地球温暖化とさかな【独立行政法人 水産総合研究センター叢書】


著者名: 独立行政法人 水産総合研究センター 編著
ISBN: 978-4-425-88471-1
発行年月日: 2009-03-25
サイズ/頁数: A5判 216頁
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

2,376円 (2,200円)

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進行する地球温暖化は、海の環境やさかなにどのように影響するのか。イワシ・サンマ・サケなど食卓に上がる身近な魚を中心にわかりやすく解説。

食卓の旬が変わる!?
サンマの不漁は予測されていた!
地球温暖化の影響で身近なさかなはどうなる?
最新の予測結果をわかりやすく解説した一冊。

【まえがき】より
温暖化という言葉は、新聞やテレビ等で聞かない日が無いほど、我々の日常生活に入り込んできています。1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際連合会議」(第1回地球サミット)を契機に地球環境問題に対する認識が世界的に高まり、温暖化に関しては二酸化炭素等の温室効果ガスがどのように気候や生態系に影響を与えるのか、多くの研究者により精力的に研究が続けられてきました。
 2007年にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第4次評価報告書を発表し、「気候システムの温暖化には疑う余地が無く、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が高い」と結論を下しました。これら一連の温暖化に対する取り組みが評価されIPCCはノーベル平和賞を受賞しています。
 温暖化は、その発生源付近で直接的に害を及ぼす局所的な環境問題ではなく、様々な分野に広い範囲で影響をもたらす、地球規模での環境問題です。いつ、どこで、どのような影響が生じるかについては、よく分かっているわけではありません。しかし世界各地で、色々な影響が出始めていると言われています。
 身近なところでは、ソメイヨシノの開花が早くなったり、イロハカエデの紅葉が遅くなったり、南方系チョウであるナガサキアゲハを関東地方でも見かけるようになり、関東南部が北限と考えられていたクマゼミ(シャーシャーと鳴く大きなセミです)の鳴き声を関東北部、北陸でも耳にするようになったりしています。また、2007年8月には熊谷市と多治見市で40.9℃と国内観測史上最高気温が記録されました。
 このように、陸上での変化は目にしたり、耳にしたりと肌で感じることができます。しかしながら、海の変化や海で生活する生物の変化は、陸上で生活する私たちは目にする機会がほとんどありません。北極海での海氷面積が縮んでいる、この100年間で海水温が1℃上昇している、サンゴの白化現象が増加していると言われても、そのような変化を体感することが無く、実感として伝わってきません。海の生物については分からないことが多すぎ、IPCCの第4次評価報告書でも海の生物に関する記述はごくわずかです。
 この本のタイトルにある、“さかな”すなわち魚介類は、日本人が摂取するタンパク質の20%、動物性たんぱく質に限ると40%を占める重要な食料です。動物タンパク質の魚介類への依存度は諸外国と比較して突出して高く、日本人は世界有数の魚食民族です。海に面した地方では、地の魚介類を使った名物料理が多くあります。しかしながら、このような食文化、食生活も温暖化により脅かされる事態になってきました。変わりゆく環境のなかで海の生物にどのような変化が生じ、どのように変わっていこうとしているのか、できるかぎり明らかにし、そして伝えていかなければなりません。これは、海及び海の生物を研究対象としている研究者の責務です。
 本書では、日本の周辺海域における変化と、食卓にのぼる魚を中心に温暖化影響について焦点を当て解説をしています。日本周辺魚に対する理解が少しでも深まってほしいと、この本を出版することにしました。
 なお、専門用語について、全編に共通するものをStudyとして、また、それぞれの部・章の末には用語集を設け詳細に解説しています。案内役は水産総合研究センターのマスコット「フグのふっくん」と「アンコウのあんじぃ」です。理解の一助としていただければ幸いです。

2009年3月
編著者代表 高柳和史

【目次】
第Ⅰ部 地球温暖化と海洋環境

 1.海洋環境とさかな
 2.どうやって調べるのか‐海洋環境の変化と予測‐
 3.水温が1℃変われば海は大異変?
 4.プランクトンはどうなるか?
 5.温暖化で黒潮が速くなる?海流の変化
 6.そして海の生物たち

