海の科学がわかる本


著者名: 藤岡換太郎 編著
ISBN: 978-4-425-53121-9
発行年月日: 2010-10-02
サイズ/頁数: 四六判 216頁
在庫状況: 在庫あり
価格(本体価格)

2,052円 (1,900円)

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地球を丸ごと理解できる1冊。海、大気、大陸に関する物理、化学、生物といった幅広い分野の研究成果をわかりやすく紹介。初学者に最適。

【内容】
ここ10年の間に地球温暖化や異常気象といった話題がメディアで飛び交い、私たちの住む環境が大きく変わっていると実感している人も多いと思います。しかし、何が本当で何が嘘なのかを理解している人は少ないでしょう。
私たちは、自分が住む陸地からの目線で物事を捉えようとしますが、地球上の約70%は海なのです。その海のことを知らずに、地球全体を理解できるはずがありません。
本書では、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が一般向けに行った講義を基に、その海についての物理学、化学、生物学といった幅広い分野から地球全体を見渡そうと試みています。
本書を読めば、北極から南極まで、地球誕生から現在までの海や陸そして大気に関する研究内容が理解でき、いま地球に何が起きているのかを感じ取ることができます。
これから海について学びたい、自分の研究分野以外のことも知っておきたいという方には打ってつけの1冊です。
地球環境を考えるには、まず海について学べる本書をお薦めします。

【はじめに】より
 最近10年ほどの間に、地球上には様々なことが起こってきています。そのなかでも巨大台風の発生、集中豪雨、日照りなど異常気象が目に付きます。
 今年に入ってからも日本列島の各地で信じられないほどの豪雨と日照りに悩まされています。日本列島だけでなく、近くの台湾の松林では巨大な地滑りが豪雨と連動して勃発し、韓国、中国、東南アジア諸国でもひどい洪水に見舞われています。一方、オーストラリアやアフリカでは旱魃がますます顕在化してきています。
 どうやらこれは全地球的な現象のようです。毎日のニュースや新聞報道に出てこない日はありません。そのため、多くの人々は温暖化とか地滑りとか地球科学や気象科学に関する言葉をずいぶんと覚えたことでしょう。これらの現象に関しては様々な人が様々なことを言っていて、一体何が本当で何が嘘なのか全くわからない状態になっています。そしてなぜこのような自然現象が起こるのか、そのからくりに関して思いをめぐらされたことに違いはないでしょう。これはいってみれば地球46億年の必然なのです。
 地球に起こっている様々な出来事を正しく理解するには、ある一つの専門的な、近視眼的なものの見方ではそれを正しく理解することは出来ません。いろいろな出来事はあらゆるファクターが重なって起こるため、一つの見方だけではわからないのです。
 さて、このような問題を考えるとき適切な書物に出くわさないことに気がつきます。平易な入門からきわめて難しい細かい話が書かれた本などは山ほどあります。しかし1冊で地球に関する事柄がすべて網羅されたような本はきわめて少ないか皆無であるようです。そこで私たちは海洋や地球に関する多くの分野の研究者が集まって1冊の本を作ることにしたのです。
 本書はもともと2008年8月末に海洋研究開発機構(JAMSTEC)が行った、「海洋と地球の学校」のテキストから生まれました。この学校は地球システム科学に興味のある全国の大学生や大学院生、一般の方々を対象に海洋と地球に関する研究の入門的な内容を教授するものであり、このときすでに通算19回目の開催でした。本書は一線の研究者が関連する分野の基礎的な解説から最先端の研究までも含めたものを10頁程度の長さでかいたもので、講義のテキストとして学生に読ませたものです。しかし、これだけの内容のものを学校に参加した学生だけにとどめておくのは惜しいとの考えから、株式会社成山堂書店が1冊の本にするよう呼びかけられて来たのです。
 本書の内容をざっと読めば、地球上の北極から南極まで、時代にして46億年の海や陸そして空に関しての研究の内容が理解できるようになっています。
 本書の読み方は、どこから読んでもそれぞれが完結した内容になっていますので、まず第1章を読んでいただいたら好きなところ、興味のあるところへ飛んで読んでください。
 第1章は、地球史46億年を短く概観するものです。そして地球が一つの大きなシステム、「地球システム」を構成しその中には階層やサブシステムがあって、それらの間でのエネルギーと物質のやりとりを研究するのが地球システム科学であることを理解されるでしょう。第2章では、地球システムの海洋からはじめて、海の流れ・変動の物理の基礎から入り、それを利用して気候に大きく影響するエルニーニョ現象を例として解説しています。第3章では、中高緯度地域の大気の循環を解説しています。夏に北極の氷が少なくなると、逆に冬場は日本を含む極東地域で大雪になることを述べています。第4章では、海洋の化学的な側面を解説しています。特に温暖化ガスである二酸化炭素の過去、現在、未来の挙動について詳しく解説しています。第5章では、大型の生物、第6章では、微生物について述べています。いずれも極限環境と言われる過酷な環境に住み着いている生物の紹介です。第7章では、私たちの立っている大地の進化を紹介しています。これには19世紀以来いろいろな考え方がなされて来ていますが、最近のプルームテクトニクスに至る理論までの歴史を解説しています。第8章では、JAMSTECにある地球シミュレーターを使ったモデルを解説しています。IPCCの第四次報告にも盛り込まれていますが、方程式の建て方やシミュレーションの手法などを解説しています。
 第9章と第10章は地球の両極である北極と南極の科学を紹介しています。これらはいずれも最先端の研究を含んでいます。
 最後に、第11章と12章で海洋の研究には様々な観測機器が必要でそれらが発達することで研究が進んできたことを扱っています。観測機器の発達と研究の発達とは車の両輪であることが理解され、様々な機器があることに気がつくことでしょう。
 本書の全体を通して、地球と海洋に関する研究に興味を抱く人々が増えれば執筆者にとっては望外の喜びです。

