北前船の近代史(2訂増補版)−海の豪商たちが遺したもの− 交通ブックス219


978-4-425-77183-7
著者名:中西 聡 著
ISBN:978-4-425-77183-7
発行年月日:2021/11/28
サイズ/頁数:四六判 224頁
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今ひそかなブームとなっている北前船。しかし、その名を知られているほどには、これまで実態の解明は十分とはいえなかった。
本書は、北前船主たちの活動実態と、明治期以降の産業化に与えた影響を詳しく調べ、わかりやすく解説した。
2訂増補版では、内容の追加、補章2「鉱山業と北前船主」を追加した。

【まえがき】 ブームとなった北前船 ソーラン節をはじめ、幾度となく歌の舞台になってきた北の海で、旧き時代に活躍した日本型の木造帆船、それが「北前船」である。この北前船が、近年、静かなブームとなっている。例えば、2006(平成18)年に財団法人みちのく北方漁船博物館財団が北前型弁財船を復元して建造し(「みちのく丸」)、11年3月の東日本大震災の後に、震災復興支援事業として同年7月〜8月に日本海沿岸を航行し、各地でさまざまなイベントが行われた。そして、2007年からは北前船寄港地フォーラムが北海道・東北日本海沿岸地域を中心に年2回のペースで開催され、17年には一般社団法人北前船交流拡大機構が設立された。その後は、同機構が支援する形で、北前船寄港地フォーラムは定期的に開催されている。
経済界では、日本海沿岸地域の13道県の経済同友会が、2008年から代表幹事サミットを開催し、日本海沿岸地域の人と経済の交流を進めようとしている。また、2010年に現代版北前船プロジェクトが民間有志によって立ち上げられ、日本海沿岸各地で交流イベントを開催している。こうしたさまざまな活動を背景として、山形県酒田市など7道県11市町の北前船寄港地・船主集落が「日本遺産」として平成29年度に認定された。この北前船寄港地・船主集落へは、日本海沿岸・瀬戸内地域の市町がさらに追加参加し、現時点で16道府県48市町に広がった。
北前船がブームになっている背景には、社会の都市化・大衆化が進む一方で、人と人とのつながりが希薄になっている現代において、現代より人間関係が濃密であった旧き時代を振り返りつつ、もう一度いろいろな地域の人と文化の交流を深めたいとの強い希望が社会に現れてきているからと私には思われる。特に、中国・韓国との人や経済の交流が活発になった今こそ、日本海がより重要になるであろうと考えられる。実際、日本の歴史上でも、欧米との結び付きが強かった時代は、19世紀末以降の100年程度に過ぎず、ほとんどの時代の日本は、東アジア地域の一員として、朝鮮半島や中国との結び付きが強かった。そして、朝鮮半島と日本との交流ルートは、主に対馬海峡や日本海を経由していた。なお日本海という呼称については、さまざまな考え方があろうが、本書では特定の価値観を含めずに一般的呼称として「日本海」を用いる。そして東アジア諸国と日本との交流がより一層平和のうちに進展することを期待しつつ、19世紀日本における日本海航路で最も活躍した日本型帆船であった北前船の物語を届けたいと思う。

中西聡
2021年10月

【目次】
序章 北前船はどのような船か

第1部 北海道と北前船主
第1章 場所請負制と北前船
 1 江戸時代の場所請負制
 2 近江商人の北海道進出の先駆者・住吉屋(西川)伝右衛門家
 3 蝦夷地奥地の巨大場所請負人・柏屋(藤野)四郎兵衛家
 4 江戸問屋・栖原屋(栖原)角兵衛家の北海道進出
 5 幕府定雇船頭・高田屋嘉兵衛家の北方開発
 6 場所請負商人の手船経営

第2章 北海道漁業と北前船  1 ニシンの産地・北海道
 2 明治維新と北海道漁業
 3 北前船主と三井物産の競争
 4 北前船主の漁業経営

第3章 北海道の産業化と北前船主  1 「企業勃興」と産業化
 2 函館での「企業勃興」
 3 小樽と札幌での「企業勃興」
 4 近代北海道の主要会社

第2部 北の海へ向かった日本海船主
第1章 東北地方の北前船主
 1 東北日本海沿岸地域の諸会社
 2 「りゅうごいち」野村治三郎家の北前船経営
 3 庄内大地主・秋野家の北前船経営
 4 東北地域経済と北前船主
 5 東北地域経済と北前船主

第2章 越後・佐渡の北前船主  1 新潟県域の産業化
 2 小樽に店を開いた伊藤助右衛門家
 3 新潟財界の大立者・斎藤喜十郎家
 4 佐渡と日本海海運
 5 新潟県域の北前船主

第3章 越中の北前船主  1 綿を運んだ越中廻船
 2 越中廻船と北海道・北洋漁業
 3 富山県の銀行の北海道進出
 4 高岡町の企業勃興と北前船主
 5 伏木港の企業勃興と北前船主

第4章 能登半島の北前船主  1 能登廻船と北海道
 2 戦国時代以来の豪農・時国家の北前船活動
 3 北海道船主と能登半島の交流
 4 浪華財界の三羽鳥・西村家の北前船経営
 5 能登廻船と「海民論」

第5章 加賀の北前船主  1 加賀廻船と北の海
 2 北海の豪商・銭屋五兵衛
 3 函館に店を開いた酒谷家
 4 小樽に店を開いた熊田家
 5 加賀の産業化と北前船主

第6章 越前・若狭の北前船主  1 中世・近世初頭の日本海海運
 2 越前・若狭の主要北前船主
 3 小浜藩の御用船主・古河嘉太夫家
 4 福井県の大汽船主右近家と大銀行家大和田
 5 近代北海道と福井県

第7章 北近畿地方の北前船主  1 北近畿地方の主要北前船主
 2 豊岡の銀行家・瀧田清兵衛家
 3 但馬の山林地主・宮下仙五郎家の北前船経営
 4 北近畿地方の北前船の特徴

第8章 山陰地方の北前船主  1 近代における山陰地方の海運網
 2 北海道に渡った山陰廻船
 3 大黒屋大谷家の廻船経営
 4 朝鮮半島に渡った山陰廻船

第3部 北前船と取引した瀬戸内・畿内の廻船問屋
第1章 瀬戸内地方の廻船問屋
 1 明治時代前期の瀬戸内地方の主要港
 2 広島県鞆港の廻船問屋―片山万右衛門家
 3 徳島県撫養港の廻船問屋―山西庄五郎家

第2章 畿内地方の廻船問屋  1 松前問屋から北海産荷受問屋へ―大阪北海道産魚肥市場
 2 摂津国兵庫港の廻船問屋
 3 和泉国貝塚港の廻船問屋―廣海惣太郎家


補章1 汽船海運業と北前船主  1 五大北前船主の汽船経営への転換
 2 五大北前船主以外の北前船主の汽船経営への展開
 3 廣海二三郎家の帆船・汽船複合経営
 4 大家七平家の日本海国際定期汽船運航

補章2 鉱山業と北前船主  1 海から山へ
 2 廣海二三郎家の鉱山経営
 3 大家七平家と大和田荘七家の鉱山経営
 4 海と里と山を結んだ北前船主

終章 北前船と日本経済  1 北前船と商品市場
 2 北前船と金融市場
 3 北前船と資本市場
 4 北前船再考―近代になって発展した北前船
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