グローバルエアラインの経営と実務 AIRLINE OPERATIONS AND MANAGEMENT


978-4-425-86341-9
著者名:Gerald N.Cook and Bruce G.Billing 共著/上甲哲也 監訳
ISBN:978-4-425-86341-9
発行年月日:2022/2/28
サイズ/頁数:A5判 408頁
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価格¥6,600円(税込)
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航空業界について経営的な観点から概説したテキストブック。
経済、オペレーション、ファイナンスなど、経営学の主要分野の基礎理論を適用し、それらを組み合わせて業界を俯瞰しています。また、戦略的なマネジメントではなく、航空業界に特徴的に見られる戦術的なマネジメントに焦点を当てて解説しています。

【監訳者はしがき】 本書は、主に米国や欧州の航空会社を題材として、航空会社の経営理論と実践的な戦術を、豊富な事例を織り交ぜながら解説しています。我が国の航空会社の経営について学びたい、研究したいとお考えの読者には的外れかと言えば、そうではありません。むしろ、航空会社の経営理論の本質に迫りたければ、米国や欧州でどのように競争が行われているかを理解し、それを我が国の状況に当てはめるアプローチはとても有効です。例えば、東京に一極集中した市場のうえに構築された日本の航空ネットワークを俯瞰しても、真のハブ・アンド・スポーク方式の運用の複雑さを理解することはできませんが、米国や欧州などより複雑な市場における航空会社の戦術とその成果を観察することにより、これらの路線構造の本質的な優位性や課題が見えてくるのです。
また、日本から世界へ旅立つ旅行者が、日本の航空会社だけを利用して、あらゆる目的地に辿り着くことは不可能です。安全で利便性の高いグローバルな航空ネットワークは、航空会社同士の連携のうえに成り立っており、それは航空輸送が高度に標準化、共通化された産業であることの証でもあります。世界の航空会社は、業界の国際標準、欧米市場で発展した経営理論やIT 技術などを通じて、お互いに経営や戦略レベルで強く結びつきながら競争しているのです。本書は、我が国はもちろん、世界の航空会社が、どのような共通の理論に基づいて短期的、中長期的な経営の意思決定を行っているかを理解するのに役立つでしょう。
日本において、空運は常に世の中の関心を惹きつける業界の一つですが、航空会社の経営理論を体系的に学びたい、あるいは実践的な知識として深掘りしたいというニーズに応える書物は多くありません。「Airline Operations and Management」の日本語版が、このようなギャップを埋める専門書として、一人でも多くの学生、研究者、実務家の皆さんの学習やキャリアアップの一助となれば幸いです。
本書を手に取ったら、見慣れた世界地図からズームアウトして、地球上を飛び回る航空機を宇宙の彼方から眺めるような気分で読み進めてみてください。

