日本海の気象と降雪 気象ブックス025


978-4-425-55241-2
著者名:二宮洸三 著
ISBN:978-4-425-55241-2
発行年月日:2008/10/28
サイズ/頁数:四六判 220頁
在庫状況:品切れ
価格¥1,980円(税込)
品切れ

Amazonでの購入はこちらから

本書は、元気象庁長官である著者が、これまでの研究・経験をもとに、日本海の降雪という現象を多くの人に理解してもらおうと執筆したものです。
冬季季節風、日本海上の気団変質から雪と人との関わり、気象予報と降雪の関係、温暖化が降雪にもたらす影響まで、日本海の降雪にまつわる全体像がわかりやすくまとめられています。さらに、降雪という現象を理解するために必要な気象学の基礎の説明にも多くのページが割かれており、気象に関する知識を多くの人に広めようという著者の思いが込められています。読み進めることで気象という科学の全体像を理解していくことができるでしょう。
 日本海側に住んでいる人、実際に雪に接している人はもちろん、気象や科学に興味のあるすべての人におすすめの一冊です。

【まえがき】より
 日本列島、東ユーラシア大陸、および朝鮮半島に囲まれた海を日本海とよぶ。私達は日本海から何を連想するだろうか?ある人は豊かな海の幸や穀倉地帯の田園を、あるいは美しい落日を想われるであろう。しかし、それより多くの方々は雪国の景観を想起されるに違いない。白雪に覆われた山なみ、白皚皚の雪原、深々と降り積る雪、荒れ狂う吹雪などは日本海地域の冬の自然景観の例である。
 高校の理科のテキストでは、日本海の冬期の気象について次のように説明している。「寒冷な大陸上でシベリア高気圧が発達し、同時に寒冷なシベリア気団が形成される。日本の東方海上で低気圧が発達するとシベリア高気圧との間に大きな気圧差が生じ、シベリア気団から寒気が冬期季節風として流れ出る。温暖な日本海から大気に大量の顕熱と水蒸気が供給され、気団変質がひきおこされる。気団変質に伴って雪雲が発生し、多量の降雪をもたらす。」この説明は簡潔で大筋としては正しいが、日本海域の冬期の気象の全体像を説明してはいない。さらにさまざまな観点から問題を掘り下げなければならない。
 これまでに日本海域の冬期に気象について多くの研究がなされてきた。1960年代には豪雪をもたらす総観規模循環系や日本海上の気団変質が調べられた。1970?1980年代には数値予報モデルによる降雪の数値実験、気象衛星雲写真による降雪システムの研究が進み、1990年代以降は降雪対流の組織化や、その内部構造、降雪雲内の降水課程の研究が行われ、また寒冬・豪雪に関わる地球規模の循環の変動も調べられ、雲分解モデルによる数値実験も進められている。
 実際の大気現象は多種スケール複合現象であるから、各プロセス、各スケールの現象解明すると同時に、その知識を集大成して現象の全体を把握しなければならない。
 近年日本では、各スケールの現象についての研究が進められている反面、それらを統合して全体像を理解する努力が不足しているように思われる。現実に20世紀における日本海域の豪雪事例の統合的報告は、非常に乏しい。これに対し、海外ではそれぞれの地域での個別のテーマの研究にとどまらず、総合的事例解析のドキュメントも編纂されている(例えば、Kocin and Uccellinl(2004)の”Northeast Snowstorms”)。この点に関して日本にの気象界の努力は不十分である。
 本書では、数式を使用せず、できるだけ簡明に日本海域の冬期の気象と降雪の全体像を描くことを試みた。第1章?3章では、基礎的な予備知識の説明を行った。そして第4章以下で冬期の気象と降雪についての説明を行っている。
 本書でかかげた図表の多くは既報の報告物からの引用である。引用した事例のなかにはかなり古い事例も含まれている。それは前記したように、日本での総合的報告が非情に乏しいためである。本書を書きおわった今、あらためて日本の気象現象についての研究の層の薄さ、底の浅さを痛感した次第である。
 本書の前半で述べた気象学の基礎によって日本海の冬の気象と雪について理解して頂き、あるいは、雪という具体的な現象を通して気象への興味と理解を深めて頂ければ幸いである

【目次】
第1章 地球の大気と海洋
 1.1 地球の特徴
 1.2 地球の特徴をもたらした要因
  コラム1 気体の体積、圧力と温度の関係(ボイルーシャルルの法則)と絶対温度
 1.3 地上気温の緯度分布と季節変化
 1.4 地球の大気
 1.5 地球の海洋と大陸

第2章 大気の流れと擾乱
 2.1 風と風圧
 2.2 地上天気図と高層天気図
  コラム2A 高層天気図における気圧傾度力
 2.3 大気の大循環
 2.4 温帯低気圧と極前線
  コラム2B 過度と収束
 2.5 季節風
 2.6 積雲対流

第3章 水蒸気と降水
 3.1 水蒸気
 3.2 水蒸気の飽和と凝結
 3.3 雪と降水
 3.4 降水粒子
 3.5 降水量の観測
 3.6 地球の降水と水循環

第4章 降雪と積雪
 4.1 積雪深と降雪深
 4.2 降雪をもたらす気象状態
 4.3 低気圧に伴う降雪
 4.4 寒気吹出に伴う降雪
 4.5 積雪と気候

第5章 冬の季節風と寒気吹出
 5.1 北半球規模で見た季節風
  コラム5A 層厚と層厚温度
 5.2 シベリア高気圧
  コラム5B 海面気圧の計算
 5.3 シベリア気団
 5.4 冬季の低気圧と発達寒気吹出
 5.5 寒気団の気温と水蒸気量の鉛直分布

第6章 日本海上の気団変質と降雪
 6.1 日本海上の気団変質
 6.2 海面からの顕熱と水蒸気の補給
 6.3 積雲対流の作用
 6.4 熱エネルギーおよび水蒸気の収支解析
 6.5 気団変質と降雪

第7章 気団変質と雪雲
 7.1 静止衛星画像にみられる冬季日本海上の雲
 7.2 航空機から見た日本海上の雲
 7.3 積雲対流のバンド構造
 7.4 雪雲の内部構造
 7.5 日本海収束帯
 7.6 寒気内小低気圧

第8章 豪雪と社会
 8.1 日本海の冬季の気象災害
 8.2 日本海沿岸部の豪雪事例
 8.3 克雪と利雪
  コラム8 克雪環境問題

第9章 豪雪の発現状況
 9.1 豪雪年と小雪年の比較
 9.2 豪雪年の大規模場の特徴
 9.3 上層寒冷渦と豪雪
 9.5 降雪と総観規模変動

第10章 降雪と冬季の気象予測
 10.1 気象学と気象予測の発展と歴史
 10.2 数値予報
 10.3 リモートセンシングによる気象観測と短時間予測
 10.4 降雪と冬季の気象予測の実際
  コラム10 予測と予報

第11章 気候温暖化と日本海の冬の気象
 11.1 20世紀に観測された日本の気候変化
 11.2 降雪・積雪におよぼす冬季の気温変動
 11.3 降・積雪と気温変動の関係
 11.4 日本海域の降雪量と冬季降水量の変化

(気象図書)
カテゴリー:気象ブックス タグ:天気 気象 気象ブックス 
本を出版したい方へ

成山堂書店のBLOG