鉄道線路のはなし( 新訂)交通ブックス103


978-4-425-76024-4
著者名:西野保行 著
ISBN:978-4-425-76024-4
発行年月日:2006/2/28
サイズ/頁数:四六判 252頁
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価格¥1,980円(税込)
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線路の構造・規格、敷設、保守・管理、改良の基礎をわかりやすく紹介。平成13年の鉄道関連法規の技術基準改正を取り入れた新訂版。

【まえがき】より
鉄道の一番の基本となるものは線路である。鉄道の質は、車両や運転面でかなり向上できるものであるが、根底にある大きな枠ばめとなり、これが大きく支配する。近年のように鉄道が他の交通機関とし烈な競争を展開しなければならないような立場に置かれると、線路の質の優劣はきわめて大きな要素となる。
近年高速道路の発達はすさまじい。その線形はきわめて良好で、長いトンネルを掘り、長大で高さも高い橋りょうを駆使して、何十年も前に計画された鉄道の、苦労に苦労を重ねてやっと通した線形をあざ笑うかのように、主要地点間を結んでしまう。
古来交通の形態間の競争は避けられない。川越から川越街道を利用して江戸に至った人や荷は、新河岸水運にさらわれ、それはまた川越鉄道や東上鉄道の開通で消えていかざるを得なかった。非情なばかりの論理がそこでは支配する。長く王座に君臨した鉄道がゆらいでいったのは、その経営上のソフトに関するものがあったかもしれないが、最後はハードの質そのものの限界がみえてきたからである。
ハードの壁にぶち当たった全国系の鉄道を蘇生させたのは、新幹線鉄道である。この段階で鉄道の線路というものも飛躍的に質が向上したが、限られた財源と、将来の経営を考えると、そうそう急速には整備できない。しかし、関連地域の待望熱は一世紀前の鉄道に対するものと変わるところはない。
一方都市交通の分野においても、路面電車で十分であった時代は、その交通の総量の増大とモータリゼーションの波によって押し流されて、都市高速鉄道=地下鉄の時代へと変わっていった。
このような背景の中で、鉄道の線路というものを多くの方々に理解していただきたいと、浅学を顧みず筆をとったのが、この書である。鉄道は一般の方々にとってきわめて利用しやすいものであるが、その内容は、車両や一部の建造物を除くと、そう興味をもって理解されていないのではないだろうか。それにはやはり鉄道を造り、運営する側が積極的にPRを行い、理解のための種をまく必要があると思う。
特に次の世代の中心となる若い方々が鉄道に興味を持ちはじめたときには、ぜひ車両や駅の建築物などとともに、鉄道線路についても同時にいろいろ覚えていただきたいと考えるものである。そういうわけで、高校三年生ぐらいの方に理解いていただける、また欲をいえばこれを読んで鉄道の線路に関することを一生の仕事にしてみたいと考える人が、一人でも現れることを念願した内容にしてみたつもりである。
そのためには、正しい内容を覚えていただく必要から、やはり固くはなるが、法規を一つの中心に据えてみた。完全に厳密にしようとすると法規そのものとなってしまうので、かなり簡略化したものの、正しい用語を頭に入れていただくことを念頭に置いたつもりである。
かなりのベテランの鉄道愛好者でも、道床と路盤、停留場と停留所、まれには橋桁と橋脚の区別などを間違う方を見受ける。早い段階で頭に入れていただく分には、大した苦労はいらないものである。
内容的にはいささか間口を拡げ過ぎてしまったかもしれないが、細部については多くの専門書が出版されており、またその歴史的変遷についても、近年質の高い研究が多々発表されているので、興味を持たれる方については、そちらへ譲ることとしたい。この書は、あくまで語り=はなしが活字になったものとしてとらえていただければ幸いである。

平成六年六月
著者識


【新訂発行にあたって】より
平成六年の「鉄道のはなし」初版発行、そして再版と版を重ね、多くの方々に本書を読んでいただき、ご意見もいただいた。ここに深くお礼を申しあげたい。
その後鉄道をめぐる状況も変化し、また法規改正も行われたりして、本書の内容が部分的に古くなってしまったため見直しを行い、平成九年には改訂版を、引き続き平成十一年には三訂版を発行したところである。
しかし、平成十三年の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」によって、線路に関する技術法規の体系が大々的に変わるという事態が発生した。この咀嚼には著者なりの時間を要したが、旧版をそのままにしておくことは、社会的にも許されないことと考え、ここにかなりの改訂を加えた「新訂鉄道線路のはなし」を世に送ることを決意したわけである。
今後とも、より多くの方々に本書を読んでいただき、なお至らぬ点があればご指導をお願い申し上げる次第である。

