コラム

2021年12月8日  

すべてを巻き上げ、なぎ倒す!竜巻パワーの不思議:『新訂 竜巻』

すべてを巻き上げ、なぎ倒す!竜巻パワーの不思議:『新訂 竜巻』
皆さんは台風のときなど、「竜巻注意情報」が発表されたのを見たことがあるでしょうか?つい先日の11月30日にも、近畿地方など複数の場所において注意情報が出たのをご存知の方も多いと思います。
「竜巻」と聞くと、小説や映画などの題材になってきたアメリカを襲う巨大なものを想像しがちですが、実は日本でも年間平均25個程度は観測されているのです。観測技術や記録技術の進化等により、より観測数は増えていくでしょう。
『新訂 竜巻』は、2014年に発行された旧版に、新しい観測結果や技術を加え、新章も加えて再構成したものです。今回はこの『新訂 竜巻』を、初めて読む方にも旧版をご存知の方にもわかりやすいよう、内容を抜粋して解説していきたいと思います。

この記事の著者

スタッフM:読書が好きなことはもちろん、読んだ本を要約することも趣味の一つ。趣味が講じて、コラムの担当に。

『新訂 竜巻』はこんな方におすすめ!

  • 様々な気象現象に興味のある方
  • 竜巻の起こる仕組みについて詳しく知りたい方
  • 竜巻からの効果的な避難方法、減災方法を知りたい方
  • 竜巻の観測、予測に興味のある方
  • 旧版以降の新しいデータを知りたい方

『新訂 竜巻』から抜粋して7つご紹介

『新訂 竜巻』の中から、内容を何ヶ所か抜粋してご紹介したいと思います。

竜巻とつむじ風(大気中の渦)の違い

竜巻は、積乱雲に伴う上昇流の渦であり、雲底から地面(海面)までつながったものをいいます。竜巻の中心は気圧が低くなるため、周囲の空気が螺旋状に集まり渦が形成され、竜巻渦は凝結した雲(漏斗雲)や巻き上げられた塵や砂によって目に見えるものになります。日本では陸上で発生するものと海上で発生するものをまとめて「竜巻」と呼びますが、アメリカではスーパーセルに伴う竜巻をトルネードと呼び、それ以外のものをスパウトと呼び分けることがあります。

竜巻とつむじ風との違いは、上空に親雲が存在するかどうかです。つむじ風の発生原因は、強い日射で暖められた地上付近の空気の塊が、上昇する際に周囲の風の変化を受け渦が形成されることです。

竜巻が竜巻であるためには、上に雲(親雲)が存在するかどうかが重要なのですね。高く伸び上がる積乱雲の中や周辺では色々なことが起こっています。この『新訂 竜巻』を含む『極端気象シリーズ』では、積乱雲の専門家小林文明先生がこれらの気象現象を詳しく解説していますよ!

竜巻を生むスーパーセル

アメリカ中西部で暖候期に発生する巨大な竜巻は、トルネードと呼ばれます。これを生み出すのは、組織化され巨大に発達した特別な積乱雲「スーパーセル」です。特徴は積乱雲自体が回転していることで、この回転はメソサイクロン(竜巻低気圧)と呼ばれます。
スーパーセル型トルネードは「親雲内にメソサイクロンを持つもの」と定義できます。

積乱雲の中では、車軸のような水平渦が形成されますが、積乱雲の強い上昇流が水平渦を立ち上げ、鉛直渦ができます。これがメソサイクロンです。しかし、直径10kmもある巨大なメソサイクロンから直径100m程度の竜巻渦が生み出されるタイミングやメカニズムについては、未だ解明されていない点があります。

一方、非スーパーセル竜巻のメカニズムは大きく異なります。地上付近で風がぶつかり風の水平シアー(同じ高度で異なった風向・風速の風が存在する状態)が生じると、このシアーライン上は不安定になって、いくつもの渦が形成されます。ここに積雲・積乱雲が通りかかると、渦が上昇流によって縦に引き伸ばされ、竜巻となるのです。

