コラム

2014年7月30日  
業界人

現役自衛官へのインタビュー 海上自衛隊 掃海母艦うらが 通信士 塩谷 萌 3等海尉

現役自衛官へのインタビュー 海上自衛隊 掃海母艦うらが 通信士 塩谷 萌 3等海尉
軽い言葉でおすすめすることができる仕事ではありませんが、誇れる仕事だと思います。女性の職域も広がっていて、今は女性の艦長やパイロットもいます。もちろん女性だから制限される仕事もありますが、女性だからできることもたくさんあります。先輩たちが切り開いてくれた道を一緒に広げてみませんか。

現在の仕事を教えてください。

塩谷:
私は艦で通信士という仕事をしています。航海中は艦橋で海図を使ってコースをはずれていないか、近くに危険なものなどないかなどを調べたり、双眼鏡を使って見張りをしたりするとともに、通常10名程度艦橋で勤務している部下に指示して、航海中の運航安全に努めています。
停泊中は、出港の事前準備をしたり人事関係の仕事をしたりしています。また、広報活動として艦内の案内を行うなど、日々多忙な業務に追われています。

なぜ、自衛官になろうと思ったのですか。

塩谷:
もともと警察官を目指していたのですが、就職活動中に自衛隊の説明会に行き説明を聞いてみると、その活動の規模の大きさに魅力を感じました。大学時代から地元で働きたいという気持ちは強かったのですが、説明を聞いているうちに地元だけで働くより、日本全国また世界で活躍できる自衛隊の一員になりたいと感じました。

そのなかで海自を選んだのはどうしてですか。

塩谷:
海上自衛隊が一番海外との関わりが多いからです。大学時代から海外に行くのが好きだったので、仕事で海外に行くこと、関わりが持てるのは素晴らしいと思いました。また、就職活動中に東日本大震災が発生し、テレビの画面には、女性海上自衛官が船の中で入浴支援をしている姿にとても感動し海上自衛隊を志願しました。あとは幹部自衛官だと一般大学出身者と防衛大学出身者があまり仲良くなれないのではと思っていましたが、海上自衛隊だけは一緒に教育を受けるので、あまり差はなくなるという点も大きいと思います。一年半ずっと一緒に頑張ってきた仲間は、今では出身大学は全く関係ないですね。

様々な活動を行っていますが、今まで最も印象に残っていることはなんですか。

塩谷:
遠洋練習航海で世界一周をしたことです。約5か月間で16か国に行きました。たくさんの国に行き、それぞれの文化に触れられたことはもちろんとても心に残っていますが、その中でも一番印象に残っていることは、この航海の中で数週間他国の海軍の方と実習ができたことです。私はチリ海軍の女性とペアになって一緒に生活をしました。彼女はチリ海軍女性初のパイロットで、とても向上心があり、日本の裏側で頑張っている女性の姿はとても心強く感じました。

自衛官になってよかったことは何でしょうか。

塩谷:
人との繋がりが深くなったことです。自衛隊はとても大きい組織なので、日本全国から人が集まっています。同期だけでも200人近くいて、出身県も様々です。同期とは入隊して約1 年半ほぼ毎日一緒にいたので、本当に深い繋がりがあると思います。今は部隊に配属されて日本全国それぞれの場所で働いていますが、久しぶりに会うとなんだか家族にあっているような感覚になります。

現在の仕事において重要なこと、欠かせないことは何でしょうか。

塩谷:
コミュニケーションだと思います。何か落ち込んでいそうな人がいても、普段からコミュニケーションをとっていなければその人が落ち込んでいるのか、それとも普段からそのような顔色なのかはわかりません。艦の中で衣食住を共にしながら仕事をするため、ストレスが溜まりやすいのは事実です。お互いに周りの変化に気を配って仕事をすることがとても大切だと思います。

苦労している点、やりがいを感じる時はどのような時でしょうか。

塩谷:
苦労している点は、指揮を執ることの難しさです。私はまだ自衛官3 年目ですが、3等海尉という幹部の階級をつけているため、時には自分の父親ほどの年齢の海曹を指揮しなければなりません。経験も年齢も上の海曹を適切に指揮することは本当難しいことですが、専門的スキルを持った海曹がいるからこそ艦が安全に運航できます。その気持ちを忘れず、早く階級と行動が伴った幹部になりたいと思います。
やりがいを感じるときは、自分が計画したものが成功したときです。投錨の際、操艦者補佐のために時間をかけて勉強や準備をしています。操艦者が自分のリコメンドを信じて投錨し、うまく投錨できたときはすごくやりがいを感じました。

隊の組織を発展させるための工夫はありますか。

塩谷:
大きなことはできませんが、常に明るくしているようにしています。場の雰囲気が悪いと仕事もはかどらないと思います。また、女性が10人乗っているので彼女たちのことは常に気を配るようにしています。女性の悩みは女性にしかわからないこともあるので積極的に会話をして変化を見つけるようにしています。「髪型変えたね」や「ちょっと顔色悪いね」などほんの些細なことですが、何か悩み事がある人はそこで「実は・・・」と悩みを相談されたりします。やはり常にコミュニケーションが必要だと感じています。

休日はどのように過ごしていますか。

塩谷:
現在の勤務地は、地元であり出身大学が近いため、学生時代の友人と会ったりしています。休日は、仕事と関係ない人と会って気持ちを切り替える時間は大切だと思います。休む時はしっかり休むことでオンオフのめりはりをつけています。
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