2021年1月
上甲哲也

【はじめに】 ダイナミックで急速に拡大する航空業界は、世界経済の担い手として、また、継続的な経済成長のために必要不可欠な存在である。そして、時には市場シェア偏重の近視眼的な経営のせいで、時には経営者の手に負えないような経済危機によって、しばしば混乱に陥る業界でもある。特に21世紀の最初の10 年は、2度の深刻な景気低迷に見舞われ、航空業界にとっては残酷なものとなった。
そのうち、2008年に始まったいわゆるリーマン・ショックは、1930年代の大恐慌以来、最も深刻なものであった。需要減少の影響により、ATA航空、マックスジェット、アロハ航空、スターリング航空、オアシス香港航空など、いくつかの航空会社が経営破綻した。その他の航空会社は、路線や運航回数の縮小、コスト削減を余儀なくされ、現在も続くリストラが行われている。本書は、学生や若手管理職といった読者層に航空会社のオペレーションと経営の概要を理解してもらうことを目的に、マネジメントの観点から業界の歴史、構造、機能を考察している。所々に経営理論のツールを用いているものの、経営学の予備知識は必須ではない。
本書は、第一次世界大戦終了直後の旅客航空会社の登場から現在に至る、業界史の要約から始まる。第1 章では、初期の業界の発展過程における、政府の経済規制と所有、そして補助金の役割を取り上げる。やがて急速な技術進歩、特に航空機のスピード、信頼性、快適性の向上により、需要が増加し、コストが低下すると、米国をはじめとする政府の政策立案者は、航空会社を路線や運賃規制から解放し、先進国の多くで自由な市場が形成されていった。
第2章では、航空会社の需要と供給に影響を与える力、そして現在アジアで最も顕著となっている旅客輸送と貨物輸送の急成長について説明する。続く二つの章では、航空会社の商品を主題とする。まず、航空会社が選定したいくつもの就航地を結ぶ路線構造について、その選択肢を解説する。次の章では、ロー・コスト・キャリア(LCC)の特徴である質素なサービスから、世界の大手航空会社が提供するファーストクラスからエコノミークラスのアメニティまで、輸送という中核サービスに付加される、幅広い商品について説明する。そして本書の前半部は、運航スケジュールの作成と管理のプロセスについて説明して締めくくる。
第6章では、航空会社の経済性と財務を取り上げ、最大の費用カテゴリーと、競争激化の中でコストをコントロールするための経営陣の選択肢に焦点を当て
る。また、航空機の更新、拡張、および資金調達についても解説してこの章の結びとする。第7章では、複雑で誤解を招きやすい航空会社の運賃設定プロセスを取り上げる。ほとんどの航空会社で採用されている高度なレベニューマネジメントシステムは、顧客の購買意欲と支払能力に基づき、異なる顧客層に異なる運賃を訴求することで収益の最大化を図っている。
第8章で解説する航空会社の商品情報や航空券の流通は、当初は鉄道業界で長年培われた手法に倣ったものであった。しかし、乗客の急増と商品の複雑化に直面し、旅客の予約や変更を管理していた当時の労働集約的な手作業を自動化するため、コンピュータを用いた最初の広域流通システムが航空業界で開発された。最近では、インターネットの普及によって、旅行者が航空会社の商品や運賃を容易に比較できるようになり、運賃競争が激化している。
最後に、初期の国際民間航空の規制とその後の自由化、多くの国有航空会社の民営化、世界的な3 大航空アライアンスの出現について考察し、本書を締めくくる。

【目次】
第1章 歴史的視点
 1.1 交通と商業
 1.2 最初の航空会社
 1.3 初期の規制
 1.4 ブリティッシュ・エアウェイズの歴史
 1.5 米国航空郵便
 1.6 経済規制
 1.7 民間航空委員会の経済規制1938年~ 1978年
 1.8 航空機技術の進歩
 1.9 戦後の航空会社の成長
 1.10 ジェット機の時代
 1.11 米国の規制緩和
 1.12 1978年の航空規制緩和法
 1.13 規制撤廃後の展開
 1.14 米国の規制緩和の結果
 1.15 CABの回顧
 1.16 欧州の規制緩和
 1.17 中国における規制緩和
 1.18 今日の航空業界
 1.19 まとめ
  参考文献
  復習問題

第2章 航空輸送の需要と供給  2.1 規模と範囲と経済的重要性
 2.2 世界の航空輸送の成長要因
  2.2.1 グローバリゼーション
  2.2.2 人口統計
  2.2.3 自由化
  2.2.4 生産要素
 2.3 航空貨物
 2.4 航空需要の予測
  2.4.1 マクロ予測
  2.4.2 路線単位のミクロ予測
  2.4.3 旅客のセグメンテーション
  2.4.4 需要の変動
 2.5 需要曲線
 2.6 予測の必要性
 2.7 新規就航路線の例
 2.8 まとめ
  参考文献
  復習問題