スーパーセル型竜巻とそうでないものとの違いは、「積乱雲が最初にあり中に大きな渦ができるか、先に地上付近でできていた渦のところへ積乱雲が通りかかったか」と考えればいいのでしょうか。竜巻が生まれるまでの様子は、本編内で写真と図を用いて詳しく解説されています。

竜巻発生の兆し

竜巻の前兆現象の多くは、スーパーセルに伴う現象です。このような巨大竜巻においては、はるか遠くから見てもわかるものから、竜巻が目の前に迫るまでの各段階に前兆現象が伴います。

1.遠くの前兆:「雷鳴が聞こえる」、「かなとこ雲が広がってくる」、「乳房雲が雲底に見えた」
2.近くの前兆:「降雹」、「落雷」、「真っ暗になる」、「冷たい風を感じる」、「土の匂い」等
3.竜巻が目の前に:「地上の渦が見える」、「湯気のような雲が見える」、「耳鳴りがする」「ゴーという音がする」

竜巻を観測するストームチェイサーの命知らずな様子は、TVや動画などでよく見られます。実際に遭遇したら観察する余裕はないかもしれませんが、空を塞いだ巨大な雲の底やその端を見れば、特徴的な形が現れていたりして前兆を知ることができます。こうした知識を、もしもの時に備えて覚えておくとよいかもしれません。

ダウンバーストの発見

ダウンバーストも竜巻同様積乱雲から発生し、航空機を墜落させたり、地上の構造物を破壊したりする気象現象です。ダウンバーストは、積乱雲からの強い下降気流のうち、強風域の広がりが1〜10km程度のものを指します。
発達中の積乱雲の上昇気流で持ち上げられた空気の塊に含まれる水蒸気は、上昇に伴って雨、雪、氷等の降水粒子になって重くなります。それが落下するとき空気は冷やされ、降水粒子に引きずられて下降流が強まります。これが地面にぶつかると、四方八方に発散します。このとき中心から反対方向に発散する風速差が10m/sを超えるものが、ダウンバーストと呼ばれます。

飛行機を押しつぶす「ダウンバースト」も、積乱雲において起こる現象です。本書でも周辺現象も含め詳しく解説しています。同じ『極端気象シリーズ』で、『ダウンバースト』という書籍も発行されていますので、よろしかったら読んでみてください。

竜巻から身を守る:自分の立ち位置を知る

竜巻が近づいた場合の具体的な退避行動を考えてみましょう。時間的な猶予は、数分から数秒です。

家の中では、
1.とにかく家の中へ!
2.最も安全なのは浴室!バスタブの中で姿勢を低くしよう
3.頭を守ろう!
4.子どもは飛ばされてしまう!手は離さずに!
5.ベランダの物が凶器に変わる!エアコンの室外機は固定すること

屋外では
住宅密集地:とにかく丈夫な構造物内へ!
交通機関:合う前に避ける!自然現象を理解し、回避行動を!

数分から数秒の間に何ができるんだ!と思ってしまいますが、家なら頭に何かかぶって浴槽に飛び込めば助かる確率は上がりそうです。地震においてもそうですが、四方を壁に囲まれて独立した小部屋は、災害避難において非常に重要なのですね。

日本版EFスケール

竜巻の被害スケールを竜巻の強さとしてランク付けした国際尺度「F(フジタ)スケール」は、藤田哲也博士が1971年に提案したものです。音速を上限とした12段階のスケールで、F1〜F5、F1以下のF0の6段階で竜巻の強さが表現されてきました。F0では小枝が折れる程度、日本で起こった竜巻で最も強いものはF3、アメリカだとF4やF5が時々起こりますが、そのレベルの竜巻は飛ばされた車や列車が降ってくるほどの威力です。

Fスケールは被害程度を尺度にしているため、被害状況と風速との対応が検証不足だったり、国や地域の違いによって左右されたりといった欠点もあります。そのためアメリカではEFスケールという改良版を用いています。

日本でもこのEFスケールを日本向けに改良した日本版EFスケールが2016年4月から用いられています。JEFの特徴は風速をもとにしてFスケールを改良したという点で、「風速推定」のためのランクということができます。

