コラム

2016年1月7日  
北極読本

コラム3 スピッツベルゲン島における周氷河地形

コラム3 スピッツベルゲン島における周氷河地形
『北極読本ー歴史から自然科学、国際関係までー』までに掲載しているコラムを紹介。「コラム3 スピッツベルゲン島における周氷河地形」

スピッツベルゲン島は、最終氷期に張り出していたバレンツ氷床の融解に伴って露出した地表面にツンドラの景観が広がり、周氷河地形が発達している。周氷河地形とは、地面が凍結融解作用を受けることによって形成される特徴的な地形で、氷河の周辺地域のように寒冷で草木が生えないような所で発達しやすいことから、このような呼び名が付いている。この地 形は、気温や地温のほかに、地中の水分量、傾斜や地質、植物の付き方などの条件によってでき方が違う。

1.地面の凍結割れ目が生じて形成される多角形土や構造土
2.傾斜面の土塊がキャタピラのような動きをすることでできるロウブ状地形
3.崖錐(落石が円錐状に溜る)の中の永久凍土が変形流動することによってできる岩石氷河
4.永久凍土層の下にある地下水が地表近くへ吹き出すことによって地面を押し上げてできるピンゴ

などがある。スピッツベルゲン島ではこれらのすべてを見ることができ、まつで周氷河地形の見本市場のようだ。
 日本の地形研究者がスピッツベルゲン島で1980年代から調査を始めた。通年観測やひずみセンサーによる計測、測量等による、形成プロセスの解明研究である。
 2000年代に入ってからは、国際永久凍土学会によって長期的な観測が始まった。多角形土を縁取る割れ目がいつどのような温度条件で起こるのか、それが気候変動の影響を受けているのかを調べる目的で、地温・土壌水分・積雪深・割れ目の動きを計測するため、自動撮影カメラなどを用いた観測地がアドベントダーレンという谷底平野に設置された。観測結果によると、割れ目は寒冬期に発生しやすく、暖冬期には不活発な傾向があり、20年前の観測結果と比べると割れ目の動きは減少傾向にあり、温暖化による気温上昇の影響が示唆されている。島内北部のニーオルスンの岩石氷河の動きはヨーロッパ・アルプスのコルヴァッチにある岩石氷河の動きよりも鈍く、温暖化の影響がすべての周氷河地形の形成を鈍らせるかどうかは明らかになっていない。
 こうした中、「周氷河プロセスの観測技術の標準化と地球規模観測網の設立」という計画が立ち上がり、スピッツベルゲン島を発信拠点として世界中に分布する周氷河地形の観測網が広がりつつある。また、火星の表面でも周氷河地形と同様なもの(多角形土や岩石氷河など)が見つかっている。地球上で得られた観測技術の成果を基にして、異なる惑星下における形成プロセスの相違点などについての研究も進みつつある。
(三枝茂)



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