特殊救難隊員が語る!試行錯誤の訓練、救助の仕事のやりがい

特殊救難隊員が語る!試行錯誤の訓練、救助の仕事のやりがい

こんにちは、石川です。
ちょっと暖かくなって油断していたらまた冬の寒さですね・・・。春が待ち遠しくて、最近は今年のお花見の空想ばかりしています。お弁当もいいけど、今年はサンドイッチとビール片手にふらっと花見もいいな・・・などと一人思っている今日このごろです。

さて今日は、『海難救助のプロフェッショナル 海上保安庁特殊救難隊』の現役隊員インタビューより、
“特救隊”が日々行っている訓練の工夫、実際の海難発生時での体験などについて、隊員の「生の声」を一部紹介します。

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■特殊救難隊の訓練

特殊救難隊の勤務には、24時間体制で海難等の事案発生に備えた当直と、通常の職員と同様の日勤があります。
当直中は庁舎で待機しており、当直が終わると次の隊に引継ぎを行います。日勤時においては、全国で発生する海難等の事案発生に備え、レンジャー、潜水、火災危険物及び救急などの各種訓練・研修を行い、専門的な知識・技能の習得に努め、事案対応能力の強化を図っています。

これらの訓練を行う場合、例えば火災危険物の事案では、タンカーや漁船等、どのような船が燃えているのか、甲板上、機関室内、居住区内等、どの場所で燃えているのか等、火災が発生した船の種類、場所によって対応がかわってきますので、ただ単に船が燃えるといった想定ではなく、多岐にわたる想定の中から、その都度想定を決めて訓練を実施しています。

■特殊救難隊になる前の潜水訓練

特殊救難隊の隊員になるには、基本的にはまず潜水士になる必要があります。各管区において選抜試験を受け、そこで選抜された者が海上保安大学校での潜水研修を2か月間受けることとなります。

潜水研修は、体力的にも精神的にも大変厳しいものでした。研修には、潜水中の様々な障害に対応する能力を養うための「妨害排除訓練」というものがあり、水中で何らかの原因により空気が吸えなくなる状況を想定して、教官が研修生の空気ボンベのバルブを不意に閉めることがあります。このような状況となった場合は、バディに手先信号で合図を送り、バルブを開けてもらうか、自分で装備をはずし、バルブを開けて対応するしかありませんが、パニックになる者もいます。

このような状況になった場合にも常に冷静に対応できるように、このような厳しい訓練を重ねることで、潜水技術を身につけるだけではなく肉体的・精神的も鍛えていきます。

潜水研修終了後は、全国各地の潜水指定船に配属され、数年間、潜水士としての現場経験を積み、現場に配属されている潜水士の中から能力や適性などが評価された者が特殊救難隊員として選抜されます。その後、約6か月間の厳しい新人研修を無事に修了し、そこで初めて特救隊員としての出動が許可されることとなります。

■重りを付けすぎて海面に上がれない・・・?

海洋実習のときの出来事ですが、水深40mまで潜っている時に、ボンベが使えなくなったり、ボンベの空気がなくなったりした場合を想定し、海面まで緊急浮上する訓練があります。
通常は水深40mまで潜る場合は、水圧により浮力が少なくなるため浅場で潜るより4kgぐらい重りを減らしておくのですが、ある時、重りを減らすのを忘れ、大量の重りを付けたまま潜ってしまったことがありました。普通であれば海面まではとても上がってこられないくらいの重りでしたが、この時はなんとか気合で海面まで上がってくることができました。訓練においても、やるべきことがたくさんあるので、焦っていたのか大量の重りを付けてしまったのです。準備の段階できちんとチェックしていれば大丈夫だったのでしょうね。

■心残りの海難

大型の貨物船が転覆し、6人が行方不明となる海難事故がありました。事故当初は現場の波も高く、潜れなかったのですが、天候が回復してきたところで潜水捜索を行い、船橋で1人、居室で4人発見し、残る1人の捜索のため、機関室の捜索を行いました。
多くの油が浮遊した機関室の中は大変暗く、捜索中に油の層に顔を突っ込んだ瞬間、急に真っ暗で無視界の状況になり、その時初めて自分の中に「怖い」という感情が生まれたとともに、これ以上の捜索は危険と判断して引き返すことにしました。数日後、その船を岸壁に上げたとき、機関室内の捜索を行わなかった場所から行方不明であった残る1人が発見されました。当時の判断は間違ってはいなかったと思っていますが、改めて他に捜索する方法がなかったのかと思うと、当時の対応は心残りであります。しかし、あの時の恐怖は今でも心に残っています。

■特救隊の苦労とやりがい

特救隊に求められる知識・能力は多岐にわたるため、これらを維持・向上するためには少しでも多くの訓練・研修時間を確保する必要がありますが、時間は限られているため、限られた時間の中で必要と思われる訓練を考えていくことに苦労しています。訓練の中で最も重要なのは、我々をはじめとする潜水士しか対応できない、転覆船等に対応するための潜水訓練だと考えています。

訓練の内容としては、実際にボートをひっくり返し、それを転覆船と見立て救助資器材を使って訓練を行うほか、防災基地の訓練水槽の底板を上げると、その下に空間ができますので、その中を転覆船内に見立て、行方不明者がいるとの想定で訓練します。実際の現場は、遥かに厳しいものですので、網を敷き詰めたり様々な障害物を設置し、極力現場に即した訓練を行います。

やりがいとしては、本当に緊急の要救助者は言葉を発することができませんが、緊迫した現場で要救助者を救助した時に要救助者の安堵の顔から「ありがとう」の気持ちが伝わってきたときです。

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いつどんな状況で起こるとも分からない海難事故に対応するため、隊員たちは訓練方法を自ら編み出して訓練に励んでいるのですね。
想像を超えるような過酷な現場にもかかわらず、特救隊に殉職者はまだいないそうです。まさに日々の厳しい鍛練の賜物なのでしょう。

特救隊の仕事、出動事例、エピソードについてもっと知りたい方は、『海難救助のプロフェッショナル 海上保安庁特殊救難隊』をぜひ読んでみてくださいね!