コラム

2015年2月10日  
業界人

第6回 海上保安大学校女子学生インタビュー

第6回 海上保安大学校女子学生インタビュー
四方を海で囲まれた海洋国家である日本は、貿易や漁業により海の恵みを得る一方、海難や密猟・密航といった海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど、様々な事案が発生しています。これら海上の安全確保を任務としているのが海上保安官です。海上保安官の仕事は、海の上で行われているため一般の方にはあまり知られていない存在でしたが、映画「海猿」、尖閣諸島領有権問題、小笠原諸島沖で中国漁船によるサンゴ密猟のための領海侵入などが報道され、海上保安官の存在が知られるようになりました。
海上保安大学校は、海上保安庁の幹部職員を養成するための機関であり、全寮制を基盤とした独自の教育環境の下、広範囲にわたる海上保安業務を全うできる人材育成のための教育訓練を行っています。
海上保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生にお話を聞いてきました

★1日のスケジュール

古橋:6:30に起床、6:35までにベッドメイクをして起床整列します。
藤田:6:35から体操、掃除をして7:10から朝食です。
豊島:8:20に課業(授業・訓練等)整列となります。
山名:午前の課業は8:45から開始され12:00~12:45が昼食
   午後の課業は13:00~16:15となります。
濱田:授業終了後から17:15までの間、体育部活動を行います。
島田:課業終了が17:15ですので、これから18:15までに夕食を取り、
   その後19:00から22:15まで自習時間が設けられています。
   17:15からは、外出も出来ます。22:15から掃除を行い、
   22:30に消灯巡検・就寝となります。

★海上保安大学校はどこで知りましたか?

古橋:「海猿」の映画が上映されていましたので、インターネットで調べて知りました。

小川:大学案内に記載されていますが、みなさんインターネットですか?

山名:私は漫画「トッキュー」で知りました。

木村:私は、父が海上保安官でしたので幼いころから知っていました。

★海上保安大学校を選んだ理由は何だったのでしょうか?

濱田:
子供のころから警察官、消防官などの公安系の職業に就きたいと思っていたのですが、身長が足りませんでした。海上保安大学校ではそこが大丈夫でしたし、長く水泳を続けていましたので選びました。

末永:
勉強できる範囲が広いということで選びました。法律も勉強できて実際の船に乗って機関等を扱うこともできるということも調べて知り、私自身、いろいろなことに興味があったので幅広いものに触れられるという、そのような教育内容に興味があって来ました。

★海上保安大学校の魅力は何ですか?

藤田:
いろいろなことに挑戦したり、体育部活動も含めて幅広い分野も学んだり、自分がやりたいことに取り組めます。やりたい人は、どんどんやっていけるところです。そこで自分を伸ばしていき、知識を増やせるところがいいところだと思います。



豊島:
同期(入学した年度別に“期”として学年を形成)内の結びつきが強いところです。一人でできる限界はありますが、それをみんなでやっていけることが魅力です。

小川:どのようなときに結びつきが強いと感じますか?

豊島:勉強面で困った時に助けてくれる同期は、とても心強いです。

山名:濃い人間関係が作れることが魅力の一つだと思います。

★入学してよかったと感じることは?

演田:乗船実習で日本一周するなど、一般大学ではできないことが魅力であり入学してよかったと思います。

脇野:
泳ぎが得意ではなかったので、夏場の遠泳訓練(泳力別に約5.5キロメートルまたは約9.2キロメートル泳ぐ)開始直後はきつかったものの、同期や上級生から泳ぎ方を熱心に教えてもらい、乗り切った時の達成感がありました。今までだったら挑戦しようと思わなかったことに挑戦できたこと、みんなの助けでできたということがよかったと感じました。


木村:
私も泳ぐのが苦手で、訓練前の練習が厳しく、入学しなきゃよかったと思いましたが、泳ぎ切った時に周りの人との強い結びつきや達成感を実感したので、入学してよかったと思いました。

★学生生活で苦労していることは何でしようか?

