航空管制システム−限界と未来の方向−


978-4-425-86161-3
著者名:園山耕司 著
ISBN:978-4-425-86161-3
発行年月日:2008/3/28
サイズ/頁数:A5判 218頁
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空域問題や対策の遅れが指摘される気象問題など改善点を示し、航空管制の現状とその将来性を解説。完璧なる航空管制に挑む一冊。

【内容】 航空機の事故について、その多くは管制とパイロットがかかわった事故です。人がミスを起こす可能性は常に存在しています。ミスを起こしにくいようにと航行援助施設や管制システムは日々改善されてきています。では、システムはどう改善されてきているのか、現場の管制官は頭の中でどのような物差しを使って航空交通の流れをさばいているのか・・・・。
本書は、第1部で航空管制システム全体がわかるよう例を挙げながら解説し、第2部では、まだ改善の余地が残されていたり、現在の技術レベルでは解決できない分野を指摘し、今後向かうべき方向、あるべき姿を提言しています。特に、空域の有効利用を図る上で重要な航空機間の間隔設定と合流については、詳細かつ具体的に述べられています。
管制の教科参考書はありますが、航空管制システム全体を扱った市販図書はほとんどありません。ますます混雑の度を増す空の状況を考えると、本書は、航空管制を理解し、今後めざす方向を示唆する書として大いに参考になるでしょう。一部に数式(簡単なもの)が使われていますが、全体としてはそれほど予備知識がなくても読みこなせる内容です。
関係者ばかりでなく、広く航空に関心を持つ人におすすめします。

【はじめに】より  現在世界の航空管制は、宇宙利用によって大幅な変貌を遂げつつあります。わが国でもここ数年で衛星利用による航空管制が開始され、一段の進歩階段を歩みつつあります。これらの現状と、未来の航空管制の姿を紹介するのが本書の目的です。
 航空管制の現在のシステムには、さまざまな自然界の物理や数理法則が応用されています。ところが、大地にぴったりとくっついて走る高速列車や自動車の交通整理と違って、地球から上下の方向に一次元多いことが航空管制を分かりにくくしている難点です。
 しかしよく見ると、それらの物理現象にも整理整頓や単純化のカギがひそんでいます。こういう観点から航空管制の現状と未来を分かりやすく説明しようと試みたのが第1部です。
 しかしこれだけでは十分ではないので、原点に返って航空管制の限界という視点から改善の方向を見てみようというのが第2部です。
 今日日本のほとんどの人が旅客機に乗った経験があるでしょう。
 そのときを思い出してもらうと、航空機が苦手な人も結局はパイロットに、また航空機の機体そのものに、さらには航空機の飛行を支援している航空管制やすべてのシステムに、全幅の信頼をおいて座席に座っていたに違いありません。その信頼の基礎となっているのが、今日飛行している航空機は昔の航空機に比べて99.9パーセントの無事故を維持していて、桁違いに安全であるということです。
 現在の航空管制システムは迅速だけでなく、二重三重にも安全弁が働いていて高度な安全性を保持しています。
 しかし航空管制を行う立場から仔細に調べてみると、乗客や乗員に全く不安を与えない状態かというと、必ずしもそうではない問題があります。
 もともと航空管制には、安全弁的役割にも限界があることが分かっていました。それでもここ半世紀ばかりの間に、航空管制は科学技術の成果を取り入れてそれらのほとんどを解決してきましたが、いまなお対策が遅れているのが気象に関する問題であることが分かってきたのです。これらの内容を説明したのが後半の部です。
 そして将来の改善点がここにあるということを示したのが本書のねらいでもあるのです。
 この書を読んで、航空管制がその限界を克服するには、まだまだ道程が遠く深いことに気付いていただけたら、筆者は望外の喜びです。
 なお航空管制は英文略語が多いので、巻末の解説を利用していただければ幸いです。

平成20年3月
著者

【目次】
第1部 航空管制を理解しよう
プロローグ エアバッグ(患者輸送機)が日本の空を緊急輸送
 1 この子の命を救え
 2 台風を避けよ

第1章 航空管制も見方によって単純化できる  1 航空管制も閉鎖系の一つ
 2 閉鎖系の特徴とは

第2章 航空管制はなぜ船と同じ単位を使っているのか?  1 歴史的背景
 2 まず5つの物理量に精通しよう

第3章 事例1−大圏コースの航空管制−  1 大圏コース
 2 洋上国際航空路
 3 洋上国際航空路の管制

第4章 事例2−有視界飛行の雲からの距離の規制は本当に安全か  1 ビジネスジェットで観光旅行
 2 事例の解説
 3 有視界飛行の基準は本当に安全か
 4 併用する対策

第5章 事例3−頭を上手に使う管制官  1 経験則と相対観測
 2 東京レーダー(羽田空港)のスペーシング例
 3 豊富な経験則を持つ管制官
  (1)間隔にもいろんな種類がある
  (2)管制官中瀬の後方乱気流
 4 飛行場管制の秘訣
  (1)A訓練生の緊張
  (2)経験がものをいう

第6章 事例4−人類に貢献する未来の航空管制  1 ロスまで省エネ飛行で飛ぶ
 2 未来の航空管制の特徴
 3 世界の航空管制がめざすもの
 4 各国航空管制の将来計画
 5 人工衛星を用いた測位と航法

第2部 空の安全はどこまで保障されるか プロローグ 「どこまで安全か」の考え方
 1 限界を知ることの意味
 2 限界の考え方
  (1)系の影響
  (2)量的限界と質的限界

第1章 航空管制のモデルを考えてみよう  1 航空管制のモデル化とは
 2 環境にも順位があります

第2章 危険な気象状態は避けられないか  1 ジャンボ機、CATに遭遇
 2 フライトに大敵は乱気流
 3 気象支援をする航空管制
 4 世界の先端をゆく航空気象予報
 5 限界の数的根拠

第3章 空域の上限は意外に低い−スペースシャトルが教えてくれた航空管制の限界−  1 スペースシャトル三つの空を飛ぶ
 2 TAEMと空力滑空の比較
 3 空域の上限

第4章 空域も意外と早く満杯になる  1 国際会議に間に合わなくなった
 2 空域はどうやって秩序づけられるか
 3 空域の有効利用のカギを握る王様はだれか
 4 飽和を表すには二つの方法がある
  (1)単一航空路の混雑度
  (2)合流による飽和
  (3)簡単に合流の可否が分かる表記法
  (4)合流点調整の実際例と限界
  (5)分岐
 5 ターミナル空域の飽和
 6 飽和状態にならないようにするには

第5章 飛行に危険な鳥群  1 羽田で緊急事態発生
 2 鳥害と対策

第6章 地表は航空機の大敵  1 スバル機あわや地表を見失う
 2 離着陸の地表衝突回避
 3 VFR機の地表衝突回避
 4 IFR機の地表衝突回避
 5 その他の地表衝突回避策

第7章 航空管制は現代技術の総合作品  1 パイロットの救難情報を速やかに伝えよ
 2 通信が命の綱
 3 航行援助施設は比較的安全
 4 総合作品の妥当性

第8章 空の安全はどこまで保障されるか  1 固定系や流動系の危険度を比較してみよう
 2 作品要素の比較


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カテゴリー:航空 
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