コラム

2022年4月22日  

飼育員がこっそり教える釣りのコツ『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』

飼育員がこっそり教える釣りのコツ『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』
釣りは魚との勝負とはまさによく言ったもので、魚を釣り上げるためには、勝負相手をよく調べるように魚のことを知らなければいけません。裏をかかれてエサだけ取られたり、いるのはわかっているのに何故か食いついてくれなかったりという経験は、釣りをする方なら誰しもあることでしょう。
勝負に勝つには、先輩に教わるのも手です。魚の生態をよく知っている人として、水族館の飼育員さんが思い浮かびます。毎日魚の世話をしている人たちが、しかも釣り名人だったらどうでしょう。飼育のプロと釣り人の視点から、釣りに役立つ知識を教えてくれるのではないでしょうか?
そんな発想で作られたのが、今回ご紹介する『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』です。国内の渓流、海、海外、そして水族館内まで、本書に出てくる釣り現場は様々です。飼育下で観察した魚の生態が、フィールドでどのように活用できるのか?釣り人にはもちろん、釣りをしない人にも面白い、魚の意外な生態がたっぷり紹介されています。
また本文中で語られる、水族館の仕事も興味深いものです。執筆者の所属館のいくつかは、既に閉館しています。水族館が苦境に立たされている今こそ、知る意義があるのではないでしょうか。本書では、疑問を抱き、観察し、検証し、理論化するといった一連の科学的態度が、趣味の釣りと仕事としての飼育を繋げています。その様子を、本書を通して読み取っていただければと思います。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』はこんな方におすすめ!

  • 釣りの好きな方
  • 魚の好きな方
  • 水族館ファン

『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』から抜粋して5つご紹介

『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』からいくつか抜粋してご紹介します。基本的に4ページで1項目、その間に1ページのコラムが挟まる構成になっています。地元の海や川の魚、海外や沖へ遠出して挑む魚、はたまた水族館で行う釣りの話など、どこから読んでも楽しめますよ。

ピラニア釣りから学ぶ

ピラニアは南米のアマゾン川、オリノコ川などに多くいる、カラシン目セラサルムス科セラサルムス亜科の魚の総称です。そのうち肉食性が強いのは30〜40種、生え変わる鋭い歯を持ち、気性の荒い魚です。

ピラニアは怖いと言われていますが、実は非常に憶病な魚です。飼育員が清掃のために水中に入るやいなや、物陰に隠れようと逃げ回るくらいです。そんな臆病なピラニアをルアーで釣るにはどうすればよいでしょう。ルアーで魚を釣るには、その魚の捕食スイッチをONにしてやればいいのです。

水槽のピラニアは餌をもらうことに慣れているので、混泳する小魚には見向きもしません。ところが、ある瞬間だけ周囲の魚を襲うことがありました。それは水槽に新しい魚を放したときです。理由として考えられるのは、水槽の環境に慣れていない魚の動きが不自然だったことです。不自然な動きと、そこから生じる刺激的な遊泳音こそがピラニアの捕食スイッチだったのではないでしょうか。
もう一つ考えられるのは、水面の音です。アマゾンで釣りをしている現地の人が、棒きれで水面を叩いているシーンをテレビで見たことがあります。ピラニアがいるアマゾン大水槽で水面を指で弾いて試してみると、ピラニアだけでなく草食性が強い魚まで寄ってきました。

水面を叩く音が意味するのは、ナブラ(大きな魚に追われた小魚の群れが水面に集まる様子)だと思われます。魚が大きく、生息密度が高いアマゾンでは、激しい音が出るナブラが頻繁に起こるのでしょう。ナブラは摂食のチャンスなので、似た音に反応するのです。「ナブラ音で寄せて、遊泳音で食わせる」がアマゾンでピラニアを釣るための条件です。

実際にアマゾン川で試してみたところ、巨大な着水(ナブラ)音と不自然な遊泳(ラトル+飛沫)音で、凄まじい反応が起こりました。エサありの方が釣れるというのが本当のところではありますが、「ナブラ音で寄せて、遊泳音で食わせる」は有効であるとわかりました。

ピラニア釣りに行こうという方は相当な通だと思うのですが、この項は是非ご紹介したいと思っていました。秘境もののテレビ番組で見た、川の中に肉を投げるとピラニアが寄ってたかってすぐ骨に!というシーンをルアーで再現できるなんてワクワクします。でも、ルアーは無事なんでしょうか?