平成十八年一月
著者識

【目次】
第一章線路とは
 線路とは1-法規にみる定義
 線路とは2-工学的な定義
 鉄道における通路
 鉄道専用の通路
 鉄道事業法における線路の考え方

第二章 輸送機能からみた鉄道の分類
 輸送機能と線路
 全国幹線鉄道と地域鉄道
 新幹線鉄道
 新幹線鉄道規格新線等
 高速型在来幹線鉄道
 一般型在来幹線鉄道
 大量都市郊外型鉄道
 大量都市内型鉄道
 中量都市郊外型鉄道
 中量都市内型鉄道
 中量端末型鉄道
 地方型鉄道
 貨物幹線鉄道
 貨物支線鉄道
 空港連絡鉄道

第三章 鉄道線路をどこに通すか-その基本論
 どこを通すかの悩み
 どこを通したかの歴史的評価
 どこを通すのかのスケール的視点
 まずどこを結ぶか
 どこを経由するか
 どのようなネットワークを組むか
 国家的計画で定められたネットワーク1-鉄道敷設法
 国家的計画で定められたネットワーク2-全国新幹線整備法
 国家的計画で定められたネットワーク3-交通政策審議会答申
 国家的計画で定められた路線の輸送機能
 ネットワークの結節点1-マクロ的観点より
 ネットワークの結節点2-ミクロ的観点より
 相互直通乗入れ

第四章 鉄道線路をどこに通すか-具体論
 政策論から具体論へ
 需要があるか
 技術的に可能であるか
 経済的に成り立つかどうか
 災害に耐えて永続できるか
 社会的にその存在が受け入れられるか

第五章 線路の企画に関する技術上の基準
 なぜ鉄道に規格が必要か
 鉄道事業法と軌道法
 わが国の法規上の規格の取扱い1-従来の体系
 わが国の法規上の規格の取扱い2-新しい時代の流れ
 技術基準1-総論
 技術基準2-線路の設計に関するもの
 技術基準3-線路の構造に関するもの
 技術基準4-停車場、車庫等に関するもの
 技術基準5-道路との関係に関するもの
 技術基準6-線路の保全に関するもの
 特殊鉄道の取扱い
 軌道建設規程

第六章 曲線と勾配
 線路線形の最基本
 運転上の弱点-曲線
 運転上の弱点-こう配
 保守上の弱点
 建設上の制約-曲線
 建設上の制約-こう配
 曲線半径の選定
 こう配の選定

第七章 線路の施設1-運転のための施設
 運転とは
 本線の数
 単線
 複線
 複々線と三線
 線路別複々線と方向別複々線
 待避線
 終端駅
 分岐駅
 操車場と車庫

第八章 線路の施設2-営業のための施設
 駅
 駅の設置場所
 駅間距離
 一般駅
 旅客駅
 貨物駅
 連絡駅
 高架駅と地下駅
 駅前広場

第九章 線路の構造-軌道
 軌道-この不思議な構造物
 レールの機能
 レールの断面と重量
 レールの長さ
 レールの材質
 レールの継ぎ目
 まくらぎ
 レール締結装置
 道床
 路盤
 分岐器
 非在来型軌道

第十章 線路の構造2-構造物
 建造物
 構造物の選定
 安全性の確保
 環境対策
 土工
 橋りょう1-鋼橋
 橋りょう2-コンクリート橋
 橋りょうの下部構造
 トンネル1-山岳トンネル
 トンネル2-開削トンネル
 トンネル3-シールドトンネル
 トンネル4-水底トンネル

第十一章 線路の保守
 保守の重要性と困難性
 軌道の保守管理
 軌道変位
 レールの管理
 軌道の整備作業
 構造物の保守
 橋りょうの保守
 トンネルの保守
 駅の保守

第十ニ章 線路の改良
 改良の必要性
 曲線の改良
 こう配の改良
 線路増設1-複線化
 線路増設2-複々線化
 線路の立体交差化
 駅の移転
 駅の改良1-運転施設の改良
 駅の改良2-営業施設の改良
 駅の改良3-交通バリアフリ-法関連
 地下駅の改良
 軌道の改良
 構造物の改良1-一般的改良
 構造物の改良2-耐震補強


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