コラム

2022年2月4日  

地球を守る磁場のベール『オーロラの謎』

地球を守る磁場のベール『オーロラの謎』
オーロラは、私たちが地球上で目にすることのできる自然現象の中でも最も神秘的なものかもしれません。オーロラを見ることを目的とした旅行商品も色々あります。実は北海道でも、稀にオーロラを見ることができます。昨年11月にもオーロラ出現か?と話題になりました。
オーロラの源は太陽から噴き出すプラズマです。このプラズマと地球を取り巻く磁気圏、そして地球の大気が影響しあって、あの神秘的な現象が生まれるのです。地球の大気と磁場は、地球に住む生物を有害な宇宙線から守ってくれる防護壁でもありますが、その働きがまさにオーロラを生み出す仕組みでもあるのです。
今回ご紹介する『オーロラの謎』では、オーロラの仕組みや種類の説明とともに、地球を取り巻く磁気圏と磁力の流れを解き明かすための観測「共役点観測」について詳しく解説しています。南極と北極で同時にオーロラを調べ、オーロラの共通点や相違点を比較することで、普段は見えない地球の周りの磁力の流れと、それに影響を与える様々な要素が明らかになってきます。
極地の空を彩る光のカーテンは、巨大な太陽からやってくる強いエネルギーを、惑星である地球がどのように受け流し、取り込んで(利用して)いるかを、肉眼で垣間見られる貴重な現場でもあるのです。

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スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『オーロラの謎ー南極・北極の比較観測ー 極地研ライブラリー』はこんな方におすすめ!

  • 自然現象に興味のある方
  • 極地科学に興味のある方
  • 太陽と地球との関係に興味のある方

『オーロラの謎ー南極・北極の比較観測ー 極地研ライブラリー』から抜粋して5つご紹介

『オーロラの謎』からいくつか抜粋してご紹介します。本書の肝である第3章「オーロラの共役点観測」は非常に読み応えのある章ですが、1章、2章でオーロラの仕組みと地球を取り巻く磁力の流れ、太陽風についての基本をご理解いただけば、オーロラを調べることで何がわかるのかが見えてきます。

オーロラとは何か?

オーロラとは、南極や北極域の遥か上空で発光する自然現象で、その源となるのは太陽です。太陽からは太陽風というガスが放出されていて、このガスはプラズマと呼ばれます。プラズマは負または正の電気をもつ電子や陽子(水素イオン)などからなっています。

太陽風が地球に到達すると、地球の磁場の影響を受けて地球の磁気圏の内側に取り込まれ、太陽と反対方向の夜側に蓄積されます。蓄積量が多くなると、磁気圏の磁力圏に沿って極側へ運ばれていきます。運ばれる途中で加速された電子や陽子は、「オーロラ粒子」と呼ばれ、磁力線に巻き付きながら電離層に向かって飛び込んできます。

飛び込んできたオーロラ粒子は地球の大気に衝突し、地表から500〜100kmの高さで遮られてしまいます。このときの衝突で、オーロラ粒子がもっていた運動エネルギーが大気に与えられ、衝突を受けた大気中の酸素原子や窒素分子は「励起状態」と呼ばれるエネルギー過剰の状態になってしまいます。励起状態は不安定なので、元の安定した状態に戻ろうとしますが、その際に過剰なエネルギーが光として放出されるのです、この光がオーロラです。

オーロラというと何となく北欧やアラスカ、アイスランドのイメージでしたが、オーロラは極地の上空に出るので、もちろん南極にも出ます。一般人が観光で訪れやすいのが北半球なので、オーロラといえば北、と思い込んでいました。南半球では、昭和基地がオーロラの出現頻度が高い「オーロラ帯」の真下に位置しています。

オーロラの源とエネルギーの蓄積場所

オーロラ粒子の源は太陽表面から太陽風プラズマとして地球にやってくる電子や陽子です。地球には磁気圏という磁場の防護壁空間があるので、太陽風プラズマの直接の侵入は防がれています。地球磁気圏の磁場の方向は、南極から北極に向かっています。太陽風の磁場が南を向いたとき、太陽風プラズマは地球の磁気圏内へ効率よく侵入できます。

