カツオの産業と文化 ベルソーブックス018


978-4-425-85171-3
著者名:若林良和 著
ISBN:978-4-425-85171-3
発行年月日:2007/11/8
サイズ/頁数:四六判 204頁
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初ガツオ、カツオのタタキ、かつお節と食卓でおなじみの魚、カツオ。でも食べるだけじゃ物足りない!
生態から一本釣りの現場、かつお節の製造法、地域おこしまで、カツオと人のつながりを広く紹介。

【はじめに】より
「毎年、買っているのよ。本場のタタキは、やっぱり良いわ」と嬉しそうに、ご年配の女性が声をかけてきた。
「一節1,600円です。ありがとうございました」
カツオのタタキを手渡す水産商工課の女性職員と私。テントの前で別の男性職員と商工会メンバーが息の合ったワラ焼きタタキを実演し、その裏では水産商工課長が自慢の包丁でカツオをおろしている。町長と総務課長はご満悦のようす。
 これは2002年11月24日に岡山県有漢町で開催された「風ぐるまフェスタ2002inうかん」というイベントでの一コマである。高知県中土佐町では、「カツオの町」のPRのために役場職員や商工会メンバーなどで「カツオのタタキ実演販売キャラバン隊」が組織されており、各地のイベントに出店している。私も2002年最後のイベントに参加させてもらった。当日の大繁盛ぶりは、早朝に土佐市宇佐漁港で水揚げされた鮮度の良いカツオ40匹を、ワラで焼いてタタキにしたところ、わずか2時間ほどで売り切れたことでうかがえる。
「もう、ないの? 去年、買って美味しかったから。もっと早く来るべきだった」
と残念がるお客さんに「申し訳ありません」とキャラバン隊が頭を下げている姿もたびたび見られた。古くからカツオ一本釣り漁業が盛んな中土佐町は「カツオで地域おこし」を進めていて、これはそのイメージ・アップ作戦のひとつである。
「カツオをさばき、稲わらに火がつくと、その周辺には多くの人の輪ができる。その輪を大切にしたい」とは、町の水産商工課長の言葉だが、中土佐町は「カツオで人と人を結び、心と心の交流」を念頭においた地域交流を図っているのである。
 さて、カツオのタタキ。もう、皆さんにもおなじみで食卓にのぼる機会が非常に多くなった。では、カツオが私たちの口に入るまでのプロセスはどうなっているのだろうか? もう少し具体的にいえば、
?カツオはどんな魚で、どのようにして獲るのだろうか?
?カツオ一本釣りに携わる人たちの、カツオへの思いは?
?カツオ加工食品の代表格である、かつお節がいかにつくられ、
 カツオやかつお節はどのように食べられているのか?
?冒頭のようなカツオによる地域おこしにはどんなものがあるのだろうか?
といった素朴ながらも、重要な疑問が浮かんでくる。
 これらの疑問に答えるべく、カツオに関する産業と文化に焦点をあてて取りまとめたものが本書である。カツオにまつわる諸事情(カツオの生態、漁撈から加工、消費まで、さらに、民族、地域振興)について、社会学や経済学、民俗学など社会科学的な視点から総合的な把握を試みたいと、私は考えた。カツオに対する理解が深まり、私の思いが読者の皆さんに伝われば幸いである。さらに、本書によって少しでもカツオやかつお節の消費拡大につながれば、望外の喜びである。

2003年12月
若林良和

【目次】
第1章 カツオの正体を調べる
 1-1 カツオという魚
   (1)カツオの縞は死装束
   (2)カツオの仲間とプロフィール
 1-2 カツオの習性
   (1)自然環境に対する習性
   (2)群れとしての習性
   (3)食餌の習性
 1-3 カツオ群の形態
   (1)島付きカツオ群
   (2)瀬付きカツオ群
   (3)野天カツオ群
 1-4 カツオ群の種類
   (1)スナムラ
   (2)ツキナムラ
 1-5 カツオ群の特異な行動
   (1)ミズオ
   (2)ハネ
   (3)トロミ