タコにラッキョウを検証する

子ども向けの釣りの本に、ラッキョウを使ったタコ釣りの解説が書いてありました。ですが水族館でタコのエサにラッキョウを使うことはありませんし、そもそもタコが海でラッキョウと遭遇することはないはずです。

ところが水族館でタコを飼育していると、行動や特徴からラッキョウでタコが釣れる理由が見えてきたのです。

棒の先にスポンジをつけた棒でミズダコの水槽を掃除すると、スポンジ棒にミズダコが抱きついて邪魔してきます。これは他のものにも行われるので、水槽の中に入ってくる異物に対して行動を起こしていることがわかります。

ミズダコの異物に対する接触は、一本の腕 (触腕)の先端を使ったソフトタッチから始まります。少しずつ触れる腕の数が増えていき、最終的には抱きつきます。タコは異物に好奇心を抱いて接触しています。非常に知能の高い無脊椎動物なのです。

ラッキョウはタコに好奇心や興味を抱かせる「異物」として使われるというだけで、タコが好むエサというわけではありませんでした。
白いラッキョウは海中で目立ち、タコの好奇心を刺激します。さらにラッキョウの適度な大きさと硬さは、タコが腕で抱え込むのにちょうどいいのです。ラッキョウは安く、余れば人間が食べられます。白くて安くて適度な大きさ・硬さのものであれば、他のものでもタコ釣りに活用できるでしょう。大根や消しゴムなども使われるようです。

この欄の著者が実際に出かけたタコ釣りでは、メタルジグに2つのエギをぶら下げたものに裂いたコンビニ袋を結びつけるという派手な仕掛けが登場したようです。実際のエサに似せるよりも、とにかく目立ってタコの好奇心を刺激することが重要なのでしょう。

飼育からわかったタチウオ

タチウオ釣りの人気は高く、また西日本での漁獲量が多いため、関西ではスーパーでも定番の馴染み深い魚です。しかし、水族館で見ることはあまりありません。タチウオは飼育が難しい魚なのです。

タチウオの体表にはウロコがないため傷つきやすく、搬入が困難です。しかもタチウオは長い体で立ち泳ぎをするので、大きく深い水槽が必要です。またタチウオの尾ビレは他の魚にエサと勘違いされやすくかじられることがあるため、同居する魚も選ぶのです。

タチウオの展示は、「採集→輸送→予備飼育→展示」の順で行います。海遊館では定置網で一度にたくさん採集します。採集後トラック輸送し、まず水族館の予備水槽へ入れます。その後良好な個体を選んで展示しますが、予備水槽に入れた翌日には半数近くが死んでしまいます。

予備水槽では餌付けを行います。冷凍のキビナゴ、マアジ、イカ、オキアミなどを与えますが、反応が鈍いものには、生きたカタクチイワシを与えます。
タチウオはエサをくわえた瞬間に飲み込むことは少なく、多くは時間をかけて飲み込みます。食いついた瞬間にエサが真っ二つに切断されることもよくありますが、くわえていたエサを飲み込んだ後、もう片方のエサも残さず食べます。

タチウオは活きエサを好むので、釣るときはエサを活きエサのようによく動かす「誘い」が有効です。また、エサをゆっくり飲み込むので、アタリのあと「待つ」ことも大切です。タチウオはエサに飛びつくときに、 空振りが多いです。釣り糸を切られることが多いのは、空振りしたタチウオの鋭い歯の仕業と思われます。

タチウオは大きな群れを作る魚で、少数だと落ち着けないのですが、仲間と一緒にしておくと、エサに飛びついた勢いで仲間を傷つけたり食べてしまったりすることがよくあるそうです。他の魚にも狙われるタチウオの尾をエサに、他ならぬタチウオもよく釣れてしまうとか。

ニオイと味の世界

釣りというのは基本的にエサ付きの針を魚に食べさせて釣り上げることです。魚たちが釣りエサを食べ物と認識して食いつくには、大きく二つの要因があります。それは「動き」と「ニオイ・味」です。エサを使う釣りでは、エサのニオイや味が大切です。

魚は水中で生活しているので、水に溶けている物質を嗅覚と味覚で感じています。まず鋭い嗅覚で遠くのエサのニオイを探知して近づき、至近距離になると味覚でエサの味見をします。
魚も鼻でニオイを感じます。魚は左右に一つずつの鼻を持ち、そこで二オイを感じます。魚の鼻には前鼻孔と後鼻孔という二つの穴があり、水に溶けているニオイ成分は前鼻孔から入り、後鼻孔から出ていきます。