第3章 路線構造  3.1 歴史
 3.2 一般的な路線構造
 3.3 ポイント・トゥ・ポイント方式
  3.3.1 速さ・安さ・独立性
  3.3.2 大規模市場に限定される路線
  3.3.3 ライアンエアーの事例
 3.4 リニア方式
 3.5 ハブ・アンド・スポーク方式
  3.5.1 ハブ・アンド・スポーク方式の運用
  3.5.2 ハブ・アンド・スポークの優位性
  3.5.3 ハブ・アンド・スポークのデメリット
  3.5.4 結論
  3.5.5 ハブ・アンド・スポーク路線方式の例
 3.6 ハブ・アンド・スポークの種類
  3.6.1 ハイブリット路線方式
  3.6.2 マルチハブ
  3.6.3 ディレクショナル・ハブ
  3.6.4 ローリング・ハブ
  3.6.5 テーラード・コンプレックス
  3.6.6 法律、財政、収容能力による制約
 3.7 ハブ空港の要件
  3.7.1 競合するハブ・アンド・スポークシステム
  3.7.2 ハブ空港の衰退
 3.8 路線方式の進化
  3.8.1 サウスウエスト航空の路線システム
  3.8.2 デルタ航空のラ・ガーディア・ハブ
 3.9 まとめ
  参考文献
  復習問題

第4章 プロダクト  4.1 戦略的選択
  4.1.1 マーケティング・コンセプト
  4.1.2 競争戦略
  4.1.3 業界の評価:ポーターのファイブフォース
 4.2 包括的ネットワークキャリア
  4.2.1 差別化
  4.2.2 デルタ航空
 4.3 地域航空会
  4.3.1 保有機材
  4.3.2 世界の地域航空会社
  4.3.3 大変動
 4.4 格安航空会社
  4.4.1 ビジネスモデル
  4.4.2 付帯サービス収益(アンシラリーレベニュー)
  4.4.3 LCCの例
  4.4.4 長距離LCC
  4.4.5 包括的ネットワークキャリア傘下のLCC
 4.5 ハイブリッド航空会社
  4.5.1 アラスカ航空、ジェットブルー、エア・ベルリンの例
 4.6 集中戦略とカスタマイズ商品
  4.6.1 オールインクルーシブのチャーター航空会社
  4.6.2 オール・ビジネス・クラスのサービス
  4.6.3 カスタマイズ商品
 4.7 貨物航空会社
  4.7.1 コンビネーション・キャリア
  4.7.2 インテグレーター
  4.7.3 貨物専門航空会社
 4.8 まとめ
  参考文献
  復習問題

第5章 フライト・スケジュールの作成と管理  5.1 航空会社の事業計画プロセス
 5.2 戦略的プランニング
  5.2.1 長期計画/ フリート選択
  5.2.2 商品企画
 5.3 フライト・スケジュールの作成
  5.3.1 目的
  5.3.2 機種の割り当て
  5.3.3 トレードオフ
  5.3.4 最適化
  5.3.5 旅客サービスシステム(PSS)
 5.4 リソースの割り当て
  5.4.1 航空機の割り当て
  5.4.2 航空機のフロー・チャート
  5.4.3 クルー・ペアリングとビッド・ライン
 5.5 戦術的マネジメント
  5.5.1 エアライン・オペレーション・コントロール・センター
  5.5.2 フライト・スケジュールの乱れ
  5.5.3 イレギュラー運航の管理
  5.5.4 イレギュラー運航の例
  5.5.5 ダイナミック・スケジューリング
 5.6 継続的な改善
  5.6.1 目標
  5.6.2 測定
  5.6.3 実績診断
  5.6.4 是正措置
 5.7 まとめ
  参考文献
  復習問題

第6章 経済性と財務  6.1 利益の推移
  6.1.1 航空会社の利益の周期性
  6.1.2 純利益率
  6.1.3 地域別の収益性
  6.1.4 投下資本利益率(ROIC)
 6.2 利益の獲得
 6.3 収益の創出
  6.3.1 イールドの推移
  6.3.2 運賃の歴史
  6.3.3 有償旅客マイル
  6.3.4 アンシラリー収入
 6.4 コスト構造
  6.4.1 人件費
  6.4.2 燃料費
  6.4.3 所有と借入に関わる費用
  6.4.4 税金
 6.5 レガシーキャリアのリストラ
 6.6 航空機の選択
  6.6.1 航続距離とペイロード
  6.6.2 航空機の運航コスト
 6.7 フリートファイナンス
  6.7.1 内部資金調達
  6.7.2 負債による資金調達
  6.7.3 リース
  6.7.4 ファイナンシング・ポートフォリオ
 6.8 規模・範囲・密度の経済学
  6.8.1 規模(Scale)
  6.8.2 密度(Density)
  6.8.3 範囲(Scope)
 6.9 まとめ
  参考文献
  復習問題

