海上保安庁の海猿たち「特殊救難隊」の訓練に迫る!

海上保安庁の海猿たち「特殊救難隊」の訓練に迫る!

こんにちは、石川です。

先日、新刊「海難救助のプロフェッショナル 海上保安庁 特殊救難隊」がついに完成しました!
11/30(水)に新刊配本となりましたので、順次全国の書店さんに並ぶ予定です。海上保安庁内の精鋭36人で構成される、特殊な海難事故に対応する“特救隊”の活動を追ったこの一冊、海上保安庁ファンの方には、ぜひとも読んでいただきたい濃~い一冊になっていますよ。

現在発足から41年の特救隊ですが、発足から間もない頃には、隊員たちの能力を養成する専用の訓練施設はまだありませんでした。
おもな訓練場所は、羽田庁舎・本部庁舎での訓練。そこで、当時の二代目隊長は「今あるものを利用して新たな訓練を開発しよう」と、隊員と試行錯誤しつついくつかの新たな訓練方法を編み出しました。

今回はその当時の貴重な訓練の記録を、本書からすこし紹介します。

①屋上サーキット訓練

第三管区本部の建物は、まるで大型船のように見える。屋上の左右に鉄骨造りのタワーがあり、中央にはエレベータールームのブリッジ。屋上に上がり見渡してみると、そこはまるで大型船の甲板にそっくりだ。
これらの構造物を使ってどのような訓練ができるか、一つ一つ試してみた。

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ある日、隊員と屋上を使った「新たな」訓練方法についてミーティングを行い「本部庁舎は大型船に見えないか、屋上は大型船上甲板に見えないか、地上は海に見えないか、この船で訓練はできないか」と言ったら、隊員の行動は素早く、訓練イメージが浮かぶと自分で体現し始めた。5人の特殊救難隊員がいれば、たちまち訓練方法が編み出した訓練は、屋上レンジャーサーキットと屋上からスライド降下の訓練。
レンジャー担当隊員が計画を立て、次のレンジャー訓練でテストしてみたところ好評だったため、「屋上サーキット」と命名。後に特殊救難隊の体力検定の種目となった。

②屋上スライド降下訓練

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特殊救難隊は、全国の特殊海難に即応する体制を取っていた。羽田を飛び立ち最寄りの航空基地からヘリコプターに乗換えて海難の現場へ向かうことになるので、このヘリコプターから現場への船艇への降下、撤収の練度を上げることが必要となる。現場で必要とされる、ヘリコプターが移動しながら隊員が降下する「スライド降下」の訓練が不足していた。

5階建ての本部庁舎は十分な高さがあり、裏庭には障害物がない。屋上の鉄塔と地上のトラックのクレーンフックにスライドロープを取り付け、隊員は縛帯のカラビナをスライドロープに掛け、ブレーキロープを身に
着け地上の目標に降下する。降下する先の障害物を想定し、降下目標の前後に障害物としてタイヤも積んで置く。この訓練で、ヘリからのスライド降下訓練をカバーすることができた。名付けて「ターザン」と言った。

③水槽での潜水訓練

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本部の裏に試験研究センターがあり、その横にいつも鍵がかかっている幅3m×長さ20m程の水槽があった。職員に頼みプールを見せてもらうと水深は2mほどあるそうで、水は緑色であった。しかし驚くことに、この水槽には大きな観測窓・造波装置・牽引装置があった。早速、試験センターに特殊救難隊の潜水訓練に使用させてもらえないかと打診、水槽掃除と水代は特殊救難隊持ちということで了承を得た。こんな近い場所で朝から夜まで徹底的に潜水訓練ができるようになったことは、隊員にとって望外な喜びだった。欠点は、傍にコーヒーの焙煎工場があり、夏場はすぐに水がコーヒー色になってしまうことだった。後日行われた転覆海難の調査研究に、この水槽は多大な貢献をしてくれた。

――出展:「海難救助のプロフェッショナル 海上保安庁 特殊救難隊」 第一章〈退職OB編〉より

こんな風に、特救隊は発足間もない頃からあらゆる工夫を重ねて訓練し、実際の海難事故の現場に対応してきたのですね。
本書では、実際の出動事例、救助についてのインタビューも取り上げています。ぜひ書店さんで手に取って中を見てみてください(^.^)