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2013年3月4日  

第3回海上保安大学校女子学生インタビュー

第3回海上保安大学校女子学生インタビュー
広大な海に四面を囲まれた我が国にとって海とは、貿易や漁業により恵みを得る一方、海難や密輸・密航などの海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど様々な事案が発生しています。海上保安庁は、海上における犯罪の取り締まり、領海警備、海難救助、環境保全、災害対応、海洋調査、船舶の航行安全などの活動に日夜従事しています。
 海上保安大学校は、海上保安庁の幹部職員として海上保安業務を遂行するために必要な学術及び技能を学び、心身の練成を図ることを目的として設置された海上保安庁の教育機関です。三方を穏やかな瀬戸内海に囲まれ、白いカモメが波間に漂う風光明媚なキャンパスで、海上保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生に学生生活、乗船実習などのお話を聞いてきました。

★1日のスケジュール

掛田:
6:30に起床、ベッドメイクして着替えて起床整列、人員点呼して掃除、そのあと朝食をとり8:20に課業整列、8:45から1コマ目の授業開始。
12:00~13:00が昼食
13:00から午後の課業、14:30に終わる日と16:15に終わる日がありますが、
水曜日と金曜日は必ず14:30に終わります。
授業後は、体育部活動がありみんなで活動します。
17:15~18:15が夕食、体育部活動があってもその時間には各自食事を摂ります。
そのあとは、自由、10:30に消灯巡検。10:30以降勉強したい人は延灯申請をして1:00まで許可されます。
3年4年は、ほぼ全員が延灯で勉強しています。

★海上保安大学校はいつ頃、どこで知りましたか

中田:
知ったのは高3の夏、海保大の願書締め切り1日前です。一般大学志望だったのですが、その前に試験慣れのため防衛大を受ける予定でした。本屋さんで大学一覧を見ていたら一番最後に海上保安大学校が出ていて、願書が間に合うのを知り締め切り直前に霞ヶ関へ行って願書をその場で貰い、出しました。

小川:
もともとは、一般大学志望だったのですか?

中田:
はい。

小川:
でも結果として、海保大に来たのはなぜ?

中田:来ちゃいました 笑
掛田:来ちゃったね 笑
堀之内:来ちゃった 笑

中田:
願書を出したのが9月初めで試験が10月初めでした。一次試験まで1ヶ月しかないので重点的に海保の問題をひたすら勉強しました。一次に受かり、1ヶ月しか海保対策の勉強をしなかったので受からないと思っていたので嬉しくて、二次試験の時、親がせっかく受けるなら受かってほしいと言い、応援してくれました。二次試験には、面接があったのですが練習せずに行ったので受からないだろうと思い諦めていたら、センター試験終わった後に合格通知を受け取り、すごく嬉しかったです。海保について全く調べずに受けたのですが、面接に行ったとき女性の保安官がいらっしゃって、すごくかっこよく「あ、女性の方でこんなに綺麗な人がいるんだなあ」と思い「将来、あんな風になりたい」と思いました。他に志望した大学も全部受かったのですが、合格通知をもらったのが一番最初だったのでビックリというか受かると思っていなかったので嬉しくて来ちゃいました 笑

堀之内:
小学生位から人を助ける仕事がしたいと漠然と思っていたのですが、中学生か高校生の頃、地元の港に海上保安庁の巡視船が来て一般公開をやっていたのでたまたま親と見に行ったんです。そのとき女性保安官といろいろお話をさせてもらい、すごくかっこよかったので憧れて受験したら受かったので来ちゃいました 笑

小川:
二人に共通しているのは、女性保安官を見てかっこよかったことが決め手になったということなのですね。

堀之内:
そうです。

掛田:
私は、海のないところで育ったのですが、小6の時に初めて船旅をした時、海が好きになり海か船に関わる仕事がしたいなとその頃から漠然と思っていました。進路を考える時に海関係で何かないかと調べていたら、海上保安庁があるのを知って中学生くらいの頃から決めていて、高校の時も一般大学は全く考えずに受けました。

小川:
海保大一筋ですか。

掛田:
はい。ここと海上保安学校しか受けませんでした。

★実際に入学して良かったことは何ですか?