第2章 カツオの群れを追う
 2-1 活餌を運び込む
 2-2 海鳥でカツオを探す
 2-3 カツオを船に誘い込む
   (1)餌つきの良いカツオ群の条件
   (2)カツオを誘致するテクニック
 2-4 カツオを竿で釣る
   (1)釣り方の違いーオモカジ釣りとトリカジ釣り
   (2)漁業者の釣る位置
   (3)餌釣りと擬餌針釣り
   (4)カツオ釣りのコツ
 2-5 カツオの漁獲量
   (1)カツオ漁獲と消費の世界一は日本
   (2)生食用は一本釣り、加工用はまき網
   (3)カツオ水揚げの漁港ランキング
 2-6 カツオ一本釣り漁業の動向
   (1)遠洋カツオ一本釣り漁業
   (2)近海カツオ一本釣り漁業
 2-7 カツオまき網漁業の動向
   (1)カツオまき網漁業の種類と規模
   (2)まき網漁業の変遷
 2-8 カツオ一本釣り漁業の戦後史
   (1)マッカーサーライン時代
   (2)黄金時代ーカツオの輸出と南方海域の開発
   (3)オイルショックと円高時代

第3章 カツオの大漁を祈る
 3-1 大漁と航海安全の願い
 3-2 船霊の信仰
   (1)船霊の御神体
   (2)ゴシンレイ(御神入れ)
   (3)船霊への供物と大漁祝い
   (4)船霊と女性
 3-3 エビスの信仰
 3-4 マンナオシ
 3-5 正月の祈願
   (1)フツカエビス
   (2)ハチウクシー
 3-6 初出漁の祈願
 3-7 カツオ漁と女性
 3-8 トリカジの優位と心意

第4章 かつお節をつくる
 4-1 「かつお削り節」と「かつお節削り節」
 4-2 かつお節と削り節の分類
 4-3 かつお節製造のルーツ
   (1)古代に記録されたかつお節
   (2)江戸期以降のかつお節
 4-4 かつお節の原料と品質
 4-5 かつお節の製造工程
   (1)伝統的な製造法
   (2)機械化と外国人の採用
 4-6 カツオの供給量
 4-7 かつお節の生産量
   (1)かつお節の生産量
   (2)生産量の8割は荒節
   (3)産地の双璧は枕崎市と焼津市
 4-8 南太平洋・ソロモン諸島のかつお節製造
   (1)ソロモン諸島のあらまし
   (2)日本企業との合弁会社の設立
   (3)日本人による漁業技術の指導
   (4)高品質の缶詰生産
   (5)日本向けの荒節製造
 4-9 インド洋・モルディブ諸島のかつお節製造
   (1)モルディブ諸島のあらまし
   (2)モルディブの漁業
   (3)カツオ漁の一日
   (4)荒節に似た保存加工ーヒキマス
   (5)ヒキマスを使った料理
   (6)スリランカのウンバダカダ

第5章 カツオを食べる
 5-1 カツオ消費量日本一の高知
 5-2 「県の魚」としてのカツオ
 5-3 カツオの生食
   (1)初ガツオは江戸の粋
   (2)良いカツオと悪いカツオ
 5-4 カツオのタタキ
   (1)カツオのタタキのルーツ
   (2)タタキのつくり方
 5-5 徹底したカツオの利用法
   (1)頭部や血合い・骨
   (2)胃袋・腸
   (3)心臓
   (4)腹
   (5)皮
 5-6 船上のカツオ料理
   (1)オキタタキ(沖タタキ)
   (2)オキナマス(沖膾)
   (3)ワカシ
   (4)チャガケ(茶漬け)
   (5)カツオメシ
 5-7 冷凍カツオの生食への進出
   (1)生鮮と冷凍のカツオの流通
   (2)一本釣りの冷凍カツオ商品ートロカツオとカツオのタタキー
   (3)まき網の冷凍カツオ商品
 5-8 かつお節の選び方と消費量
   (1)かつお節の見分け方
   (2)かつお節の消費

第6章 カツオで地域をおこす
 6-1 「鰹乃国」のまちづくり?高知県 中土佐町?
   (1)中土佐町のあらまし
   (2)カツオでまちづくりー黒潮本陣と黒潮工房
   (3)かつお祭りの開催
   (4)イメージソングとタタキの実演販売
 6-2 カツオノボリが泳ぐまち?鹿児島県 枕崎市?
   (1)枕崎市のあらまし
   (2)カツオノボリの誕生
   (3)カツオにまつわるイベントの開催
   (4)カツオノボリの普及活動
 6-3 カツオ釣り体操で教育?静岡県 御前崎町?
   (1)御前崎町のあらまし
   (2)カツオ釣り体操の誕生
   (3)カツオ釣り体操の展開
   (4)カツオ釣り体操の中断と再開
カテゴリー:ベルソーブックス タグ:カツオ カツオのたたき  漁業  魚貝類  鰹のたたき 
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