「木造住宅」「鉄筋コンクリート集合住宅」等の被害指標(DI)がどの程度被害を受けたか(被害程度:DOD)を判定し、それをもとに風速を推定、スケールを決定します。

ディザスター映画を観ていると、時々この「フジタスケール」または「F◯」という言葉に気づくことがあります。日本出身の学者が提案した概念だったのですね。藤田博士は、ダウンバーストを発見した人でもあります。

日本における竜巻の実態

日本における竜巻発生頻度は2006年以降増加しています。それ以前は年平均20個程度だったものが、年平均25個程度に増加しているのです。主な理由は、気象庁が2008年から竜巻注意情報を出すようになり社会的関心が増したことや、観測技術の向上により竜巻発生の事実がよくわかるようになったことが考えられます。

しかし、日本の気候が変化してきたこともまた大きな原因であると考えられます。春と秋が短くなり、春夏秋冬のバランスが崩れてきたと感じている方は多いでしょう。
気候が変わると、温暖化により大気中の水蒸気量が増えます。さらに寒気と暖気の差が大きくなり対流活動が活発になると、積乱雲から発生する豪雨や雷、ダウンバーストが頻発したり、台風の強度が増したりします。竜巻も、対流活動の活発化によって増える可能性があります。もっと長期のデータを取れば、明確に竜巻が増加したという結果が現れる可能性があります。

日本で発生する竜巻は、スーパーセル型のような大規模なものは少なく、非スーパーセル型の竜巻が多くなっています。発生原因の割合は温帯低気圧が約半数、台風が約4分の1ですので、低気圧や台風の情報を注視すれば、備えることは可能だといえます。

冬にも台風が発生し、夏が終わったらと思ったら冬が来る……こうした気候変動も、様々な気象災害の発生に影響していないわけがありません。巨大な積乱雲が発達しやすくなることで、都市生活が大きな打撃を受ける可能性も上がるのです。

『新訂 竜巻』内容紹介まとめ

あります。巨大な威力を持つスーパーセル型発生の特徴は積乱雲中で「メソサイクロン」という大きな渦ができること、非スーパーセル型発生の特徴は、地表付近で空気がぶつかりあって渦が先にできていることです。

竜巻は、地上の建物や木などを吹き飛ばし、多大な被害をします。2019年10月の千葉県市原市の被害を覚えている方も多いでしょう。「本場」アメリカのものより規模は小さいとはいえ、日本でも竜巻被害は発生しているのです。

最近の詳しい被害状況については、一章を設けて解説しています。間近に見たことがある方も、縁遠い地域の方も、確認していただけば竜巻の恐ろしさがわかるかと思います。
また、竜巻を生む積乱雲の内部や周りで起こる様々な現象も、本書の中で解説しています。通してお読みいただけば、積乱雲という雲の特殊性がより深く理解できるでしょう。
旧版に新たなデータを加えた『新訂 竜巻』、他の『極端気象シリーズ』と合わせて、ぜひご覧ください!


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『極端気象シリーズ』おすすめ3選

『雷』
極端気象シリーズ第4弾!
『竜巻』の著者小林文明先生が、古来人間たちを魅了してきた神秘的で身近な気象現象「雷」に迫ります!世界的にみても珍しい日本の雷の特徴って?雷雲の中はどうなってるの?かわいいイラストとわかりやすい解説で、神秘のベールをめくります。

『積乱雲』
極端気象シリーズ第3弾。積乱雲を研究し続けて30年、小林先生の筆は絶好調です。竜巻や雷、スーパーセルやゲリラ豪雨のもととなる特殊な雲、積乱雲。この雲の発生と内部構造、組織化といった特徴をまとめました。都市に「ゲリラ豪雨」をもたらすメカニズムについても、詳しく解説しています。

『ダウンバースト』
極端気象シリーズ第2弾。飛行機を墜落させてしまうほどの威力を持つ強烈な下降気流「ダウンバースト」。竜巻と違って目に見えないため、昔は気づかれていませんでした。本書はそのメカニズムと実態、観測と予測について解説します。
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