平成22年8月 猛暑の夏にもめげず
執筆者を代表して
藤岡換太郎

目次

第1章 地球システム科学入門
 1.はじめに
 2.地球の歴史
  地球史を駆け足で見る
  地球の誕生
  海洋の誕生
  生命の誕生
  超大陸の誕生
  最後の超大陸パンゲア
  海陸分布
 3.地球システム-現在の地球とその周辺の環境-
 4.地球システム科学
 5.階層構造の科学
 6.なぜ海洋が重要であるのか
 7.海洋科学にはどのような分野があるのか
 8.まとめ

第2章 海洋物理の紹介と、エルニーニョ現象の海洋物理的解釈
 1.はじめに
  海洋物理の紹介
  地衝流(地衝風)
  エクマン流
  海洋表層の大きな流れ(風成循環)
  待機や海洋の変動を解釈するための惑星波動
 2.熱帯海洋気象現象(エルニーニョを例として)
  熱帯の海洋気候(平均場)
  エルニーニョ現象
  エルニーニョ現象の物理的解釈
 3.海洋物理の観測と研究、モデル開発、
  そして研究成果の社会還元ということ

第3章 海洋・海氷の変動が世界各地に異常気象をもたらす
   -中高緯度待機循環場の大規模な波動の役割-
 1.はじめに
 2.子午面循環と東西循環
 3.中高緯度大気循環場の大規模な波動
 4.海洋・海氷変動が大気循環場に及ぼす影響
  熱帯(海洋)の影響
  中高緯度(海氷)の影響
  中高緯度(海洋)の影響
 5.夏季北極海の海氷減少がもたらす冬季極東の低温大雪
 6.おわりに

第4章 化学海洋学-二酸化炭素と海:過去、現在、未来-
 1.現在-地球温暖化と二酸化炭素-
 2.過去-氷期に低下した二酸化炭素濃度は海洋が大気中の
       二酸化炭素を吸収したのか
 3.未来-増加する二酸化炭素濃度と酸性化-
 4.海洋における二酸化炭素研究
   -生物ポンプに関する時系列観測研究-
 5.おわりに

第5章 海洋生物圏科学
 1.はじめに
 2.地球の生物圏のほとんどは深海
 3.海洋生物を分類すると
 4.さまざまな環境に適応する生物-水圧、水温、光量
 5.高水圧に生息する生物の取得技術と適応機構の検討
 6.陸上由来のモデル微生物である大腸菌で検討された圧力適応機構
 7.貧栄養環境に適応した深海特有の生態系
 8.おわりに

第6章 海洋微生物は何をしているのか?
   -物質循環の主役・海洋微生物の研究最前線-
 1.微生物とは
 2.海洋表層の光合成と深海の化学合成による一次生産
 3.最大規模の海洋微生物Marin Group1による一次生産
 4.表層に優占する未知微生物SAR11の正体
 5.注目物質メタンに関わる海洋微生物
  好気的メタン酸化菌
  嫌気的メタン酸化菌
  メタン生成菌
 6.おわりに

第7章 地殻進化をとりまく原理の変遷とその最前線
 1.はじめに
 2.古典的造山論から地向斜造山論へ
 3.大陸移動説と海洋底拡大説
 4.プレートテクトニクスの登場
 5.プルームテクトニクスの理論
 6.地震学的な構造研究の手法
 7.現代の地殻進化研究

第8章 気候のシミュレーションモデルの作り方
 1.はじめに
 2.気候を決める方程式
  運動方程式と熱力学方程式
  放射伝達方程式
  方程式をコンピューターで解く
 3.経験則の導入
  積雲対流の効果の取り入れ
  積雲対流以外の現象についての経験則
 4.温暖化予測の不確かさ
 5.おわりに

第9章 北極大異変
 1.注目される北極研究
 2.海氷の急激な減少
 3.大気と海洋の熱交換
 4.特異な気圧配置
 5.多圏相互作用

第10章 日本の南極観測から
 1.国際極年
 2.南極
 3.日本の南極観測
 4.オゾンホール
 5.南極隕石
 6.氷床コア
 7.コケ坊主
 8.おわりに

第11章 海洋観測論1
 1.はじめに
  海洋調査船
  測位装置
 2.物理観測
  測深・地層探査
  重力測定
  地磁気観測
  海底電気探査
  地殻熱流量測定
 3.観察・試料採取
  有人潜水調査船
  ROV
  深海曳航体
  AUV
  採泥器
  海底掘削
 4.まとめ

第12章 海洋観測論2
 1.はじめに
 2.衛星リモートセンシング
  能動型と受動型
  可視光リモートセンシング
  赤外域リモートセンシング
  マイクロ波リモートセンシング
 3.観測船による海洋観測
  CTD観測
  ネット観測
  ADCP観測
  海洋気象観測
 4.係留系による長期連続観測

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