リージョナル・ジェットが日本の航空を変える


978-4-425-86191-0
著者名:橋本安男・屋井鉄雄 共著
ISBN:978-4-425-86191-0
発行年月日:2011/6/8
サイズ/頁数:A5判 224頁
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価格¥2,860円(税込)
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地域活性化にくわえ、近隣アジアの交流圏を強化・拡大する可能性をもつRJ(リージョナル・ジェット)を、日本・欧州・北米・極東アジアの事例にて検証。展望に迫る。

【はしがき】より
日本人が大きな飛行機をいつ頃から好むようになったのか定かではないが、小型機の振動騒音が不安や不快を与えたからであろうか。あるいは、ジャンボジェットに憧れたからかもしれない。航空は道路に比べいかにも複雑なシステムである。車線を単位に組み立てられた道路では、車両の幅や高さにおのずから限度があるが、航空機ではセスナからA380まで実に大きな差があり、機材に合わせ様々な施設が必要になり、またそれぞれが発展してきた。航空の歴史は、機体や航空会社の発展史という側面と同時に、機材の大型化や高速化に対応するため、陸のインフラである空港、空のインフラである航空管制システム、それぞれを発展させた歴史でもあった。加えて、空港の立地は長期に亘る地域の環境問題を引き起こし、地域発展と環境悪化の板挟みに喘いだ歴史という面も否定できない。
 さて、このような航空交通において、変化の兆しが1990年代半ばに突如現れたことはあまり知られていない。その変化は大型化ほど目立たなかったかもしれない。1990年代の前半は湾岸戦争などもあり、大手航空会社がライト兄弟の発明以降に蓄えた富をすべて吐き出したと言われた時期である。米国のハブ・アンド・スポークのシステムが定着し、小型機による多頻度化が利便性の確保上も重視されていた。この時期に突如登場した50席クラスのリージョナル・ジェットは瞬く間に欧州と北米等を席巻し、欧州では2地点間を直結する新たなビジネス客のマーケットを開拓する等、航空サービスとしても大成功を収めてゆく。何故それが可能であったのか、そのあたりを本書をでは詳細に記している。 
 わが国では機材の大型化が羽田空港の容量制約によって常に必要とされ、小型機が顧みられることはなかったが、空港容量の段階的な増加に加え、新幹線網の整備や規制緩和により、多少のダウンサイジングが進展し始めた。ようやく人びともジャンボ機ばかりが飛行機ではないことを理解し始めたのである。このような状況で、羽田空港の4本目の滑走路がオープンし、小型機の活用も一層可能な状況になった。特に羽田空港の本格的な国際化によって、成田空港との競争環境も一変した。羽田国際化の最大の功績は成田空港で地域が一丸となって将来を考え始め、いわゆる成田問題を解消させたことである。2空港が競い合いながら首都圏空港サービスの向上を図る環境が整ったことは大きな成果である。 
 今後のわが国では、地域の人口減少、高齢社会の更なる進展によって、航空産業を取り巻く環境は一層厳しくなるものと予想される。しかし、大量輸送機関としてとしての航空ではなく、地域のニーズに応じたきめ細かなサービスを小型のジェット機で担うことの実現性が大いに高まっていることを本書では強調したい。リージョナル・ジェットはその後、座席数を増やしながら一層効率的な機材に進化し、そのような機材を活用するエアラインのビジネスモデルも完成の域に達しつつある。保有機材が数百機に達するほどの大社会に成長した例もあり、このような現実に照らせば、今後東アジアが成長する中で、わが国の地方都市にもまだまだ勝機があると考えたい。果たして本当にこれからのわが国の国際及び国内の地域交通の要として、リージョナル・ジェットやリージョナル航空会社が立ち回ってくれるものであるのか、本書を通してじっくりと解説したいと考えている。

2011年5月
著者

【目次】
第1章 わが国の航空とリージョナル航空の現状
 1 日本をどう変えるのか
  1-1 東京一極集中と衰退する地方
  1-2 相次ぐ地方路線からの撤退・困惑する地方空港
  1-3 リージョナル・ジェットの活用がひとつの鍵に
 2 わが国の航空政策とリージョナル航空の歴史
 3 最近の機材革命と航空会社の発展
  3-1 機材
  3-2 航空会社の発展概要
  3-3 主要空港におけるリージョナル・ジェット機の拡大
 4 日本のリージョナル航空と機材構成の現状
  4-1 一般/リージョナル航空の現況
  4-2 大手航空会社とリージョナル航空会社
  4-3 大手/リージョナル航空会社間の提携形態
  4-4 わが国における連携の実態
  4-5 わが国のリージョナル航空の機材構成
 5 リージョナル・ジェット導入の新たな胎動
  5-1 日本航空におけるエンブラエル170の導入
  5-2 全日空のMRJ90導入決定
  5-3 大型リージョナル・ジェット(70席)で増機する
     アイベックス・エアラインズ
  5-4 静岡発リージョナル航空会社の大いなる挑戦
     フジドリーム・エアラインズ

第2章 リージョナル小型機の系譜 -ターボプロップ機からMRJに至るまで-  1 MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)の登場
  1-1 待望ひさし国産ジェット旅客機
 2 MRJのライバル達 ?各国で新規開発の進むリージョナル・ジェットー
   2-1 ARJ21「翔鳳(シャンホン)」(中国)
   2-2 スホーイ・スーパージェット100(ロシア)
 3 様々なリージョナル小型機の特徴と概要
  3-1 リージョナル航空を黎明期から支えるターボプロップ機
  3-2 リージョナル・ジェットの誕生とその系譜
 4 リージョナル・ジェットとターボプロップ機の違い

