注目の人

2014年1月7日  

第5回 海上保安大学校女子学生インタビュー

第5回 海上保安大学校女子学生インタビュー
広大な海に四面を囲まれた我が国にとって海とは、貿易や漁業により恵みを得る一方、海難や密輸・密航などの海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど様々な事案が発生しています。海上保安庁は、海上における犯罪の取り締まり、領海警備、海難救助、環境保全、災害対応、海洋調査、船舶の航行安全などの活動に日夜従事しています。
 海上保安大学校は、海上保安庁の幹部職員として海上保安業務を遂行するために必要な学術及び技能を学び、心身の練成を図ることを目的として設置された海上保安庁の教育機関です。三方を穏やかな瀬戸内海に囲まれ、白いカモメが波間に漂う風光明媚なキャンパスで、海上保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生に学生生活、乗船実習などのお話を聞いてきました。

★1日のスケジュール

和泉:
6:30に起床、ベッドメイクして着替えて6:35に起床整列、人員点呼、海上保安体操を行います。
いくら寒くても男子は上半身裸、女子はTシャツです。
その後に掃除をして、朝食をとり8:15に課業整列、8:45から午前の授業開始。
12:00~13:00が昼食
13:00から午後の課業、水曜日と金曜日は、4コマ目が部活動の時間になっています。
他の曜日は、授業が終わり次第部活に行きます。
17:15~18:15が夕食、部活動があってもその時間には各自食事を摂ります。
そのあとは、自習時間、22:30に消灯。
勉強したい人は申請をすれば1:00まで許可されます。
上級生になるにつれて勉強が難しくなるので許可される時間いっぱいまで勉強しています。

★海上保安大学校を選んだ理由

和泉:
出身が広島なので呉に海上保安大学校があるのは知っていました。地元の海上保安部で学生募集があったり、巡視船に乗せてもらったりして、仕事がかっこいいなと思い受験しました。

西村:私は、父の勧めです。

小川:お父さんは保安官なの?

西村:
いえ、違います。もともと警察官になりたかったのですが、父がパンフレットを持ってきて「海の警察だよ。」と言われ受験しました。

小川:他は受験しなかったのですか。

西村:こちらだけです。

室谷:
私は、母の勧めでオープンキャンパスに来ました。学校を見て先輩方のお話を聞いて憧れを持ちました。

小川:先輩からどんなお話を聞きましたか。

室谷:
寮生活は、厳しい中に充実した生活が待っていること、一般大学では経験できないことが経験できることを伺いました。

★海上保安大学校の魅力は何?

西村:
自分が辛いなと思っているとき、仲間というのが身近に感じられて、頑張らなくてはと思える環境がここにはあると思います。

小川:どんな時に感じますか。

西村:
お兄ちゃん、お姉ちゃんのような上級生がいて、可愛い下級生がいて、兄弟のような関係がいいなと思っています。

室谷:私も同じです。

★入学してよかったことは?

和泉:
同期との繋がりです。他の同期と同じことができなくて落ち込んだ時、頑張らなければと思わせてくれる存在なのです。

西村:
最近、乗船実習があったのですが、叱られて落ち込む時もあり、みんなで励まし合う環境は、温かいなと思います。

入学してよかったと語る西村さん

室谷:
一般大学では経験できないことを経験させていただいていると思います。乗船実習もそうですが、1年生の始めにカッターを漕いで無人島に行きました。

小川:無人島に行くの?

西村:
はい。島に到着したら自分たちでご飯炊いて、キャンプのような感じです。

★海上保安大学校のアピールポイントは何ですか?

和泉:時間厳守 笑

西村:時間には厳しいです。5分前行動。

和泉:
何時から始めますと言っても、始まる時刻に終わっていたりします。例えば、簡単なミーティングだと、集まったらすぐ始まって、終わったと思ったら、集合時間だったということがよくあります。1年生の時に時間に関しては厳しく言われました。

★他の大学には負けないことはありますか?

西村:体力だけは負けないと思います。

室谷:声の大きさもです。

声の大きさが自慢の室谷さん

小川:学生のみなさん大きな声で挨拶してくれますよね。

西村:
先輩たちが挨拶している姿を見ているのでそれが普通になるのです。すれ違う時に「お疲れ様です」と一言いうだけで違うと思います。街を歩いていても「お疲れ様」と言ってしまう時もあるくらい、一声掛けたいなという気持ちになるんです。
室谷:入学直後、外出の際、校外で、通りすがりの人に「こんにちは」と大きな声で挨拶したこともありました。

★乗船実習はどうでしたか?

和泉:辛くて、長くて、船酔いもひどかったです。

西村:
通信科は、中での作業なので外の景色が見えないので船酔いはひどかったです。

室谷:
私は、航海科なので船橋に上がって、次どのくらいの波がくるか分かるので、そこまでひどくなかったです。

西村:袋は、いつも持っていました。

★海上保安官の仕事に不安はありますか?

和泉:
あまり考えていないです。今回の乗船で現場の仕事を知るきっかけができたかなと思っているくらいで、まだ具体的には考えられていないです。

西村:
自分で選んだのだから仕事としてきっちりやらなければいけないと思います。不安がないと言ったら嘘になりますが、自分がやらなければいけないんだという使命感があれば何でもできると思います。

室谷:
不安がないことはありませんが、お世話になった女性の先輩方にお会いしてお話を聞き、一生懸命な姿を見て自分もそうありたいなという思いはあります。

★保安官になってやりたいことは何ですか?