末永:
1学年の時は、一般大学と変わらない基礎科目が多くてよかったのですが学年が上がるにつれて勉強する内容が専門的に変わってきます。当校では法律関係の科目も大事ですので、理系からきた私にとっては苦手な科目なので苦労しています。
藤田:
寮生活なのでテレビを見ることが少なく、世の中の情勢を知らないことがあります。各自習室で新聞を購読していますが、自分から情報を取りに行かないと何も情報を得られないなど、アクションを起こさなければならないので、これに苦労しています。自分の考え方ばかりになってしまうことはよくないと思います。やはり、自分から取りに行かないと得られないものかと感じます。

★座学と乗船実習での違いを感じたことは何でしようか?

豊島:
機関科なので、機関の原理や動きは授業で学んでいましたが、実際に動かしたことがありませんでした。乗船実習で初めて発電機などを動かし、動いている仕組みが分かり、多くの発見がありました。

山名:
本格的に船の上で生活することが初めての機会だったので、陸上生活とは大きく異なり、気象・海象などに大きく左右される船内生活の不便や特殊性を実感し、今後の船艇勤務の参考になったということを強く感じました。

濱田:
座学で航海計器や海上の交通法規を勉強しましたが、座学では難しいと思っていました。ですが、実際に航海計器を操作してみると思っていたより簡単なこともありました。また、他の船舶を避けるための航法を各船舶が守るのは当たり前ですが、率先して自ら他の船舶を避けていくことが主になっていたので、座学との差に鸞きでした。

★乗船前の不安・期待はありましたか?

島田:
船酔いが1 番の不安でした。期待は、上級生からイルカを見れると聞いていたので楽しみにしていました。

★乗船を振り返ってどうですか?

山名:
乗船実習ができたことは、自分にとって価値があり身になったことですし、全力で取り組まなければ乗り越えることは出来なかったと思います。これ以上のことはできなかったと、はっきり言い切ることができるかと言えば疑問の残るところもありますが、無事に終わることができて良かったと感じました。

濱田:
乗船実習は厳しいと聞いていましたが、実際に乗ってみて命の危険があるときは、ものすごく怒られることもありましたが、危険だからこそ安全を第一に考える練習船の乗組員のようになりたいと強く感じました。このためにも、在学中にもっと多くの知識を身につけなければいけないと思っています。

島田:
最初は、乗船実習の約3ヶ月間を乗り越えられるかという不安もありましたが、実習を終えて、授業での理論と実習での実務が繋がったことを実感でき、よかったです。

脇野:
乗船実習前に機関の原理等は学んではいましたが、実際に機関の発停や点検をしたことがありませんでしたが、自分の手で実際にしてみると、とても楽しかったこと、発見が多かったことを覚えています。ただ、乗船直後は、船酔いや疲れですぐ寝ましたが、今になって考えるとあの時間が惜しく、乗船実習は実践しながら知識を得られる絶好の機会なので、もっと時間を有効活用できればよかったと後悔しています。

木村:
乗船実習は、実務的なことを学ぶのでやりがいはありましたが、座学でしか学べないこともあるのでもっと勉強しなければと感じました。将来は船舶の運航に海上保安業務の勉強も加わり、余裕がなくなるので、で
きるときに勉強しておかなければいけないなと思いました。

末永:
十分な予習をして臨みましたが、復習が足りなかった場面があり、自分がやったことはいくら疲れていてもそのときにノートにとって記しておくということを最初からやっておけばよかったと後悔しています。次の4年生乗船実習では、十分な予習をして臨み、復習をしっかりして、次に同じことをするときは復習した部分を見返し、前はなぜ失敗したのか考え、反復してよりよいものにしたいと思います。

古橋:
次の4学年乗船実習では、もう少し視野を広くしたいと思います。例えば、3学年乗船実習では、航海当直中に他の船舶間の無線通信を聞いても自分には関係ないと聞かなかったことも多々ありましたが、自分が通信するとき、簡潔で明瞭な意思を相手に伝えることが出来るように他の船舶の通信を聞いて多くの通信方法を学びたいと考えています。

★海上保安官を目指す女性ヘ

藤田:
いろいろなところで女性の活躍する場が広がっていると思います。今、当校にいる女子学生も一人前の海上保安官として活躍することを目指し、入学してから頑張ってここまできて、これからも頑張っていくという気持ちでいます。男性が多い仕事ですが、男女関係なく、気持ちがあればきっと自分のため人のためになる仕事ができる場所なので、もっと多くの女性に来てほしいと思います。

★危険を伴う仕事に不安を感じませんか?

