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2014年8月7日  

海藻レシピの著者に聞く! 日本人の食事にはカルシウムが不足している!

海藻レシピの著者に聞く! 日本人の食事にはカルシウムが不足している!
「日本人の食事にはカルシウムが不足している!」
食事と生活習慣は人の健康と寿命、さらには精神状態にも大きな影響を与えています。医学関係の専門家はさまざまな考え方を提案していますが、科学的根拠のないものも多く、皆さんを混乱させています。
日常生活ではそのような流行に流されることなく、これまで日本人が築いてきた食習慣を維持することが肝要です。しかし、現在の日本人の食生活にも健康寿命を短くするいくつかの問題があります。

海藻の研究を始めたきっかけ(植物の中で海藻に注目したきっかけ)はなんですか

海藻は藻類のごく一部に過ぎませんが、藻類全体を見ると全ての海洋生物の食物連鎖の最も下に位置する生物です。地球全体の物質循環に大きく関わっている重要な生物と言えます。また、伝統的に我が国の食生活は多くの海産生物を利用することで成り立ってきました。
これらの観点から海洋の藻類は微生物研究者にとって、最も興味ある対象であると感じていました。さらに注目していることは、石油資源は藻類によって生成されたという事実です。つまり、藻類を活用すれば石油の生産が可能になるということです。

なぜ海藻レシピを始めたのですか

東京大学には藻類を利用してエネルギーや新しい養殖産業を開発するという目的の寄附講座(倉橋みどり特任准教授が担当)が平成24年10月に設置されました。この寄附講座設立のために寄附をしていただいたのが新潟県にある高木屋という海藻問屋でした。寄附講座設立後まもなくしてから高木屋さんから海藻レシピを開発してくれないかという依頼を受けました。当時、海藻に関するレシピ本はほとんどなかったので、独自のレシピを開発するとことになりました。

海藻レシピの魅力とは

海藻は海の生き物であるため、魚と同じように生臭いという特徴があります。栄養的にはカルシウム、不飽和脂肪酸類、食物繊維を多量に含むという特徴があります。後者の栄養的特徴は人が食すると大変体によいということで、日本人は食べ続けてきた健康食と認知しています。ところが、前者の良い香りがなく生臭いという特徴は料理の範囲を限定してしまいます。
また、海藻を食べているだけでは十分なタンパク質と消費エネルギーを摂ることができないという問題もあります。しかし、生臭いということは同じく生臭い食材である魚介類と非常に相性がよいということを意味します。そこで、タンパク質豊富な魚介類といっしょに調理するという方針でレシピを作り始めました。ここで、臭み消しに用いたものが、これまでその使い方を得意としていた西洋ハーブでした。

どんな人に料理を作ってほしいですか、また、どんな人に食べてもらいたいですか

私が紹介したレシピは、海苔巻、稲荷ずし、昆布巻き、コロッケ、茶わん蒸しなどごく平凡な家庭料理がほとんどです。これらの料理はほとんどが一人前50~100円程度で作れる料理です。このように平凡な食材と平凡な料理であっても、料理手法を工夫したり、上手に香りを入れたりすると全く違った料理になるということを知ってほしいと思います。
海苔巻には春菊、ゴボウ、ショウガ、ニンニクで香りを入れ、稲荷ずしには梅干しで香りを入れサンマでコクを加え、昆布巻きにはゴボウとネギで香りを入れギンダラでコクを加え、コロッケにはセージやタラゴンの香りを入れ、茶わん蒸しは加えた具材に出汁の味をしみ込ませるため5時間保つという手法を取っています。安価に作れるものですので家庭で広く受け入れられることを望みます。簡単に作れるレシピではほんとうに美味しいものは作れません。料理は食べる人に喜んでもらうもので簡単に作るものではありません。美味しくするための処理に少しばかりの時間を取ってほしいと思います。

著者紹介


小柳津 広志(おやいづ ひろし)
東京大学 生物生産工学研究センター 植物機能工学研究室 教授
1977年、東京大学農学部農芸化学科卒業、富山大学教養部助教授、
東京大学大学院農学国際専攻教授等を経て、2003年より東京大学生物生産工学研究センター教授。
研究分野は「微生物分類学」、「微生物生態学」、「応用微生物学」で、
現在は「藻類からのバイオ燃料生産技術」を研究している。
趣味として「栄養学」、「食品化学」の知識と自己流で身につけた調理技術を駆使して
「アンチエージング料理の研究」も行っている。

東大教授が考えた おいしい!海藻レシピ73
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