コラム

2014年8月18日  
著者

竜巻の著者に聞く! 30年間の竜巻研究を1冊にまとめました。

竜巻の著者に聞く! 30年間の竜巻研究を1冊にまとめました。
竜巻の研究をして30年。いつ、どこで発生するかわからない竜巻。そんな竜巻の研究を第一線で行っている防衛大学校の小林先生に、竜巻の研究をはじめるきっかけ、どのような研究を行っているかを語っていただきました。
「竜巻の渦そのものを計測することも可能になっています。竜巻をもたらす特別な積乱雲ースーパーセルーの中では、一体なにが起こっているのか? 本書は、積乱雲が大好きな一研究者が、30年間日本の竜巻を、現地調査で、気象レーダーで、この目で観てきた、竜巻のお話です。私たちの住んでいる、日本における竜巻の実態を理解してもらえれば幸いです(本書『はじめに』より一部抜粋)」

雲が好きになったきっかけを教えてください

小学校5年生の時だったと思います。七色の彩雲を見たのをきっかけで、雲や気象に興味を持ち、気象観測クラブを作ったのを覚えています。毎日、百葉箱で気温を観測するのが楽しかったです。
もうひとつは、中学生の時に写真で見た、関東大震災時に発生した積乱雲です。大地震の直前に発生した“異様な積乱雲”は頭から離れませんでした。
高校時代はよく雲の写真を撮っていました。大学は“雪”を研究したくて北海道大学に進学し、石狩湾から進入してくる雪雲や石狩平野で発生する積乱雲だけでなく、毎日大学の屋上から手稲山に沈む夕日をみて過ごしていました。今も毎日研究室の屋上で、「きれいだなぁ! 不思議だなぁ!」といいながら、空を見上げて雲を観ています。

なぜ竜巻の研究をはじめたのですか?

はじめから竜巻の研究をしようと思っていたわけではありません。気象を研究する人は誰でも竜巻に興味を持っていると思いますが、なかなか竜巻に出会うことはできません。今と違って、当時は竜巻が発生してもすぐに情報が入ってくるわけでもなく、ドップラーレーダーなどの解析できるデータも存在していませんでした。大学院1年の時に初めて竜巻の現地調査を行ってから、竜巻やダウンバーストの観測や被害調査を積極的に行うようになりました。目の前で竜巻やダウンバーストを観測する機会があり、ますます虜になりました。竜巻に遭遇する確率は宝くじに当たるようなものだと思われていましたから、よく“運を使い切った”といわれたものですが、気が付いたら、30年間で多くの竜巻との出会いが続いたというのが、私と竜巻との付き合いです。

竜巻研究の魅力とはどんなところですか?

学術的には、未知のことがたくさんある点です。竜巻やメソサイクロン内部はどのくらい気圧が下がっているのか? 親雲のメソサイクロン内でどのように竜巻が形成され、いつ地上にタッチダウンするのか? どのような条件で、漏斗雲やアーククラウドが形成されるのか? 竜巻を生む台風と生まない台風の違いは? など、竜巻には未だ解明されていない点が多く残されていて、科学的な興味をかき立てられます。竜巻やスーパーセル、ガストフロントなどは、その独特の形状や、刻々と変化する様子は、見ているだけで引き込まれます。また、モクモクと巨大化する積乱雲や、乳房雲、かなとこ雲、雨足、発雷などは、最も美しい自然現象のひとつではないでしょうか。

この本をどう生かしてほしいですか?

気象に興味を持っている方や気象予報士を目指している人はもちろんですが、広く一般の方に読んでもらえればと思い書きました。ここ数年で、日本でも竜巻による甚大な被害が発生し、私たちひとりひとりが身を守る術を知る必要が生じています。学校の先生、自治体関係者、防災に関わる人、屋外で仕事や活動をされる方などに一読頂ければと思っています。また、自分がそうであったように、学生の皆さん(小学校高学年~)にも見てもらい、大気現象に興味を持つきっかけになれば幸いです。「うちに竜巻が来たらどこへ逃げようか」と家族で話し合うきっかけとなれば、著者としてうれしい限りです。

著者紹介


小林文明(こばやし ふみあき)
最終学歴:
北海道大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士後期課程修了
学位:
防衛大学校地球科学助手、同講師、同准教授を経て、
現在は防衛大学校地球海洋学科、科学教授
千葉大学環境リモートセンシング研究センター客員教授(平成23〜24年)
日本大気電気学会会長
日本風工学会理事
専門:
メソ気象学、レーダー気象学、大気電気学
研究対象は積乱雲および積乱雲に伴う雨、風、雷

小林先生の著書はこちら
竜巻ーメカニズム・被害・身の守り方ー
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