濱田:
不安は感じません。海上保安官であれば海の安全や人の命を守るという気持ちがあるので、男女関係なく訓練を積めば安全にできると考えているので何でも一緒にやっていきたいと思います。

島田:
女性が増えてきているので、以前より女性ができないことが緩和されてきているのではないかと思います。「女性だから」とみられないためにも自分が積極的にできることは、率先してやりたいと思います。

脇野:
危険だからと避けることを考えるのではなく、できる立場にいるのであればきちんとできることは全部やっていきたいと思っています。

木村:
男子に比べて力がないことに不安は感じますが、男女関係なく自分のできることはしっかりやるという気持ちで、何事にも取り組みたいと思っています。

★今後の抱負を開かせてください。

末永:
3学年になり現場赴任への道が見えてきた中で、乗船実習や勉強が実務に近づいていくのですが、目の前の壁を一つ一つ乗り越えていくことが大事だと思います。でも、それだけではなく広い視野を持って長いビジョンで先々のことを考えながら行動し、勉強していけたらと思います。

古橋:
この職業では、体力面とか女性が不利なこともあるのですが、その部分を埋められるよう努力していきたいと思います。

藤田:
現場に出るといろいろな職種があり、自分がどの職種で仕事をするのか分かりませんが、どの職種でも自分ができることを精一杯、全力ですることが私たちのやるべきことだと思いますので、目の前のことをしっかりやることだと思っています。

豊島:
上に立つ者として恥じないよう、皆に頼られるような人間になっていきたいと思います。

山名:
現場に出るまでに自分の長所をできるだけ伸ばして自分にしかできないことを探しながら他の分野も伸ばしつつ、現場で必要とされる人材になれるよう精進していきたいと思います。

濱田:
乗船実習で最も感じたことは、現場に出るにはまだまだ準備が足りないということだったので残り2年間でやれることをやり、自信を持って現場に行けるように勉強していきたいと思います。

島田:
上の立場になった時にまわりの考えに自分の考えを合わせていくのではなく、周りの人やいろいろな人の考えを受け入れた上で、自分の考えや意思をしっかり持って働ける人になりたいと思います。

脇野:
乗船実習を終えて自分自身がまだ不十分だと思いましたので、これから現場に出るまで、また現場に出てからも、多くの知識や情報を吸収して、自分の力を増やしていきたいと思います。

木村:
自分の得意なことを見つけてこれを極め、勉強とともに寮生活を充実させていけたらと思います。

【編集後記】

今回は、今までのインタビュー中で最も多い9名!海上保安官を目指す女性が増え、同じ女性としてとても嬉しく感じ、女性保安官の活躍を期待します。
海上保安大学校を知るきっかけを聞いたところ映画「海猿」、漫画「トッキュー」という声が聴かれ、映画、漫画の影響が大きいのは、今も昔も変わらないのですね。
女性の活躍する場が広がっている中、海上保安庁では、女性保安官が長く働けるようにと様々な取り組みを行っています。育児休業申請期間の延長、出産後復職した際の時短勤務の利用など制度がかなり充実し、働きやすくなっています。インタビューの中では「男性が多い社会ですが、男女関係なく自分のため人のためになる仕事場であるから、何事も積極的に取り組んでいきたい」と現場へ出る気持ちをしっかり持ったお話しも聞けました。
彼女たちが、海上保安大学校を選んだ理由は様々ですが、入学前も後も魅力と思えるのは、幅広い分野で学べ、他の大学では経験できないことが多くあり、仲間という大きな財産を得られることにあるのではないでしょうか。
学生たちは、海の安全、人の命を守るという心をもち、将来の海上保安官を目指し学業、訓練に励んでいます。一人でも多くの若者が「海」への夢を抱いていただければと思います。
今回お話を聞かせてくれた木村さん、島田さん、末永さん、豊島さん、濱田さん、藤田さん、古橋さん、山名さん、脇野さん、ありがとうございました。

代表取締役社長
小川典子
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