南極大陸内での食事はどんなものを食べている?

南極大陸内での食事はどんなものを食べている?

こんにちは、石川です!
今日のブログは、『南極大陸大紀行』より、「内陸での食事」についてのコラムです。

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内陸旅行では、雪上車を輸送・移動の手段として使うので、重量や嵩はそれほど問題にせずに食料を準備できる。また、内陸では気温は一年中氷点下であり、食料を冷凍のまま輸送するには便利である。食料の段ボール箱を、そりにそのまま積んでおける。逆に、マヨネーズや日本酒など凍っては困るものを持ち込むのは難しい。狭い雪上車内のスペースをなんとかやりくりすることになる。

レーション方式

旅行中の食料は、レーション方式がよく用いられる。
「レーション」とは、隊員数×数日分の食材を箱に入れたもので、食料を、期間を通じて過不足なく計画的に使うことができるのが利点である。何人日分を単位にするかは、隊の構成と行動計画による。14次夏旅行隊(10人)では、食事にバラエティをもたせるため5人×3日レーションを4種類、5人×2日レーションを5種類用意した。

5人×3日レーションの内容の一例は以下のとおり。(米や調味料、乾燥野菜などは別梱包になっているので、ここには含まれていない。)

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アルファー米5袋、うどん6袋、ラーメン7袋(以上は朝食用の主食)、牛スライス1kg,豚厚切り800g,鶏肉600g、ベーコン200g,冷凍卵500g,レトルトビーフカレーまたはハヤシビーフ3袋、なめこ缶またはアスパラガス缶1個、缶詰おでん2個、オイルサーディン2缶・・・etc。

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14次隊で内陸用に準備した食料は、実働分約1700人日、予備分約1100人日であった。1人日あたりの重量は、梱包を含めて実働2.3kg、予備1.6kgであった。実働分の重量には酒類も含まれている。当時は肉・野菜類のほとんどが素材の状態であり、温めてすぐに食べられるものは少なかった。
長期の旅行で同じような味では飽きることを心配し、調味料、特に香辛料の種類を多く用意した。調味料としてリストには29の品目がある。残りを引き継いだ15次隊に驚かれるほどだった。

調理方法

内陸旅行の生活の場は、雪上車や、カブースと呼ぶキャビン付きまたは幌張りのそりになる。炊事設備は灯油コンロだけで、隊員が交代で炊事当番を務める。料理に慣れないメンバーもいるため、婦人雑誌のカード型の料理紹介記事を切り抜きいてノートに貼り、参考にしていた。皆、しだいに料理に慣れてきて、手際がよくなり、またそれぞれ得意料理もできてくると、それも楽しみとなる。

昼食は行動中にそれぞれの車内で食べるため、昭和基地で調理隊員にパンを焼いてもらい、これを主にした。焼きたてのパンをスライスし、ラップフィルムで包んで箱に入れ、廊下に放置すると冷凍パンになる。車内では機械隊員の手造りの解凍装置にいれてエンジンの熱で解凍し、焼きたてのような状態で食べることができ、非常に好評であった。

キャンプ地につくと炊事当番の仕事が始まる。まずコンロに火をつけ雪を溶かして水を作る。レーションの箱を開けて食材を確かめ、献立を考える。米を計り、ご飯を炊く。やがて給油や車両・そりの点検、配置などの作業を終えた隊員が集まってくる。それまでに、コンクウイスキーと水と氷を用意しておく。旅行中の酒は主にコンクウイスキーだった。水で通常の濃さに割って出すのだが、なかには濃いままがよいという人まで出てきた。コンクウイスキーは70リットル、ウイスキー等の蒸留酒類は30本。昭和基地の皆からの差し入れを含めた”薄め”の酒類は貴重品であった。飲み始めているメンバーにできた料理を出し、やっとほっとする。ご飯を食べ、片付け、翌朝の準備をして作業は終わる。

あるとき米を炊くために水を注いだら凍ってしまった。米はマイナス数十度にも冷えていたためである。凍っている肉を切っていたら、鋼の包丁が折れた。また一斗缶に入った冷凍卵を割ろうとして、バールをハンマーで叩いたら、バールの頭が折れたことがある。いずれも低温脆性によるらしい。内陸ではいろいろなことが起きたものである。

35次隊とその後

長期間の観測において、食事を軽くするための選択肢はフリーズドライ食品の利用だが、従来の製品では味やバラエティとの両立は難しかった。そこで開発されたのが「南極野外食」である。これは、料理人が作った様々な料理をフリーズドライ化したものであり、大幅な軽量化を果たしながら、熱湯を注ぐだけで、本職の作った料理の味が復元することが可能になった。利用場面は限られるかもしれないが、新しいタイプの内陸食料である。

南極内陸のような環境において食事は、まず生命維持と活動のエネルギー源として不可欠であることにとどまらず、食事を楽しむことも、厳しい環境であればなおさら重要と思う。それは皆の満足感や活力につながり、さらに成果や安全につながっていくものだろう。

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