当することを通じて、学生たちが同分野に関する学問を習得するには若干の困難があるとわかった。その問題点としては、日常生活で馴染みのない専門用語(英語と日本語)は数え切れないほどあり、しかも国際物流に関する物事は普段、見るチャンスも与えられないため、なかなか捉え難いということである。
これを契機に、日本の国内学生だけでなく、外国からの留学生ないし会社員にも適した国際色に富んだ読み易く、しかも親しみ易い国際物流に関する参考書を是非使って頂きたいという思いから、2004年12月に本書(初版)を出版することになった。
出版してからの間にも、国際物流の分野において、特に世界的に注目を浴びている東アジア国際物流の事情が変わりつつあるという心残りがあり、2006年5月に改訂版を出版することになった。
しかし、この間、国際物流の事情も激しい変化を遂げてきた。具体的には、2006年9月の今世紀の超大型コンテナ船Emma Maerskのコンテナ船基幹航路への配船、2006年12月のAirbusのA380の最初の路線就航、国際宅急便のアジア市場戦略の再編などが挙げられる。
本書の読者にこうした国際物流の新たな流れを捉えるため、上述した関連資料の補足をはじめ、改訂版の訂正や改訂版に載っていなかった一部の関連資料や写真を付け加えた上、2訂版を出版する運びに至った。
2訂版の出版において、色々と協力して頂いた株式会社成山堂書店の方々にこの場を借りて深謝の意を表したい。また、本書を通じて、国際物流に関する新たな事情をより知りたい読者に些かなお役に立てれば幸いと思う。

2009年8月 立命館アジア太平洋大学(APU)にて
汪 正仁

目次
第1章 国際物流の概念
 1 国際物流の進展
 2 国際物流の機能

第2章 国際物流と港湾
 1 港湾の分類
 2 国際物流における港湾の役割

第3章 国際物流と空港
 1 国際物流における空港の役割
 2 空港の分類
 3 空港の施設と機能
 4 東アジアハブ空港の開発計画

第4章 国際物流と海上貨物輸送
 1 海上輸送の歩み
 2 海運貨物の種類
 3 船舶のタイプ
 4 定期航路コンテナ化の歴史的経緯
 5 コンテナ船の大型化
 6 船の大きさを表す単位
 7 船舶の速度
 8 運賃の計算方法

第5章 コンテナターミナルの施設と荷役方式
 1 施設
 2 荷役方式
 3 コンテナの種類

第6章 国際物流と航空貨物輸送
 1 国際航空貨物輸送の芽生え
 2 航空輸送の経済性
 3 航空機の種類
 4 21世紀の超大型貨物専用機
 5 国際航空貨物輸送
 6 航空貨物の運賃計算方法

第7章 国際物流と鉄道輸送
 1 鉄道輸送の歩み
 2 軌道の種類
 3 港湾鉄道敷き込み線
 4 国際複合一貫輸送における鉄道輸送ルート
  5 鉄道貨物輸送の形態とコンテナのタイプ
  6 運賃の計算方式

第8章 国際宅配便
 1 国際宅配便の登場
 2 国際宅配便の成長の背後要因
 3 国際宅配便の分類
 4 国際宅配便の輸送方式
 5 国際宅配便のインテグレーター
 6 運賃の計算方法

第9章 国際物流と複合一貫輸送
 1 国際複合一貫輸送の定義
 2 国際複合一貫輸送の歴史的変遷
 3 国際複合一貫輸送の発達
 4 国際複合一貫輸送の主要ルート
 5 国際複合一貫輸送のメリット

第10章 国際複合一貫輸送におけるNVOCCの地位
 1 フォワーダーとは
 2 外航海運フォワーダー
  3 航空フォワーダー
  4 日系NVOCCの隆盛

第11章 海運同盟
 1 海運同盟の起源
 2 開放型同盟と閉鎖型同盟
 3 海運同盟の組織と運営
 4 同盟船社の集荷戦略
 5 定期船運賃とサーチャージの設定
 6 海運同盟の変容

第12章 国際物流とEDI
 1 EDIの定義
 2 EDI書式標準化の必要性
 3 UN/EDIFACT開発の背景
 4 UN/EDIFACTの応用
 5 UN/EDIFACTの推進体制
 6 大手荷主・物流企業のUN/EDIFACTへの取り組み
  7 国際航空輸送のEDI化
 8 日本の港湾・空港のEDI化
 9 国際物流におけるEDIの役割


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