太陽風が地球の磁場と最初に衝突する昼間側では、双方の磁場が打ち消され、太陽風の磁場と地球の磁場の結合が起きます。この結合によって太陽風プラズマが地球の時期県内に入れるのです。侵入したプラズマは、磁気圏夜側のプラズマシートに運ばれ、蓄積されます。このプラズマシートが、オーロラ粒子の主要な蓄積源かつ供給源なのです。

オーロラを光らせる電子は、プラズマシートから磁力線に沿って地球に向かって動きながら南極域と北極域に同時に降りてきます。プラズマシートは地球をぐるりと取り囲んでいて、そこを通る磁力線を地球上に投影すると、その根元は南極や北極を取り巻く輪のような形になっています。これを「オーロラオーバル」と呼びます。

オーロラが発生するためには、オーロラを光らせるオーロラ粒子、光る大気、オーロラ粒子を溜めておく磁場という3つの条件が揃っていなくてはなりません。条件を満たせば他の惑星でもオーロラは発生します。地球より磁場が強い木製や土星のオーロラはより明るく、持続時間も長いのです。

オーロラの種類

オーロラには様々な形態があり、長年分類・分析が行われてきました。1960年に国際地球電磁気学・超高層大気物理協会が国際オーロラアトラスを作りました。最近では。主にオーロラを発光させる荷電粒子の性質の違いから分類が行われています。

1.ディスクリート(はっきり型)オーロラとディフューズ(ぼんやり型)オーロラ
はっきり型:カーテン状オーロラなどの総称。オーロラ電子の粒子数が多く、より強い加速を受けているため、明るくて形がはっきりしている
ぼんやり型:均質に薄く広がったオーロラの総称。点滅するものやブラックオーロラを含む。はっきり型より低緯度に出る

2.オーロラアーク
カーテン状オーロラや弧状オーロラを総称して呼ぶ

3.脈動オーロラ
真夜中から朝方に出現し、数秒〜数十秒の周期で明滅を繰り返すディフューズオーロラ。特徴的な形状のタイプがいくつかあり、脈動の仕方に違いがある

4.ブラックオーロラ
ディフューズオーロラのオーロラが光っていない暗い部分で明確な形状をもつもの。オーロラ帯の低緯度領域で、オーロラ爆発の回復期に観測される

5.渦状オーロラ
オーロラ活動が活発になると、オーロラアークに渦状をした構造が現れる。カール、フォールド、スパイラルの3タイプに分けられる

6.西向き伝播サージ
オーロラサブストームの開始直後に現れ、激しい動きを伴いながら高速で西向きに移動していく

7.オメガバンドとトーチ
オメガバンド:ディフューズオーロラの極側境界付近に現れる。境界域に張り出した部分がΩの形に似ている
トーチ:発煙筒のような形が波状に連なって現れる

8.ビーズ状オーロラ
オーロラアークの中にあるビーズ状に連結した構造を示すオーロラ

9.シータオーロラと極縦断アーク
極冠域に出現する大規模なアーク状オーロラをシータオーロラと呼ぶ。θの字の真ん中が極冠域を貫く形をしているので、極縦断アークとも呼ばれる

典型的なカーテン状のものは、ディスクリートオーロラと呼ばれるものなのですね。これは画像を見ながらの方が理解しやすいと思います。本書をご覧になったら「この部分がΩか」「なるほどθだ」と納得していただけるかも?

共役点観測とは?