第7章 価格設定とレベニューマネジメント  7.1 規制された運賃
 7.2 レベニューマネジメントの目的
 7.3 レベニューマネジメントの構成要素
  7.3.1 オーバーブッキング
  7.3.2 オーバーセール
 7.4 プライシング
 7.5 レベニューマネジメントの特徴
  7.5.1 座席配分
  7.5.2 価格差別
  7.5.3 マーケット・セグメンテーション
  7.5.4 需要予測
  7.5.5 運賃バケットと運賃ネスティング
  7.5.6 需要予測の更新
  7.5.7 アップセリング
  7.5.8 レベニューマネジメントによる収益向上
 7.6 ネットワークとしての座席配分
  7.6.1 ヒドゥン・シティ発券(一部区間の放棄)
 7.7 航空貨物におけるレベニューマネジメント
 7.8 レベニューマネジメントの将来
 7.9 まとめ
  参考文献
  復習問題

第8章 ディストリビューション  8.1 航空流通の歴史
  8.1.1 OAG
  8.1.2 決済
  8.1.3 発券
  8.1.4 旅行代理店の成長
  8.1.5 The Reservisor(リザーバイザー)
  8.1.6 マグネトロニック・リザーバイザー
  8.1.7 Reserwriter(リザーライター)
  8.1.8 SABER(セーバー)
  8.1.9 旅行代理店への展開
 8.2 グローバル・ディストリビューション・システムの誕生
  8.2.1 CRSによるバイアス
  8.2.2 GDSの規制
 8.3 GDSの合併・統合・売却
  8.3.1 欧州の繋がり
  8.3.2 規制緩和
 8.4 インターネットの台頭によるGDS環境の変化
  8.4.1 航空会社の社内予約システム
  8.4.2 旅行代理店のアプローチの変化
 8.5 オンライン旅行代理店の台頭
  8.5.1 代表的なオンライン旅行サービス
  8.5.2 オーペーク・トラベル・サービス
  8.5.3 運賃アグリゲーターとメタサーチエンジン
  8.5.4 GDSの代替手段を利用する旅行代理店
 8.6 NDC(New Distribution Capability)
  8.6.1 エアラインの視点
  8.6.2 GDSの展望
 8.7 まとめ
  参考文献
  復習問題

第9章 国際航空輸送における公共政策  9.1 航空協定
  9.1.1 米国オープンスカイ
  9.1.2 EU オープンスカイ
  9.1.3 航空自由化に対する支持と反対
 9.2 国有航空会社
 9.3 グローバル・アライアンス
  9.3.1 三大グローバル・アライアンスの歴史
  9.3.2 マーケティングと収益上のメリット
  9.3.3 運用上のメリット
  9.3.4 反トラスト法適用除外
  9.3.5 アライアンスの確立
  9.3.6 旅客の利益
  9.3.7 アライアンスの不安定性
  9.3.8 エクイティ・アライアンス
 9.4 M&Aによる統合
 9.5 まとめ
  参考文献
  復習問題

第10章 将来の展望  10.1 周期的利益
  10.1.1 固定費
  10.1.2 燃料費
  10.1.3 コスト管理
  10.1.4 経営破綻と再建
 10.2 環境規制と費用
 10.3 航空商品の流通における混乱
 10.4 複雑な組織構造
 10.5 ガバナンス
 10.6 進化する航空会社の戦略
  10.6.1 ビジネスモデルの進化
  10.6.2 新たなモデルの出現
 10.7 断片化した業界
  参考文献
カテゴリー:航空 
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