和泉:
乗船中ずっとマーチスからの無線が飛んでいたのですが、すごく的確に指導しているのを聞き、常に緊張感を持ってすぐに判断できるという職場に憧れもあるので、マーチスの仕事に就きたいと思っています。

夢を語る和泉さん

西村:
領海警備です。もともと警察の仕事をやりたいと思っていたので、とても興味がある仕事です。

室谷:
各管区で業務講話を聞いたのですが、やっと乗船実習を終えたばかりなので、悩み中です。

★女性保安官の勤務についてどのように考えていますか?

西村:
女性が働きやすい環境が整ってきていると聞きます。出産、育児などで長期間職場を離れても再任用で働き始めた方のニュースも保安庁内で出ているので、結婚、出産後も保安官の仕事は続けていきたいです。

★入学してからを振り返ってみて思うことは?

西村:
気持ちの面で強くなったと思います。入学前は、何でも「ああ、もうだめだ」と思ってすぐに折れてしまうことが多かったのですが、入学後は、「よし、やろう」と何でも前向きに捉えられるようになりました。

室谷:
乗船して、1,2年時の座学で学べなかったことが学べ、まだまだ頑張らないといけないと思っています。

和泉:学年が上がるにつれて周りを見る力がついてきたと思います。1年生の時は自分のことしか考えられないほどいっぱいいっぱいだったのですが、3年生になって下級生のことも見る余裕がでてきたので、自分のことはもちろんですが、周りの人にも気を配れるようになったのかなと思っています。

小川:海保大は、そのように鍛えられるのかしら。

和泉:そうですね。

西村:自然とできるようになるんです。

和泉:
ある程度こうやればいいという道は教官や先輩方に作ってもらっているので、それを実行するとできるようになっているのだと思います。

小川:教官は、厳しいばかりではなく丁寧に指導してくれると聞いていますが。

和泉:はい、そうです。

西村:
基本的には、自分たちで話し合って考えます。そのあと教官に相談して指摘されたところは、また、自分たちで考えます。

小川:1年生の時に、自分で考えなさいと教えられるのですか。

西村:教えてくれるわけではありませんが、先輩方の背中を見て、自然と自分もやるようになります。
和泉:聞けば教えてくれることもありますが、まず、自分にできることは何だろうというところから始まります。

★今後の抱負を聞かせてください?

西村:
本校で身につけられることをしっかり身につけて、残り1年半でできる限りのことをやって、現場ですぐに活躍できる海上保安官になりたいと思います。

室谷:
同期も含めて、上級生にも下級生にも慕われ、また、自分がしっかりと全体を見れるようにと思っています。まずは、乗船実習で指揮者としてのことをたくさん学べたのでそれらをこれからの生活に生かし、いろいろ吸収して頑張りたいです。

和泉:
将来、何がしたいかをもう少し明確にし、それに向けて、今しかできないこともあると思いますので、好き嫌いなく勉強して、人間的にも下級生についてきてもらえるような振る舞いができるようになっていきたいと思います。


【編集後記】

今回で5回目のインタビュー。毎年、学生のカラーが違うのでインタビューするのがとっても楽しみです。今年は、前回と同じく3名の女子学生にお話を伺いました。

海上保安大学校は、広島県呉市にあります。一般の大学と多くの共通点を持ちながらも全寮制を基盤とした環境の下、海上保安官の幹部として一般教養及び海上保安業務に必要な学術・技能を学びます。規律が厳しい学校なので、その規律を守っていくことにより、責任感が自然に身につくようです。寮生活を通して、上下・横の人間関係が築け、その中で頑張らなくてはと思える環境があると話してくれました。
そして、毎回、思うのですが、同期との繋がりができることに心強さを感じているようです。教育方針の中に、『率先して任務の遂行にあたる旺盛な責任感を養う』というのがあります。何事も自分から行動を起こさないと教えてもらえないし、学べないので、教えてもらうこともあるけど、まず、自分にできることは何だろうから始まるそうですが、これも教育方針がそのようにさせるのでしょう。

彼女たちが海上保安大学校を選んだのは、「いろいろ勉強ができる」「幅広い知識が学べる」などで、学びたい学ぼうとする気持ちが強いことからなんでしょうね。志を持って選んだ学校なので、彼女たちの吸収力はとても大きいものだと思います。

敷地面積124.899㎡、三方を穏やかな瀬戸内海に囲まれ、白いカモメが波間に漂う風光明媚なキャンパスで、厳しい中にも楽しみながら学生生活を送っている彼女たち、明るく元気に話してくれ、とても楽しいインタビューでした。
今回インタビューをさせていただいた女子学生を含め、海上保安大学校の学生は、それぞれの夢・目標に向かって学んでいるので、立派な海上保安官になることを信じています。一人でも多くの若者が「海」への夢を抱いて海上保安大学校の学生に続いていただけたらと思います。

今回お話しを聞かせてくれた、室谷さん・和泉さん・西村さんありがとうございました。

聞き手 
株式会社成山堂書店
代表取締役社長 小川典子
本を出版したい方へ