地球には磁石があり、南極にはN極、北極にはS極があります。南半球側から出た磁力線は北半球側につながっています。1本の磁力線で結ばれた南北両半球の地上の地点を「地磁気共役点」と呼びます。この地磁気共役点は、磁気赤道と磁気極の特異点を除いた赤道域付近から極域までの南北半球の無数の地点の間で存在しています。

極域における共役点の位置関係になっている具体的な場所は、北半球の地図上に南半球の同じ地磁気の緯度・経度をプロットするとわかります。オーロラ帯においては、北のアイスランド、南の昭和基地のペアが双方地上にあり、観測に好都合です。

オーロラを起こす荷電粒子は、磁力線に巻き付いて運動する性質があります。そのため、オーロラを起こす粒子は南北半球の間を往復運動しています。この性質により、1本の磁力線で結ばれる地磁気共役点では、似たようなオーロラが出現すると予測されていました。しかし実際の観測では、似ていないオーロラが出現することが多いのです。そこで地磁気共役点で起こるオーロラを同時に観測し、類似性や違いを詳しく比較研究することで、オーロラの発生機構を究明しようとしているのです。

この同時観測によって、南北両半球間での磁力線のつながりの状態(一本につながっている、途切れている、何らかの影響で共役点がずれている、オーロラ粒子を加速させる作用の現れ方が違う等)や、太陽風−地球磁気圏−電離圏の相互作用について、より詳しく知ることができます。

オーロラがカーテンのような筋状に見えるのは、オーロラ電子が磁力線に沿って動くためです。オーロラのカーテンは、地球の磁力線が夜空に浮かび出たものなのです。南から出た筋が北の対になっている地点にきれいにつながっていたら、北でも同じ筋状のオーロラが見えるはずです。そうでなかったとしたら何が影響しているんだろう?と調べることで、地球を取り巻く磁気の世界が見えてくるわけです。

オーロラ観測の世界

地上からのオーロラ観測を大別すると、オーロラの光(主に可視光)を計測撮像する光学観測と、電波を用いてオーロラ周辺のプラズマを探査する電波観測の2通りがあります。

1.光学観測
全天カメラ:全天が撮影視野に入るカセグレン鏡や魚眼レンズを用いて、一定時間ごとに撮影するカメラ装置。オーロラが見え始める時刻や領域、オーロラの形態の時間的・空間的変動などの詳細を調べる。
フォトメーター:光の取り入れ口に狭帯域フィルターを用いて、波長別でのオーロラ光の強度を光電子増倍管などの光デバイスを用いて高感度・高精度で測光する装置
ほかに、オーロラ分光器やオーロラスペクトログラフ等があります。

2.電波観測
リオメーター観測:上空より到来する電波雑音の強度を地上で測定する装置。地上での銀河雑音の測定で、超高層大気中のプラズマの擾乱が測定できる
大型短波レーダー観測:極域の電離圏は磁気圏全体を監視するのに最適なため、極域電離圏でのプラズマの二次元運動を瞬時かつ連続的に地上から観測する装置として、大型短波レーダーが運用されている
非干渉散乱レーダー観測:VHF帯やUHF帯の非干渉散乱レーダーは、オーロラ周辺の電子密度や電子・イオン温度などの物理量を高度方向に遠隔測定できる

オーロラ観測の方法には、このほかに気球などの飛翔体によるもの、衛星によるものなどがあります。日本のものではJAXAが運用している「れいめい」がよく知られています。近年、「れいめい」等の衛星による観測データから、脈動オーロラとマイクロバーストの関連性が明らかになりました。

『オーロラの謎ー南極・北極の比較観測ー 極地研ライブラリー』内容紹介まとめ

極地の空を彩るオーロラは、太陽からやってくる太陽風が地球の磁気圏内に取り込まれ、荷電粒子が磁力線に巻き付いて極地まで移動し、磁力線に沿って飛び込んでくることで大気とぶつかって起こる現象です。
南極と北極で同じ地磁気の緯度・経度の場所(共役点)で同時にオーロラの形や光り方を調べることで、地球を取り巻いている磁力線のつながり方や、太陽活動と地球電離圏との相互作用を知ることができます。
オーロラを知れば、太陽活動が地球に与える影響を知ることができ、「宇宙の天気予報」の制度をより向上させることができるのです。

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