中田:
今までに経験したことのないようなことばかり毎日経験できることです。

小川:
例えば。

中田:
人生で一番怖いのは母だと思っていたのですが、それより怖い人に出会ったことや、最初のオリエンテーションでは、一緒に生活してきた家族とか友達のことを忘れ、人のことを考える余裕もない位忙しい毎日を経験したこと、そして同期とは7日間しか一緒に過ごしていないのに入学する時は、昔からずっと一緒にいたような感覚があったことは、貴重な体験ですし大変なことも一緒に乗り越えていけるので、それが一番大きいと思います。

★学校生活の中で苦労していることはありますか?

掛田:
3年になって初めて乗船実習が始まり、1、2年の時は小さな船に乗ったり学校にある練習船の体験乗船をする機会しかなく、2年間の座学の知識を持って乗船したのですが、センスを問われるようなことがあり乗船すると普段悩まなかったようなことで悩んだりするんです。乗船実習は、自分の中でインパクトが強く入学以来、初めてメンタル的なキツさを味わったので、それが一番苦労したことなのかなと思います。

中田:
苦労していることはないですね。乗船実習も終わってみればすごく楽しかったなという、いい部分しか残っていないです。そうですね、3年間ずっと一緒にいると、同期は大事な仲間だと思うのですが、いい面も悪い面も一緒にいる分見えてしまいます。見なくていいようなところまで見てしまうことがちょっと辛いかな・・・と思います。

★乗船実習で座学と実際の違いは?

堀之内:
機関科は、座学では物理系の勉強が多く私は高校時代文系だったので、物理系は殆どやってこなくて、勉強もあまり得意ではないので座学で学んだことがあまり活かせなかったかなと思います。

小川:
乗船中に失敗したことはありますか?

堀之内:
エンジンを動かす時に回転数を上げたり下げたりして、スピードを変えるのですが、そこまでいったら船が緊急停止するという回転数まで上げてしまいました。

掛田:
座学と違うと思ったことはないですが、新しく知ったことがたくさんありました。

中田:違うということはありませんが、乗ったことで座学で習った「あ、こんなに簡単なことをあんなに悩んで覚えていたんだ」ということがあります。
掛田:確かに。

小川:
みなさん船酔いは大丈夫でしたか?

全員:
します。

中田:
1年生で体験乗船するのですが、その時は酔ってしまい掃除もできないし、ご飯もどうでもよくて、4年生がいらっしゃるので全部やっていただいていましたが、3年生になって自分たちしかいない中で乗るとワッチ中酔ってもちゃんと最後まで耐えるし掃除もいくら酔っていても巡検が受けられるようにできるのです。1年生の時の自分と3年生の自分では忍耐力というか、自分のやらなくてはいけないことに責任を持とうとする心構えが少し変わったかなと思いました。

堀之内:
一度強風でかなり揺れがひどかったとき、機関室からトイレが近いので「すみません。ちょっと抜けます」と言ってワッチ中に何回もトイレに駆け込んだときがありました。

★乗船実習を振り返ってどうですか?

堀之内:
少し成長した気がします。

小川:
どんな面で成長しました?