魚類は約 100 種類の水溶性のニオイ成分をかぎわけられると考えられています。魚が感じているニオイ成分で釣りに一番大切なのはアミノ酸です。多くの魚は、グルタミン、アラニン、プロリンに強い反応を示します。

味を感じる部分は味蕾といいます。味覚は近距離からエサの味を判断するほか、エサの飲みこみに重要です。魚種によっては口の中だけでなく唇や顔にも味噌があるものがいます。コイやナマズではヒゲでも味を感じることができます。

魚も私たちと同じように、うま味、塩味、苦み、甘味を感じると考えられています。特に、アミノ酸は魚の味覚も嗅覚も刺激する成分です。魚によってアミノ酸の好みは違います。また、こうしたアミノ酸が1種類よりも2種類以上あった方が、反応が良いことも知られています。

コイを例に、身近な材料でオリジナルのエサを作ってみましょう。コイが好むアミノ酸が多いのは、ゼラチン、小麦タンパク、カゼイン、鰹節、大豆タンパクなどです。これらを混ぜれば、理論的には集魚効果の高い“究極のエサ”となります。実験の結果、この究極のエサが有効であることがわかりました。

また、コイは雑食性なので、動物性由来のアミノ酸と植物性由来のアミノ酸とを組み合わせることも重要です。釣り用のエサの配合には、グリシン、プロリン、アラニンのような動物性アミノ酸と、グルタミンやシステインを含む大豆や小麦を混ぜると良さそうです。

コイはエサの好みが難しいらしく、新しいエサになかなか慣れてくれないそうです。しかも飽きるのも早く、飽きてしまったエサには反応しません。釣るのが難しいといわれるのも納得です。唐揚げで釣れたという例がこの項では紹介されていますが、どうやって餌付いたのでしょう?近くにお店でもあって、釣り場の側で食べる人が水に落としてしまうとか?

水族館で知った魚の意外性

1.ハリを飲んだ魚の運命は?
釣りをする方は、魚に針を飲まれてしまって、ラインごと切った経験があると思います。切ってしまったラインと針、針を飲んだ魚はその後どうなるのでしょうか。
飼育員は魚が針を飲み込んでいた場合、そのままラインを切ります。刺さった針を無理に外す方が、生存率が低くなるのです。
魚が飲んでしまった針は、時間が経つと外れていることがよくあります。返しが付いていなければ針やラインはフンと一緒に排出されることもあります。しかし、すべての魚種で針が外れるとは限りません。比較的口が小さい魚種は外れる可能性が高いのですが、ウツボやアナゴなどはのどの奥深まで飲み込むことが多く、致命的になることがあります。
針を飲み込んだ魚は案外生き残りますし、針が大きければ飲み込まれにくく、返しが付いていなければ外れることが多いのです。釣った魚が針を飲み込んでいたときは、無理矢理取らずにラインごと切ってからリリースしてください。

2.食欲の秋
私たちは夏から秋になって日照が減るとセロトニンが減り、それを補うために食欲が増します。気温が下がって新陳代謝が落ちることも、食欲の秋に関係あると言われています。
魚も産卵や水温によって、食欲が変化すると言われていますが、本当でしょうか。飼育されている肉食魚を例に「食欲の秋」を考えてみます。
隣接する海からの自然海水を使用するこの水族館では、加温する冬場以外は水槽の水温は自然海水と同じで、夏場の水温は30℃近くにもなります。
ここに、水温が25℃を下回る秋になると、食欲のスイッチが入る魚がいます。ロウニンアジやギンガメアジです。この時期だけは、混泳飼育されているマアジやマルアジを襲って食べてしまうのです。
ロウニンアジは暖かい海域に棲息する魚なので、水温が高い夏場の方が食欲旺盛では?と思われるかもしれません。しかし夏場よりも水温が下がる秋に食欲が高まることは、私たち人間と同じ「食欲の秋」がある結果なのです。
この時期に襲われるのは25センチクラスのアジです。ロウニンアジやギンガメアジは明らかに捕食魚種を選んでいます。秋にロウニンアジを狙う際は、アジを意識したルアーで狙えば、釣果が上がるかもしれません。

エサを食べた魚に糸を切られてしまっても、もしかしたらその魚は生き延びているかもしれないのですね。とはいえ切れた糸は水中の生物にとっては危険なものです。できるだけ引っ掛けないように注意しましょう。

『水族館発!みんなが知りたい釣り魚の生態』内容紹介まとめ

釣りを愛する水族館飼育員たちが、全国から集結!飼育員だけが知っている魚の秘密の生態を伝授します。これを読んで釣りに臨めば、釣果が大幅アップするかも?

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