第Ⅱ部 地球温暖化とさかな
1章 イワシはどうなる?温暖化と魚種交替
 1.1 いわし類と魚の主役が変わること
 1.2 アリューシャン低気圧との深い関係
 1.3 マイワシの回遊とその量が変わる仕組み
 1.4 地球温暖化の影響

2章 秋のサンマがピンチ?漁場の移動
 2.1 大回遊するサンマ
 2.2 地球温暖化の影響
  1)水温との関係
  2)餌の量の影響
 2.3 サンマの将来像

3章 サケの分布はどこに回遊魚への影響
 3.1 冷水性のさけ類の分布
 3.2 日本のシロザケの生活史
 3.3 さけ類の分布水温
 3.4 さけ類の沖合分布
 3.5 さけ類の分布は将来どう変わるのか
 3.6 縄文海進とさけ類の分布
 3.7 縄文時代のサケ類の分布
 3.8 今後のさけ類の分布と地球温暖化,私たちのすべきこと

4章 スルメイカの名産地はどこに?魚以外の魚介類への影響
 4.1 いか類の特性
  1)いか類の寿命と産卵時期
  2)スルメイカはいか類の代表
 4.2 海洋環境の変化とスルメイカの変化
  1)漁獲量と発生時期の変化
  2)卵発生および幼生の生残率と水温の関係
 4.3 地球温暖化によるスルメイカへの影響
  1)主産卵時期,産卵海域の変化
  2)漁期,漁場の変化
  3)成長の変化
  4)名産地への影響

5章 ニシンを守るには産卵場の保護が大切冷水性魚類への影響
 5.1 ニシンの産卵場と系群
 5.2 飼育試験で確認された高水温への反応
  1)卵のふ化日数
  2)仔魚の初期成長
  3)稚魚および1歳魚の高水温耐性
 5.3 本州系地域型ニシンの回遊性態の変化
 5.4 ニシンへの温暖化の影響と対処
  1)水温上昇の物理的な影響
  2)被食による生残率の低下
  3)産卵場の確保が対処技術のキー

6章 サワラは大漁!本当に増えたのか?
 6.1 サワラとは
 6.2 サワラ資源は増えたのか?
 6.3 漁獲動向,資源水準及び漁獲量の相関と同期性
 6.4 2035年と2095年のサワラ資源は?

7章 沿岸資源への影響ヒラメとスズキを例に
 7.1 沿岸域のさかなたち
 7.2 温暖化後の資源状態を予測するためには
 7.3 ヒラメの将来を予測する
 7.4 スズキの将来を予測する
 7.5 沿岸魚類の資源変動と温暖化

8章 マダイ養殖が高水温化を克服するには
 8.1 マダイの養殖はありがたい
 8.2 養殖魚のメリット
 8.3 マダイは何度まで耐えられるか?
 8.4 マダイも暑いとケンカする
 8.5 高水温時に酸欠にしない方法
 8.6 内蔵脂肪を増やして乗り切る
 8.7 最後に

9章 海の砂漠化?広がる藻場の異変と温暖化
 9.1 藻場は海の中の森
 9.2 藻場の現状拡大する磯焼け
 9.3 「温暖化影響」の縮図黒潮域から瀬戸内海への藻場の変化
 9.4 水温上昇の藻場の海藻への影響は?
 9.5 藻場の構成種の変化南方系種の分布拡大
 9.6 私たちに出来ること

10章 南の海の魚たち産卵生態と仔魚の生き残り戦略への影響
 10.1 南の高級魚
 10.2 気温と水温の年変動
 10.3 南の魚の産卵生態
 10.4 2035年と2095年における南の魚の産卵生態の予測
 10.5 ハタ類仔魚の生き残り戦略
 10.6 おわりに

第Ⅲ部 これからどうすべきか
 1.現状の対応
 2.水産資源の今後
  1)海のピラミッド
  2)食物連鎖の変化
  3)養殖は切り札になるか
  4)藻場や干潟の生物たち
 3.私たちはいま何をすべきか

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