第3章 欧州におけるリージョナル航空の発展  1 欧州の地勢とリージョナル航空の発展
 2 クロスエアの栄光 スイスのリージョナル航空の雄
  2-1 数字に見るクロスエアの驚異的発展
  2-2 クロスエア創業から発展への歴史
  2-3 カリスマ性のあるCEOモーリツ・スターの戦略
  2-4 クロスエア成功の秘密
  2-5 新スイス国際航空への移行と伝説のクロスエア
 3 欧州大手航空のリージョナル航空活用戦略
  3-1 欧州での大手航空・リージョナル航空活用戦略
  3-2 空飛ぶフランチャイズ方式
  3-3 ルフトハンザ航空の野心的試み ールフトハンザ・リージョナル
  3-4 スペインに受け継がれたクロスエアのスピリット

第4章 航空先進国米国におけるリージョナル航空の繁栄  1 ハブ・アンド・スポークを支えるリージョナル航空
 2 大手系と独立系のリージョナル航空
 3 リージョナル航空に有利な契約方式 ーフィックスト・フィー・コードシェアー
 4 アメリカン航空とアメリカン・イーグル/アメリカン・コネクション
  4-1 アメリカン・イーグル(100%子会社のリージョナル航空会社の活用)
  4-2 アメリカン・コネクション(独立系リージョナル航空会社との提携運航)
 5 デルタ航空におけるリージョナル・ジェット活用戦略
  5-1 デルタ・コネクション ーその役割と位置づけ
  5-2 デルタ・コネクションの機材構成
  5-3 大型リージョナル・ジェットの役割と特徴
  5-4 デルタ・コネクションの路線設定
  5-5 デルタ航空におけるリージョナル航空とリージョナル・ジェット活用の実態
 6 米国リージョナル航空繁栄における「光と影
 7 世界一のリージョナル航空会社スカイウェスト

第5章 LCC(ローコスト・キャリア)の台頭とリージョナル航空
 1 LCCの繁栄
 2 欧州のLCCの雄
  2-1 ライアンエア:リージョナル航空界社から欧州最大のLCCに大化け
  2-2 イージージェット:ライアンエアの宿命の好敵手
 3 フライビーの大いなる挑戦:リージョナル航空にしてLCC
  3-1 LCCらしからぬ丁寧な営業サービス
  3-2 離島航空会社からスタートしたフライビーの歴史
  3-3 フライビーの現在
  3-4 まとめ ーリージョナル航空会社とLCCの両立
 4 米国の新進LCC「ジェットブルー」
  4-1 ジェットブルーの上質な客室サービス
  4-2 就航4年間の破竹の快進撃/一転、燃料高騰によるつまずき
  4-3 ジェットブルーのローコスト体質の秘密
  4-4 リージョナル・ジェット エンブラエル190の導入とジェットブルーの将来
 5 リージョナル航空とLCC
 6 日本のLCCは発展できるか
  6-1 国内線を含めLCC
  6-2 課題となる更なるローコスト化
  6-3 今後の日本のLCCを占う

第6章 リージョナル航空台頭による空港の発展  1 空港ターミナルのデザインとリージョナル・ジェットオペレーション
 2 リージョナル航空の搭乗システム
 3 離着陸方式の工夫と空港容量拡大の可能性
 4 リージョナル航空に求められる空港施設

第7章 米国の空港整備助成制度とリージョナル航空  1 航空先進国米国でリージョナル航空を支える空港整備助成制度
  1-1 米国の国家空港総合整備計画 ネピアス(NPIAS)
  1-2 AIP空港改善プログラム
  1-3 米国の航空財源 AATF/空港・航空路信託基金
  1-4 小空港重視のAIPと米国の航空文化
 2 米国とわが国の空港整備の比較ならびに提言

第8章 日本の航空と地方空港の浮揚に向けて-鍵を握るリージョナル航空-  1 リージョナル・ジェット活用を大手航空会社浮揚の一助に
  1-1 大型機過多の機材構成
  1-2 国内路線と機材のミスマッチとその是正
  1-3 問題は小型機の席当たりコストの高さ ー必要なコスト削減
  1-4 小型機・リージョナル機中心が導く大手航空会社の体質強化と経営改善
 2 地方過疎路線を維持するための制度づくり
  2-1 欧米との違い
  2-2 航空先進国米国での地方路線維持制度
     エッセンシャル・エア・サービス(EAS/不可欠航空サービス)制度
  2-3 欧州での地方路線維持制度
  2-4 日本の制度と欧米との比較考
  2-5 望まれる地方路線維持のための制度設計
 3 リージョナル・ジェットが可能にする航空路線の拡充・維持
  3-1 リージョナル・ジェット導入による地方路線での旅客需要増大の可能性
  3-2 航空会社の支店かrなお事業成分析
  3-3 期待される70-90席くらすの小型機材による地方路線ネットワークの維持・拡大と救われる地方路線
 4 おわりに-リージョナル航空が描く航空と地域活性化の可能性
  4-1 今後求められるいくつかの視点
  4-2 必要な規制緩和と国際標準との融合
  4-3 航空をより身近にするリージョナル航空
  4-4 これからの国土形成におけるリージョナル航空の役割
  4-5 リージョナル航空による地域活性化の可能性
     日本でもリージョナル・ジェットを地域活性化に活用できるのか


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カテゴリー:航空 
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