応用微細藻類学-食料からエネルギーまで-


著者名: 倉橋みどり・小柳津広志 編著
ISBN: 978-4-425-88061-4
発行年月日: 2013-02-07
サイズ/頁数: A5判 212頁
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

3,240円 (3,000円)

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微細藻類利用の第一線を余すところなく解き明かす

「微細藻類」とはどのような生物を指すのであろうか。
いまからおよそ27億年前に、光合成能力を持った細菌が地球上に出現したと考えられている。その細菌が、真核生物に共生するようになり(一次共生)、やがて細胞内で葉緑体という光合成装置として取り込まれた。さらに、その光合成装置を細胞内に持つようになった真核光合成生物が、別の真核生物に共生する現象が活発に起こった(二次共生)。大雑把に表現すれば、このような進化上のイベントの結果として現れた光合成能を持つ生物のうち、陸上植物と大型海藻を除いたものが、微細藻類である。
現在、この微細藻類の産業利用に注目が高まっているが、日本においての開発研究は緒についたばかりである。なかでも、「燃料油が人工的に生産できる」という大きなテーマをめぐって、現在国内には両極端な認識が存在している。ひとつは、マスコミでの取り扱われ方によく見られるような、「日本はこれまでの10倍もの油生産力を有する微生物を手にした。これにより、日本が石油産出国になる日もそう遠くない」といったような論調のものである。
もうひとつの認識は、このテーマの歴史についても現状についてもある程度理解している人たちの間に漂っている雰囲気である。「過去にもやったことがあるが上手くいかなかった。数十年先の話だろう」。
確かに、微細藻類燃料で「プラス経済収支」というのは、現在のところ非常に高いハードルであり、あらゆる手段を講じなければ達成は難しい。
しかし、全く新しい分野に挑戦するという覚悟を決め、戦略をもって取り組めば勝算は少なからずある、と私たちは考えている。

【まえがき】より
 本書に目をとめていただいた方は、「微細藻類」という単語をすでにご存知か、少なくともどこかで見聞きされた方が多いのではないでしょうか。四字熟語のような固い響きと画数の多い漢字が並び、おせじにも親しみやすいとは言えません。しかしこのところ、この微細藻類が、世間の話題として取り上げられることが多くなり、いつまでも素通りしてはいられない状況になってきているらしいのです。
 現在私が所属する東京大学生物生産工学研究センターでは、「微生物」と「植物」に関わるバイオテクノロジー研究を行っていますが、さて、微細藻類はどちらのグループに含めたらよいのでしょうか? 正解は「両方に属する」です。科学の発展にともなって、生態系のバランスや人類の健康維持のために、微生物が不可欠の存在であるということが解明されてきました。一方、植物は、人類にとって最重要課題である食糧問題を解決してきました。そして、これら「ありがたき」両生物グループの特徴を併せ持つ生物こそが、微細藻類なのです。
 ここ数年、微細藻類が注目されるようになってきたのは、バイオ燃料の旗手として名が挙がってきたことに起因しています。しかし、本文でも詳しく述べられているとおり、微細藻類による燃料油生産に関する話題は、過去にも数回ブームがありました。そのブームを体験してきた関係者たちは、今回も一過性のことかもしれないと、自制を強いているようにもみえます。あるいは、今のうちにブームにのってしまえ、という方もいらっしゃるかもしれません。ただ、これまでと今回が多少違うと感じるのは、微細藻類の話題が研究者など一部の身内に留まっていない点です。以前は、単に枯渇するかもしれない化石燃料の代替え品という位置づけに過ぎませんでしたが、その後、時代背景が大きく変化しました。すなわち、エネルギー問題と環境問題を同時に解決しなければならなくなったのです。加えて食糧問題もクローズアップされてきたことを勘案すると、今回の微細藻類は、ブームで引っ込むわけにはいかなくなる可能性があります。これまであまり馴染みのなかったこの小さな生物が、エネルギー問題、環境問題そして食糧問題にも寄与できるというのは、一体どういうことなのでしょうか?
 本書は、13名の執筆者がそれぞれの立場からその疑問に答えています。
 第一章では、「微細藻類とは何か」ということを述べ、特に、この小さな生き物が、地球上でどれほど大きな役割を担っている生物なのかという点について説明しました。第二章では、現在、微細藻類に注目が集まっているその理由を、微細藻類が持つ生物としての特徴と時代要因から考察しました。第三章には、現在すでに実用化されている分野の紹介と、今後、期待される応用分野についてその可能性を示し、第四章で、微細藻類の産業利用にあたり、その方向性と戦略について考えを述べました。さらに、具体的な技法と実例についても、詳しく書かれていますので、今後、この分野に関わる方々にご参考いただければ幸いです。
 本書には、科学的に明らかな事実を紹介している部分と、今後、この微細藻類を産業上どのように活用していくべきか、という筆者の考え方を述べている部分があります。考え方については、研究者個人のものですので、必ずしも本書の中で、意見や方向性が一致しているとは限りません。また、タイトルの「応用微細藻類学」という体系づけられた学問がすでにそんざいしているわけではなく、青田買い的な意味を持たせています。もう一つ、本書は、微細藻類がこれから開拓していくべき新規分野であることを広く知っていただくことを目的にしていますので、多少、荒削りな意見があることについては、ご容赦いただきたいと存じます。これらの点も踏まえて、本書がバイオマス利用に携わる技術者や行政関係者、あるいは、広く自然エネルギーや環境、食糧問題に関心のある皆様方のご参考になることを願っています。
 最後に、本書企画をご提案いただき、また、編集にあたり御支援いただいた(株)成山堂書店の皆様方に、深謝申し上げます。

