内航客船とカーフェリー(新訂) 交通ブックス208


978-4-425-77072-4
著者名:池田良穂 著
ISBN:978-4-425-77072-4
発行年月日:2008/7/18
サイズ/頁数:四六判 204頁
在庫状況:品切れ
価格¥1,650円(税込)
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環境の変化に翻弄されつつも、日々の努力と技術発展によって、業界激動の10年を乗り越えてきたその成果と現状を紹介する。

【新訂版発行にあたって】 本書初版を出して10年が経過した。内容を見なおしてみると、驚くほど内航客船の世界は変わっていた。特に、瀬戸内海にかかった3本の橋は、多くの内航客船航路を廃止に追い込んで、内航客船の数は激減していた。しかし、そうした中でも、巨費を投じた巨大国家プロジェクトとして完成した橋に果敢に挑むフェリーがあるのには感動を覚えた。
また、2泊以上の長距離航路では、飛行機との激しい競争によって船の数が減っており、旅客を積まないRORO貨物船に姿を変えた例も少なくない。しかし、ここでも高速カーフェリー、クルーズフェリーの投入によって新しい需要を掘り起こしている航路もある。
過疎化に悩む離島航路では、燃料油価格の高騰がその経営を直撃している。さらに一時の離島ブームは影を潜めて、観光客の減少に歯止めのかからない島も多い。しかし、沖縄の石垣島を中心とする八重山諸島では、高速旅客船が離島刊行の足として大活躍して、観光客数の増加だけでなく、人口も増えているという。
このように、内航客船・カーフェリーは、時代の流れの中で環境の変化に翻弄されながらも、本来の使命である旅客と貨物の安全で確実な輸送のために日夜努力をしており、その運航会社には新しいビジネスモデルの構築に余念がない元気な会社も少なくない。
こうした激動の時代における変化を盛り込んで、次の新しい内航客船・カーフェリーの世界へのエールをこめて、新訂版として本書をはっこうすることとした。

平成20年7月
池田良穂

【はじめに】より 日本は島国であり、まわりは海に囲まれている。この海は人間に様々なものを与え続けてきた。魚や海草などの水産資源は古くから日本人の生活を支えてきたし、交通の手段としても海や川は古代から利用されてきた。
特に、海や川は重いものを運ぶ時に広く利用されてきた。例えば、大阪城築城のための石垣の巨石は海を利用して運ばれた。これは水の浮力がものの重さを軽くすることを利用したものである。浮力に支えられている船は、意外に小さい力で移動させることができる。陸上に置かれた1トンのものを押して動かすことを考えてみよう。陸上にある時にはこの1トンのものを動かすことは容易ではない。しかし、水の上に浮かんだ1トンのボートは1人の力でも意外に簡単に動かすことができる。このように浮力によって水の上に支えられる船は、ゆっくりとしたスピードでよければ大変小さな力で動かすことができ、たくさんの人や荷物を一度に運ぶことができる。
こういうわけで、日本の国内における荷物や人の輸送には昔から船が広く利用されてきた。これを内航海運と呼んでいる。これは、海外への航路で活躍するものを外航海運と呼んだことと対比して名付けられたものである。内航海運の中には、貨物輸送と旅客輸送があり、貨物輸送については本シリーズの中の1冊「日本の内航海運」に詳しく説明されているので、本書では人の輸送に携わる「内航客船」と呼ばれる船たちを取り上げることとする。現在では、鉄道や車などの陸上の交通機関や飛行機などの空中の交通機関なども発達してきており、旅客の輸送については次第にその役割をこれらの陸上および空の交通機関に譲りつつあるのが現状である。これは、船は高速を出すことに向いていないこと、また海はしばしば荒れて船の運航が難しくなることが多いこと、船酔いに悩まされることも多いことなどの理由による。しかし、日本には船でなければ往来のできないたくさんの島々があり、また海上を真っ直ぐに移動することによって陸上交通機関に比べて船の方が便利という短絡航路も多い。また、他の輸送機関に比べてエネルギーの消費量が少ないという特性をフルに発揮して、物流の世界でも活躍している長距離カーフェリーのような存在もある。陸上トラックを使うのに対して、長距離フェリーを使うと、CO2の排出量は最大70%も削減できる。こうして地球環境にやさしい客船は、現在、国内でなんと2千数百隻も日夜稼働しているのである。
本書では、国内で活躍を続けるこの内航客船にスポットを当てて、その歴史と現状、そしてない高客船の技術面などについてできるかぎり分かりやすく紹介したい。

平成8年5月
池田良穂

【目次】
第1章 客船の種類
 客船とは
 客船の分類法
 客船の種類
 バラエティあふれる高速客船

第2章 国内客船航路  日本の客船の現状
 離島航路
 短距離カーフェリー航路
 中距離カーフェリー航路
 長距離カーフェリー航路
 観光船航路
 レストラン船
 水上バス

第3章 客船の科学  船のトン数
 船の基本性能(安全性能・推進性能・操縦性能・耐航性能)
 揺れない船への試み
 船体構造
 機関
 推進器
 航海機器
 救命機器

第4章 客船の建造  客船の値段
 船を造る造船所
 船の設計
 船の建造
 進水
 艤装工事

第5章 客船の運航  国内航路に就航できる客船
 船会社とは
 許認可
 船員構成と役割

第6章 内航客船近代化に貢献する鉄道・運輸機構
第7章 内航客船の楽しみ方  クルーズ客船の旅
 日本一周カーフェリーの旅
 離島航路の楽しみ方
 昔ながらの渡し船
 リッチにグルメ船


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