堀之内:
閉鎖された環境に閉じ込められていても、ある程度は耐えられるという面で忍耐力が鍛えられたと思います。

中田:
嫌だとか考えている余裕はないので、乗船は、嫌なことより得たものが絶対多いと思います。指揮者などをする際、首席航海士や主任航海士、乗組員の方が一緒についてくださるのですが、その方々のかっこよさに憧れ、現場で一緒に仕事をしたいとか、男子に負けない、負けたくないという気持ちで早く現場に行きたいと思いました。

掛田:
私もそうです。1,2学年の間は、実際、船で働いている方と触れ合う機会はなかったので、乗船して一緒に船を動かす中で、乗組員の方々と関われ、いろんな人に触れ合えたことが一番の成果だったと思います。

堀之内:
私は、もともと積極的に前に出るタイプではなかったのですが、乗船実習をしていく中で人に指示する立場が回ってくるので、前に出ざるを得ない状況になります。でも、それは幹部になる上で絶対必要なことだと思うので、どのようにしたらいいかが、掴めた気がしたことが得られたことだと思います。

★海上保安大学校の魅力は?

掛田:
私は、海が好きなので、その一心で、海の警察官になるという、夢を持って頑張れる場所であるところです。海が好きな人はいいかなと思います。

中田:
全寮制なので、今まで経験したことないぐらい、いい意味でも悪い意味でも人と深い付き合いができることが魅力であり、ただの友達ではなく、仲間として一緒に過ごしていけることが一番大きいと思います。

堀之内:
面白いイベントが多くあることです。例えば、節分の時は、みんなで豆まきをしたり、学祭の後夜祭は、普段できなことをやったりなどと、普段は何かと規制が厳しいのですが、その分みんなで一丸となっていろいろなイベントを作り上げたりします。

★海上保安大学校を目指す人へ

掛田:
海保大は、他の大学に比べると全く違い、規則が厳しい中で生活していますが、その中で一生の付き合いになる同期と出会え、滅多に経験できないような経験がたくさんできるところです。

小川:
一般大学では経験できないことを一つ上げるとしたら?

掛田:
同期と出会えることです。在学中も、卒業してからも、ここでの4年間は大きく、同期との関わりがなくなることは絶対ないので、そういう仲間を得られることは何をするにも絶対に財産になると思います。

★将来、どのような保安官になりたいですか?

掛田:
初心を忘れず、ここに来た理由も、ここにいたい理由も海が好きだからという気持ちをこの先も忘れず大事にしていければと思っています。

小川:
保安官の中で、どのような仕事をしたいと思っていますか?

掛田:
立派な航海士として働きたいです。

中田:
将来どんな保安官になりたいかは明確ではないのですが、やりたいことは、本庁の音楽隊で演奏することと、叶わないかもしれないけれどパイロットになりたいです。

堀之内:
モノ作りが好きなので、職人のような機関科の乗組員になることと、伝説に残るような女性保安官になりたいです。女性保安官が少ないので、何か大きいことをして、女性でもこういう保安官がいるんだよっていうことをアピールできるようになれたらいいなと思います。

【編集後記】

今回のインタビュー学生の数は、例年に比べ少なく3人でしたが、いつもと同じく明るい雰囲気でお話ししてくれました。
 海上保安大学校を選んだ理由は、皆さん様々です。子供の頃、海上保安庁の巡視船を見学したときに女性保安官を見て私もなりたい、海が好き、海に関わる仕事がしたい、調べていくうちに興味を持ったなどなどいろいろですが、入学してよかったことは、“人間関係が築けること”が最も多い回答です。「全寮制なので、いい意味でも悪い意味でも人と深い付き合いができる」。入学して、4年間一緒に生活することは、楽しいことも辛いことも一緒に過ごしていくから、親密になっていくのでしょうね。在学中も、卒業してからもその関係性が続いていくことは、人生の中でとても素晴らしい財産だと思います。寮生活を通して厳しい規律の中、責任感が自然と身についていきます。各学年で役割が変わっていき、それぞれに責任を持って行動していかなければならないので、責任を持とうとする心構えができてくるのでしょう。それぞれの夢、目標を持って現場に羽ばたいていく彼女たちがとても楽しみです。
 掛田さん、中田さん、堀之内さんありがとうございました。


聞き手
株式会社成山堂書店
代表取締役社長 小川典子
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