平成25年1月
編者 倉橋みどり 小柳津広志

【目次】
第1章 微細藻類とは何か

 1.1 概要
  1.1.1 微細藻類とは
  1.1.2 生産力
  1.1.3 生産物
  1.1.4 ポテンシャル
 1.2 研究開発のあゆみ
  1.2.1 微細藻類利用の足跡
  1.2.2 第二次世界大戦と油
  1.2.3 米国、日本、ヨーロッパ
  1.2.4 オルタナティブ医療とドナリエラ
  1.2.5 炭化水素生産微細藻類ボトリオコッカス
 1.3 進化と分類
  1.3.1 細胞内共生と藻類の進化
  1.3.2 藻類の多様性
   (1)原核藻類
   (2)一次共生藻類
    ①緑色藻類
    ②紅藻類
    ③灰色藻類
   (3)二次共生藻類(緑色系)
    ①ミドリムシ藻類(ユーグレナ藻類)
    ②クロララクニオン藻類
   (4)二次共生藻類(紅色系)
    ①黄色藻類
    ②渦鞭毛藻類
    ③ハプト藻類
    ④クリプト藻類
   (5)その他の紅色系二次共生藻類と色素体を失った原生生物
 1.4 微細藻類の生態・繁殖・分布
   1.4.1 微細藻類とは
   1.4.2 微細藻類の生理
   1.4.3 微細藻類の増殖と生活史
   1.4.4 微細藻類の生態
   1.4.5 微細藻類の人口培養

第2章 なぜ微細藻類なのか
 2.1 生物学的視点から
  2.1.1 微細藻類は単なる小さな植物細胞ではない
  2.1.2 根も葉もない
  2.1.3 微差移送類はコスモポリタン
  2.1.4 微細藻類は多彩な「職人」集団
  2.1.5 「微細」であることは有利か不利か?
 2.2 地球環境の変動とエネルギー政策
  2.2.1 大気中の温室効果ガス濃度予測
  2.2.2 世界のエネルギー事情
  2.2.3 石油およびバイオ燃料の生産と需要予測
 2.3 国益
  2.3.1 エネルギー形態のパラダイムシフト
  2.3.2 日本は独自の取り組みを
  2.3.3 バイオマスエネルギーの特異性
  2.3.4 養殖産業を支える
  2.3.5 多段利用と発酵産業
  2.3.6 二酸化炭素削減
  2.3.7 新産業創生

第3章 微細藻類の応用
 3.1 食品・ヘルスフード・サプリメント
  3.1.1 はじめに
  3.1.2 クロレラは藻の一種
  3.1.3 「水中の緑黄色野菜」スピルリナ
  3.1.4 日本固有の淡水生シアノバクテリア・スイゼンジノリ
  3.1.5 微細藻類ヘマトコッカス藻によるアスタキサンチンの生産と食品への利用
   (1)はじめに
   (2)ヘマトコッカス藻の大量培養
   (3)ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチンの食品への利用
   (4)アスタキサンチンの機能
    ①アスタキサンチンの抗酸化作用
    ②アスタキサンチンの抗疲労作用と眼精疲労改善作用
    ③アスタキサンチンの抗肥満作用
    ④糖尿病合併症の抑制
    ⑤アスタキサンチンの抗炎症作用
    ⑥美肌・美容効果
    ⑦アスタキサンチンの今後の開発
  3.1.6 キトセレウスによるフコキサンチン生産の試み
   (1)はじめに
   (2)フコキサンチンの生理機能
    ①フコキサンチンの抗メタボリックシンドローム作用
    ②抗糖尿病作用
    ③美容・美白作用
  3.1.7 その他の有用微細藻類と食品加工
 3.2 飼料
  3.2.1 背景
   (1)日本における養殖の現状
   (2)微細藻類はどのように役立つか
   (3)現在の養殖の問題点、その解決法
  3.2.2 養殖・主苗生産における微細藻類の使用用途
   (1)微細藻類の重要さ
  3.2.3 養殖現場での実例
   (1)メコンデルタのオニテナガエビ
   (2)Sun Culture商品
   (3)これからの養殖産業
   (4)養殖業者からの微細藻類への期待
 3.3 液体燃料
  3.3.1 バイオ液体燃料生産の意義
  3.3.2 バイオ液体燃料生産の方向性
 3.4 医薬品
  3.4.1 海洋性シアノバクテリアが生産する代表的な化合物
  3.4.2 淡水生シアノバクテリアが生産する代表的な化合物
  3.4.3 渦鞭毛藻が生産する代表的な化合物
 3.5 レアメタルのバイオ濃縮回収技術の可能性
  3.5.1 レアメタルを巡る問題
  3.5.2 微生物によるレアメタルの特異的回収技術
   (1)好気的セレン酸塩還元微生物によるセレンの特異的回収
   (2)テルル酸塩還元微生物によるテルルの特異的回収
   (3)パラジウム還元によるバイオソープション
  3.5.3 微細藻類によるレアメタル回収の可能性
  3.5.4 微細藻類による放射性能物質回収の可能性

第4章 産業化に向けて
 4.1 利用の方向性
  4.1.1 エネルギー政策
  4.1.2 国内における「微細藻類による燃料油生産」の認知
  4.1.3 目標の明確化と利用の方向性
  4.1.4 投入エネルギーの複合利用
  4.1.5 生産物の複合利用
  4.1.6 『唯一生き残るのは、へかできるものである』
 4.2 スクリーニング(多段利用可能な微細藻類の抽出)
  4.2.1 はじめに
  4.2.2 増殖特性試験
  4.2.3 増殖速度の推定方法
  4.2.4 脂質産生藻類のスクリーニング(予備調査)
  4.2.5 脂質分析
  4.2.6 評価
 4.3 培養と管理
  4.3.1 はじめに
  4.3.2 種株の保存
  4.3.3 種株の管理
  4.3.4 大量培養のための予備培養
  4.3.5 培養装置への展開
  4.3.6 おわりに
 4.4 具体的実例
  4.4.1 概要
  4.4.2 海洋肥沃化構想
  4.4.3 設置場所の選定
  4.4.4 密度流による栄養塩の滞留技術
  4.4.5 「拓海」の仕様概要
   (1)浮体形状
   (2)一般配置
   (3)ライザー管(取水管)
   (4)係留
  4.4.6 設置工事
  4.4.7 実海域実験
   (1)運用
   (2)海洋調査
  4.4.8 海洋肥沃化実験装置「拓海」の成果
 4.5 バイオ液体燃料生産技術

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